「言論NPO」 2004 vol.2 「日本の選択と小泉改革の評価」
発行元:言論NPO 価格:¥ 2000 (税込) |
目次
「巻頭言」工藤泰志(言論NPO代表)
日本の選択と小泉改革の評価
特集
特別対談「国民は日本の将来から逃げられない」
佐々木毅(東京大学総長)/ 北川正恭(早稲田大学大学院教授)
対談「マニフェストは日本の政治を変えたか」
林芳正(参議院議員)/ 古川元久(衆議院議員)
マニフェスト評価「参議院選に問われる争点と対立軸」
アンケート「小泉首相ではこれ以上の改革はもはや限界なのか」
論文「小泉改革への批判に答える」
本間正明(大阪大学教授・経済財政諮問会議議員)
論文「特異な国 日本の構造改革の難しさ」
斎藤惇(株式会社産業再生機構代表取締役社長評価)
小泉改革評価書全文
全体評価・有権者との契約書として機能していない
郵貯改革 道路公団
座談会「小泉改革で景気は回復したか」
中前忠(中前国際経済研究所代表)/ ポール・シェアード(リーマンブラザーズ証券東京支店チーフエコノミスト・アジア)/ 水野和夫(三菱証券株式会社リサーチ本部チーフエコノミスト)
ミクロの改革
規制改革 経済特区
財政改革
プライマリーバランス 歳出削減、予算改革
金融、不良債権問題
不良債権問題 産業再生 中小企業問題
雇用と失業者問題
雇用創出 失業者問題 NPO問題
新分野戦略
研究開発と創業 E-ジャパン 観光立国
持続可能な社会保障制度
社会保障制度・年金改革 子育て(障害者対策を含む) エイズなど医療の安全 食料政策 治安問題 環境・エネルギー
座談会「年金改革に問われるナショナルミニマム」
松島正之(株式会社ボストンコンサルティンググループ・シニアアドバイザー)/ 西沢和彦(日本総合研究所調査部経済・社会政策研究センター主任研究員)/ 駒村康平(東洋大学経済学部助教授)
行政と市場
消費者、投資家保護 公正取引委員会 司法制度改革
効率的な政府の実現
政府、自治体のリストラ、債務の削減、公務員制度改革、特殊法人改革
国と地方の問題
三位一体、地方改革 地域再生、都市と農村、道州制と北海道の道州制特区
外交・安全保障
日米同盟とテロ 北朝鮮の包括的解決 国家安全保障 経済外交
教育・文化対策
文化・芸術、スポーツ
巻頭言より
日本の政党は昨年の総選挙からマニフェスト(政権公約)を公表し、有権者はそれを判断して投票を行うという動きが始まった。
私たちはこの動きと前後して政権の政策運営の実績評価とマニフェストの評価作業を行い、その内容を有権者に公表してきた。
マニフェストとは単なる選挙戦術ではない。政党側はマニフェストを軸に党内で政策を立案し、選挙で選ばれた政党は政権公約を政府の政策として実行し、それを有権者は判断して次の選挙で投票を行う。マニフェストはそうした有権者本位の立場から今の日本の政治を組み変える新たな試みなのである。そのためマニフェストは政策の内容とその実行に関しての有権者との契約となるべきものである。
私たちがその評価作業を始めたのは、政策を軸に有権者と政党との間により緊張感のある関係を日本の政治に取り戻したいと考えたからである。
だが、マニフェスト選挙は動き始めたものの、有権者との契約として十分に機能したわけではない。政党側もマニフェストを軸に政策を立案し実行するシステムをまだ確立しておらず、選挙上都合の悪いことは依然として公約から外すことを当たり前と考えている。
今回の参議院選は公約実行の中間評価が最大の争点とされている。自民党も公明党も昨年掲げたマニフェストの進捗を自賛しているが、それは公約として並べたことに何らかの形で着手したと言っているに過ぎない。私たちが5月に公表した政権与党のマニフェスト実行の中間評価はこのため自民、公明両党とも全項目の平均値で三〇点台といずれも低いものとなった。
私は、現在の日本に問われている最大の課題は、社会保障制度を始め持続不可能となったこれまでのシステムを作り変えることだと思っている。持続可能ではないシステムをこのまま維持することは現役だけではなく将来世代に背負えないほどの負担を先送りさせることになるからだ。ただそのためには、政治がその答えを国民に提示し、合意を形成する努力が必要となる。
本来、マニフェストとはそうした日本社会への設計図になるべきものでその進捗を問うべき選挙が参院選挙である。だが、マニフェストは曖昧なままその中身が参議院選でも改善されることはなかった。むしろ政策論議を回避するため、重要な決定や判断は選挙で争点化されることなく先送りされている。有権者と合意を形成すべき重要な局面なのに、それが行われていないことが問題なのである。
今号は今回の参議院選と前後して私たちが行ってきた政権与党のマニフェスト評価とそれに伴い行ってきた様々な議論の一部を緊急にまとめたものである。皆さんの政治評価の判断材料の一つに加えていただけたら幸いである。
言論NPO代表 工藤泰志
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