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「言論NPO」 2003 vol.1 「日本のデフレと不良債権処理」

「言論NPO」 2003 vol.1 「日本のデフレと不良債権処理」

発行元:言論NPO

価格:¥ 1600 (税込)



目次

巻頭言「日本のデフレ論議を立て直す」
言論NPO代表 工藤泰志

特集1 デフレをどう克服するか

論文「日本のデフレは 金融的な現象」
黒田東彦

論文「恐慌的デフレ・スパイラルをどう回避するか」
岩田一政

インタビュー「デフレ脱出に向け先ず 需給ギャップの縮小を 」
山口泰

論文「構造デフレ下での経済政策とは何か」
榊原英資

論文「デフレの解消にはミクロでの挑戦しかない」
島田晴雄

論文「世界的な金融資産膨張と 信用収縮リスク」
内田和人

特集2 産業再生、不良債権処理の最終目標は何か

対談「自らを破壊できない日本経済に「産業再生」はあり得ない」
大江匡/松井道夫

対談「産業再生の最終目標は何か」
伊藤元重/福川伸次

座談会「企業再生、不良債権をめぐる政府の関与と限界」
石黒憲彦/川島隆明/ポール・シェアード

対談「経済手術の教訓を韓国から学べ」
安斎隆/ 深川由起子

座談会「労働組合幹部は小泉・竹中改革をどう見るか」
古賀伸明/鈴木勝利/ 高木剛

論文「日本の改革に誰が関心を持つのか?」
ジリアン・テット

金融界覆面座談会
「銀行界に銀行再生の戦略はあるのか」

特集3 道路公団改革と日本の将来設計

「道路公団「最終答申」に対する言論NPO見解」

座談会「民営化論議が中途半端になったのはなぜか」
川島隆明/益田安良/安嶋明

座談会「道路公団改革を日本の将来設計の中で組み直す」
長谷川徳之輔/林良嗣/松谷明彦/横山禎徳

座談会「地方の自立を阻害するグランドデザインなき道路改革」
片山善博/北川正恭/木村良樹/増田寛也/林良嗣

巻頭言より

日本のデフレ論議を立て直す

この国は明らかに歴史的な改革の局面に入っている。一年前、この言論NPOを立ち上げた時に私はこの改革を我々自身が自らの問題として考え、新しい可能性に向かって挑戦すべきと訴えた。安易な政府依存やマクロ頼みの議論では、出口は期待できないと考えたからだ。この一年間、変化は様々な分野で始まった。個人が社会に主体的に関わろうと各地でNPO の設立が始まり、企業から独立しビジネスに挑戦する人たちも少なくない。だが、私が危惧しているのは、日本全体として変化への対応は余りにも遅く、むしろこうした個人の挑戦を覆いかぶすように経済の公的管理とその先行きへの不安感が高まっていることだ。

昨年一年間、私たちの議論は経済政策問題に大部分が費やされた。長期にわたる持続的な日本のデフレ。その中で政府は経済の大手術ともいうべき経済の構造改革に取り組んでいる。これは戦後先進国でも経験したことのない極めて難しい局面だと考えた。構造改革は市場の機能の中で民間経済の新陳代謝を求めるものである。だが、経済の実態は逆に政府の公的関与が強まり、市場経済の原動力であるはずのマーケットは死滅寸前に縮小している。こうした状況が深まる背景には、政府の態度が依然中途半端で、この異常なデフレについてもその認識や対策において政策当事者の足並みが揃っていないことが大きい。

私自身は政府が取るべき選択肢はこの局面で二つしかないと考えている。民間側の自律的な調整に任せ、政府は市場活性化のインフラ整備や戦略的なセーフティネットの構築を図ること、そうでなければ政府が銀行問題や産業再生で公的な関与を強め、イニシアチブを持って一時的な経済手術を断行することである。前者の場合は、銀行問題で即時ペイオフの解禁を行うべきであり、後者では、手術後にどのような着地と市場経済への出口を描くのか、政府は国民に説明する義務がある。いずれもそれを進めるための公的負担の決断とデフレに対応する対策を早急に実施しなくてはならない。今号ではデフレ論議と不良債権処理の議論を立て直すために三〇人近い政策当事者や関係者に議論に参加していただいた。私は今の政策の曖昧さを残したまま、銀行や産業再生のスキーム論議に明け暮れるわけにはいかないと考えた。このままでは市場側の反乱や銀行や産業への公的関与、管理経済を長引かせ、日本の衰退を加速させることになると思うからだ。もちろん、こうした経済停滞は我々個人の挑戦がなければ抜け出すことは難しい。新年、経済の困難は正念場を迎えそうだが、政策論議と同時にこれらの民間の挑戦を取り上げ、建設的な論点を提起する中で混迷の出口、さらに言えば新しい日本の将来選択についての議論を提起していきたいと考えている。

言論NPO代表 工藤泰志



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