野田政権誕生から1ヶ月-日本の政治をどう考えるか
野田政権誕生から1ヶ月 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、こんにちは。大変お久しぶりです。
工藤:今、「on the way Journal」というラジオ番組に出演していてその番組内での議論は流していますが、私自身も発言はしないといけないと思っていました。「北京-東京フォーラム」という大きなフォーラムが8月にあり、その後、疲れていて止まっていましたが、10月に入り次に向けた動きを言論NPOは始めましたので、今回「工藤ブログ」を再開させていただきました。
田中:この間大きな出来事として野田政権が誕生しましたが、言論NPOとして野田政権に関してのコメントをお伺いしてよろしいでしょうか。
工藤:野田政権の評価自体は、100日間はハネムーン期間ですので、それを経て100日後にきちんと評価しようと思います。ただ私が野田政権をどういう風に見ているかといいますと、前の首相が辞任をして党内の選挙で首相が変わっただけですので、何かをこの政権が日本の政治を安定させて次に続くとは見ていません。つまり、日本の政党政治がここまで崩壊してしまって、その中で日本が課題解決に向かえず世界から孤立している。この状況は首相が変わったから、それでなおるというものでもありません。ただ、新政権の誕生は日本が大きく変わる中で1つの大きな転機になる可能性が高いとは思います。
田中:転機というのは具体的にはどのような形で訪れるのでしょうか。
工藤:まず新政権が何をしたかというと、党内の中の意思決定の仕組みを決める、ということでした。だけどそれは自民党時代の政務調査会と同じであり、基本的に党が事前審査を行うということと同じです。これは昔民主党政権が言ったこと、つまり、政策決定の政府への一元化や官邸主導とは異なりますよね。しかし、それでも自民党と同じやり方を取ったのはなぜなのか。それほど、民主党の党の意思決定は壊れている、政策を軸に党がまとまっていないということなのです。これは政府の統治の混乱に前政権でつながりました。つまり、何も決められない。党の意見集約がそもそもできない事態に追い込まれていたのです。民主党の場合、それはあまりにもひどい状況でしたが、ただこれは日本の政党政治にもあてはまっていることだと、私は思います。
つまり、政策を軸にして、党が何かをきちんと合意して動かすという仕組みが、日本の今の政党政治には出来にくくなっている。
新政権は党内融和という言葉を使いましたが、そうした状況を立て直さないと、党自体が分解してしまう。そういう状況下に今の政治があるということです。これが成功するかどうか私は分かりません。小沢さんの問題もあります。ただ、仮に党内融和が成功したとしても、日本が抱えている課題の解決に間に合うのかという問題があります。
来年、非常に重要な局面に日本はあります。アメリカも韓国も大統領が変わり中国も権力が変わるなど、大きく世界の政治のプレーヤーが変わるのです。そのときに日本もいろんな影響を受けるはずなのです。日本も政治が大きく変わるでしょう。
しかし、この歴史的な局面で、日本が世界から孤立している。日本の政治に問われるのは、あくまでもこの国が将来像や政策をベースにして日本の未来に向かう動きをつくらなくてはならない、ということです。それを野田政権ができるとは思いません。
日本の政治が大きな変化の最中にあることは事実です。ただ、私はその時に今の日本の政治が未来に向かって本当に動くかどうかということは、永田町が決めるのではなく国民が決めることだと思っています。国民が日本の未来に目を向け、自分たちが何ができるかということを考えていかないと、日本が確かな未来のために一歩を踏み出すということにはならないと思います。
言論NPOはそのための、議論をしないといけないと思っています。
田中:確かに、今おっしゃった点は分かるのですが、具体的にどうやって私たちは政治に対して影響力を行使できるのでしょうか。
工藤:国民がまず政治に影響力を行使するにはまず投票しかありません。
だけど私は「新しい民主主義」というのが必要だと思っています。現在、代議制民主主義の中で私たちは選挙で自分たちの代表を選ぶことになっています。しかし、その政党が駄目なのです。つまり政治家を選ぶ際に商品棚に並んでいる商品が、いつも同じなのでなかなか選べないという事態になっている。つまり、選挙だけではだめで、この棚卸しを行い、この状況を変えないと、私たちが代表を選べないという状況なのです。この状況では私たちはもう1つのことにも取り組まないとなりません。つまり、僕たち自身が今の課題に対してどういう答えを出すのか、未来に対してどういう生き方をすべきかというのをまず自分たちが考えて、実際に課題の解決に取り組むことです。その中には、被災地の問題もあります。実際の課題解決に私たち自身が何らかの形で取り組みを始めない限り政治は変わりません。
その2つが動いて「新しい民主主義」ができるのだと思います。たぶん言論NPOは、そのための議論の場としての役割を果たさないといけないと思っています。今その準備をしていますので、是非期待していただければと思っています。
田中:政治家が政策を作るのを待っているのではなく、政策を誘導するようなアクションを有権者が見せていかなければいけないのですね。
工藤:政策を誘導するのではなく、僕たち自身が課題解決に取り組むという当事者としての意識を固め、自分たちが政策を考え決定して、それを逆に政治に投げるような動きですね。そういう流れが無い限り日本は変わらない状況にきています。
田中:よく分かりました。では、これが「工藤ブログ」の再開のはじまりということで今後も継続して議論を発信していただければと思います。
工藤:はい、これからもよろしくお願いします。
2011年10月11日 10:25
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