21世紀臨調主催「政権実績・参院選公約検証大会」を終えて
6月20日、21世紀臨調主催の検証大会にて政権の実績評価と公約の検証を発表しました。
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)
田中:工藤さん、お疲れ様でした。本日は21世紀民間臨調主催の政権実績・政権公約の評価大会で発表されたのですね。
工藤:徹夜でしたが、かなりしっかりした評価を行いました。言論NPOは鳩山政権の実績と自民党と民主党の選挙公約の評価を行いましたが、点数はかなり低くなりました。
田中:何点くらいですか?
工藤:鳩山政権の実績評価は25点、実績、実行過程、説明責任の3つの観点で評価を行いましたが、特に説明責任が低くなりました。その理由は、鳩山政権が昨年のマニフェストで提案した16.8兆円の支出がかなり難しくなっているのに、それを有権者に説明できていないのです。国民に向かい合う政治という点で、やはり問題があります。私たちは恣意性がある話ではなく、きちんと評価基準に基づいて評価をしていますので、25点になりました。
田中:なるほど。ではもう少し詳しく教えてください。特に要注意な政策分野は何でしょうか?
工藤:政策分野もそうですが、基本的な話をすれば、鳩山政権はマニフェストを掲げて選挙を戦ったのですから、マニフェストは重要だったのですが、約束を軸にした政治をつくることがうまくいかなかったのです。鳩山さんが出したマニフェストでは、官邸機能の強化とか、国家戦略室でビジョンを作るとか、行政刷新会議で国と地方の関係で行なうとか、たくさん政策を書いています。しかし、行政刷新会議は事業仕分けだけになってしまったし、国家戦略会議は国家ビジョンなんて作っていないのです。一方で、政策課題もいろんな約束がうまくいっていないのです。まあ、(まだ民主党政権が誕生してから)9か月しか経っていないので仕方ないかもしれませんが、ただ一番気になるのは政策目標と政策目的がはっきりしないままで、色んなばらまき的な支出があったのです。そこの論理立てを作るのに民主党政権は苦労された感じですね。たとえば、農業の政策の中に戸別補償があります。これは小規模の農家を支援するためなのですが、しかし日本の農業の本当の課題は、高齢化が進んでいて担い手がいないことなのです。それをどうするかの課題設定ができていないのです。また、地域主権の政策でも、「地域主権」という新しい言葉が出ました。住民自治をベースにした新しい地域主体のドラマを起こそうと思ったようですが、実際に行っているのは従来型の霞が関の権限を上から下に撒くという従来型の地方分権に過ぎないのです。つまり言葉としては新しさを感じますが、今の段階ではあまりうまくいっていないという評価です。
田中:それでは、今度の参議院選挙のマニフェストの評価はいかがですか?
工藤:今回マニフェストに重要な変化がありました。鳩山政権は退陣すると言う異常な事態になり、菅さんは「強い経済、強い財政、強い社会保障」を掲げて課題に向かい合おうとしたわけです。自民党のマニフェストも同じで、経済・財政・社会保障に力を入れています。日本の政党が、この大きな3つの課題でプランを競い合うようなことが今回のマニフェストで示されています。現実的に見れば、自民党の方が1歩進んでいますが、やはり自民党のマニフェストの方も、財政再建や経済成長を具体的な目標を立てている一方でやはり選挙を意識したバラマキ的なものが結構あります。やはり民主党もそうですが、1つの課題に向けて集中する形にならないのです。ですので、自民党の政策も民主党の政策も整合性が問われざるを得ないのです。今回、マニフェストのすべての政策をすべて評価しましたがやはり20点代になり、どちらも不合格なのです。
田中:私も今回マニフェスト評価作業に参加しましたが、全体に気になったのは前回の選挙よりもマニフェストの質が低下しているのではないかと思いました。
工藤:おっしゃる通りです。マニフェストを読んでみたら、昔の選挙公約に戻っています。自民党のマニフェストは270の政策がずらっと並んでいて、ただの政策集になっています。確かにマニフェストの前半の方はカテゴライズとして政策がきちんと区分されていますが、しかし数値目標がなく、国民との約束として判断できるものが少ないのです。それは民主党のマニフェストも同じです。民主党の方は、よく分析すれば昨年のマニフェストをかなり修正しているにも関わらず、説明がありません。一方で、民主党は今回のマニフェストに自己評価を掲載しており、民主党はこれまで179の政策に取り組み、35政策を実施、一部実施を含めれば90個くらいの政策をすでに実施と書いています。これを見ればかなり前向きに動いているように感じますが、言論NPOが同様に発表した評価では、179政策について着手済みという段階が100つくらいで、それがうまく動いているのか判断できない段階で、すでに修正に追い込まれたものもあります。つまり単に行ったことを「実施」というのではなく、政策の目的にあわせて実現した、というのをきちんと説明しないといけない。しかも、今回の民主党のマニフェストでは、約束集であるにも関わらずなぜか菅さんの個人ストーリーが出ているし、一方で自民党のマニフェストはただ政策を並べただけの政策集だし、やはりマニフェストが変質していてまずいと思っています。
田中:ただ、天に向かってつばを吐いている感じでもあり、これまで数年にわたり多数の民間のシンクタンクが評価をしてプレッシャーをかけてきたわけです。それにも関らずマニフェストの質が低下しているのは、私たち評価する側の影響力が問われているようにも思います。
工藤:率直に言って、評価団体への信頼や、その評価の影響力が低いのです。でも、だから駄目なのではなく、僕たちももっと努力しないといけません。政策は複雑なので、もっと政策を分解して、分かり易く伝えたり、逆に政治家に本音を聞いてそれを公開するとか、評価する側もスキルアップしなければいけませんし、同時にもっと政治や政策をもっとかみ砕いて伝えていく努力もするべきですね。
田中:それと、今回はあまりにもマニフェストが劣化しているので、政治側・政党側に統一したフォーマットを与えて、分かり易く政策を見せるように働きかけるようにすべきですか?
工藤:そうです。やはりA4の2-3枚でいいので、10つの政策でもいいので、政策目的や財源も含めた形でマニフェストを書いていただいて、それを競い、実現してもらわないといけないですね。そういった努力を私たち評価する側もしないといけません。
田中:それでは最後に選挙に向けての言論NPOの予定を教えてください。
工藤:これから選挙ですので、政党が行っている政策をもっと読解して、場合によっては政治家にも質問をしに行こうと思います。また候補者へのアンケートを行い、公開していきます。今回言論NPOが行った評価も、「未来選択」のサイトで、分かり易く公表します。選挙も近いので、色んな議論を紹介しようと思っていますので、是非私たちのサイトにお越しください。
(文章は、動画の内容を一部編集したものです。)
21世紀臨調主催「政権実績・参院選公約検証大会」を終えて 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事) |
2010年6月20日 21:04
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