「言論NPO」 vol.4 「日本の税制改革を戦略化する」
発行元:言論NPO 価格:¥ 1000 (税込) |
目次
巻頭言「日本の税制改革を戦略化する」
言論NPO代表・工藤泰志
特別対談「税制改革における共通認識は何か」
石弘光/本間正明
特集1 何のための税制改革なのか論文「税制改革論議の混迷の背景」
貝塚啓明
エコノミスト会議「コイズミノミックスで信を問え」
高橋進/イェスパー・コール/ロバート・フェルドマン/益田安良
対談「財政バランスは税制改革の目標か」
小川是/八代尚宏
インタビュー「デフレ下で抜本的改革は逆効果」
加藤寛
覆面座談会「どうなっているのか、税制改革論議」
経済官僚
特別企画「日本の育児環境を考える-育児サービスにおける規制緩和の問題点-」
島田晴雄/翁百合/川本裕子/根本直子
特集2 問われる日本の政党政治
座談会「歪んだ日本の政党政治が生むスキャンダルの連鎖」
飯尾潤/山上信一/星浩
インタビュー「横浜市長選に見る政党の役割」
中田宏・横浜市長
座談会 「政治システム改革に時間はない」
曽根泰教/林芳正/玄葉光一郎
秘書座談会 「政党、議員の政策立案機能をどう高めるか」
松崎豊/佐竹茂/栂坂英樹/佐々木孝明/与党政策関係者
座談会「政治資金の流れを国民の監視下に」
安福謙二/尾立源幸/小川真人/林南平
巻頭言より
日本の税制改革を戦略化する
小泉政権も誕生後1年が過ぎ、マスコミではかなり批判的な総括がなされている。わずか1年での評価はそう簡単に行えるものではないが、あえてするならばその最大の評価は政策形成のシステムを官邸や内閣主導に変え始めたことだと、私は考えている。その役割を果たしたのが経済財政諮問会議だろう。もちろんその過程で小泉首相の果たすべきリーダーシップが十分だったかといえばそうではない。しかし、その波紋や混乱は公共事業などの歳出問題やデフレ対策などでも表面化し、従来の利害調整の仕組みだった自民党の政治自体を問い始めている。
その最大の試金石が6月の提言に向けて議論が進んでいる税制改革だろう。だが、その議論はいまだ混迷し、小泉首相の諮問を受けた経済財政諮問会議と政府税調の対立だけがマスコミでは報じられ、関心は当面のデフレ対策での税の活用に移り始めている。混乱の背景には政策形成システムの変更や、何のための税制改革かの目標、理念で合意ができていないことが反映している。今の経済状況やこれからの歳出増を考えれば、まず経済の活力を日本は取り戻さなくてはならない。しかし、これは短期的な景気対策ではなく、将来の国のあり方、制度設計と合わせなければ、抜本改革とはならないのである。残念なことに、こうした将来の日本社会の理念に向けた税制の議論は小泉首相も含め、政治の世界からはまだ具体的に発信されてはいない。
言論NPOではこの一ケ月にわたってさまざまな議論をインターネット中心に行ってきた。まず日本の政党政治の在り方である。「政治と官僚」の問題から始まった戦後政治への問いかけは、相次ぐ政治家の不祥事を通じて政治家のモラルだけではなく、政党や事務所経営、政党の在り方への疑問となって政治への不信を強めた。暴露合戦のマスコミ報道から議論を立て直す意味からも、身内だけでしか通用しない自己弁護やその構造を、民間の視点からも組みなおす議論が必要だと考えたのである。
次に問うたのは、冒頭に掲げた税制改革議論である。対立だけが指摘される中で私が考えたのは一致点を探ること。さらに今回の税制議論を経済の立て直しだけではなく、日本の将来選択を迫る議論まで戦略化することだった。議論には実際に税制改革に携わっている識者が14氏参加したが、そのほとんどがそうした狙いに賛同していただいた。日本の税制改革を戦略的に構想することも必要なのである。私たちがこの議論の中で、かつての米レーガン政権と同様、コイズミノミックス(小泉戦略)を提示して、国民に「信を問え」と主張したのはそのためである。
言論NPO代表 工藤泰志
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