2020年7月13日
日本の民主主義に対する信頼は立て直さなくてはならない -議論の再開にあたっての私たちの覚悟
いよいよ言論NPOは、7月13日から議論を再開する。
私たちは、多くの人たちと同じようにこの3月から活動を自粛してきた。何よりもスタッフの健康を考えたが、世界やアジアとの対話ができなくなり、そのための作業も全て停止した。ただその間でも、私たちは次に向けた準備を進めてきたのである。
私たちの準備は、日本の将来に向け、まさに今、言論の役割を発揮するためのものである。
コロナウイルスの感染の脅威はまだ続いており、当分、劇的な収束が期待できないことがはっきりしてきた。東京では自粛の解除後、感染者が急増しているが、回復はこうした危機を繰り返しながら、かなり長期化するだろう。これまでの多くの危機がそうだったように、コロナ後の世界はこれまでとは全く異なる世界を生み出す可能性がある。
それでも、私がその行方に期待をもっているのは、世界のほとんどの人がこの危機を実際に体験し、家族や友人の命を心配し、社会を持続させる多くの仕組みや仕事の大切さを感じとったことにある。
この日本も未来に向けて変われるのではないか。そうした手ごたえを感じているのは私だけではあるまい。もちろん、そのためには相当の努力が必要である。今回のパンデミックだけではなく、異常気象や社会的な困難に私たちはこれからも断続的に直面するだろう。
しかし、もはやそれは、他人事ではなく、無関心を決め込むことはできないのである。
私はこの間、毎日のように世界の国の多くの専門家や政治家、研究者とテレビ電話で意見交換を続けている。その中でハッキリと分かったことがある。
この危機に十分に対応できたかは、権威主義や民主主義という政治体制の問題ではない、ということである。
そこで問われたのは信頼のインフラである。市民は政府を信頼しているのか、政府はリーダーシップを取り、この危機に迅速に対応し、市民の状況に耳を傾けたのか。
昨夜、意見交換したドイツ連邦議員のマティアス・バルトケ社会保障委員会委員長は危機管理で最も重要なことは、政府が人々を説得できるかだ、と言っている。どんな対策も人々が適切に行動しないと効果はない。そのためには政府自体が、市民に信頼されないとならない。そうした国こそがパンデミックの対応に成功したのである。
そうした意見は、世界の多くの論者から聞いた。
私たちが議論の再開にあたって、日本の危機管理の問題から議論を始めたいと考えたのは、日本の将来も同じだと考えたからだ。私たちが将来に向けて、日本の困難を解決するためには、危機感を市民と政治が共有できるかにかかっている。ここでも信頼のインフラこそが極めて大事なのである。
私たちの議論の準備は、まさにそのために組み立てられている。
私たちの議論は、解決すべき様々な課題を明らかにするものである。しかし、その目的はその解決に多くに人が力を合わせることにある。
世界やアジア、そして日本の未来が不透明だからこそ、こうした舞台を再開しなくてはならない。そうした強い思いで、私たちは作業を継続している。
多くの人に緊急のアンケートをお願いしたので、回答していただいた方も多いだろう。この場でお礼を申し上げさせていただくが、その中に驚く数字が見られた。コロナ対策で日本政府への信頼が下がったと回答したのは41.6%に及んでいたのである。日本のコロナでの死亡者は欧米と比べても圧倒的に少ないが、政府の信頼は他の国と比べても大きく下がっている。
多くの人は、この矛盾に対する答えを持っているに違いない。私が言えることはただ一つである。日本の未来のためにも、日本の民主主義に対する信頼は立て直さなくてはならない、ということである。
私たちの議論は、そのために始まるのである。
2020年1月23日
日米中韓の4カ国で「アジア平和会議」を創設しました
日米中韓の4カ国で「アジア平和会議」を創設しました
私たちは1月21日に日本と米国、中国、韓国の4カ国から、18氏の有力者が集まり、「アジア平和会議」という多国間の対話を立ち上げました。
6年かけて実現した北東アジアにおける多国間の対話メカニズム
この会議が、北東アジアの未来に大きな意味を持つのは、北東アジアという世界でも最も不安定な地域に、現在の平和だけでなく、将来に向けて持続的な平和を目指す、多国間の対話のメカニズムが、民間を舞台に初めて実現したからです。
2020年1月 1日
新年こそが
"ウェイクアップコール"を鳴らす最後のタイミング
2020年の幕開け。私は新しい年を、これまでとは異なる高揚した、強い覚悟を持って迎えています。
私が、こうした強い気持ちで新しい年を迎えたのは、この新しい年こそ、私たち自身が目を覚ますべき最後のタイミングだと考えているからです。
新しい年も、激動の世界の展開に私たちは何度も息を飲むことになるでしょう。
多くの人は、11月の米国の米大統領選の展開に一喜一憂し、年明けに選挙が行われる隣国の台湾や香港の動向には目が離せないはずです。
2019年10月 8日
私たちはなぜ、日本の民主主義の改革に挑むのか
言論NPOは創立以来、「市民が強くならなければ民主主義は機能しない」という問題意識から、マニフェスト評価や政権実績評価など様々な活動を行ってきました。
しかし、言論NPOが2012年から、外交問題評議会が立ち上げた世界20カ国のシンクタンク会議に参加し、世界の様々な課題に向き合ったときに、この民主主義というものが世界で大きく壊れ始めているということに直面しました。それから7年間、私たちは民主主義を巡って様々な取り組みを行ってきましたが、ようやく、この問題を本格的に議論し、最終的には日本の民主主義の修復やバージョンアップにつなげていかなければいけない局面だということを、確信するに至っています。
2019年7月16日
今回の参議院選挙で、私たちは何を政治に問わなければならないのか
参議院選挙も終盤戦に入ったが、一向に盛り上がりを見せない。強い関心が沸かないのは何を争点にこの選挙が行われているのか、分からないからである。
誰でも消費税の増税は嫌だし、お金の支給を喜ばない人もいないだろう。
家計が第一であり、会計を重視することに反対する人も少ないが、その原資を生み出す経済成長をどのように組み立てるのか、国の財政や社会保障の財源をどのようにねん出するのか、そうした骨太の議論はこの選挙中、聞いたことがない。
与党は、これまで様々な政策目標を打ち出し、新しい課題は提起したが、多くの目標を達成できず、財政と金融の副作用自体が心配されているのに、実績だけを強調する。
それに対して、野党は対案も出せないで、反対や願望だけを打ち出して選挙戦に臨んでいる。
ただ一つ共通しているのは再配分であり、そこだけは競争になっている。そんな選挙目当てだけ動きを、多くの人は疑い、白けている。
2019年1月13日
なぜ今、日米中韓と日米で北東アジアの平和を話し合うのか
北東アジアの平和は、極めて不安定な環境下にある。この地域には、平和を安定的に維持する仕組みが存在せず、皮肉なことに、日米同盟と中国が対峙する構造が、この地域の緊張を高めながらも、衝突を回避する唯一の土台となっている。
私たちが行っている日本と中国の世論調査では中国側の日本に対する感情がこの数年大きく改善したが、安全保障に限っては、両国民の意識は全く別の傾向を示している。
日中両国民とも相手国に軍事的な脅威感を異常なほどに高めており、日本国民は中国の軍事的な不透明な台頭や行動に神経を尖らせ、中国人の多くは、日本と米国が一緒になって中国をいつかは攻撃すると見ている。軍事的な衝突を危惧する声も少なくない。
私たち一般の市民から見ればこうした意識はばかげたように思えるが、政府間の様々な行動がこうした国民の不安を増幅させ、次第にそれぞれの意識を右側に動かしているのは間違いない。
2019年1月 1日
2019年、不安定化する国際秩序の中で、日本がリーダーシップを発揮するための土台作りを
新しい年は、日本の役割が問われるとても大きな歴史的な年です。
そのため私は、日本のぶれることのない立ち位置を、この正月に改めて考える必要を感じています。
この一年、世界はその未来が見通せないほど状況が悪化しています。
米中対立は米中二極の「新冷戦」の世界を生み出しかねない状況となり、戦後の世界秩序や、私たちの社会の土台である民主主義自体が世界で壊れかけています。その急激な変化に戸惑っている方も多いと思います。
私が、日本の立ち位置を再確認すべきだ、と考えるのは、世界の大国の覇権をめぐる対立や自国第一主義の行動に動揺するのではなく、日本こそが多国間主義やルールに基づいたリベラル秩序、さらには民主主義や平和のためにリーダーシップを取り、世界と連携すべきと考えるからです。
日本が目指すべきなのは、新しいリベラル秩序と平和に向け、国際世論と連携した第三の道なのです。
2018年10月11日
14回目を迎える「東京-北京フォーラム」の役割とは
工藤泰志(言論NPO代表)
聞き手:高原明生氏(東京大学公共政策大学院院長)
世論を動かし、政府間外交の土台を作ることが対話の目的
高原:もうすぐ「第14回東京-北京フォーラム」が東京で開催されます。その前には常に、日本と中国の両国で共同世論調査を実施することになっているのですが、そもそも、この「東京-北京フォーラム」は何のために開かれているのか、改めて工藤さんにお伺いしたいと思いますので、その辺からよろしくお願いします。
2018年8月31日
"平和と協力発展"を民間が先導していく対話に
工藤泰志(言論NPO代表)
国際情勢が激変する中、"歴史的な作業"が求められている
「東京―北京フォーラム」は今回で14回目となります。私たちが、今回の開催に特別な思いで準備を始めているのは、今年が日中友好条約の40周年記念である、ということだけではありません。
現在、米中の貿易戦争に見られるように、ルールに基づいた国際経済秩序が混乱する一方で、北朝鮮の非核化に向けた外交努力が始まっています。
つまり、米国の一国主義と中国の国家主導型経済発展との間の摩擦を解消し、これまで緊張が続いていた朝鮮半島の平和で安定した将来をつくるための歴史的な作業が求められています。私たちの今回の対話は、その歴史的な役割を果たそうと考えているのです。
「不戦の誓い」に続く新たな合意を政府に先駆けて打ち出す
ちょうど5年前、日中平和友好条約35周年となる2013年は、尖閣諸島をめぐる対立で、日本と中国の政府間外交が動かなくなり、日中関係はかなり危険な状態になりました。尖閣諸島周辺の偶発的な事故から、日本と中国の対立が戦争に発展してしまうのではないか、という懸念が世界中に広がりました。
その時、北京で開催した「第9回東京―北京フォーラム」では、私たちは日中間で「不戦の誓い」を合意し、それを世界に公表したのです。政府外交が全く機能しない中で、民間が動いたのです。
私たちは、今年の日中平和友好条約40周年では、それに続く宣言を行うことを中国側とすでに合意しています。それは「平和宣言」です。政府間では、第五の政治文書をつくろうという計画があるとも聞いていますが、私たちはその前に民間で合意をつくりたいのです。
"平和と協力発展"実現のために、民間の対話として責任を果たす
私たちは、毎年中国との間で行っているこの「東京―北京フォーラム」は、民間外交の場だと考えています。政府間関係が最も困難な時にこの対話は始まりました。政府間が対立すると、民間の交流や友好的な活動もほとんどが中止や延期に追い込まれます。この14年間の間にもそうした時期は何度もありました。
しかし、私たちはどんなに両国関係が厳しくても、一度も対話を中断したことはありません。私たちは、両国で世論調査を行い、両国民の考え方や意識を分析しながら、毎年対話を行い、その内容を両国民だけではなく、世界に発信しています。私たちはこの地域の平和と、経済的な協力発展のために民間の対話として責任を果たそうと考えてきたからです。その思いは、今回も同じです。
私が皆さんに是非知っていただきたいのは、こうした対話の舞台が民間に存在しているということです。中国と対話を行うというのはそう簡単なことではありません。
お互いには様々な違いがあります。しかし、どんな違いがあっても、二つの大国はその違いを認め、乗り越えるしかない。そして、このアジア地域だけではなく世界でも平和と、自由かつ開放的な経済環境下での協力発展を目指すしかないのです。
それが今回のフォーラムのテーマです。それを日本と中国は実現できると私は考えています。私たちの民間対話はそのための土台づくりなのです。
10月に東京で行われる第14回目の民間対話を、私たちはそうした強い思いを持ちながら実現しようと考えています。政治外交、安全保障、経済、ジャーナリストの分野で日本と中国の100氏近い有識者や有力者が話し合います。そして対話は全て公開されます。
是非、会場に来て私たちのチャレンジを直接見て頂けたら、と思っております。
2018年6月12日
1時間後に迫った米朝会談の行方~日米共同世論調査から読み解く~
歴史的な米朝首脳会談がもう数時間後に始まることになる。
先週末、日米両国民がこの結果をどう考えているのか、私たちは緊急の世論調査結果を公表したが、事態をなかなか理解できない日本国民に対して、米国民の意識は明確に一つの方向を描き始めている。
この対照的な傾向の原因は、昨日HPで公開した、慶應の渡辺靖教授とのやり取りでも説明したが、米国の世論は、今回の会談で北朝鮮の核問題は「解決に向けて動き出すが、最終的な解決は将来的な課題になる」に収れんしつつある。
つまり、今回の会談では非核化に向けた合意がなされ、最終的な行方は分からないが、少なくてもそれに向けたプロセスが様々な形で動き出す、という積極的な見方である。
朝鮮戦争の終結や、米国と北朝鮮の国交正常化、さらには朝鮮半島の統一に向けた動きなど何本もの歴史的な動きが今後、絡み合いながら進むことを、多くの米国人は感じ取っている。
こうした声は、今回の首脳会談はトランプ氏の米国の中間選挙対策であり、会談は失敗するという見方を依然取る強い米国の民主党支持層でも少なくないことが、今回の私たちの調査のクロス分析でも明らかになっている。
米国内で高まるトランプスタイルの行動への評価は、軽視すべきではない。
これに対して日本国民に米国の民主党の支持層と同じ、冷めた見方があるのは今、朝鮮半島で始まろうとしている歴史的な動きに、日本自体がどのように向かい合うのか、十分な準備ができていないからだ。
もちろん、日本政府はそれを意識しているから、拉致解決を前提とした日本と北朝鮮との国交正常化への動きを狙っている。それは、米国に飛んだ安倍首相の6月7日(現地時間)の記者会見でもよく分かる。
今回の調査でも、北朝鮮問題は日米関係を強くしたという、米国民の見方は、昨年末の私たちの調査から大きく減少している。日本は歴史的な舞台にまだ上り切れていない。
日本では、拉致問題が今回の米朝首脳会談の前提のような報道があり、その協力をトランプ大統領が明言したことにだけに、焦点が当たっている。
拉致問題の解決が大事だということは、私も同じ姿勢である。しかし、今、私たちが考えなくてはならないことは、朝鮮半島で冷戦終結と非核・平和に向けた取り組みが始まる可能性がある、という歴史的な事実の方なのである。
さて、米朝会談の行方はどうなるのか。
これからの話はまずは、それを見てからになる。
言論NPOは明日13日午後6時半から、この会談の評価と朝鮮半島の将来について緊急のフォーラムを実施する。この模様をインターネットでも中継する予定ですので、ぜひ、ご覧いただければ幸いです。
2017年12月15日
両国間の課題だけでなく、世界やアジアの課題を乗り越えるために ~「第13回東京―北京フォーラム」にあたって~
「第13回東京―北京フォーラム」が明日16日から開幕します。私は、今回の対話は今までとは違う意味を持ったものになると考えています。この対話は日中間の困難を乗り越えるために2005年から始まったのですが、これからはそうした二国間の困難を乗り越えるためだけではなく、世界やアジアの課題解決や平和の実現に向けて、日中が協力していくことができるかどうか、ということも問われる対話になると私は考えています。
2017年10月28日
北朝鮮問題の解決に向けた環境づくりが民間でも始まった
~「日米中韓4カ国対話」を終えて~
北朝鮮の核問題解決に向けて、政府間外交に合わせて言論NPOも動き始めた
総選挙も終わり、私は北朝鮮の核問題の解決に向けた作業を再開させている。
総選挙の総括は別の機会に報告するが、中国共産党大会が終わり、11月初旬からトランプ大統領は日中韓を訪ね、北朝鮮に対する政府レベルの取り組みが本格化する。
これに合わせて、私たちの取り組みも急がなければと考えた。
解決といっても、私たち民間にできることは限られている。
しかし、少なくても関係する周辺国でこの解決に向かって政策協議を進め、この内容を多くの人に公開する、必要がある。
それが、このアジアでトラック2やトラック1.5の民間外交を進めてきた私たち言論NPOの役割である。
日米中韓4カ国で「北朝鮮の核保有は認めない」と合意できたのは大きな収穫
昨日、10月27日に行った日本・米国・中国・韓国の4カ国の議論は、非公式会議と公開セッションを併せて、朝から夕方まで6時間余りになったが、公開された動画やテキストから、いくつかのことを気付かれた方も多いと思う。
私たちはまず、周辺国が実現すべき目標で足並みを揃えることが不可欠だと考えている。そこで、27日の会議ではしつこいくらいに何度も私は目標を確認している。
北朝鮮の問題で実現すべき目標は、北朝鮮の核保有は認めない、ということだと私は考えている。
議論では何とか、その目標で4カ国の出席者は足並みを揃えることはできたが、温度差を感じた人もいるだろう。
すでに核兵器を保有してしまった北朝鮮からそれを取り上げるためには徹底したプレッシャーから、外交プロセスの可能性を引き出さなくてはならない。
それが本当に可能なのか。すでにそれが不可能なのであれば、実現すべき目標は別のものでもいいのではないか。最近、メディアなどで見られる論調の一部にはそうしたぐらつきがある。
しかし、北朝鮮の核保有を認め、例えばICBMの米本土阻止を目標にする、ということにでもなってしまえば、この地域に平和は永続的に不安定化するばかりか、核の世界的な拡散を容認することになる。出席者の一人は、それは地獄への扉をあけることだ、と言っていたが、私も同じ理解である。
北朝鮮の核保有を認めず、軍事行動も避けるという目標の両立は可能か
ただ、私たちが目標に据えたいのはそれだけではない。
どうしても貫かなくてはならないのは、軍事行動は可能な限り避ける、ということだと私は考えている。
北朝鮮の核保有が認めないが、軍事行動も避ける。
この難しい連立方程式の解を導くシナリオをどういう形で描くのか。答えはあるのか。それが私たちのもう一つの強い問題意識なのである。
これまでにはなかった新しい「日米対話」が始まる
10月30日(月)はいよいよ日米の専門家で協議を行う。この難しい協議に米国から6氏の代表的な専門家が参加し、私たちの言論NPOの安全保障会議から5氏が参加する。
多分、今の難題に最もふさわしい陣容だと思う。
議論は非公開と公開の2つで行われるが、公開セッションは動画で中継することになっている。
2013年に私たちは、尖閣諸島での対立で民間レベルではあるが中国と「不戦の誓い」を合意した。しかし、当時とは比べ物にならない緊張感が今の私にはある。
北朝鮮問題が解決できない限り、この北東アジアの平和を実現することもできない。政府外交はそのすべてを握っているが、解決のための環境づくりに民間も本気で全力を尽くす局面なのである。
30日の日米対話を踏まえ、来週は中国で議論を行うことになる。
米国との間では現在、北朝鮮の核脅威の解決で共同の世論調査も行っている。
私たちの取り組みのプロセスは可能な限り、皆さんに公開したいと考えている。
10月27日(金)「日米中韓4カ国対話」参加者は以下の通り
香田洋二(元海上自衛隊艦隊司令官)
中谷元(元防衛大臣)
西正典(元防衛事務次官)
アメリカ ジム・ショフ(カーネギー国際平和基金日本部長)
ザック・クーパー(戦略国際問題研究所シニアフェロー)
ブルース・クリングナー(ヘリテージ財団シニアフェロー)
中国 呉莼思(上海国際問題研究所シニアリサーチフェロー)
韓国 李相賢(世宗研究所安全保障プログラムディレクター)
ジョン・ジェソン(ソウル国立大学教授)
▼北東アジアの平和構築に向けた多国間協議の第一歩が始まった
~「日米中韓4カ国対話」公開フォーラム 報告~
▼北朝鮮を核保有国として認めない点では一致するも、具体策は各国で対応が分かれる
~「日米中韓4カ国対話」非公開会議 報告~
「日米対話」概要
テーマ:「北朝鮮の核脅威の解決と北東アジアの平和をどう実現するのか」
日 時:2017年10月30日(月)14:00~17:30
助 成:ヘンリー・ルース財団(米国)
参加者:
日本 工藤泰志(言論NPO代表)
香田洋二(元海上自衛隊艦隊司令官)
徳地秀士(元防衛審議官)
西正典(元防衛事務次官)
宮本雄二(元駐中国大使、宮本アジア研究所代表)
米国 ダグラス・パール(カーネギー国際平和基金副会長)
マーク・リパート(前駐韓米国大使)
ジム・ショフ(カーネギー国際平和基金日本部長)
ブルース・クリングナー(ヘリテージ財団シニアフェロー)
ジェニー・タウン(ジョンズホプキンス米韓研究所副所長、「38ノース」編集長)
シブリー・テルハミ(メリーランド大学クリティカルイシュー世論調査ディレクター)
▼10月30日(月)14時から「日米対話」をネット中継します
YouTube Live https://www.youtube.com/watch?v=YDM_d2_mmgU
2017年10月 9日
総選挙公示にあたって考える
今、問われているのは民主政治自体の危機なのではないか
民主主義の立て直しに向けて、作業を開始します
突然の解散で、私たち言論NPOも時間の全てを選挙の対応に集中させている。
一強といわれる自民党に対して3つの極が生まれ、メディアは政権選択が可能となったとはしゃいでいるが、それらの政党から、日本が今最も直面する困難、北朝鮮の核問題や日本の急激な高齢化と人口減少に対して有効な対策や考えが提示されているわけではない。
2017年9月10日
北東アジアの平和に向けて、日中間の対話の舞台が始まった
~第1回日中安全保障対話を終えて~
北東アジアの平和に向けて、日中間の対話の舞台が始まった |
言論NPOの工藤泰志です。
今日は、中国の人民解放軍系のシンクタンクの人たちや、安全保障の専門家と、非常に突っ込んだ議論を行うことができました。北朝鮮の核実験に対する国連の制裁決議草案が出され、明日(11日)その決議の採択が想定される中で、日本と中国の安全保障の専門家が集まり、私の想像を上回る熱い、濃密な議論ができたということを、非常に評価しています。
2017年5月20日
訪米を終えて ~アメリカで実感した民主主義の力~
私は今、ワシントンのダレス空港にいます。1カ月間にわたる世界との議論を終えて、ようやく日本に帰国する途上にあります。私たちがアメリカに入ったのは5月7日。そして、10日にニューヨークに行き、14日には再びワシントンに戻ってきました。今日18日までの4日間、私たちは50人近い、シンクタンク、財団の代表や国会議員、学者、ジャーナリストと議論を重ねました。
窮地に陥ったトランプ大統領
2017年5月15日
訪米「中間報告」 ~ ワシントンで続くシンクタンクの混乱と、ニューヨークではっきり感じた意識変化~
現在(13日)、私はワシントンで開かれたCoC(*)総会を終え、ニューヨークにいます。少し肌寒いけれど、新緑がまぶしい季節です。
ニューヨークに来たのは、私たち言論NPOが進める「米国対話」のパートナー候補と資金提供者候補の人たちと相談するためです。同行した私たちのスタッフが努力して多くのアメリカの方々に連絡を取ってくれたおかげで、数多くの有力者と会うことができました。面会したシンクタンクや財団のファンドの責任者との会談で、私が一貫して言い続けたことがあります。「日本とアメリカの関係をもっと強いものにしたい。強いものにするということは、市民に支えられた日米関係をつくるということです」と。
(*)アメリカ・外交問題評議会(CFR)が主催し、世界主要25カ国26団体のシンクタンクが参加するシンクタンクの国際ネットワーク
2017年5月 8日
2週間に及ぶアメリカ訪問の5つの目的とは
言論NPOの工藤です。今ワシントンに到着しました。中国、ドイツ、さらにインドネシアにおける東南アジア諸国との対話を踏まえて、ようやくアメリカにたどり着いたことになります。直接的にはCoC、世界のシンクタンク25団体のトップが集まる会議に、日本の代表として参加し、そこでグローバルガバナンス、グローバルイシューについて議論するのが目的ですが、その他にも私は今回4つの目的を達するべく、強い意志を持ってやってきました。
インドネシア訪問を振り返って~アジアが抱える民主主義の課題とその克服に向けて~
言論NPOの工藤です。今私は、インドネシアでのスケジュールを終え、次の訪問地ワシントンに向かうところです。インドネシアでの民主主義をめぐる対話は、私にとっても非常に勉強になりました。
2017年4月28日
敗戦から民主主義を育て上げた日独が不安定化する世界に果たす責任を思う
~ドイツ訪問の帰途で~
言論NPOの工藤です。今ベルリンにいます。昨日、一昨日とこの2日間、私はドイツ在住のシンクタンクの複数のトップや、経済界の人たち、そして政治家、特に外交系の政治家と意見交換を行ってきました。
2017年4月26日
議論を通して実感したドイツでも高まる民主主義変質への危機感 ~ドイツからの第1報~
議論を通して実感したドイツでも高まる民主主義変質への危機感 ~ドイツからの第1報~ |
言論NPOの工藤です。さて、私は4月中旬から約1カ月にわたり、中国、ドイツ、インドネシア、アメリカの4カ国の訪問を予定しています。今、2カ国目のドイツ・ベルリンのブランデンブルク門の前の広場にいます。
2017年3月 3日
世界の規範や民主主義を守るため、覚悟を固める時
~「東京会議」立ち上げに当たって~
私たちは3月4日、G7加盟国のアメリカ、イギリス、イタリア、カナダ、ドイツ、フランスの7カ国に、インド、ブラジル、インドネシアを加えた世界10カ国からのシンクタンクの代表者を東京に招き、「東京会議」を立ち上げます。この「東京会議」は、世界が直面する課題を、世界10カ国のシンクタンク間で議論する東京発の議論のプラットフォームであり、議論の成果をG7対して提案することを目的としています。
2017年1月17日
民主主義という問題に真剣に向かい合うきっかけに ~トランプタワー前からの報告~
民主主義という問題に真剣に向かい合うきっかけに |
言論NPOの工藤です。今トランプタワーの前にいます。
2017年1月 9日
「民主主義」と「自由」を考える10日間に
~ワシントンからの第一声~
「民主主義」と「自由」を考える10日間に |
新年あけましておめでとうございます。言論NPOの工藤泰志です。
2017年1月 1日
市民が当事者として課題解決に向かい合うような流れを作りだす
~2017年、言論NPOの真価が問われる1年に~
市民が当事者として課題解決に向かい合うような流れを作りだす |
田中:工藤さん、明けましておめでとうございます。
工藤:明けましておめでとうございます。
田中:さて、2017年、言論NPOにとってどんな年になるでしょうか。
2017年は、言論NPOの真価が問われる年
工藤:今年は、言論NPOそのものの真価が問われる年だと思っています。言論NPOはまさに15年前、民主主義と自由というものをこの日本に強く機能させるために誕生した組織です。私たちは、市民が強くならなければ日本の民主主義は強くならないと考えています。
2016年12月31日
安倍政権4年実績評価について
言論NPOは2004年から、定期的に政権の実績評価、選挙時のマニフェスト評価を行ってきました。私たちが、政権の通信簿といえるこうした評価作業に毎年、取り組んでいるのは有権者と政治との間に緊張感ある関係を作り出そうと考えているからです。
市民が強くならなくては、民主主義は強く機能しないと私たちは考えています。選挙は市民が政治に参加する重要な機会であり、政党はこの国が直面する課題解決のためにプランを提示し、その実行を約束する必要があります。有権者はそれを判断し、その実行を監視し、その成果を次の選挙で判断します。政党が課題解決で競争し、それを有権者が判断する。そうした課題に挑む、緊張感ある国民に向かい合った政治こそが、強い民主主義なのです。
私たちが評価を行っているのは、政権が選挙時の公約や、日本の課題にどのように取り組んでいるのかを有権者が判断するためです。そのための判断材料の一つとして多くの人に活用していただきたいのです。
こうした言論NPOの強い思いを多くの人たちに共感いただき、今回も多くの専門家の方に評価作業に参加してもらいました。実際に評価作業に参加していただいた約60氏の専門家の中から名前の公表を許諾していただいた25氏のみを公開させていただきます。
内田和人(三菱東京UFJ銀行常務執行役員)
小黒一正(法政大学教授)
小幡績(慶應義塾大学ビジネススクール准教授)
加藤出(東短リサーチ代表取締役社長、チーフエコノミスト)
加藤久和(明治大学政治経済学部教授)
神谷万丈(防衛大学校総合安全保障研究科教授)
亀井善太郎(東京財団研究員・立教大学大学院特任教授)
河合正弘(東京大学公共政策大学院特任教授)
川崎興太(福島大学准教授)
橘川武郎(東京理科大学イノベーション研究科教授)
生源寺眞一(名古屋大学大学院教授)
神保謙(慶應義塾大学総合政策学部准教授)
菅原淳一(みずほ総合研究所政策調査部主席研究員)
鈴木準(大和総研主席研究員)
田中秀明(明治大学公共政策大学院教授)
田中弥生(大学改革支援・学位授与機構教授)
寺島英弥(河北新報社編集委員)
西沢和彦(日本総合研究所上席主任研究員)
早川英男(富士通総研エグゼクティブ・フェロー)
藤野純一(地球環境戦略研究機関上席研究員)
松下和夫(京都大学名誉教授)
道下徳成(政策研究大学院大学教授)
山田久(日本総合研究所調査部長)
山本隆三(常葉大学経営学部教授)
湯元健治(日本総合研究所副理事長)
また、そのほかにも200人を超える専門家の方々に各分野の評価のためのアンケートに参加していただきました。アンケート結果は別に説明させていただきます。
さて、2012年に誕生した第二次安倍政権の実績評価は今回で4回目となります。今回の評価は、2012年、2014年の衆議院選挙での政権公約、参議院選挙の公約などをベースに、安倍政権が重要視している公約内容を選定し、300氏近い専門家が座談会、ヒアリング、アンケートなどを通じて評価作業に参加し、それらを総合して評価を行いました。
5点満点で2.7点の得点は昨年の3回目の評価とほぼ同じですが、評価する60項目で昨年と同じものは25項目に過ぎず、それぞれの項目が、状況の変化や参議院選挙の公約などを判断し、変更されています。
2.7点という点数は歴代政権の評価と比べても高得点だと判断できます。その要因として、第二次安倍政権が長期安定政権になり、首相自身が成果を意識して課題に取り組んでいることが挙げられます。
また、外交・安全保障の8項目の平均が3.4点と昨年に続き大きく寄与しています。政権の長期化で60の評価項目のうち進捗がみられる項目も多く、課題解決の方向に動いているが、現時点では判断できない(3点)項目も30個(前年から3個増加)となっており、点数を下支えしています。
ただ、政権の長期化で課題解決に向けた本格的な評価も可能となり、我々の評価の軸もアウトカム(成果)を意識したものになり、個別の評価はかなり厳しいものとなっています。
4年間で実現の方向に動いているもの(4点)は6項目(前年から2項目減少)にとどまり、実現を断念(1点)したり、困難だという項目(2点)は24項目(前年から1項目減少)に及んでいます。こうしたうまく進んでいない政策について、国民に対する具体的な説明がなされていないことも我々は重視しています。
第二次安倍政権が当初から掲げているアベノミクスについては、掲げた目標の実現が困難だという評価になっており、目標自体が形骸化しています。財政再建も見通しは描かれておらず、目標の実現は困難だという判断に今回も改善はありません。今年の参議院選挙で延期した消費税の引き上げや、軽減税率の導入に関しては、安倍首相がその実現を示しているために、状況を見守るという判断を今回も採用しています。しかし、昨年の評価でも、状況を見守るということになっていましたが、こうした我々の評価は、その後、見事に裏切られ、強い決意を示していたにもかかわらず、参議院選挙では「新しい判断」として消費税の引き上げを再延期してしまったことには、注意する必要があります。
安倍政権のこの一年は、新三本の矢に見られるように、同一労働同一賃金による正規と非正規の格差是正、介護離職ゼロなど、まさに今、日本が直面している課題への取り組みを強めています。これらの課題認識自体は適切であり、個別では進捗も見られます。しかし、それらの課題は、相互連関しているものであり、日本の将来ビジョンを描いた上での抜本的な構造改革に、踏み込む形にはなっていません。
また、トランプ大統領の誕生や欧州での反自由や民主主義への挑戦など、世界は大きく動き始めています。TPPや外交政策での公約実現はこうした変化にも影響を受け始めています。一方で、真の行政改革や道州制、地方分権など統治構造に関わるものは実質的に取り組んでいません。日本に迫る課題が切迫しており、余裕がないというのであるならば、その修正や今後の立て直しを国民に説明すべきだと考えます。
評価基準に関しては別に説明していますが、公約を課題解決のプランとしてその進捗を評価しており、修正やうまくいかない時、あるいは選挙時には全く説明していないもので新規で動き出した政策では、国民への説明が十分かも判断しています。今日公表した60項目の評価ではその内容も可能な限りわかりやすく説明しています。
また、こうした評価作業をもとに言論NPOは毎日新聞と協議して最終的な採点を行っています。私たちは2004年から、メディアこそが有権者側に立ってこうした評価を行うべきと提案してきましたが、日本のメディアでは唯一、毎日新聞が4年前から私たちの要請に賛同し、作業を協働していただいております。
今回の評価結果を通じて、有権者自身が日本の課題を考える一助になれば幸いです。
2016年10月21日
15周年の節目に語る、言論NPOの決意
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認定NPO法人 言論NPO
代表 工藤 泰志
私は、今回の15周年という節目に、特別な思いを持って臨もうとしています。
議論の力で閉塞した日本の状況を変えようとの思いから、私は、2001年に言論NPOを立ち上げました。当時、私は、日本が将来の課題解決に向けて全く動いていないこと、国際社会の中で日本が存在を失っていくという状況を変えるためには、日本の中に課題に挑む新しい動きをつくらなければいけない、と考えていました。それは、国民や有権者が自立し、自由な社会と日本の発展を有権者一人ひとりが考え、この国の課題に取り組んでいく、まさにリベラルデモクラシーを議論の力で強化する、そのための舞台をつくりたいという強い思いでした。
しかし、ここ数年、世界では、責任ある個人の自由を主体としたリベラルデモクラシーに対する激し挑戦が起こっています。グローバリズムが進展する中で様々な格差が広がり、また、中国やロシアなどの大国がこれまでの秩序に挑み始めています。世界で表面化する様々な課題に真剣に向かい合わなかった多くの先進民主国では、将来の不安や反発から、ポピュリズムの傾向が表れ、多くの知識層や言論が、そうした動きを食い止められず、いわゆる「知識層の無力化」という問題が出てきました。この状況を、私は軽視してはいけないと考えています。同時にそれは、私たち言論NPOが目指してきた「強い民主主義」へのチャレンジであり、私たちの活動の真価が問われる局面にある、と考えます。
これまで調和してきた「グローバル化」「国民・国家」「民主主義」といった3つの要因がぶつかり始めています。この状況を改善するためにも、私は「民主主義」をさらに強いものにする必要があると考えています。様々な課題に多くの人が向かい合い、課題解決の意志を持つ世論によって意思決定がさらに加速される。
そして、何よりも自由で、将来に責任を持つような個人の動きが、これからの民主主義の基盤にならなければいけない。そうした基盤を作り上げることが、不安定化する世界や国内の課題解決に向けた新しい仕組みを作り上げる大きな力になると強く感じているのです。そのためにも、私たちは議論を開始しなければいけない。日本の将来やアジアの平和、経済的な協力発展、グローバリズムに伴う国際秩序の不安定化など、こうした世界的な課題に対して、多くの人たちが議論を行い提案し、国際社会の中で、より強い発言を行っていく。そうした舞台をつくり上げることが、私たちの使命なのです。
言論NPOは、同じ志を共有するネットワークだと、私は考えてきました。だからこそ、多くの人たちが参加し、発言し、課題に対して向かい合う、そうしたプラットフォームをさらに強くする責任が私にはあります。そして、言論NPOを日本のデモクラシーのインフラとして機能させる。それが私の15周年の覚悟なのです。そうした大きな動きをつくらない限り、次世代に繋がるこれからの日本の将来を基盤をつくれないのではないのではないか、と私は今、考えているのです。
私はこの15年間、そうした思いで一度もブレずに、言論NPOの取り組みを行ってきました。しかし、これからの展開は、同じ思いを共有する多くの人たちの力が必要なのです。
今回のパーティーは、そうした次の動きに向けたスタートの場なのです。多くの思いを共有する人たちが集まり、議論し、次に向けての動きを始める、そうしたスタートを切るために、ぜひ皆さんの思いを共有する力を貸してもらいたいし、多くの人たちに参加してほしいと思います。
最後になりますが、今回のパーティー開催にあたり、各分野で活躍する200人近い人たちに発起人になっていただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。
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2016年9月 1日
「第4回日韓未来対話」にあたって
「第4回日韓未来対話」にあたって |
言論NPO代表の工藤泰志です。今、私は韓国・ソウル市内のベルエッセンスホテルにいます。今日から私たちの「第4回日韓未来対話」が始まります。
「過去対話」から本当の意味での「未来対話」へ
私たちはこの対話を、日本と中国の対話「東京―北京フォーラム」と連動させて行ってきました。特に、日本と韓国の間には歴史認識問題や領土問題など様々な問題がありますが、私たちはそういうことも直視しつつ、日韓の未来のために、この地域に平和的な秩序をつくりたいという思いから、この日本と韓国の対話を「日韓未来対話」と名付けたわけです。
しかし残念ながら、この3年間、私たちの対話は未来について議論したいと思いながらも、毎年「過去対話」になってしまっていました。それほど歴史問題や安全保障に対する様々な疑念というものが、日本と韓国双方の間にはあり、それは世論調査でも浮き彫りとなっていましたし、対話本番でもそういう形での議論が多かったわけです。
今回、私たちのこの対話では、私たちは本気で未来を議論しようと考えています。私たちがこの未来を議論しようと本気で決断した背景には、7月に発表した「第4回日韓共同世論調査」の結果があります。私たちが日本と韓国の未来をきちんと議論してこなかったその空白の間、両国で多くの国民がお互いの将来的な発展を確信できていない。そういう実態を招いていると私たちは世論調査結果から判断したからです。
2016年8月31日
今、日韓間で民間の対話がなぜ必要なのか
私たちが行う「日韓未来対話」は4年前に韓国のEAIとの間で合意し始めたもので,今回が4回目となります。日韓の間には様々な民間対話がありますが、私たちの対話や議論は市民に公開され、しかも私たちが共同で毎年実施する世論調査に基づき、両国の国民間の意識や相互理解の動向を判断して行われます。私たちが、公開された対話や国民間の意識の動向にこだわるのは、多くの市民が当事者として自らその改善に取り組まない限り、日韓両国の未来は描けないと考えるからです。
今年7月20日に言論NPOとEAIが共同で発表した日韓世論調査では、2013年の調査開始以来、3年連続で悪化していた両国民間の相手国に対する国民感情に歯止めがかかり、改善に向かい始めました。ただ、台頭する中国に対する見方や安全保障に対して、両国民に異なる見方があり、不安定な北東アジアの環境下で、今後の日韓関係がどのように発展していくのか、多くの国民が確信を持てないでいることも今回の調査ははっきりと浮き彫りにしました。
両国関係には歴史の深い問題がありますが、それと同時に私たちは未来に向かうための議論を始めなくてはなりません。2国間の将来に国民間が確信を持てないのは、民主主義や自由主義の共通の基盤を持ちながらも、どのような両国関係を今後構築していくべきなのか、日韓両国が北東アジアの平和や未来にどのような協力関係を構築していくことができるのか、それに関する本格的な議論が存在していないからです。こうした議論の空白を埋めながら、両国関係の将来や、アジアの平和的な未来へ向かう道筋を共に描くための議論を開始する、それが、今年の「日韓未来対話」に問われている役割だと、私は考えています。
2016年6月22日
【参院選公示を迎えて】有権者が日本を変えるための重要な一歩に
本日、来月10日の参議院選挙に向けて、18日間の選挙戦が始まりました。
私は、今回の参議院選挙は「日本の将来」を考える重大な選挙だと考えています。
今、日本は様々な課題に直面し、その解決は待ったなしの状況です。しかし、多くの国民が日本の将来に対して不安を抱えているにもかかわらず、日本の政治は真剣に向かい合わず、課題解決に向けた競争が始まっていません。私にはこうした政治をこのまま認めてしまっていいのか、という強い思いがあります。
こうした考えから我々言論NPOは、今回の選挙が日本の将来を考える上で、重要な一歩だと考えており、様々な議論を公開しています。既に、私たちは今回の選挙の争点を明らかにするため、6月14日から経済、財政、少子高齢化・人口減少など6つの政策分野での議論を順次公開してきました。
この議論には各分野の専門家20氏が参加し、300人を超える有識者がアンケートに回答してくれました。そして、この議論で浮かび上がった争点について、先週から自民党、公明党、民進党、共産党の主要4党の政策責任者に事務所に来ていただき、言論NPOの政策評価委員のメンバーなどと突っ込んだ議論を行っています。このやり取りは、来週27日までに全て公開する予定です。
また、現在、2回目の有識者アンケートを行っています。それは、今回の選挙で政治が国民に示さなければいけない課題を明らかにしたいと考えているからです。これらを踏まえて、各党のマニフェスト評価を近々公表する予定です。
私たちがこうした作業を行っているのは、課題解決のサイクルを日本の政治に作り出すためです。そして、政治と有権者の間に緊張感ある関係を作り出すことが、強い民主主義を実現することにつながると考えるからです。そのためにも、私たち有権者自身が知見武装して強くならなければ、その実現は不可能なのです。
私は、1カ月前にワシントン、ニューヨークを訪問し、世界の課題や民主主義の問題について議論を行い帰ってきました。世界もまた、民主主義の試練に直面しており、ポピュリズムの傾向に政治が迎合する現実への危機感を抱いていました。
強い民主主義とは課題から逃げないことであり、だからこそ、私たちは今回の参議院選挙を、日本の将来と民主主義を真剣に考える舞台にしなければいけないと考えているのです。
そういう思いから、本日(6月22日付)の毎日新聞のオピニオン面で「反迎合主義へ知恵結集を」と題して寄稿しました。
こちらも合わせてご一読いただければと思います。
▼【毎日新聞】反迎合主義へ知恵結集を
http://www.genron-npo.net/media/2016/06/_test_20160622-13.html
2016年6月14日
政治が「日本の将来」をどう語るのか、有権者はまず見極めよう
私が今、最も気になっていることは、私たちの共有の財産である民主主義というものが世界各地で試練に直面していることである。
政治が国民の不満や不安に真剣に向かい合って課題を解決していくというよりは、その不安に乗じて支持を集める。逆に、国民の方も政治家の根拠がないけれど勇ましい声に期待してしまう。そうした現象がアメリカ大統領選だけではなく、難民で揺れるヨーロッパも含めて世界の至るところで起こっている。まさにポピュリズム政治であり、そうした現象にジャーナリズムやシンクタンクなどの知識層が対応できなくなっている。
しかし、すでに多くの人も理解していると思うが、こうした現象は多くの国民が持つ不満や不安を解決するどころか、結果としてより多くの決定的な困難を招いてしまうことが多い。私たちは今、そうした岐路に立たされているのではないかと思うのである。
なぜ、世界が「民主主義の試練」に直面しているのか
私は先月、ニューヨークやワシントンを訪問して約10日間、アメリカのジャーナリストや専門家らと毎日のようにこの現象を議論した。今数えてみると私が議論した有識者は40氏を超えている。その時に痛感したのは、多くの人が民主政治の今に危機感を抱いていたことだ。ある著名な米国のジャーナリストが、米国にも言論NPO的なものが必要だと、別にお世辞ではなく真面目に言っていた。彼がそうとしか言いようがなかったのは、ポピュリズムにジャーナリズムの無力を感じていたからだと思う。彼は、ジャーナリストだけではなく多くの知識層も力を合わせるべき局面だと私に言った。
なぜ、多くの人は、政策として正当性のないものでも勇ましい声を好むのか。その背景には、今の状況を作り出したものへの強い不信があるように私には思える。
より率直に言えば、テロも難民も、そして行き過ぎた貧富の格差も、市場のリスクをここまで高めた過度に金融に依存した経済対策や規制も、その問題がここまで悪化する前にどうして対応ができなかったのかである。中途半端な米国の世界対応や合意できないグローバルガバナンスもある。でも、答えは単純である。自分には関係ない話だと多くの人が思ったのである。いわば、ただ乗りできると考えた。
課題に向かい合わなかった民主政治ほど弱いものはない。それが既成の政治家や今ある制度への不信につながっている。しかし、課題が明らかになった以上、その解決に力を合わせるしかない。それが、米国で議論した多くの人の思いだった。
強い民主主義とは課題から逃げないことだ、と私は思っている。では、私たちはそのための努力をしているのか。それこそが、いま問われている。
帰国後、チリの元蔵相が民主主義のための世界の知識層が手を繋ごう、と呼び掛けていることも知ったが、私はむしろこの呼びかけは日本の多くの人に伝える局面だと考えている。将来に強い不安を感じているのは私たちの国、日本も同じだからである。
参議院選の争点は「日本の将来」にどう向かい合うかである
私たち言論NPOが、目前の参議院選挙の争点を、「日本の将来」と提起するのは、この国の将来への切迫した課題が明らかなのに、今なお政治の間で課題の解決に向かう、競争が存在しないからだ。私には、そうした政治をこれ以上、有権者は認めていていいのかという強い思いがある。
人口減少や高齢化が急ピッチで進み、財政赤字も世界が経験したことがない水準に膨れ上がり、それを日銀が支える構造だが、その出口が見えない。最近、私が国際会議に出ると「日本の財政は大丈夫か。破綻するのではないか」と真剣な懸念を寄せられることもある。しかし、日本に帰ってくると、そんな世界の心配が的外れのような、不思議な感覚になる。もうマヒしているように危機感が薄れている。
今年初め、私たちが米国で実施したジャーナリストへの緊急のアンケートでは、日本の課題で最も気になっていることについて、「急速に進む人口減少と高齢化」という回答が最も多く、そのコメントに「日本の対応が失敗するのではないか」と書き込んだ記者がいた。
高齢化の進展に行政に対応が間に合わず、このままでいけば、東京圏では老人の孤独死や徘徊など間違いなく多くの問題が表面化すると専門家は指摘する。にもかかわらず、政治は逆に曖昧にして課題を先送りにしている。選挙の政党の公約には、日本の将来がどうなるのかが説明されず、評価可能なプランが打ち出されない。政治は将来の課題を真剣に説明しないにもかかわらず、増税の先送りでは足並みを揃える。
こうした状況が許されるのは、有権者が怖い存在になっていないからだ。
6月初めに公表した言論NPOの有識者アンケートでは、6割の専門家が日本の将来を悲観視していたが、7割近くが、その理由を「急速に進む少子高齢化に有効な対策が提示されていない」と回答し、続けて5割が「日本の言論の力が後退しているから」と回答し、「有権者が政治に課題解決を迫っていないから」も4割を超えている。
これは一体、何を意味しているのか。政治に対する有権者の対抗力が弱まり、日本の将来に対して政治を変える力を失っていることへの警告である。
私たちが今回の選挙で、有権者に「日本の政治にこの国の将来を問おう」と呼び掛けることにしたのは、日本の将来に向けて課題解決の流れを作り出したいからである。
まずは政治家の発言を見定めるところから始めよう
では、有権者は今回の選挙にどう向かい合うべきなのか。私が提案するのは、将来に向けて政治家は何を言っているのか、それは納得できるものなのか、それをじっくり見定めることである。有権者はこの参院選という選挙のチャンスを使って、「日本の将来を託せない政治家は国政の舞台には送らない」という緊張感をつくるしかない。
言論NPOは、この選挙の期間中、政党のマニフェストの評価や、日本の将来課題での議論を数多く公開して、有権者が考えるための材料を提供する。
今回の参院選をきっかけとして日本の民主主義の日本の将来に向けた動きを作り出したい。それが、私たちの強い思いなのである。
2016年2月12日
私たち自身が当事者となり、世界の課題に立ち向かう
―ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)発足にあたってー
世界の課題を議論する舞台を、日本に創出したい
言論NPOは2月10日、有識者会議「ワールド・アジェンダ・カウンシル(WAC)」を発足させました。これは、私たちが1年前から準備していたものです。
国際社会では、今、様々な問題が出てきています。そうした問題に関して、日本はもっといろいろな議論を興していいのではないか、と思っています。私が国際会議に出て感じるのは、日本の社会の中に、世界の課題を議論する言論空間が非常に限られていることです。また、それを担う人材も少なく、世界に対して議論を発信する力も弱い。
私は、この流れを変えたいと思いました。そして、私たちは、日本の将来と世界の課題をつなげて、世界の課題を議論し合うようなカウンシル、協議会をつくろうと考え、計画してきました。今日2月10日、そのカウンシルが発足しました。私たちはこれから、このカウンシルを軸にして、日本が今直面している、また、私たちが考えなければいけない世界課題の議論に着手することとなります。
岐路に立っている世界の平和や課題を、私たちも考えるべき
私たちが、まず議論を始めたいのは、世界の平和のことです。特にこの数年、私が気になっているのが、国際秩序が不安定化していることです。欧米を軸としたこれまでの秩序に中国など新興国などからの様々なチャレンジがある、ということだけではありません。脆弱国家に代表されるように、国と統治、つまりガバナンスが不安定化し、それが周辺を巻き込んで深刻な影響を与え始めています。中東での国内紛争では、和平の動きが始まったとはいえ、難民が大量に発生し、国家が破綻している状況です。様々な紛争解決で国連安保理の大国が合意できず、むしろ、大国の中で現状の変更に乗り出す動きも存在しています。世界は今、非常に大きな曲がり角に来ているのです。
国際政治の軸はアジア太平洋にシフトしていますが、経済的な大きな可能性とは裏腹に、この地域には不安定な勢力均衡が有り、共通の価値観や利益がなかなか共有されないままに様々な対立が存在しています。こうした環境の中で、世界やアジアの平和や様々な課題解決にどう取り組めばいいのか。日本の私たちも、この点を考えるべき局面だと思うのです。
日本でのG7と中国でのG20を機に、世界への議論発信に着手する
そして、2016年、この年明けから私たちは深刻な危機に遭遇しています。中国の経済が
非常に厳しい状況となり、世界のリスクを高めています。経済の不安は国際政治に存在する様々な不安定性と連動して、それをさらに悪化させかねないのです。世界は、現状の様々は枠組みを総動員してこれに対応する局面なのです。
日本では、5月末にG7(先進国首脳会議)が行われ、また、日中韓首脳会議もいずれかの時期に日本で開催されます。一方、中国ではG20首脳会議が行われます。つまり、世界の課題を考えるプラットフォームが、くしくもこの日本と中国に形成されるわけです。私たちは、このチャンスを利用して、今ある課題をきちんと考え、世界にその議論を発信する作業に入らなければいけないと思っています。
東京から世界へ、解決策を提案する仕組みづくりを目指す
私たちは、WACでの議論を土台として、来年3月に「東京会議」を東京に発足させるための準備に入っています。この「東京会議」は、世界の主要なシンクタンクとも連携しながら、東京発で世界の課題を議論し、その解決策を提案していく場になります。このように、世界に対して東京から様々なメッセージを出していく仕組みをつくることが、これから始まる議論の次にある、私たちの目標です。
多くの国民が、世界の問題を当事者として考える舞台を生み出したい
これから1年間の議論を通じて、多くの国民が世界の問題を身近なこととして捉え、その解決策を当事者として考えるような舞台をどんどんつくっていきたいと思っています。私たちの取り組みに、ぜひ注目していただきたいと思います。
3月27日には、「東京会議」のプレ企画として、地球規模課題対話「ワールド・アジェンダ2016」を東京で開催します。その詳細については、皆様にも追ってご案内させていただきますので、お時間が許せば、ぜひ参加していただけますと幸いです。
2015年12月31日
2016年は課題解決に向けて勝負をかける1年に ~設立から15回目の正月に語る決意~
2016年は課題解決に向けて勝負をかける1年に |
田中 工藤さん、あけましておめでとうございます。
工藤 あけましておめでとうございます。
田中 2016年になりましたが、何と言論NPOにとっては、15回目の正月になりますね。
工藤 おかげさまで、15回目の正月です。私も「びっくりポン」です。
様々な課題に挑戦してきたが、新しい年こそ勝負
私たちは、日本に強い民主主義を機能させるためには、個人が自立して課題に挑んでいく、そして、課題に挑む言論の舞台が日本に必要だと思いました。そういったことが日本のメディアには足りないのではないかと、2001年に言論NPOを立ち上げました。当初は、こんなに長く続くということは想定していませんでしたが、「継続は力なり」で、この15年間、いろいろなことに挑戦してきました。
2015年10月23日
「不戦の誓い」はいよいよ実践段階に
~「東京-北京フォーラム」開幕直前、フォーラムにかける決意~
言論NPO代表の工藤泰志です。今、私は北京にいます。3日前に北京に入りまして、昨日は「第11回日中共同世論調査」結果発表の記者会見を行いました。今朝の新聞各紙ではこの結果が掲載されています。そして、今日はこれから約50人の日本のパネリストの皆さんが北京に到着するのでそれを待っているところです。
北東アジアに平和な環境をつくり出すための第一歩を踏み出す
2015年10月13日
「北東アジアの平和環境」づくりに民間レベルで動き出す ~10月、一つの大きな山場を迎える「言論外交」の取り組み~
「国家」という枠組みが問われる中、国際的な新しい秩序をどう作っていくか |
言論NPOは10月、「言論外交」の新しいチャレンジを始めます。
まず、10月19日(月)、アメリカのシンクタンクとのトップとの間で対話を行い、翌日20日には、日本、中国、韓国、アメリカの4ヵ国シンクタンクのトップと議論を行います。そして、その3日後、私たちは北京で「第11回東京-北京フォーラム」を開催します。
2015年9月 7日
小林陽太郎氏のご逝去の報に接して
小林陽太郎さんの訃報を先ほど耳にし、信じられない思いです。
闘病されていたことは知っていたのですが、私にとってはあまりにも大事な恩人で有り、心に整理が付いていません。
私は14年前に言論NPOを設立しましたが、小林さんがいなければここまで活動を続けることは不可能だったと、思います。私と言論NPOにとって、小林さんはまさに創設者であり恩人だったのです。
14年前の出会いの日のことは今でもよく覚えています。
会社を辞めて非営利で言論を行うことの覚悟を固めていた私に、ある知人が小林さんをご紹介してくれたのです。
初めての面会は、とても緊張感あるものでした。支援をお願いする私の説明にも容赦がありませんでした。「言論の役割とは何か」「クオリティのある言論とはどのようなものか」。小林さんからの畳みかけるような質問に対し、私は十分に答えられず、激しい議論の応答になりました。
ふと、これは難しいな、と自分を情けなく思いかけたその瞬間に、小林さんは笑顔でこう語りかけてくれたのです。
「私も言論NPOの仲間に入れてくれないか」。予期しない言葉でした。今だから言えますが、涙が止まりませんでした。
私の言論NPOの挑戦は、まさにそのときに始まったのです。
「日本の言論をさらに活発にし、日本が未来のために動き出す環境を作りたい」という志のもとで活動を始めた私にとって、小林さんは最大の理解者でした。
設立当初、私は資金がなく、紙袋を手に喫茶店を転々としながら活動の準備をしていました。そんな私を見て、小林さんは「そんなことで日本を変えられるか」と、無償で事務所を3年間貸してくださいました。
小林さんは当時、経済同友会の代表幹事をしていましたが、私が、言論という非常に難しい分野で非営利の動きを開始したことを、自分のことのように喜んでくださいました。
そして、アドバイザリーボードの一員として、言論NPOの活動を直接支えていただきました。
2005年、日中関係が困難な局面に陥った時、私は中国との民間対話に乗り出しました。
当時、小林さんは、政府が主導した有識者の対話である新日中21世紀友好委員会の日本側座長を務めていました。しかし、小林さんは多忙にもかかわらず、私たちの対話の日本側の実行委員長にも就任してくださいました。
小林さんの国際舞台での発言は、毎回、原稿もなくほとんどアドリブでしたが、きわめて論理的、かつ国際的な視座に基づいたもので、私にとっては生きた教材となるものでした。
彼のような、まさに代表的な国際人が日本の社会に存在し、しかも私たちの活動を中核となって支えてくださったことに、私は誇りを持つと同時に、光栄な気持ちで一杯でした。
残念ながら、その後、日本の国際的な発言力は低下し、世界の中ではジャパン・パッシングとまで言われるようになり、国際的な論壇で活躍する人も限られるようになりました。
そんな折でも小林さんは国際人として世界を回っていました。そして、多くの国際的な事業に取り組んでいました。
4年前、米国の外交問題評議会が設立した世界23カ国のトップシンクタンクの会議(COC)に私が日本側から唯一選出されたときには、「言論NPOの活動は苦しかったが、それが世界に評価されたことは誇りに思っていい」と、小林さんは自分のことのように喜んでくださいました。
その後も小林さんには、時間を見つけては報告に伺いました。
体調が悪くなり、かなり痩せられても、小林さんはいつも笑顔で私の話に真剣に耳を傾け、アドバイスしてくれました。
最後に小林さんの意見を伺ったのは昨年2月18日の言論NPOのアドバイザリーボードの会議の時でした。私が進める「民間外交」が外交に果たす役割を話し合ったときのことです。
私は、「民間外交は政府を補完してはいるが、外交はあくまで政府が行うものだと考えている」と、いくぶん自嘲気味に話しました。そのとき、小林さんは間髪入れず、「本当にそうなのだろうか」と疑問を呈してきました。
「民間外交は、ある局面では政府ができないことを実現し、政府より先んじて課題解決に取り組み、世論を喚起する役割がある、そういう思いで、工藤さんは取り組んでいるはずだ」。
気兼ねして腰が据わっていない、私の曖昧さを見透かされた、思いでした。小林さんの意見はつねに論理的で本質的な論点を突いてきます。私も小林さんの前にいるときは、いつも真剣でした。
小林さんは当時も体調が悪かったのですが、会議に出るとそれを微塵も見せず、絶えず本気でした。視野も広く、優しく、スケールの大きいリーダーでした。
そういう小林さんがいたからこそ、私は様々な挑戦に取り組めたのだと思います。
今年、言論NPOは設立14年を迎えました。「日本の民主主義を立て直す」、そして「国際社会に日本の主張を発信する」という、私たちが初期に問うた二つの大きなミッションに、新しい挑戦を始めています。
もちろん、私たちはまだまだ力不足ですが、つい最近、ようやく本格的な勝負をかける体制が整いました。先月にかけ、新しい「4つの言論」に取り組む準備を始め、ウェブサイトを刷新し、新しいスタジオを開設したばかりです。
今月29日には、その新しいスタジオで初めてのアドバイザリーボード会議が開かれます。
小林さんにも来てほしいと連絡を取ってきましたが、返信はなく今日の訃報となりました。新しい舞台を見せられなかったことが唯一の心残りですが、小林さんはきっと「ここまでよく来たな」と言ってくださる、と思います。
小林さんは、私たちにとってなくてはならない恩師でした。これから私は、彼に教わったことを財産とし、言論NPOが小林さんと共に議論し、掲げたミッションを達成するため、平和なアジアと国際社会での課題解決、この国の未来に向けて、退路を断って取り組んでいきます。
最後になりましたが、小林さんのご冥福を心よりお祈り申し上げ、追悼の言葉とさせていただきます。
2015年6月21日
日韓未来対話が、北東アジアにおける平和的な環境をつくるための第一歩
工藤:言論NPO代表の工藤泰志です。今、私はホテルオークラ東京にいます。
私たちは明日6月21日、「第3回日韓未来対話」という民間の対話を開催します。その翌日の22日は、日韓国交正常化50周年に当たります。日韓間の国民感情が非常に厳しい状況にある中、その記念すべき日の前日に、私たちはまさに民間レベルで、両国が抱える今の課題に真正面からぶつかりながら、両国の未来について議論しようと考えているわけです。
多くの両国民が、「なぜ日韓関係が重要なのか」という答えを見失っている
現在、両国政府は、「首脳会談再開」をベースとして外交交渉を行っています。私が、外務省の幹部の方から話を聞いたところによると、今日の段階ではまだまだ非常に厳しい議論が行われている状況である、ということでした。ただ、それでも明日、日韓外相会談が行われます。そうした状況の中で、私たちは民間レベルでの対話を行うわけです。
私たちが今回の対話でやるべきこと、それは「未来」を語ることです。なぜ、未来を語らなければならないのか。なぜなら、日韓両国がどのような自国の将来像を描いているのか、そして、そうした将来像を目指す展開の中で、日韓関係がなぜ重要になるのか、ということに対する答えを、多くの両国民が見失っている。私たちはそんな気がしているからです。
「過去」だけでなく、「未来」について語り合うことが今、求められている
私たちが先日発表した「第3回日韓共同世論調査」の中でも、そうした傾向が見えていました。両国の中で、相手国に対する国民感情が非常に厳しい中、この状況を何とか改善したい、という声が8割近くありました。しかし、改善したいという気持ちが強い一方で、お互いの相手国に対する認識は非常に厳しいものがあります。日本の中には、「韓国は民主主義の国ではないのではないか」という声が強まり、韓国の中では、「日本は軍国主義の国である」との見方や、「両国の間で軍事衝突が起こるのではないか」という声も増えています。
こうした議論が出てくる背景には、もちろん、歴史認識という「過去」をめぐる問題もあるのですが、一方で「未来」に関する対話をしてこなかった、ということも一因としてあります。将来、自分たちの国をどうしたいと考えているのか、そして、その展開の中で日韓関係はどういう役割を果たすのか、ということに関して、私たちはこれまで語り合ってこなかった。それで、日韓関係の今日的な意味について、私たちは明確な答えを見失っているわけです。
国民レベルでの議論や、課題解決に向けた機運の高まりが不可欠
明日、私たちの対話は、13時30分から国連大学で行われます。その議論の全ては、インターネットで中継されることになっています。私たちが議論を中継するその理由は、多くの両国民に、現在私たちが抱えている日韓関係の課題に対して真剣に向かい合ってほしい、そして、そうした議論や課題解決に向けた動きが高まっていくことで、両国の関係改善、さらには、アジアの未来に向けての大きな展開が始まる、と思っているからです。
今日、韓国から14人、日本側から15人、今回の対話に参加する有識者を招き、先程まで前夜祭となる晩餐会を行っていました。そこでも白熱した議論が行われました。その中で、両国民の中に、相手国に対する危険な認識の食い違いが広まっている、という大きな問題が指摘されました。そして、過去の問題に対しても真剣に向き合うが、それだけではなく未来のこともきちんと考えなければならないのではないか、という声が日韓双方から出てきました。明日、まさに本番の議論が始まります。是非、皆さんにこの議論を見ていただきたいと思います。そして、私たちは、その議論を通じて、得られた結論や、課題解決に向けたひとつの方向性について、また皆さんにご報告したいと考えています。
日韓未来対話が、北東アジアにおける平和的な環境をつくるための第一歩
私たちは、今年の1月から、北東アジアにおいて、「平和と民主主義」をどう具体化するか、ということに関する議論を進めてきました。特に、今回の韓国との対話、そして10月には中国と対話を行いますが、その中で考えているのは、「北東アジアにいかにして平和的な環境をつくり出すか」ということです。明日行われる日韓未来対話は、その重要な第一歩でもあります。ぜひ、多くの方にご覧いただければと思っています。
ということで、ホテルオークラ東京から、工藤が前日報告をさせていただきました。
2015年5月16日
アメリカで多くの賛同を得た2つの取り組みを加速させる ~多くの手応えを感じた6日間のワシントン訪問を振り返って~
世界のパラダイムシフトが起きる中、政府ではない主体による課題解決に取り組む動きが世界各国で始まった |
工藤:言論NPOの工藤です。これから東京に戻ります。
安全保障のみならず、多様な分野で議論できる関係づくりが重要に
今回の6日間のワシントン訪問で、ブルッキングス研究所や外交問題評議会など、かなり大きなシンクタンクの代表層だけではなくて、世界のシンクタンクなど、多くの人たちと会談し、議論しました。また、アメリカ政府や議会の人たち、様々な大学の先生たちとも意見交換を行いました。
2015年5月13日
世界のパラダイムシフトが起きる中、政府ではない主体による課題解決に取り組む動きが世界各国で始まった ~シンクタンク会議(CoC)を終えて~
世界のパラダイムシフトが起きる中、政府ではない主体による課題解決に取り組む動きが世界各国で始まった |
工藤:言論NPOの工藤泰志です。今、アメリカの外交問題評議会CFRの本部前にいます。今日まで2日間、CoCの会議に世界25カ国のシンクタンクが集まり会議を行いました。
2015年5月11日
「国家」という枠組みが問われる中、国際的な新しい秩序をどう作っていくか ~世界のシンクタンク会議を前に、ワシントンからの報告~
「国家」という枠組みが問われる中、国際的な新しい秩序をどう作っていくか |
工藤:言論NPOの工藤です。今、ワシントンにきています。
今日はこれから、アメリカの外交問題評議会(CFR)が主催した世界のシンクタンク会議(CoC)に参加します。私たちがワシントンを訪れるのは、今回で4回目になります。私は、日本も世界の地球規模的な課題に関して発言していくことが、非常に重要だと感じています。
2015年4月15日
「未来の目指すべき共通項」から、 日中両国間の対立や疑念を埋めるきっかけづくりを ~「第11回 東京-北京フォーラム」の事前協議を振り返って~
「未来の目指すべき共通項」から、 日中両国間の対立や疑念を埋めるきっかけづくりを |
工藤:言論NPOの工藤です。今、羽田空港に着きました。
4月11日から15日まで「東京-北京フォーラム」実行委員長の明石康さん(元国連事務次長)、同フォーラム副実行委員長の宮本雄二さん(元駐中国大使)、山口廣秀さん(元日銀副総裁)、そして私の4人で北京を訪れ、今年の「第11回 東京-北京フォーラム」の事前協議を行い、その他にも中国側の政府関係者とも会談を行ってきました。
2015年3月21日
「平和」と「民主主義」を考える新しいドラマのスタートに ~2日間にわたる議論から見えてきたもの~
田中弥生(言論NPO理事):工藤さん、お疲れさまでした。3月20日、21日の2日間にわたり「戦後70年、東アジアの平和と民主主義を考える」というシンポジウムを開催されましたが、終わってみての感想をお聞かせください。
今回のシンポジウムがスタートに
工藤:かなり成功したというか、スタートを切れたという感じです。私たちが掲げた「平和」と「民主主義」という価値が、今年の日本の社会にとって、みんなが考えなければいけないテーマだと感じていました。戦後70年という節目の年に、日本のあり方、つまり、民主主義のあり方や平和のあり方を本気で考えないといけないというのは、逆に言えば、そういう試練を日本が受けているということだと思います。
2015年3月19日
北東アジアの平和構築とアジアの民主主義の強化のためのスタートに ~2日間にわたる対話にかける思いとは~
言論NPOの工藤です。3月20日(金)、21日(土)の2日間にわたって言論NPOは「戦後70年、東アジアの『平和』と『民主主義』を考える」と題した国際シンポジウムを開催します。
2015年2月14日
未来志向の対話に向けてのヒントが得られた旅~ドイツからの報告
未来志向の対話に向けてのヒントが得られた旅 |
私は今、ベルリンの空港にいて、これから東京に戻るところです。この1か月あまり、私たちはインド、インドネシア、北京、ドイツを訪れました。この旅の目的は、戦後70年そして日韓国交正常化50年を迎える今年に、民間同士の対話を通じてどのような新しいメッセージを世界に発信するのかについて、たくさんの人たちと議論をし、糸口を探ることでした。初めて訪れるドイツでは、ナチス主導による戦争やベルリンの壁崩壊の経験を持つこの国が、歴史に対して真剣に向き合い続けていることを痛感しました。この歴史の反省の下に、ドイツの新しい国づくり、世界に対する姿勢、そしてデモクラシーに対するこだわりがあることを痛感しました。
2015年2月 9日
過去を踏まえながら、新しい時代をつくり出していく覚悟を ~ドイツからの報告~
過去を踏まえながら、新しい時代をつくり出していく覚悟を |
言論NPOの工藤です。今、ドイツの国会議事堂の前にいます。
昨日、ベルリンに来たのですが、今日は朝から、ベルリンの壁やホロコーストの記念碑などを訪れてきました。歩きながら感じたことは、このドイツという国が、きちんと歴史に向かい合い、デモクラシーや平和ということについても考えているということでした。こうしたことは、私が1月にインドネシアやインドなど、いろいろな国を周ってきましたが、やはり共通した思いです。
2015年1月30日
戦後70年という節目の年にどのようなメッセージを出せるのか
~「東京-北京フォーラム」の準備が本格化~
戦後70年という節目の年にどのようなメッセージを出せるのか |
言論NPOの工藤です。年が明けてから、インドネシアとインドから帰国後、今、北京に来ています。
本格的に始動した今年の「東京-北京フォーラム」に向けた準備
戦後70年、この間、日本がどのような国をめざしてきたのか。私は平和、そして安定的な社会のために日本がアジアの中で貢献できるのか、ということに関心があるのですが、中国との対話の準備のために北京に来ています。
2015年1月15日
デモクラシーを機能させ、平和構築に向けた動きをつくりだす年に ~インドネシア、インド訪問を振り返って~
デモクラシーを機能させ、平和構築に向けた動きをつくりだす年に |
工藤:今、ガンジーのお墓の前にいます。墓といっても火葬された場所で、遺骨は全国の河に流れたそうで、記念館のある場所にいます。私たちは今回、インドネシアとインドを訪れ、デモクラシーの問題に関する対話を民間レベルでできないか、ということで、昨日まで多くの人に会いました。
インドで驚いたことは、民主主義をボトムアップでつくろうとする意識
2015年1月10日
「民主主義を機能させる」という問題意識を共有できたインドネシア訪問 ~インドネシア訪問を振り返って~
「民主主義を機能させる」という問題意識を共有できたインドネシア訪問 |
言論NPOの工藤です。今、ジャカルタの国際空港に来ていて、これからインドに向かいます。
2日間のインドネシア滞在で、インドネシアの元外務大臣やバリ国際フォーラムの関係者、主要メディアの編集長、政府関係者、CSISのディレクターなど、いろいろな人たちと意見交換を行いました。そうした会合を経て驚いたことは、インドネシアの人たちがデモクラシーという問題にかなりこだわっていて、それを深化させ、発展させることに非常に関心を持っていたということでした。
2015年1月 9日
日本の将来にとって岐路となる2015年
~言論NPOの課題解決に向けた取り組み~
日本の将来にとって岐路となる2015年 |
言論NPOの工藤です。改めまして新年、あけましておめでとうございます。
さて、私は今、インドネシアのジャカルタにいますが、27℃と非常に熱い日が続いています。2015年、言論NPOの取り組みの第一声はジャカルタからお送りします。
インドネシア訪問の目的とは
2015年1月 1日
2015年、課題解決に向けた大きな流れをつくらないといけない
2015年、課題解決に向けた大きな流れをつくらないといけない 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:あけましておめでとうございます。いよいよ2015年を迎えましたが、いかがでしょうか。
新しい流れをつくる決定的な年
工藤:今年はやはり、これからの日本や世界の将来を決める決定的な年になると思っています。毎年そういっているので、「またか」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、新しい流れを始めないと未来が見えない局面に来たなと思っています。そろそろ有権者、市民がそういう状況を自覚して、色んな形で考えたり、発言したり、という状況に変えていかないといけない年になると思います。
2014年12月19日
衆院選後の4年間、有権者は政治にどう向き合えばいいのか
~2014年衆議院選挙の総括~
衆院選後の4年間、有権者は政治にどう向き合えばいいのか 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、こんにちは。先週、衆議院選挙が終わりました。今回の選挙結果を受けて、工藤さんのご意見を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
今回の選挙で合理的な判断をした有権者
工藤:有権者は合理的な判断をしたと思いました。経済学で「価格は誰が決めるのか、それは神の手だ」と言われます。今の政治状況では、野党に政権担当能力がないわけですから、結果として今の自公政権の継続を認めざるを得ないだろう、しかし、大勝させることは不安だ。そうした有権者の思いもあり、自民党は大勝せず、反対勢力の共産党の議席が増えるという結果でした。
今回の局面では、有権者はこうした結果を消極的に判断せざるを得なかった。それぐらい、日本のデモクラシーが追いつめられているわけです。こうした現状をふまえつつ、次をどうしていくのか、私たちも含めて準備しなければいけないというのが私の感想です。
2014年12月 1日
有権者が選挙の意味を考え直す機会に
~安倍政権2年の通信簿~
有権者が選挙の意味を考え直す機会に 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:こんにちは。いよいよ衆議院解散と選挙です。評価をしたということで、今日はお伺いしたいと思います。まず、今回の選挙の意味をどうお考えでしょうか。
日本の将来を考える上で、非常に重要な今回の選挙
工藤:私が考える理想の選挙というのは、国論が2分されるような大きなテーマで、政治がその実現の信を問うという選挙です。有権者としてもきちんと考えないといけないと緊張感も増します。今の日本は実はそういう局面にあるにも関わらず、今回の選挙では何の信を問うているのか、とてもわかりにくくなっています。消費増税は税と社会保障の一体改革で、既に自民と、公明、民主の3党合意で決まっているわけです。それを踏まえて、選挙も行われたわけです。つまりすでに信は得ているのです。あとはタイミングの問題でした。タイミングについては政権に判断をゆだねるということを、実質的に国民は了解していました。そこは実質的に国論を2分にするような争点にはなりません。
2014年8月20日
課題解決に挑む市民の新しい変化を「見える化」する
―「第3回エクセレントNPO大賞」応募開始
課題解決に挑む市民の新しい変化を「見える化」する 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
8月21日より「エクセレントNPO大賞」の募集が始まります
田中: 今回はエクセレントNPO大賞について、工藤さんにお話を伺いたいと思います。いよいよ応募が始まるそうですが、詳細を教えていただけますか。
工藤:今年で3回目となる「エクセレントNPO大賞」を8月21日から応募受付を始めます。市民賞、課題解決力賞、組織力賞の3つの賞で競っていただき、その中から今年のエクセレントNPO大賞を決めます。1回目はエクセレントNPO大賞が出ませんでしたが、昨年の2回目で初めてエクセレントNPO大賞の受賞団体が選出されました。
いま日本の市民社会では、様々な市民の方だったり、非営利組織が活躍されていますので、ぜひエクセレントNPO大賞を目指して欲しいと思っています。
2014年7月19日
北東アジアの変化と民間外交の役割-第2回日韓未来対話報告
言論NPO代表の工藤です。いま「第2回日韓未来対話」が終わりました。あっという間に終わったという感じです。今回の対話で、去年始まった対話がようやくスタートラインに立ったという感じがします。多くの日本と韓国の人たちが、いまの日韓問題を解決するためにみんなで話し合いました。しかも、その話を200人くらいの市民が周りで聞いている、そして、市民の質問にも答える。私たちが目指した日韓の間でのオープンな対話、それがようやく一つの大きな軌道に乗り始めた手ごたえを感じました。
市民レベルの歩みがようやく始まった今回の対話
今回の対話で私は、日韓の大きな転機となる新しい変化をどうしても作りたかった。対話の前に行った世論調査では、これまでと違う傾向が出ていました。国民間の感情は依然厳しいものがあるが、お互いを冷静に見て、この状況を解決すべき、という声も出ています。私には、多くの国民が政府間の対立を相対化して距離を置いて見ているように思いました。
その中で私は、今の状況を変えようとする、責任ある声をこの対話で発したかった。その点で、今回の対話は昨年とは異なっていました。多くの人が私と同じように感じたと思いますが、感情的な対立はなく、明らかに未来を意識して、この状況を冷静に見直そうとする声が目立ちました。私は司会をしましたが、最後にはほとんどの人が発言を求め、自分の思いを伝え、具体的な提案を競い合っていました。韓国側からは、こんな発言もありました。最近、韓国のメディア報道を契機に、すでに予定されていたロッテホテルでの自衛隊の式典が開けなくなることがあった。国民の人気を得るために、ナショナリスティックな風潮をメディアが利用している。今回の対話でそう批判したのは韓国のメディアでした。また、韓国の経済人から韓国の政治家に、あなたたちは政治家として日韓問題の解決に向けて何の成果を挙げたのか、といった厳しい質問も出ました。これまでの日韓問題は、相手を責めるだけの議論が多かったが、自分を見つめる傾向が出ている。この変化を私たちはしっかりと理解する必要があります。
私は、問われているのは国内の民主主義の問題ではないか、と指摘しました。私たちは先に発表した共同の世論調査と同時に、有識者のアンケートも行いましたが、有識者の見方は、一般の世論と比べてさらに冷静で、激しい声のクッションになるものです。しかし、現在の日韓の問題について、改善に向けて発言する有識者は両国に何人いるのでしょうか。今、北東アジアで聞こえるのはワンボイスです。本来、民主主義の国では多様な声が尊重されるはずです、そうした声がなかなか聞こえてきません。こうした雰囲気は自ら変えなければなりません。
今回の対話では、明らかに本音レベルの勇気ある発言がありました。お互いの対立を何とかして解決する方向はないだろうか。私たちは、当事者として今の日韓問題に向かい合あいました。私たちが公開で対話を行ったのは、こうした声を社会に伝えるためなのです。
北東アジアで平和で安定的な秩序作りに向かう取り組み
私が今回の対話でもう一つ気になったのは、最近の日韓の対立により、両国は多くの利益を失っているという声が多くの参加者から出たということです。中国の台頭と、アメリカの相対的なパワーの低下から、北東アジアでパワーシフトが起こっています。北東アジアは新しい環境変化に直面しているのです。にもかかわらず、日韓は2カ国間問題に目を奪われ、この変化に全く対応ができていません。アジアが大きく変化する中で、日韓がお互いに協力し合っていく。似通っている環境で、共通利益が多いにもかかわらず、その利益を失っている。こんな内向きな対立を続けているだけで良いのだろうかという声です。大きな機会コストが存在するという声であり、経済学でいう機会費用という概念です。
そのような状況の変化が反映される形で、韓国も中国と関係を深めています。実は日本も韓国と共通の立ち位置に立っているのです。ということはお互いの協力には大きな共通利益が存在する、ということです。
私たちはこの変化やアジアの未来に目を向けることが必要です。そのためにも、対立は乗り越えなければならないのです。私たちが考える北東アジアでの民間外交というのは、北東アジアのパワーシフトの中で、新しく平和で安定的な秩序作りに向かう取り組みなのだなと改めて感じました。
「言論外交」が大きな役割を果たせることを実感
対話では、なぜお互いが重要なのか、そして何をすればいいのか、様々な議論がありました。議論が出たというよりも、皆さん競うようにして発言を求めました。お互いを批判するような発言は殆どなかった。それをこの民間の場で実現できた。そういう光景を見て、この対話は次のステージに上がるのではないかと私は思いました。
私は日本に帰ると北京との対話の準備に入ります。日中関係も依然として厳しい状況が続いています。北東アジアの大きな変化の中で、日本がどういうビジョンを持ち実現していくのか、その役割をどう果たしていくのか、そういうことが問われる段階に来ているわけです。残念ながら、日本国内ではそうした議論もまだ本格的に動いている段階ではありません。政府間では、近隣国同士で対話自体ができずにいるからです。だからこそ、私たちは民間の舞台として、政府外交の半歩、一歩先をいくような新しい議論を始めなければならないのです。しかもそういう議論はオープンで国民がお互いに考えるという形を作っていかなければならない。そうすることによって健全なアジアの未来に向けた世論が出来るのだと思います。そうした世論を促す外交、そういったものを私たちは「言論外交」と呼んでいますが、こういった民間の外交というものが一つの大きな役割を果たせる局面に来たのだなということを改めて実感しました。ということで、ソウルから第二回目の「日韓未来対話」について工藤が報告しました。
2014年6月25日
有権者と政治の間に緊張感ある関係を
~東京都議会のヤジ騒動の本質とは何か~
有権者と政治の間に緊張感ある関係を 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、こんばんは。
今回、ぜひ工藤さんのご意見を伺いたいと思っていたことがあります。昨今、都議のセクハラ発言が問題になっています。メディアでも相当取り上げられていますし、犯人探しに躍起になっているようなところもあります。しかし、現状を見ていると、表面的な扱い方、理解でいいのかと迷うところもあり、モヤモヤしていました。
このあたりについて、政治やメディアの評価を行っている言論NPO代表の工藤さんのご意見をぜひ伺いたいと思うのですが、お願いできますか。
問われているのは国民一人ひとりの当事者意識
問われているのは国民一人ひとりの当事者意識 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、お久しぶりです。いよいよ7月18日には2回目の日韓未来対話、9月末には「第10回 東京-北京フォーラム」が開催されますね。これから、言論NPOによる民間外交が大きく進展していくと思いますが、これまでも工藤さんから言論外交、あるいは民間外交の意義についてお話を伺いました。
ただ、昨今の国際情勢を見ていると、ウクライナ、シリア問題を皮切りに、どうも政府をベースにした外交、安全保障のディメンジョンが変わってきているような感じがします。そうすると、工藤さんのおっしゃっている民間外交の意味も変わってくるのではないかと思うのですが、そのあたりをお聞かせいただけますか。
2014年6月23日
「第2回日韓未来対話」に向けた決意
「第2回日韓未来対話」に向けた決意 |
工藤:言論NPOの工藤です。今、ソウルの金浦空港にいます。
今回の訪韓では、7月18日にソウルで開催予定の「第2回日韓未来対話」をどのように行うのか、ということについて韓国側の主催者である東アジア研究院(EAI)と協議をしてきました。我々は、未来対話の前の7月10日に日韓共同世論調査を発表します。今回の調査結果も非常に厳しいものになると思いますが、両国の国民感情や相互理解の状況など、調査結果の背景にはどういう問題があるのか、それを乗り越えるためには何が必要なのか、といったテーマに絞った方がいいのではないかと主張しました。そして、あくまでも私たちの対話は市民の目線を持ち、オープンで公開型の議論を行いたいということを主張し、韓国側と合意しました。
2014年6月20日
アジアでの市民目線の議論の実現に向けて
アジアでの市民目線の議論の実現に向けて |
工藤:言論NPOの工藤です。今、羽田空港にいまして、これからソウルに向かいます。
今日(6月19日)は朝から、9月に予定している「東京-北京フォーラム」の実行委員会を開催し、中国との対話の準備が始まりました。その後、アメリカから安全保障を専門とするシンクタンクの人たちが来日していましたので、今後のことも含めて意見交換を行いました。我々は、アジアの議論を行うためには、アメリカとの対話を進めていかなければいけないと考えていましたので、今日を機会にそういった動き開始します。
2014年6月11日
政府間外交が動き出すための環境づくり ~「第10回 東京-北京フォーラム」にかける思い~
政府間外交が動き出すための環境づくり |
工藤:言論NPOの工藤です。今、北京空港にいて、これから東京に帰ります。
今年の「東京-北京フォーラム」の打ち合わせを行い、今年は9月27日から3日間にわたって、東京で10回目のフォーラムを開催することが合意されました。私たちは、2005年のフォーラム創設時に、10回の対話を行うということを合意していましたので、今年はフォーラムの一つの集大成の対話となります。
2014年5月19日
国境を越えた民間対話のチャネルで課題解決を ~出国直前のニューヨークより~
国境を越えた民間対話のチャネルで課題解決を |
工藤:言論NPOの工藤です。
今、ニューヨークの空港に到着し、これから日本に帰ります。10日間にわたってアメリカに滞在し、いろいろな人たちと話をしました。デモクラシーについては、前回触れましたが、まさに民主主義ということの問いかけが、日本とアメリカとの間で通用すると感じました。私たちが行っている問いかけに対して、多くの人たちが共感してくれたことは、私たちにとっても大きな自信となりました。
「課題解決の意思を持つ輿論」に基づいた日本の政治、外交に取り組む決意を ~舞台はアメリカから日本へ~
課題解決の意思を持つ輿論」に基づいた日本の政治、
外交に取り組む決意を -舞台はアメリカから日本へ
工藤:言論NPOの工藤です。
最後は、リンカーン記念館のリンカーン像の前に来ています。ここの壁には、「人民の人民による人民のための政治」と記されています。私は、これまで行ってきた「言論外交」というものは、単なる外交というものではなくて、デモクラシーの問題だということをアメリカの人たちと議論してきました。つまり、多くの有権者が自分たちの問題として、自分たちが課題解決に向けて挑んでいくというプロセスの中で「輿論」というものが強くなっていく。そうした「輿論」に支えられた政治がデモクラシーだと思います。そして、その「強い輿論」に支えられた外交ということを私たちは目指しています。そうした「輿論」の力によるアジアの平和と安定的な秩序づくりに取り組みたいと思っています。
2014年5月15日
世界で起こっている変化とは - 2日間の会議を終えて実感したこと
世界で起こっている変化とは |
言論NPOの工藤です。今、ニューヨークの通りにいます。2日間にわたるCoCの年次総会も終わり、一息ついたところです。
世界の課題解決に取り組む世界23カ国のシンクタンク
さて、今回のCoCの年次総会には、主催者の米国の外交問題評議会や、イギリスのチャタムハウスなど世界23カ国のシンクタンクのトップが集まり、様々なグローバルガバナンスの問題に関して議論が行われました。ルワンダの虐殺から20年ということで、国連の人道介入の問題や、アメリカの盗聴発覚後、問われ始めたインターネットガバナンスの問題、来年の合意に向けて大詰めの協議が始まっている気候変動の次期枠組問題、グローバルな金融規制の問題、グローバルヘルスの課題とWHOの問題、そして、ウクライナの問題がこの2日間、徹底的に議論が行われました。
2014年5月13日
会議直前のニューヨークからの報告
会議直前のニューヨークからの報告 |
工藤:言論NPOの工藤です。今、ニューヨークのパークアベニューの通りにいます。ここは、アメリカの外交問題評議会の本部のすぐ近くです。
2014年5月12日
「言論外交」の展開はアメリカへ
「言論外交」の展開はアメリカへ |
工藤:工藤です。今、成田空港にいて、これからニューヨークとワシントンに向かいます。今回の訪米は、世界23カ国のシンクタンクのトップが集まる、CoC(カウンシル・オブ・カウンシルズ)という会議に参加するためです。今回の会議を機に、私たちが今進めている「言論外交」、東アジアの安定した秩序づくりのための対話の枠組みに、アメリカにどのようにして関わってもらうのか、いろいろな人たちと協議することになっています。
2014年4月11日
書籍『言論外交』に込めた思い
書籍『言論外交』に込めた思い 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、こんにちは。
さて、この度、『言論外交』という本を出されたようですが、なぜこの本を出版されたのか教えていただけますか。
2014年3月 7日
本格始動する「言論外交」
本格始動する「言論外交」 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、こんばんは。さて、民間外交というテーマで、このところ日本だけではなく、海外で精力的に動いていたと聞いています。どのような国に行かれたのでしょうか。
東アジアの多国間の対話の枠組みに関心度の高いオーストラリア
工藤:オーストラリアにいき、そのあと北京にいきました。言論NPOはアメリカの外交問題評議会が主催しているCouncil of Councils(CoC)のシンクタンク会議の日本代表のメンバーですが、今回の訪豪はその会議に出席することでした。ただ、その会議を利用して、現在、非常に厳しい東シナ海の問題について、オーストラリア政府と色んな形でコミュニケーションしようとしました。
2014年3月 1日
動き始めた「第10回 東京-北京フォーラム」
動き始めた「第10回 東京-北京フォーラム」 |
工藤:言論NPOの工藤です。今、私は北京の中国外交部の直ぐ近くにあるクラウンプラザホテルにいます。
去年の10月末、私たちはこの場で「不戦の誓い」を民間ベースで行い、それから4カ月が経ちました。私たちの対話も含め、民間の様々な取り組みがあって、日中関係が改善できるかな、という手応えを感じていたのですが、また厳しい状況になっています。
2014年2月27日
大きく動き始めた「民間外交」の舞台 ― オーストラリアでの全日程を終えて
大きく動き始めた「民間外交」の舞台 |
キャンベラの戦争記念館で改めて感じた「戦争」という現実
工藤:言論NPOの工藤です。今、私はキャンベラにいます。今日(2月26日)、全ての日程が終わって、これから東京に帰ります。CoCの会議が終わって、キャンベラに来て、オーストラリア政府の機関やシンクタンクの人たちなど30人を超す人たちと、東アジアの安全保障上の問題など、私たち言論NPOがやっていることを説明しながら議論することができました。その中で、皆さんから「ぜひ戦争記念館に行くべきだ」と言われましたので、戦争記念館を訪れまして速足で見てきました。
2014年2月23日
シドニーからの第一声 ― 今回の訪豪で実現したいこととは
シドニーからの第一声 |
工藤:言論NPOの工藤です。今日(2月23日)の早朝にシドニーに到着しました。
なぜ、シドニーに来ているかというと、今回、私は、アメリカの外交問題評議会が主催し、世界の23カ国のシンクタンクが集まるCoCという会議に参加するためです。今回の会議のテーマは「アジア・太平洋の安全保障の問題について」で、このテーマの議論に参加したいと思っています。
2014年1月 1日
新年、私たちに問われているのは課題に向かい合う「当事者性」
新年、私たちに問われているのは 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、あけましておめでとうございます。
工藤:おめでとうございます。
田中:今年もよろしくお願いします。さて、早速お伺いしたいのですが、2014年の日本のテーマについて、工藤さんはどうお考えでしょうか。
2013年11月28日
4日間の韓国訪問を終えて
4日間の韓国訪問を終えて
⇒ 動画をみる
工藤:今、金浦空港にいます。4日間の日程を終えて、これから日本に戻ります。今回の韓国訪問でいろいろな人たちと話をすることができました。
民主主義にとって重要なのは有権者の力
元々は、「アジア・デモクラシー・リサーチ・ネットワーク(ADRN)」の会議に参加するためでしたが、その中で議論したアジアの国々は、「民主主義」ということに対して、大きく悩んでいて、課題を色々と抱えていました。例えば、投票における不正、汚職の問題など、様々な問題が指摘されたのですが、日本の民主主義の状況とは違うな、ということを感じると共に、「民主主義」にとって、有権者の力、市民の力が大事だということを実感しました。
2013年11月25日
課題解決型の「新しい民主主義」とは
課題解決型の「新しい民主主義」とは
⇒ 動画をみる
アジアの民主主義を考えるためにソウルを訪問
工藤:ちょうど、北京で歴史的な「不戦宣言」を出してから、早くも1カ月が経ちましたが、私は今、韓国に来ています。昨日から韓国に入っていますが、韓国では激しい雨が降っていて、非常に寒いです。
2013年10月31日
民間外交の視点から見た民主主義と市民社会の重要性
民間外交の視点から見た
民主主義と市民社会の重要性
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事)
⇒ 動画をみる
田中:工藤さん、北京からおかえりなさい。日中関係が厳しい状況の中、開催を2カ月延期するなど、紆余曲折がありながらも「東京-北京フォーラム」が無事閉幕しました。このフォーラムでセンセーショナルだったのは不戦宣言、つまり、日本と中国の間で戦争をしないということを合意した「北京コンセンサス」であると思いますが、これはどのようなものなのか、説明していただけますか。
2013年10月28日
不戦の誓い、「北京コンセンサス」から始まる新たな潮流
不戦の誓い、
「北京コンセンサス」から始まる新たな潮流
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言論NPOの工藤です。本日28日、私たちは東京に帰ります。いろいろなメディアで報道されている通り、今回のフォーラムでは、日本と中国の間で「北京コンセンサス」を合意しました。
2013年10月26日
政府間外交を再び軌道に乗せる土台づくりの議論を
政府間外交を再び軌道に乗せる土台づくりの議論を
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言論NPOの工藤です。25日にこのブログをアップする予定でしたが、日付が変わってしまい中国時間で26日の0時40分です。この時間になってもまだスタッフみんなが、今日の9時からはじまる議論の準備作業に追われています。
2013年10月25日
日中間に漂う閉塞感を打破するための第一歩
日中間に漂う閉塞感を打破するための第一歩
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北京から言論NPOの工藤です。現在、中国時間で23時15分です。今日は昼に北京に到着してからずっと、25日から始まる「東京-北京フォーラム」のために色々な準備をしていました。
今回のフォーラムは、首脳会談をはじめとする政府間交渉が停滞するなど、日中関係が厳しい局面にある中、この局面を民間の対話の力で乗り越えるために開催されます。
2013年9月22日
東アジアの安定化を目指す「言論外交」
東アジアの安定化を目指す「言論外交」
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言論NPO代表の工藤泰志です。いよいよ10月25日、「第9回東京―北京フォーラム」が北京で開催されることになりました。実はこのフォーラムは8月12日に開催される予定だったのですが、私たちが8月に行った日中共同の世論調査結果が示した通り、日本、中国ともにそれぞれの相手国に対する国民感情の悪化が非常に深刻な状況となり、中国側から「今は時期が悪いので、十分な準備を行ってから開催しよう」という提案がありました。しかし、私たちは「日中関係が深刻な状況だからこそ対話をするべきである」と考え、粘り強く中国側主催者と交渉をし、ようやく今回の開催にこぎつけました。
今年は日中平和友好条約35周年です。この日中平和友好条約の第1条には「すべての紛争を平和的手段により解決し、武力又は武力による威嚇に訴えない」とあります。東シナ海で緊張が高まる今、この第1条の精神こそが非常に重要な意味を持つ局面に来ていると私たちは考えています。私たちは民間の立場から、この第1条が持つ今日的な意味を再確認して、両国の民間人の間でしっかりとした議論をして、その結果を日中両国、そして世界に向けて発信したいと考えています。
2013年8月 5日
第9回日中共同世論調査から見えてくる日中関係
~加熱するメディア報道と一体化して感情悪化が増幅する中国世論~
第9回日中共同世論調査から見えてくる
日中関係
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直接交流の不足と自国メディア報道への依存
さて毎回同じことを言っていますが、両国の国民の認識がどのように作られるか、ということをまず簡単に見ていきます。お互いの認識というのは2つあって、直接的な交流によって相手を知るという事と、交流のチャネルが少なければメディア報道をベースにした間接情報に依存せざるを得ない。結論として日本人の14.7%は中国への渡航経験がありますが、中国人はわずか2.7%しか日本に渡航経験がある人がいません。
そして日本人の20.1%が、お互いにコミュニケーションできる中国人の友人や知り合いがいるという結果になっていますが、中国人はわずか3.3%しかいません。そうすると、お互いがどのように日中関係や相手国の情報を認識するかというと、自国のニュースメディアに依存するしかない。今回は日本人の90.5%、中国人も89.1%と大量の人がメディア情報に依存しています。ただし、中国は書籍、教科書やテレビドラマなども参考にしており、日本より少し多様な媒体から情報を得ているという結果です。
2013年8月 1日
2013年参議院選挙を振り返って ―「強い民主主義」の実現に向けたスタートに
2013年参議院選挙を振り返って 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、こんばんは。参議院選挙が終わりましたが、この結果をどういう風にご覧になっていますか。
二度と許してはいけない曖昧な公約
工藤:結果的に安倍政権の実績が評価された格好ですが、アベノミクスを含めて、まだ成功したわけではありません。まさに、選挙後のこれからが正念場だと思っています。ただ、民主政治という視点から言えば、問題が大きい選挙だったと思います。
今回の選挙で示された与党の公約は形骸化していて、非常に曖昧でした。野党も同じで、対案もなく批判ばかりの公約になっていて、多くの有権者がどの政党を選んだらいいか、悩んだと思います。しかも、社会保障や財政再建など、与党は何も説明せず、選挙後に判断を先送りしてしました。この3年間、選挙がないとすると、国民はその決定になんら関与できず、政治にお任せしなくてはいけない。
こういう選挙は、二度と許してはいけないと思っています。
2013年7月18日
参議院選、政党の公約をどのように評価したか
参議院選、政党の公約をどのように評価したか 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
国民と課題に向かい合う公約になっているか
田中:工藤さん、こんばんは。いよいよ今週末に選挙が迫ってきましたが、言論NPOのマニフェスト評価は終わりましたか。
工藤:何とか終わりました。16日、9党のマニフェスト評価と、今回は非常に公約が形骸化しているので、この公約が本当に国民に向かいあうものになっているのか、ということについて「基礎評価」という形で、併せて発表しました。その他に、立候補者にアンケートを行い、それも公開しました。昨日から、今日にかけて五月雨式に公開していますので、有権者の方には、ぜひこういう材料を参考にしていただければと思っています。
2013年6月25日
安倍政権の半年をどう評価するか
安倍政権の半年をどう評価するか 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
安倍政権の評価は2.8点
田中:今日、6月25日は言論NPOの総会の日なので、会場のプレスセンタービルに来ています。その直前に工藤ブログのインタビューをさせていただきたいと思います。
さて、言論NPOは7月21日の参議院選挙の前に安倍政権のマニフェスト評価と実績評価を行ったと伺っていますが、どうでしたか。
2013年4月 1日
民間外交を通じて、国境を超えた国際的な輿論づくりへ
民間外交を通じて 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、3月は大変にお忙しくて、初旬にはワシントンDCに行かれ、4月1日からは中国へ。具体的な活動内容を話していただけますか。
ワシントン訪問の目的とは
工藤:私たちがやっているのは、民間の外交です。今、なぜ民間の外交が必要なのかと言えば、世界でも政府間の交渉だけでは様々な課題に対して、答えを出せなくなってきています。それに対して、民間の私たち市民がどのように参加して、課題解決に乗り出せるかということが、今、問われていると思います。
アメリカの外交問題評議会(CFR)という世界的なシンクタンクが同じ問題意識を持って、昨年の3月に世界に呼びかけました。つまり、グローバルなガバナンスが、かなり不安定化している。その中で、世界の民間のシンクタンクが集まって、それに対する答えを出す努力をしませんか、と。そして世界23カ国の主要なシンクタンクが参加する会議(カウンシル・オブ・カウンシルズ(CoC))が発足した。その2回目の年次総会があり、私はワシントンに行ってきました。そこでは、気候変動や貧困対策、宇宙空間やサイバー空間のガバナンスなどが話し合われましたが、こうしたグローバルなアジェンダに対し、日本が主張するということは当然必要なので、私も議論に参加しました。
2013年3月16日
ワシントンでの6日間を振り返って ~アメリカ、中国との本音レベルでの対話づくりを~
聞き手:言論NPOスタッフ
スタッフ:工藤さん、お疲れ様でした。カウンシル・オブ・カウンシルズの年次総会、そしてシンクタンクや議会、政府関係者の方々との会談を終えての感想を教えてください。
工藤:今回は、多くの人たちの力も借りて、いろいろな人たちと会って議論をしました。言論NPOが今後、ワシントンを舞台に様々な議論を行うためのベースを築けたかな、と思っていますが、いろいろと考えさせられるものでした。僕たちは、アメリカ政府の情報を、基本的には日本のメディアを通じて知るわけですが、ワシントンの中でも民主党系と共和党系の間にはかなり違う見方をしていて、意見を聴く人によっては、かなり見解が違ってきます。その見方が違うまま、メディアを通じて日本に情報が流されているのかな、という感じがしました。日本とアメリカとの関係でも、コミュニケーションを強いものにしていかないと、日米問題を冷静に、かつ建設的に議論をすることは難しいのではないかと感じました。
少なくない人たちが言っていましたが、日本とアメリカとの関係は、昔から多層で、重層的なコミュニケーションのチャネルがあったのですが、高齢化や日本の存在感が乏しかったこともあり、日本を研究している人も減ってきていて、コミュニケーションンのチャネルが減ってきているのが現状です。ただ一方で、ブルッキングス研究所がそうなのですが、シンクタンクによっては、日本の部署を拡張しているところもあります。また、アベノミクスなど、日本の経済政策がかなり注目されているということもあり、十分ではありませんが、ようやく日本のことを議論できる下地が作られ始めているのだな、と思いました。そういう状況も十分に考慮しながら、日本とアメリカとの関係をもっと緊密にするためにも、私たちも参加して、コミュニケーションのチャネルを深めていかなければいけないかな、と思いました。
さて、これから私たちは日本に帰って、次は北京に行くことになります。いろいろな研究者にも聞かれましたが、日本と中国との関係は、尖閣問題を含めて、まだまだ緊張関係がある中で、偶発的な事故にならないようにどのように管理していくのか、どうコントロールしていくのか、というところにかなり関心を持っていました。この問題は、領土問題という主権がかかわる問題ですから、なかなか政府間交渉だけではうまくいかない。やはり、民間の本音レベルの対話が必要になってきていると思います。日本に帰って、十分準備をして、北京訪問に望みたいと思っています。
日本に帰っても、いろいろな議論を皆さんに提供していきたいと思いますし、自分たちのこの日本の未来を考えていくための議論を、積極的につくっていきたいと思っています。
スタッフ:工藤さん、6日間お疲れ様でした。ありがとうございました。
2013年3月15日
アメリカのアジア・リバランスを巡って
―米国議会上院・民主党外交問題補佐官らとの対話
工藤:今は、3月14日の朝8時半、寒いワシントンからの報告です。先ほど、上院の民主党の外交問題補佐官と1時間ほど話をしてきました。昨日に引き続いて、アメリカのアジア・リバランスがどう展開していくのか、ということについて、突っ込んだ議論を行いました。基本的な方向性は大きく変わろうとしていて、アメリカがアジア・リバランスという方向に変え始めてきているということは、事実だと。その動きは短期的なものではなく、時間をかけて動いていくということでした。
昨日までの、色々なシンクタンクの人たちと議論をして、このアジア・リバランスが十分に機能していないのではないか、という話があったので、それについて意見を交わしたのですが、そうした見方について、この補佐官は異論を持っていました。特に彼が強調していたのは、そのリバランスが動いている中で、技術革新などを通じ、ネットワークとして安全保障上の軍のパワーというものを再編しつつ、機能する形で時間をかけながら着実に進んでいる、ということでした。
こういう対話ができたことを、補佐官は非常に喜んでいらっしゃいました。嬉しかったのは、私たちの言論NPOが中国の軍関係者、それから韓国、アメリカを交えた形で、東アジアのリージョナル・ガバナンス構築のために、かなりオープンな形での対話を準備して動いているということについて、積極的に応援したい、関わっていきたいと言われ、強力なサポートの意思を表明していただいたことです。
今日は、私たちが考えている東アジアでの対話、民間のパブリック・ディプロマシーの展開が、何となく一歩ずつ進んでいくような実感を得ました。これから、ワシントンの主要なシンクタンクの幹部と会いますので、それが終わったら、また皆さんに報告させてもらいます。
2013年3月14日
評価が高かった安倍・オバマ首脳会談 ―米側に伝わった日本の日米関係重視
工藤:ワシントンは寒いです。私は今、米議会の上院に来ています。先ほどの会合でも、アメリカ、アジアのリバランスのことや、尖閣の問題などについて議論してきましたが、日本と違う認識なので、少し驚いています。オバマ政権のアジア、太平洋のリバランスということが、議会でもなかなか理解されていないということでした。逆に、日本の政局のことをかなり聞かれました。
先日の安倍総理とオバマ大統領の首脳会談への評価が非常に高いものでした。こちらに来る前に立ち寄ったヘリテージ財団の研究者も同じことを言っていました。日本が日米関係を非常に重要視している、ということがアメリカに伝わっているのは非常にいいことだと思います。しかし、今後、日米関係をどういう方向に持っていくのか、という議論の作り方を考えないといけないな、と思いました。これから下院にも行くのですが、上院の議員は、日米関係を発展させたいという気持ちを持っていました。しかし、その論理構成をどうするのか、宿題を得た感じがします。
いずれにしても、こういう対話は重要だと思いますし、言論NPOみたいな組織が日本にあるということに、アメリカの皆さんは非常に驚いていました。やはり、民主主義を強くするためにも、中立で独立のシンクタンクの役割が重要だと思っていますので、色々な人たちと話をして、改めて頑張ろうと思いました。また、報告します。
どうなるアメリカのアジア・リバランス政策
工藤:CSIS(米戦略国際問題研究所)のジョンソン中国部長と1時間ほど議論してきました。非常に面白かったです。アメリカではオバマさんが再選され、中国では習近平さんが新しい国家主席に選出されて両大国の新政権による初めての首脳会談が9月に行われるとのことでした。アジアの大きな変化の中で、アメリカはどのように中国と付き合っていくのか、将来へ向けて新たな協力関係が模索されるのか、今後の成り行きが注目されます。しかし、ジョンソン部長によれば、アメリカのアジア・リバランスの政策が順調に進んでいないそうで、大きく修正される可能性があるのではないか、ということでした。
それから、尖閣問題に関しては、何とか大丈夫だろうという認識でした。ただ、中国は経済的な改革をかなり進めないといけないということを指導者は知っています。しかし、それが順調にはいっていないようで、中国経済がうまく構造改革を進められるかどうか、強い期待感を持ちながらも注意して見守っていくようです。ジョンソンさんを初めとして、これからいろいろな人たちと会いますので、ワシントンでの対話を、私たち言論NPOが行う対話に活かしていきたいと思います。
2013年3月13日
東アジア・太平洋の対話の枠組み作りを開始します
東アジア・太平洋の対話の枠組み作りを 聞き手:言論NPOスタッフ |
スタッフ:工藤さん、3日間のCoCの会議を終えて感想をお願いします。
一過性に終わらせたくない本音の議論
工藤:今回はグローバルガバナンスが機能していないということで、5テーマにわたってずっと議論を行ってきました。気候変動の問題や貿易の体制、宇宙の利用、インターネットの問題など、色々な問題が話し合われました。国連をベースにして、色々な人たちが参加をし、合意をしていくということがうまくいかない中で、その枠組みを残しながら具体的な合意をどうやってつくっていくのか、ということについてかなり突っ込んだ議論になりました。CoCの会議は非公開ですので、本音の議論が交わされました。
2013年3月10日
明日からの会議への意気込み
今、ホワイトハウス前に来ています。さっきワシントンに到着したばかりなのですが、明日からいよいよCoCの会議が幕を開け、言論NPOの民間外交が始まります。このワシントンに来るといつも思うのですが、ここを中心に世界が動いているな、という感じがします。そういう中でも、日本の主張をきちんと伝えなければいけないし、我々も国際社会の中での役割を果たしていかなければいけないと思っています。
また、明日からがんばりたいと思います。
民間の力でリージョナルガバナンスの不安定化の解消を
今、ワシントンに入りました。この場所は、ホワイトハウスの反対側になります。いよいよ明日から、CoCの会議が2日間にわたって行われます。私は、その会議で気候変動を含めて、いろいろなグローバルなガバナンスが機能していない中でどうすればいいか、ということを話し合うことになっています。
その後、アメリカのシンクタンクの人達、アメリカの政府の関係者の人達と会うことになっています。日米、日中、東アジアが不安定になっている中で、どのように改善していけばいいのか、ということについてみんなと意見交換しようと思っています。
私は、政府間だけではこのような地域のリージョナルガバナンスの不安定化は解消できないと思っています。民間の力でどういう風に乗り切っていけばいいのか、ということを考えています。こういうことについて、アメリカの人達と話し合ってみたいと思っています。また、皆さんに報告したいと思っています。
2013年3月 9日
言論NPOの民間外交が始まります
言論NPOの工藤です。今、成田空港に来ていまして、これからワシントンに向かいます。ワシントンは8日間滞在して、アメリカのシンクタンクの人達と話をすることになっています。
私たち言論NPOは、ワシントンへの渡航から、中国の尖閣問題、そして韓国とのいろいろな問題について民間外交ということで真剣に取り組もうと思っています。東アジアという地域のガバナンスが不安定で、それがグローバルな問題について様々な影響を与えているのが現状です。この状況は、政府間の対話だけでは無理だと思っています。民間の力、民間の対話で何とかしたいというのが、私たちの思いです。ワシントンでは、こういった私の考えを民間のシンクタンクや、政府関係者に伝えていきたいと思っています。
今回、私がワシントンに行く主目的は、アメリカの外交問題評議会が主催する会議に出席するためです。世界は、民間の知的なシンクタンクが地域やグローバルな課題に対して、何か貢献したいという動きが始まっているのです。私も、その一員として、日本の主張をぶつけていきたいと思っています。これから、ワシントンに向かい、帰国後は直ぐに北京に行くことになります。その一つひとつをみなさんに報告していきたいと思います。
2013年1月 1日
マニフェストをいかに読み解くか 言論NPOはそのための情報を発信しています
マニフェストをいかに読み解くか 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
マニフェスト評価と実績評価
田中:工藤さん、こんばんは。あさって公示ということで、言論NPOの工藤さん、そしてスタッフの皆さん、佳境に達していると思うのですが、今、何をされているのですか。
工藤:今は、マニフェスト評価の作業をするために、みんな徹夜状態です。12党になってしまったので、そのマニフェストの評価、田中さんも含めて評価委員の方にやっていただいているところもあるのですが、それを私たちがきちんと検証して評価をまとめるという作業をやっています。同時に、自民党と民主党に関しては、マニフェストが非常に分かりにくいので、この前まで4人の政治家に突撃で話を聞きに行って、マニフェストを読み解くためにも必要な議論をぶつけていますので、これも近く全部、公開します。あと、いろいろな形で、複雑なマニフェストを読み解くための専門家の意見を公開して、有権者が今回の選挙できちんと判断できるような仕組みを作るための情報提供に毎日取り組んでいます。
新しい年、日本に変化をつくり出せるのは私たち有権者
新しい年、 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) ※テキスト部分は、一部加筆しています。 |
田中:工藤さん、あけましておめでとうございます。
工藤:おめでとうございます。
田中:早速お伺いしたいのですが、今年は何が大事になりますか。
工藤:日本に本当の変化を作り出すこと、が大事だと思っています。
田中:どんな変化ですか。
工藤:有権者が主体となる民主主義というものを日本の中で機能させなくてはいけないと思っています。そのための取り組みを進めなくてはと、私は思っているわけです。
田中:では、どうしたらということに絡めてなのですが、昨年末に大きな選挙が行われ、その結果、政権交代が行われました。しかし、何か私たち有権者はすっきり腑に落ちていないところがあるのですが、その問題と関係はあるのでしょうか。
2012年12月31日
日本の政治が課題に向かいあい、解決を競い合うためのスタートに
日本の政治が課題に向かいあい、 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) ※テキスト部分は、一部加筆しています。
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田中:工藤さん、こんばんは。
工藤:こんばんは。
田中:昨日選挙の結果が確定しまして、自民党の大勝ということだったのですが、工藤さん、この結果どのようにご覧になっていますか。
消極的な支持を本当の支持に変えるには何が必要か
工藤:ここまで非常に大きな、地滑り的な変化になるとは私も想定はしていませんでした。小選挙区制による民意が、こういう形の選挙結果にするという点では、選挙制度の問題について、非常に考えさせられました。ただ、答えからいうと、基本的に今回の民意は民主党の政治を否定したということの一点に尽きるわけですね。
その結果、自民党を消極的に選んだ。つまり、自民党の政策なり、自民党が課題解決のために示したで色んな提案に対して支持を得たわけではない。このことは自民党の候補者、当選した政治家が恐らく一番気づいているのだと思います。テレビで、自民党の候補者が、今回は民主党が否定された結果、我々が選ばれた。それを自分たちの本当の支持に変えないといけない、ということを言っています。そういう点では今回は民主党という政党が否定され、結果として自民党が政権を持つチャンスを得た、ということだと思います。だからこれからが大変だと私は思っています。
2012年12月15日
党の公約をどうやって評価するのか? ~公約を手に取れば党の違いが見えてくる ~
言論NPOは10日、今度の総選挙での各党の政権公約、いわゆるマニフェスト評価の結果を公表した。
その詳細な内容に関しては、言論NPOのウェブサイトを見ていただくことにして、今回、ここでお伝えしたいのは、言論NPOは政党の公約の評価をどのように行っているのか、ということである。
私たちがマニフェストの評価に取り組むのは2001年の小泉政権下の総選挙から始まり今回で5回目となる。評価は8つの評価基準に基づいて毎回行われており、各分野の専門家など約40名の方に加わっていただき、最終的には「マニフェスト評価書」として提起している。
今回は新しい政党の合併や公約自体の提起が遅かったため、私たちの作業も公示後にずれ込んだが、徹夜作業を繰り返し、なんとか評価を130ページの評価書にまとめることができた。
財源を書いている公約は全体のわずか2%
私たちが政党の公約やその実行の評価に取り組むのは、国民に向かい合う有権者主体の政治を作りたいからである。
マニフェストはその重要な道具である。その品質が前政権で悪かったためマニフェスト自体の信頼が崩れたが、有権者主体の政治そのものを否定されたとは、私は考えていない。であるならば、道具の品質を上げることを有権者が政党に迫るしかない。評価はそのための判断材料の1つなのである。
私たちは評価結果だけではなく、その作業過程の議論やインタビューなども全てウェブサイトで公開している。ただ、公約の評価をどのように行っているのかについては、これまでまとまって説明したことはなかったように思う。
今回はそれを少し説明させていただくことで、皆さんが投票先を選ぶ際の何らかの手がかりになればと思っている。
2012年12月13日
マニフェスト評価で一番伝えたいメッセージとは
マニフェスト評価で一番伝えたいメッセージとは 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) ※テキスト部分は、一部加筆しています。
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マニフェスト評価で一番伝えたいメッセージとは
田中:工藤さん、こんばんは。
工藤:こんばんは。
候補者に何を実現するのか、緊急アンケートを行っています
田中:投票日まであと4日になりましたが、現在、言論NPOではどんな活動をされているのでしょうか。
工藤:各党のマニフェスト評価は、一応完成しまして、130ページの評価書が出来上がりました。それを色々なところで普及しています。またインターネットからも見られるようになりました。それから、自民党と民主党の公約が分かりにくいので、私が政治家に話を聞きに行ってきたのですが、その動画を、今日から公開しています。
2012年12月 9日
マニフェスト評価を通じて見えてきたこと
~日本の政党は国民に本気で向かい合っているか~
マニフェスト評価を通じて見えてきたこと 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、こんにちは。
工藤:こんにちは。
田中:ちょうど、来週が投票日ということで、恒例の言論NPOのマニフェスト評価の結果の公表を、まだかまだかと待っているのですが、いかがでしょうか。
工藤:一応、さっき完成して、今、製本しているという状況です。100ページぐらいの、きちんとした評価が完成しました。
田中:実は、私も参加させていただいているのですが、前に比べて、何が大変かと言えば、党の数がとても多いということで、単純にマニフェストを読むだけでも大変な作業だったと思うのですが、今回はどのような方法でこの作業をされたのでしょうか。
2012年12月 3日
有権者から政治にマニフェスト逆提案を
有権者から政治にマニフェスト逆提案を 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
「白紙委任しない」の賛同者は千人超えたが、まだまだ足りない
田中:工藤さん、今晩は。いよいよ、選挙に向けた動きが明らかになってきたのですが、以前から、言論NPOでは、「私たちは政治家に白紙委任はしない」という呼びかけを行ってきています。その賛同者が1000人を超えたということですが、今後、どのように発展していくのでしょうか。
工藤:1000人超えたことに本当に感謝していますが、まだまだ数が足りないと感じています。やはり、より多くの人達に、僕らの呼びかけに賛同して欲しいと思います。今の日本の政治に対して、有権者が怒らなければいけない。約束しても途中で変えてしまう。変えるのはいいのですが、何の説明もない。今日も、衆議院の予算委員会を見ていたのですが、変更が当たり前みたいになってしまい、政党が国民に向かい合うという視点を全く感じない。
しかし、民主主義というのは、まさに有権者が政治を選ぶ仕組みですから、ここで有権者が「これからは政治家に騙されたくない」し、「自分の判断で政治を選んでいく」ということで、全国の多くの人達が名乗りを上げていかないといけない。さもないと、政治側からすれば、全く怖くない。だから、この呼びかけにはやはり数が重要で、いろいろな人達が発言する輪がどんどん広がることによって、政治側が「有権者の声を聞かなければいけないな」と思うようになってくれたらいいな、と思っているわけです。それがゴールではなくてスタートなのです。
選挙がいよいよ始まりますから、我々は次に向けて準備を開始しなければいけない。そう考えているところです。
2012年11月17日
今回の選挙を「有権者主体の政治」の実現に向けたスタートに
今回の選挙を |
工藤:言論NPOの工藤です。今日は衆議院が解散し、いよいよ選挙が始まるという非常に重要な日でした。解散したということについては、よく決断してくれたと思いますが、今の日本の政治を見て、実を言うと、私は非常に怒っています。なぜなら、日本の政治の眼中には有権者という存在がないのではないか、という気がしているからです。ここまで選挙の決断が遅れたのはなぜなのか。それは、次の選挙で有利になる日はいつか、どうやったら当選しやすいか、ということだけだったわけです。しかし、今、日本が直面している課題は沢山あって、未来が見えなくなっている状況です。そういう状況を改善するために、日本の政治がどれぐらい真剣に取り組んでいるのか、政策評価をやっている私たち言論NPOから見れば、非常に気になるところです。つまり、社会保障や成長戦略、エネルギーという課題に対して、何の答えもない。そして、答えが出せないから、今回の選挙でも曖昧なマニフェストになる可能性があるわけです。
2012年11月15日
民主党政権の実績評価から浮かび上がった課題とは
民主党政権の実績評価 |
言論NPOの工藤です。さて、衆議院の告示まで9日になりました。各党党首の様々な議論が、色々な問題を賑わせているという状況になっています。言論NPOはこの選挙において、有権者の立ち位置に立った議論を開始しなければいけないということで、今日から様々な取り組みを公開しています。
毎日新聞と合同で行った民主党政権3年間の実績評価とは
まず、私たちは、民主党政権の実績評価を行い、公開しました。これは昨日の毎日新聞の朝刊でかなり詳しく出ています。言論NPOと毎日新聞が合同でこの評価を行いました。メディアがしっかりとした評価基準で政権や政党の評価を行うことは非常に重要なことだと思います。やはりこの選挙では、有権者の立場に立って、まず政権の評価を行い、政治に問われている課題を明らかにしなくてはなりません。
その結果、民主党政権は、通信簿で言うと、5点満点で2.2点。非常に厳しい状況になりました。ただ、私たちは、この点が厳しいということを殊更言おうと思っていません。それよりもなぜこのような厳しい点となったのか。そしてこのような状況が、今度のマニフェスト型の政治、そして、今後の本選挙、選挙戦の開始の中で、何を私たちは教訓として考えなくてはならないのか、ということを私はその評価できちっと伝えたつもりです。そして、今日私はそのことについて簡単に触れなければと思っております。
2012年11月 2日
「アジア・リージョナル・ワークショップ」で日本に問われている課題とは
アジアリージョナル会議で、日本に問われている課題とは 聞き手:言論NPOスタッフ |
スタッフ:工藤さん、こんばんは。今日、CoCのアジアリージョナル会議の夕食会が行われ、会議がスタートしましたが、感想をお願いいたします。
工藤:今回はアジアリージョナル会議と言って、アジアの中でアジアの課題について議論するという会議が発足したわけです。私は世界の20団体のCoCのメンバーとして今回の会議に参加しています。今回の会議を皮切りに、12月にはロシアでも会議が行われるのですが、世界がいろいろなグローバルな課題に対して答えを出さないといけない、という段階にきています。それは、今の国際的な枠組みでは、世界が直面している課題に対してなかなか決められないという現実があるわけです。それに対して、このチームではいろいろなことを議論しようということで会議をやっています。
アジア・リージョナル会議を通じて見えてきたアジアや世界の課題
アジア・リージョナル会議を通じて見えてきたアジアや世界の課題 聞き手:言論NPOスタッフ |
スタッフ:工藤さん、こんにちは。2日間のアジア・リージョナル会議を終えての感想を教えてください。
工藤:南シナ海の問題、ASEANの今後ということを考えたときに、非常に緊張感のある、また意義ある会議になりました。つまり、中国の問題です。南沙諸島では領海の紛争問題があって、中国との間に非常に緊張感ある関係があります。その中で、尖閣問題が非常に大きく取り上げられています。ASEANのいろいろな関係者と話をしましたが、尖閣問題はどうなるのか、ということをかなり気にしていました。そういう中で、私は今回、尖閣問題の対応についてスピーチをしました。
2012年9月13日
政治家に白紙委任せず、市民が自ら考え決断するための議論の舞台を
政治家に白紙委任せず、市民が自ら考え決断するための議論の舞台を 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さんこんばんは。9月8日に国会が閉会し、そしていよいよ選挙の動きが見えてきて、これから言論NPOの出番、勝負ということになると思いますけれども、これからの言論NPOのご予定を教えていただけますか。
工藤:選挙というのが何月になるかまだ分からないけれども、私たちは「今の政治というのは国民の声を反映していない」と主張してきたので、ようやく選挙になるんだな、という感じですね。ただ、やはり私たちが目指しているのは本当の民主主義なのです。民主主義というのは、国民が自分たちの代表を選挙で選んで、選ばれた代表が国民のためにちゃんと仕事をするということです。となると、まず国民が代表を本当に選んだのか。その代表を選ぶということが今まで放置されていたから、ようやく3年ぶりの選挙ですね。それから、選ばれた代表が国民のために仕事をしたかということに関しても、非常に問題が多かった。ということになると、民主主義がほとんど機能していなかったというのが今までの状況でした。これを何としても、民主主義をきちんと機能させる状況に大きく変えなければならない、というところから、そのための呼びかけとか、それに対する動きを、これから全面的に行なっていきたいと思っています。
2012年7月 4日
「第8回 東京-北京フォーラム」を振り返って感じたこと
― 課題や障害を乗り越えるために、政府外交から一歩や半歩先んじた議論を ―
「第8回 東京-北京フォーラム」を振り返って感じたこと 聞き手:田中弥生 (言論NPO理事) ⇒ 動画をみる |
田中:工藤さん、こんにちは。たった今、「第8回 東京-北京フォーラム」が終わったところですが、どうでしたか。
工藤:体力的には疲れたのですが、非常に感動的な対話になったな、と思っています。
田中:今回は、中国から重鎮がお見えになったみたいですが、ご紹介いただけますか。
工藤:今回は曾培炎さんと言って、前の経済担当の副総理や、国務院新聞弁公室の大臣とか、現役の閣僚級の人達を含めて40人位の人達が来日しました。メディアや経済界からも、中国のトップがきました。実は、今、日中関係はあまり良くないので、要人の訪日はほとんどがキャンセルされている状況です。ただ、この対話は毎年やっているということもあるし、非常に多くの人達がきてくれました。
田中:要人だけではなく、若手のメディアの方達もきていたのですよね。
工藤:若い中国のジャーナリストが100人きました。
2012年3月18日
民間外交から見えてきた日本の課題 ―ワシントンでの5日間を振り返って―
民間外交から見えてきた日本の課題 聞き手:言論NPOスタッフ |
―工藤さんこんにちは。ようやく、3日間のCFR主催の会議が終わりましたが、今回の会議を終えての感想を教えてください。
CoCの会議を振り返って
工藤:色々と考えさせられました。2つあるのですが、1つはグローバルなアジェンダ、例えばリビアの問題とか、イランの核問題があるのですが、グローバルな課題に対して、もっと日本は主張しないといけないと思いました。今回のCoC(国際諮問会議)には、世界の19ヵ国のシンクタンクのトップが集まったのですが、全員がグローバルな課題を、本気で自分のことのように考えていました。その中で、私も色々な形で主張できたということは、非常に良い機会だったと思います。
彼らと話をしていて感じたのは、これは新しい変化だということです。政府というか、グローバルな様々なガバナンスが揺れている中で、民間が、しかもNGOみたいな非営利で中立で影響力のあるシンクタンクが集まって、グローバルな課題に対して継続的に議論して、世界に発信していく。このCoCには強い可能性を感じました。
2012年1月30日
「野田政権の100日評価」有識者アンケート結果をどう見るか
-言論NPOは新しい政治をつくり出す具体的な動きをスタートします
「野田政権の100日評価」有識者アンケート結果をどう見るか 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さんこんにちは。野田政権が12月10日で100日を迎えました。言論NPOでは自民党時代から、毎回100日評価を行っていますが、野田政権もその結果が出たということで、ハイライトを教えていただけますか。
工藤:分かりました。今回は、現時点ですでに150日ほどになっているのですが、やはり予算が決まらないと100日といっても評価ができないので、今回は年末年始まで評価の期間を延ばしました。その上で、有識者2000人ほどに質問票をお送りして、434名の方に回答していただきました。それを分析して、ようやくまとまったという段階です。
今回の調査は二つあり、一つは野田政権の100日時点での首相の資質と政権が取り組んでいる政策課題に対する評価。もう一つは、日本の政治の現状、そして日本の政治が今後どうなっていくのか、それから日本の民主主義がどういう段階にあるのかということをまとめて聞いており、それに対する見解を出しています。その意味では、日本政治の行方を考える上で重要な論点がかなり入っているのではないかと思っています。
田中:政権の評価と日本の政治そのものの評価をされたということですが、まず、野田政権の100日評価の結果を教えてください。
2012年1月 1日
2012年を迎えての、新たな決意
2012年を迎えての、新たな決意 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、あけましておめでとうございます。
今年2012年はどのような年になるのか、お聞かせいただけますか。
工藤:2012年は僕たち有権者が日本の課題や未来にきちんと決断しなければならない年だと思います。
田中:何を決断しなければいけないのでしょうか。
有権者自身が国の未来を考え、決断する年に
工藤:昨年震災や原発事故が起きて、これまで日本が棚上げにしてきた問題がはっきり分かりました。原発の問題、それから社会保障や財政の問題。これらはこのままでは非常に厳しい状況です。実はこれらの問題は、課題としてこれまでずっと認識しながらも先送りにしてきたものです。一方で、今の政治の混乱を見て、日本の政治にはこういった問題に対して、きちんと解決をする能力も取り組む意思も無いのではないか、と多くの人が考えたはずです。しかし、政治というのは政治家だけの問題ではなく、民主主義の社会では有権者がその政治家を選んでいるわけですから、有識者にも責任があるのです。つまり僕たち有権者自身が、国の未来に関してきちんと考え、決断する。その結果今のような課題解決に向かい合えない政治を変える、そのような大きな変化を起こさないといけない年だと思います。
田中:その点でお伺いしたいのは、有権者側の議論としてよく出るのは、「今の政党や政治家にはがっかりしているけど、ほかに選択肢が無い、選ぶものが無い」という意見をよくお聞きします。この点を工藤さんはどう考えますか。
2011年12月 5日
健全な輿論の力で強い民主主義を作り出す―言論NPOが「次の10年」で目指すこと
言論NPOが「次の10年」で目指すこと 動画でみる
本日は、年末のお忙しい中、私たちの 「10周年を祝う会」 にお集まりいただき、感謝しております。今、お三方のパネルで言われたことを踏まえまして、言論NPOの『次の10年』に向けた決意を皆さんにお伝えしたいと思います。
私も壇上のお話を聞いていて、日本の民主主義のこと、そして言論NPOの10年のことを考えていました。会場には10年も前からこの運動を共有してくださった方もおられます。私も10年前のことは、今でも、昨日の事のように思い出します。
設立のパーティが開かれたのは、十年前の10月10日だったと記憶しています。国内では小泉政権が誕生し、そして、あの「9.11」のまさに一か月後、まだ世界も国内も騒然としていた時でした。当時から、この国は課題を先送りし、未来が全く見えない状況でした。「ジャパンパッシング」という言葉が出たのもその頃でした。その時、私が思ったのは、この国の未来のために、責任ある、言論の舞台をつくりたい、ということです。つまり、この閉塞感を「議論の力」で変えたかったのです。
私は、「議論の力」で、強い民主主義を作りたいと思っています。しかし、今のお三方のお話にもあったように、民主主義とはある意味で「危うさ」を持っています。民主主義は衆愚の政治や独裁を生み出す危険性を絶えず持っています。そうした不安定さを乗り越えるためにも、「健全な言論」が必要だと、私は思います。
10年前の覚悟と責任ある輿論(よろん)
私が当時、このNPOを立ち上げたのは、日本の言論の在り方にある疑問があったからです。この国のメディアには、当事者意識を持って、責任ある意見を自ら担う覚悟が、本当にあるのだろうか。世間の空気や雰囲気にただ流され、むしろそれに迎合しているだけではないか。そして、政治は、漠然とした世間の雰囲気や人気投票に過ぎないメディアの世論調査に一喜一憂して、課題から逃げ続ける。そうした政治家が私たちの代表ならば、責任ある民主主義とは言えないのではないのか。
それが、私の強い思いでした。
この状況を、私たちなりに変えなくては、と考えたのです。この10年、私たちが取り組んだのはある意味では、責任ある、輿論(よろん)をつくり出す作業でもあります。この輿論は、世間の空気としての世論とは異なり、責任ある公的な意見を意味するものです。そして、こうした言論の舞台は、非営利でなくてはできない、と思いました。
2011年11月21日
「言論NPOの10周年を祝う会」に向けて
「言論NPOの10周年を祝う会」に向けて 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
これまでの10年と次の10年にむけた覚悟
田中:工藤さんこんにちは。12月5日に「10周年を祝う会」を企画されているようですが、その趣旨と内容をご説明いただけますか。
工藤:言論NPOは10年前に設立され、「健全な社会には健全な議論が必要だ」ということを唱えて様々な分野の議論をしてきました。しかしこの10年間、議論はしましたが、日本はそれで変わったのか、という思いがずっとありました。それで次の10年に向けて、新しいスタートを切るために、言論NPOの活動そのものも大きく見直す必要があります。それをこの「10周年を祝う会」で私から皆様に説明して行きます。
私は依然日本の言論が日本の社会のためにきちんとした役割を果たしていないと思っています。日本のメディアをはじめとした言論側の役割は不十分だと思っていますので、言論の役割についてもきちんと議論をしようと思っています。それで言論NPOの理事である高橋進さん(日本総研理事長)と9名のアドバイザリーボードの中から2名、宮本雄二さん(前駐中大使)と宮内義彦さん(オリックス㈱会長)を含めた3名で「日本の未来と日本の言論」というテーマで、何が日本の未来に問われているのか、また何が日本の言論に問われているのかについてパネルディスカッションを行います。その中では、何が言論側の責任で、何が言論NPOに問われているのかについても議論をします。そしてその後、僕から「言論NPOが次の10年で目指すもの」として10年の決意をご説明しようと思っています。
2011年10月25日
言論NPOの次の10年-日本の課題に答えを出す議論づくりを
言論NPOの次の10年 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
これまで10年間を振り返って
田中:工藤さん、こんばんは。
もうすっかり秋めいてきましたが、言論NPOは今年の11月で10周年を迎えることになるのですね。言論NPOはいつ設立されたのですか?
工藤:ちょうど10年前の2001年の11月21日が設立日で、設立総会が10月10日だったのを今でも覚えています。あの時はちょうど小泉政権が発足し、アメリカで9.11が起こった直後でした。
僕は言論NPOを設立する前はメディアにいました。しかし、きちんとした議論の舞台を日本に作りたいということで10年前に言論NPOを設立し、その時はとりあえず10年継続できればいいと思っていました。それがあっという間に10年目になってしまって、もう10年も経ってしまったのかと感じています。
この10年を通して、僕たち言論NPOが言い続けたことは、多くの市民が自分たちの社会で起こっていることに対して当事者意識を持っていないといけないということです。単なる議論のための議論とか、評論家的な議論をするのではなく、メディアはもちろん市民1人1人が社会を構成しているという意識や自分たちの力で未来を切り開いていくという覚悟が必要だと主張してきました。また、同時に、このようなきちんとした健全な議論をする舞台を市民社会に作りたいと考えていました。
しかし、これらはまだ十分に実現できていないと今感じています。ですので10年目以降で次の動きをはじめないといけないと思っています。
2011年10月11日
野田政権誕生から1ヶ月-日本の政治をどう考えるか
野田政権誕生から1ヶ月 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO理事) |
田中:工藤さん、こんにちは。大変お久しぶりです。
工藤:今、「on the way Journal」というラジオ番組に出演していてその番組内での議論は流していますが、私自身も発言はしないといけないと思っていました。「北京-東京フォーラム」という大きなフォーラムが8月にあり、その後、疲れていて止まっていましたが、10月に入り次に向けた動きを言論NPOは始めましたので、今回「工藤ブログ」を再開させていただきました。
田中:この間大きな出来事として野田政権が誕生しましたが、言論NPOとして野田政権に関してのコメントをお伺いしてよろしいでしょうか。
工藤:野田政権の評価自体は、100日間はハネムーン期間ですので、それを経て100日後にきちんと評価しようと思います。ただ私が野田政権をどういう風に見ているかといいますと、前の首相が辞任をして党内の選挙で首相が変わっただけですので、何かをこの政権が日本の政治を安定させて次に続くとは見ていません。つまり、日本の政党政治がここまで崩壊してしまって、その中で日本が課題解決に向かえず世界から孤立している。この状況は首相が変わったから、それでなおるというものでもありません。ただ、新政権の誕生は日本が大きく変わる中で1つの大きな転機になる可能性が高いとは思います。
2011年3月31日
明日の本格的な事前協議に向けて
明日の本格的な事前協議に向けて
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いま北京です。僕たちは今年の「北京-東京フォーラム」の事前協議のために北京に来ているのですが、気温が20度くらいあって暑いです。
さて、今回は、国連の事務次長をつとめた明石さんを団長に、前中国大使の宮本さん、元防衛事務次官の秋山さん、評論家の松本さんと私の5人で来ています。明日は東大教授の高原さんも合流します。
私たちは今回、今年の夏に行われる「第7回 北京-東京フォーラム」に向けて、いま、何を議論しなければならないのか、事前に協議をするためにやってきました。この事前協議は、今まで「北京-東京フォーラム」を6回やってきて初めてのことです。今回、なぜ初めて行うかというと、昨年9月の尖閣諸島事件以降、日中両国民の感情がかなり悪化したからです。この民間対話は、両国民の相互理解を進めるためにやってきましたが、色々な形での認識のギャップや、政府間のコミュニケーションの問題等の中で、それが直接国民感情の認識に跳ね返るという状況にあるのです。
そうなると、日中どちらが正しいか間違っているかということよりも、お互いがなぜそういう事を考えているのか、日中関係に対してお互いどんな認識を持っているのか、ということを、まずは本気で話し合ってみる機会が必要ではないのか、その中から今回のフォーラムの一つのアジェンダを見つけ出そう、というのが今回の事前協議の目的でした。
2011年1月 1日
2011年、市民が動けば日本は変わる大きなチャンスの年に
2011年、言論NPOの活動がどのように動いていき、どのようなことを実現したいのか、代表工藤が語ります 聞き手:田中弥生 (言論NPO 理事)
2011年、市民が動けば日本は変わる
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田中: 工藤さん、あけましておめでとうございます。
工藤: おめでとうございます。
田中: 今年、最初のインタビューなのですが、誰もが今注目しているのは、政治の行方だと思うのですけれど、どんな展開になるか、工藤さんのご意見を聞かせていただけますか。
2010年12月 2日
なぜ、今「エクセレントNPO」なのか
ブックレット16『「エクセレントNPO」の評価基準 「エクセレントNPO」を目指すための自己診断リスト―初級編―』発売にあたって、なぜ、「エクセレントNPO」の評価基準を公表するに至ったのか、代表の工藤が語ります。聞き手:田中弥生 (言論NPO 理事)
なぜ、今「エクセレントNPO」なのか
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田中: 工藤さんお久しぶりです。
工藤: お久しぶりです。
田中: 本当に久しぶりなのですが、今日は、昨日発売になった『「エクセレントNPO」の評価基準「エクセレントNPO」を目指すための自己診断リスト―初級編―』 、できたてほやほやの本についてお聞きします。マニフェスト評価の言論NPOという印象があるのですが、NPOの評価基準というのを、なぜおつくりになったのですか。
2010年9月20日
ニコニコ政治放談 日本と中国の政治課題は進展しているか?
8月30日、31の両日にわたって行われた「第6回 東京-北京フォーラム」。今回のフォーラムでは、外交・安全保障、政治、メディア、経済、地方の5分科会で熱い議論が交わされました。
このフォーラムの様子を振り返ると共に、このフォーラムを通じて見えてきた日本の政治課題について、工藤泰志が語ります。
ニコニコ政治放談
⇒ 動画をみる (ニコニコ動画のサイトへ) |
2010年9月 1日
第6回 東京-北京フォーラムを終えて
2010年8月30日、31日の2日間に亘って開催された「第6回 東京-北京フォーラム」を終え、今回のフォーラムから見えてきた課題とは一体何か。工藤が語ります。
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)
田中: お疲れさまでした。たった今、「第6回 東京-北京フォーラム」が終わったところですが、今回の全体のアウトラインをお話いただけますか。
工藤: 一昨日(29日)に、中国から現役の閣僚や元大臣などを含む中国を代表する有識者120人が日本にやってきました。それで、一昨日(29日)に歓迎式典をやって、昨日(30日)の朝から全体会議と、5つの分科会という構成で議論しました。全体会議は、日本側から内閣官房長官の仙谷さん、福田元内閣総理大臣、三村新日鉄会長、中国側からも新聞弁公室の現役大臣の王晨さんなどが話をして、政治対話を行いました。僕たちは、政治家同士が民間の舞台を活用して本当の議論をしてほしいと思っています。それを多くの人達に公開しようということをやっていましたので、全体会議の政治対話には、日本側から自民党の加藤紘一さん、民主党幹事長の枝野幸男さんなどが来ました。中国側から、元外務大臣の李肇星さんなどの人達が、ガチンコの議論をしました。それで午前中が終わって、その後、5つの分科会で議論を行いました。
2010年8月28日
「第6回 東京‐北京フォーラム」いよいよ開幕
「東京‐北京フォーラム」を目前に、工藤がその意気込みを語ります。
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 理事)
田中: 工藤さん、こんばんは。いよいよ8月29,30,31日と東京-北京フォーラムが、ザ・プリンスパークタワー東京(芝公園)で行われますが、すでに延べ2000人を超える方達が参加されると伺いました。まず、東京-北京フォーラムとはどういうフォーラムなのでしょうか。
工藤: 2005年に中国で反日デモが起こったということをご存知の方もいらっしゃると思います。ちょうど日中の政府関係が厳しい時期に、民間レベルで本当の議論をして、新しい環境を作るために「議論」で何かの力になろう、というためのプラットフォームを作り上げました。
この受け皿が、日本側は言論NPOで、中国側は中国日報社(チャイナ・デイリー)というメディアでした。このフォーラムが普通のフォーラムと少し違うのは、「本当の議論」だということです。僕たちは友好のためというよりも、本当の議論をすることによって、その結果、相互信頼を得ることができるような形の対話のチャネルを作りたかった。それが今回6回目となるこのフォーラムです。
田中: 確かに私も何度か拝聴させていただいているのですが、やはり日中関係は緊張関係が長かったこともあって、お互いに遠慮し、言葉を選びながら、という会議が多い中で、このフォーラムは結構やり合いになるくらいの議論をしていますよね。
工藤: 僕たちは、趣意書に「喧嘩しよう」って書いたんです。つまり、喧嘩ができるほどの関係が重要だということです。実際中国と話してもなかなか儀礼的で本音を話せないのではないかということをいわれたのですが、実際やってみると、中国も結構言うんですよ。だから、日本側の有識者も本当の議論になる。この対話の中から本当に未来を考えなくてはいけないと考えています。
田中: もう少し、具体的なことをお伺いしたいんですが、3日間の会議の内容・あらましを教えてもらえますか?
2010年8月14日
先進的な日本の課題を乗り越えるために、日本自身が問われている
記者会見をし公表した、2010年日中共同世論調査から何が明らかになったのか。記者会見から一夜明け、改めて代表工藤が語ります。聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 理事)
田中: 工藤さん、こんばんは。言論NPOでは2005年から「東京-北京フォーラム」を毎年開催していらっしゃいますが、その一環として毎年日中共同で世論調査を行っていますね。昨日、その世論調査の結果を記者発表されたそうですが、ポイントを教えていただけますか。
工藤: この世論調査は日本と中国の国民に対して、僕たち言論NPOと中国の中国日報社と北京大学の共同で行なっている世論調査です。中国で世論調査を行うということは、もの凄く大変なことで、なかなかできないのですね。僕も、これを実現するために、非常に大変でした。ただ、2005年から6回を継続して行ってきて、やはり両国民の相手国に対するイメージや感情、相手国に対する基礎的な理解が明らかになってきました。調査を開始した2005年は反日デモがあり、日中関係が最悪の時でした。その時は中国の国民は日本に対して非常に悪いイメージを持っているし、日中関係は非常に良くないと思っていました。日本の人もそう思っていました。その時と比べますと、お互いのイメージとか両国関係の現状に対する認識はかなり改善されました。ただその中身で色んな形で違いが見えてきたというのが、昨日の記者会見で説明した世論調査のポイントです。
2010年7月 9日
投票日、有権者は何を判断すべき
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)
田中: 工藤さん、こんばんは。いよいよ投票日が近づいてきましたが、かなり短期間のうちで色々なことをなさってきましたよね。マニフェスト評価、それから各党の政調会長のヒアリング、最後に参院選立候補者に対する個別のアンケートを公開されたようですけれども、どのようなことが分かったでしょうか。
工藤: 今回僕たちが気にしたのは、有権者が、どこに投票すればいいのか悩んでいるのではないかということです。今回の民主党のマニフェストも国民に向かいあったものではありませんが、各党のマニフェストも政策集とか、主張集になっていて、これだけでは選べない。一方で、今の日本が直面している課題に対して、日本の政党がどういう答えを出したのか、というのも定かではない。そのような状況の中で、僕も個人的にそうですが、皆悩んでるんだろうなあと思ったんですね。そこで、言論NPOがその手がかりを出すためには、まず、各党の政調会長にこの課題に対してどのような解決策を出したのか、ということを聞きたかった。それでも分らなければ、候補者自身が有権者に自分の信任を問うていくわけだから、候補者自身が課題認識と解決策をどう考えているか、明らかにしなければ今回の選挙は何のために行われているのかわからなくなってしまう。そう思っていたので、インタビューと候補者アンケートの2本立てでやって、ようやく公表できました。ですから、言論NPOのHPでは、どこに、誰に投票すればよいのかという手がかりは出せたのではないかと思っています。
2010年7月 4日
9党政調会長インタビューを終えて見えてきたものとは
今回の選挙で国民に対し説明するべき政策は何か、各党のマニフェストの真意に迫るため、9政党政調会長(代理)突撃インタビューを行いました。
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)
田中: 工藤さん、こんにちは。今、全政党の政調会長にインタビューをして回っていると伺ったのですが。
工藤: そうですね。僕たちは、マニフェストの評価をしているのですが、今回のマニフェストがかなりひどかったのですね。本来、マニフェストは政権公約なので、去年のマニフェストが本当のマニフェストで、今回の参議院選挙でのマニフェストは、ある意味で、昨年のマニフェストに基づいて政権の中間評価を行なうということです。それにしても、今回のマニフェストが従来型の選挙公約に戻ってしまいました。
一方で、菅さんの民主党も、自民党もそうなのですが、経済や財政、社会保障など、今、日本が直面している課題に対して、何か論戦が始まりかけているのですが、民主党内も一枚岩ではないため、益々分からなくなってきています。ただ、せっかく、今の日本の課題に向けて議論が始まろうとしているわけですから、政党が何を考えているのか、聞きに行かなければいけないと思い9政党を回ってきました。
田中: 確かに、私たちも全党のマニフェストを読むという機会はなかなかないのですが、実際にインタビューをした内容と、実際にマニフェストに書かれていることに違いがありましたでしょうか。
2010年6月20日
21世紀臨調主催「政権実績・参院選公約検証大会」を終えて
6月20日、21世紀臨調主催の検証大会にて政権の実績評価と公約の検証を発表しました。
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)
田中:工藤さん、お疲れ様でした。本日は21世紀民間臨調主催の政権実績・政権公約の評価大会で発表されたのですね。
工藤:徹夜でしたが、かなりしっかりした評価を行いました。言論NPOは鳩山政権の実績と自民党と民主党の選挙公約の評価を行いましたが、点数はかなり低くなりました。
田中:何点くらいですか?
工藤:鳩山政権の実績評価は25点、実績、実行過程、説明責任の3つの観点で評価を行いましたが、特に説明責任が低くなりました。その理由は、鳩山政権が昨年のマニフェストで提案した16.8兆円の支出がかなり難しくなっているのに、それを有権者に説明できていないのです。国民に向かい合う政治という点で、やはり問題があります。私たちは恣意性がある話ではなく、きちんと評価基準に基づいて評価をしていますので、25点になりました。
2010年6月10日
菅新政権をどう見るか
8ヶ月余りの短命に終わった鳩山政権に代わり、6月8日に発足した菅新政権。 7月に行われる参院選挙で国民に何を示さなければならないのか、代表工藤が語ります。
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)
田中: 工藤さんこんにちは。前回の「工藤ブログ」を撮影後にすぐ鳩山政権は退陣になりましたね。マニフェスト評価作業も中断している状況で、あっという間に菅政権になってしまいました。評価作業、大変なのではないですか?
工藤: かなり大変です。基本的には、菅政権は始まったばかりなので鳩山政権の評価をすることによってですがこの間の実績は評価できます。ただかなり時間がなくなってしまいましたので焦っています。
田中: 中身についての質問です。私が一番疑問に思ったのは、一夜にして民主党の支持率がいきなり17%から60%位に上がりました。これはどういうことなのでしょうか。
2010年6月 1日
有権者こそ目覚めないといけない
普天間飛行場の移設問題など混迷する政治状況の中、参議院選挙では何が問われるのか。代表工藤が語ります。
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)
田中: 工藤さん、こんにちは。
マニフェスト評価、鳩山政権の実績評価ということで、今ある程度まとめておられて先日は新聞にも取り上げられていたみたいですが、参院選を目前に控える中、鳩山首相の進退についての話が出てきて先が見えなくなってきていますが、今どういう風に考えていらっしゃいますか。
工藤: 私は政治のリーダーシップがなく、約束も守らずに政権がここまで続いてきたことの方が気になります。鳩山さんはお詫びばかりなので、謝って政治が続いているといった感じです。今回の普天間の問題を見ていて思ったことがあります。鳩山さん自身は公約を実現できなかったのですが、公約を実現しようとした福島さんを辞めさせたわけです。だから政策で何を実現するかについて、約束した選挙の時から機能しなくなっています。こういう事態が続いていたことに関して、僕たち市民側も「これは良くない」と、「政治はこんなものでいいのか」とならないといけない。本来ならもっと政治とは緊張感があるべきです。
田中: そうなのです。そこは私も気になっていて、首相が退陣するかも知れないときに、「やはり辞めるのかな・・・」という感じで、国民もメディアも怒りよりも力がぬけた感じで傍観しているというのが正直な印象です。
2010年5月19日
新しい公共の担い手とは
新しい公共の担い手とは
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)
田中: 工藤さん、こんにちは。ずいぶん久しぶりの工藤ブログですが、この間何をされてたんですか?
工藤: 東京-北京フォーラム関連で中国に交渉に行っていたり、「エクセレントNPO」の議論作りのための準備をして、ずいぶんと大変だったんです。ただ、もう参院選が迫っていますし、これまでのように政策やマニフェストを評価して、言論NPOが考えていることをどんどん伝えていきたいと思います。
田中: 各党がマニフェスト作りを急いでいますので、皆さん工藤さんの発言を待っていると思います。そういう意味では、鳩山さんが予想以上に力を入れていた政策に、「新しい公共」があります。すでに、4月8日に寄附税制に関する税制改正の中間報告書が提出され、そして5月14日に「新しい公共」円卓会議から「宣言文案」というものが記者発表されていますので、今日はこれを中心にお話しいただければと思います。
2010年3月18日
鳩山政権の半年をどう見るか
鳩山政権の半年をどう見るか
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)
田中: 工藤さん、こんにちは。鳩山政権が誕生してから半年が経ちましたが、今の状況をどう見ていらっしゃいますか。
工藤: もともと鳩山政権には、国民との約束を軸にして、それをどうやって実行していくのかということが問われたわけです。それは、何が何でもマニフェストを守らなければいけないという意味ではなく、できない場合は「できない」ということをきちんと言わないといけない。にもかかわらず、予算編成でマニフェストをそのままやることができないということが明らかになったにも関わらず、それに対する説明を聞いたことがない。国民に向かい合う政治とは国民に対する説明責任が伴う政治です。それが全くできていない。
田中: つまりそれは、何を目標にしていて、何をどこまでできたのかという説明ですか。
2010年3月 1日
言論NPOはウェブサイトを全面リニューアルしました
3月1日、言論NPOはウェブサイトを全面的にリニューアルしました。リニューアルの目的とは。新サイトでどんな議論が始まるのか。言論NPO監事の田中弥生氏の問いかけに対し、代表の工藤が意気込みを語ります。
聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事)
田中: 工藤さん、こんにちは。3月1日から、言論NPOはウェブサイトを全面リニューアルしたということですが、その内容について詳しく聞かせていただけますか。
工藤: かなり時間がかかりましたが、ようやく今日リニューアルに漕ぎ着けることができました。言論NPOではウェブサイトを、強い民主主義をつくるための議論のプラットフォームに、大きく変えたいと思いました。そのために、今までやってきたことを全面的に見直して、いろいろな人たちが議論に参加し、自分たちで日本の政治や日本の将来を考え、判断できるような場をつくりたいと考えたのです。そして、双方向性がある一方で非常に知的な、市民社会の論壇をつくろうということで取り組んできました。
田中: 具体的にはどのような構成になりますか。
2009年12月27日
「鳩山政権の100日」をどう見るか
「鳩山政権の100日」をどう見るか 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事) |
2009年11月28日
言論NPO設立8周年にあたって
言論NPOは2009年11月21日、設立8周年を迎えました。言論NPOの8年間の活動と、今後の取り組みについて、言論NPOの監事である大学評価・学位授与機構准教授の田中弥生氏が工藤にインタビューを行いました。 |
2009年11月20日
「事業仕分け」前半戦をどう見るか
「事業仕分け」前半戦をどう見るか 聞き手:田中弥生氏 (言論NPO 監事) |
2009年11月 2日
開催直前!工藤が意気込みを語ります
新しい日中関係の構築に向けた一歩を踏み出せるか |
今年のフォーラムでは何がテーマとなるのか。両国に問われる課題とは何か?
開幕を直前に控えた工藤が、会場から語ります。
2009年10月28日
鳩山首相の所信表明演説を聞いて
鳩山首相の所信表明演説を聞いて 聞き手:田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構准教授) |
鳩山首相の所信表明演説を聞いて
聞き手:田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構准教授) |
鳩山首相の所信表明演説を聞いて 聞き手:田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構准教授) |
2009年9月 1日
選挙結果をどう見るか
選挙結果をどう見るか(1) 聞き手:田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構准教授) |
選挙結果をどう見るか(2) 聞き手:田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構准教授) |
2009年8月27日
今の日中関係は民冷官熱 ―日中世論調査記者会見を終えて
今の日中関係は民冷官熱 |
2009年8月24日
総選挙最終盤、工藤が語ります
2009 総選挙最終盤、工藤が語ります(1) 聞き手:田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構准教授) |
2009 総選挙最終盤、工藤が語ります(2) 聞き手:田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構准教授) |
2009年8月21日
「未来選択」サイトについて
マニフェスト評価専門サイト「未来選択」について 聞き手:田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構准教授) |
2009年8月13日
党首討論を傍聴して ―党首は本気で未来を説明してほしい
党首討論を傍聴して 聞き手:田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構准教授) |
2009年8月11日
両党ともマニフェストを作り直すべき
マニフェスト検証大会で工藤は何を言いたかったのか-1- (全5分7秒) 聞き手:田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構准教授) |
マニフェスト検証大会で工藤は何を言いたかったのか-2- (全8分9秒) 聞き手:田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構准教授) |
2009年7月 3日
「自民党×民主党 政策公開討論会」2日目 を終えて
「自民党×民主党 政策公開討論会」 |
7月2日、都内ホテルにて「自民党×民主党 政策公開討論会」の第2日目が行われました。前半は自民党から町村信孝氏(日本経済再生戦略会議会長)、民主党から増子輝彦(ネクスト経済産業大臣)氏をお招きし、「経済政策」をテーマに議論が交わされました。
討論会終了直後の、工藤のインタビュー模様です。
2009年7月 2日
「自民党×民主党 政策公開討論会」1日目 を終えて
「自民党×民主党 政策公開討論会」 聞き手:田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構准教授) |
7月1日14時半より、言論NPOが主催する「自民党×民主党 政策公開討論会」の第1日目議論がスタートしました。この日は「将来ビジョンと政権担当能力」をテーマに、両党の政策責任者3名と、言論NPO側の司会者、コメンテーター計8名が議論を行いました。
討論会終了直後の、工藤のインタビュー模様です。
(会場設営撤去作業の騒音が入っております。お聞き苦しい点をお詫び申し上げます。)
2009年5月19日
マニフェスト評価作業進行中
マニフェスト評価作業 進行状況について
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2008年8月22日
「第4回 東京‐北京フォーラム」の準備状況について
「第4回 東京‐北京フォーラム」の準備状況について 聞き手: |
2008年7月31日
第4回 東京‐北京フォーラムまであと47日を切りました
第4回 東京‐北京フォーラムまであと47日を切りました! 聞き手: |
2008年7月29日
東京に戻ってきました
四川省からやってきたパンダを見てきました。 |
2008年7月20日
今日から中国に行ってきます!
今日から中国に行ってきます! |
2008年7月16日
言論NPO 対 民主党 『第1回 マニフェストフォーラム』 を終えて
マニフェストフォーラムを終えて(1) 聞き手: |
2008年6月16日
工藤のアンケート分析 ―「日本の政治は信頼できるか」緊急アンケート
6/6~6/14の8日間にかけて緊急実施した 日本の政治に関する緊急アンケートについて、 工藤がアンケート結果を分析します。 アンケートの結果はこちらからご覧いただけます。 聞き手: |
@niftyとの連動企画、「ミニ・ポピュラス」が始動しました!
◆前半:どんな企画? 聞き手: |
2008年6月 9日
@niftyとの連動企画が始まります!
◆ @niftyとの連動企画が始まります!
新たな議論作りを展開します。 聞き手: |
2008年5月20日
第6回非営利組織評価研究会 を終えて
◆ 第6回非営利組織評価研究会 を終えて
( 5分31秒 ) |
2008年5月15日
新刊「中国人の日本人観 日本人の中国人観」のご紹介
過去3回実施した日中共同世論調査から浮かび上がった
両国民の相手国への理解や認識を、この本で明らかにしました。
ぜひご一読ください。
◆ 「中国人の日本人観 日本人の中国人観」 この本のみどころ ( 5分33秒 ) |
2007年12月28日
2007年の総括・後編 <"日本の政治と市民社会"編>
2008年の日本はどうあるべきか、言論NPOはどう展開していくべきか、
代表工藤が今年一年を総括します。
◆ 2007年の総括・後編 "日本の政治と市民社会"編 ( 7分56秒 ) ◆ 2008年の可能性は? ( 2分42秒 ) |
2007年の総括・前編 <"言論NPOの事業"編>
2007年は、日本の政治にとって、国民にとって、そして言論NPOにとってどんな年だったのか。
言論NPO代表工藤が語ります。
◆ 2007年の総括・前編 "言論NPOの事業"編 ( 6分27秒 ) ◆ 知事との対話について ( 3分57秒 ) |
2007年12月 3日
言論NPOの近況 / 「改革」は終わったのか
北京東京フォーラムを終え、現在言論NPOが取り組んでいる新たな議論形成について、代表工藤が語ります。
「改革」は終わったのか ― 「壊す改革」から「組み立てる改革」へ ( 9分4秒 ) |
2007年9月 1日
「第3回 北京-東京フォーラム」を終えて
「2007年 第3回 北京-東京フォーラム」を終えて
( 4分22秒 ) |
2007年8月19日
記者会見を終え、北京からご報告します
「2007年 日中共同世論調査」 記者会見 を終えて ( 5分38秒 ) |
2007年8月 9日
2007年参議院選挙を総括する by 工藤泰志
言論NPO代表工藤泰志が2007年参議院選挙を振り返って総括します。
前半:「参議院選挙を振り返って」 後半:「今後はどうなるのか」 (全 8分30秒) |
2007年6月10日
参院選を前にして
参院選告示を7月5日に控えて、言論NPO工藤からのメッセージ。各党の評価作業とそして、選挙後の展望を語ります。
2007年6月 3日
10人の知事に会ってきて
山形、新潟、福岡、佐賀・・・。言論NPOの代表工藤が、10人の知事に会ってきました。
元三重県知事の北川さんとの違いについて、辛らつな意見も。
2007年5月14日
言論ブックレット 「美しい国」とは何か?
安倍首相が提唱する、美しい国という言葉について、各界の識者が語る、言論ブックレッ ト第5弾。
2007年5月 8日
踊り場にきたマニフェスト
マニフェストが解禁された初めての統一地方選。そこで見られたマニフェストは、単なるスローガンに成り下がったものが散見された。マニフェストを本来の意味に戻すために何が必要なのか?言論NPO代表の工藤に肉薄します。
2007年5月 2日
春の統一地方選を振り返って
マニフェストのチラシ配布が解禁になったのに、マニフェスト選挙にならなかった?その理由を言論NPO代表の工藤が語ります。
2007年4月16日
言論ブックレット 美しい国とはなにか
近日発売となる言論ブックレット「美しい国とはなにか」について言論NPOの代表工藤が語ります。
2007年4月 9日
知事との対話
現在、全国の知事と対話するために、日本中を駆け回っている、工藤。その裏話と、統一地方選の行方。最後のほうには、東京都知事選の石原さんについてもポロリと。
- 前編 -
- 後編 -
2007年3月14日
竹中平蔵氏との対話の感想
竹中平蔵元大臣との対話の感想を、言論NPOの工藤が語ります。
2007年3月 8日
言論ブログ新刊本「安倍政権の100日評価 」について その3
本の後半にある質問「小泉総理は「自民党をぶっ壊す」と宣言して自民党総裁に就任しました。あなたは、安倍政権の100日を見て、どんなことをめざす政権か分かりましたか?」という質問に言論NPOの工藤が答えます。
2007年3月 6日
言論ブログ新刊本「安倍政権の100日評価 」について その2
本の後半にある2つの質問のうち、まずは「 安倍政権は誕生後100日を迎えます。現在まで の安倍政権は、あなたが発足時に抱いていた 期待と比べてどうでしたか?」という問いに、言 論NPO代表の工藤が答えます。
2007年3月 3日
言論ブログ新刊本「安倍政権の100日評価 」について
言論NPO代表工藤が、「安倍政権の100日評 価」の企画趣旨について語ります。
2007年2月14日
言論NPOブログリニューアルについて
より一層の読者参加型を目指した、サイト作り。そこにこめた思いをとうとうと語ります。
2007年2月10日
そのまんま東知事、マニフェスト、そして統一地方選の展望
言論NPO代表工藤が、宮崎知事選とマニフェスト、そして統一地方選の展望について語ります。
2007年2月 5日
2007年、今年の抱負
やせる?というのは、おいといて、言論NPO代表工藤の2007年の目標について語ります。
2006年12月24日
ブックレット紹介 その3 メディアの責任
日中問題におけるメディアの責任に肉迫します。
2006年12月21日
ブックレット紹介 その2 国と地方
国と地方の関係の議論に一石を投じる。すでに品薄状態の一冊です。
2006年12月20日
ブックレット紹介 その1 日中対話
2006年の8月の東京フォーラムの安倍晋三、中川秀直、王毅、趙啓正らのスピーチを公開。
2006年12月17日
ブックレットの出版について
言論ブログブックレット『国と地方』『日中対話』『メディアの責任』が完成しました。その出版についての工藤の思いです。
2006年11月19日
福島県前知事逮捕など、地方の問題について
地方についての問題点、特に多選問題について語ります
2006年11月12日
日米安全保障条約と日米同盟
現在混乱のある日米安全保障条約と日米同盟の違いについて解説
2006年11月 1日
北朝鮮の核実験について
まず起きた時にどう思ったか、現状認識も交えて。
2006年10月12日
最近の興味 特に地方についての心配
最近思うこと。に工藤懸案の地方について。
安倍政権発足について
安倍政権が発足して、工藤の感想などをお聞きしました。工藤の安倍政権の評価は、以外にも・・・。
2006年9月13日
自民党総裁選について
自民党総裁選。すでに決まっているような盛り上がりに欠けた部分もありますが、総裁選、そしてその後について、工藤からお聞きしてきました。
2006年9月11日
日中フォーラムの感想と今後の抱負
日中フォーラムを終えて、1ヶ月。忌憚のない感想を工藤からお聞きしてきました。
2006年8月 4日
8月3日 レセプション後の工藤
レセプション後の少々興奮気味の工藤。充実感が伝わってきます。
2006年8月 3日
8月2日 夕食会後の工藤
夕食後の工藤の様子です。合言葉は、ほんのちょっとの勇気!
2006年7月30日
日中フォーラム直前
言論NPO代表の工藤が、いよいよ直前に迫った、8月2日から4日まで開催される「日中フォーラム」について語ります。(6:26)(聞き手:青山直美)
2006年7月28日
言論NPO自身の自己評価
言論NPO代表の工藤が、言論NPOによる自己評価を発表した経緯を語ります。(09:17)(聞き手:青山直美)
2006年7月 6日
日中フォーラム記者会見を終えて
言論NPOの代表工藤が、日中フォーラム共同記者会見とちょっぴりワールドカップの話題など。(6:33)(聞き手:青山直美)