アメリカと比べない日本 (単行本〔ソフトカバー〕)
著者:横山禎徳 出版社:ファーストプレス(2006/08) 定価:¥1,365 (税込) |
著者による 「この本の読みどころ」
日本は長年欧米先進国、特に、第二次大戦後は圧倒的に豊かですべてにおいて先進的なアメリカに憧れ、追いつきたいというのがこれまでの日本人のマインドセットを形成してきた。最近は、日本の自立を語るようになったが、それはアメリカを褒めることでもけなすことでも、まして、アメリカと比べてみることでもない。アメリカをベンチマークする時代は終わった。
近年、「超高齢化社会をどう経営するか」というような世界最先端の課題がアメリカではなくまず日本に出てくるようになってきた。少子化はすでにヨーロッパ諸国が先に直面し、ある程度効果のある対策がされている。しかし、超高齢化に関しては日本が人類史において始めて直面している。日本は世界の「課題先進国」なのだ。
グローバリゼーションの時代にもかかわらず、日本は内向きであるとか、存在感がないとかという弱点を指摘されるが、実は世界最先端の課題が日本にあるのだから内向きになってその課題を自力で解決して見せればよい。「課題先進国」から「課題解決先進国」になり、日本から普遍性のある思想を世界に提示するチャンスが来たのである。そのためには「欧米先進国」の「先進事例」をまず探すという長年培ってきたマインドセットとはっきりと決別する必要がある。「欧」と「米」とが違うだけでなく、多くの面で彼等は必ずしも「先進国」ではない。
自力解決するための新たな方法論として著者は「社会システム・デザイン」というアプローチを提案している。それは縦割り行政、縦割り学問、縦割り産業のすべてを横串した「消費者への価値提供システム」のデザインという発想に基づいた5ステップ・アプローチである。
これは政策提言という言いっぱなしの発想ではなく、既存の縦割りの壁を越えてこれまでの局所最適化を打破し、効果の上がる仕組みの具体的デザインである。このアプローチを使って「健康・医療システム」や「年金システム」、「高齢者雇用システム」などの「超高齢化時代の経営」を支えるシステム・デザインについては続編に提示される予定である。
書評
最近になってようやく、日本はもはや欧米の追随をしてもダメ、これからは独自の道を歩むべきである、という議論がちらほら見られるようになってきています。
本書は、そんな欧米脱却論の、さきがけ的存在となるような一冊。ただし著者によると、「欧米」というくくり方に既に無理がある、ということですが…
冒頭から、日本の太平洋戦争の時代にまでさかのぼり、その時代からバブル崩壊に到るまでの過程を振り返ります。日本人がどのようにして欧米を追いかけ、肩を並べ、そして追い越しかけたのか??
そしてそれを踏まえ、現在の日本がもつポテンシャルを、冷静かつ客観的に分析。
最後に、今後の日本再生の手段として、「社会システム・デザイン」という新しい手法を提案します。
全体として、体系的に理論立てられた構成というわけではなさそうですが、随所に斬新な視点からの議論が盛り込まれており、非常に刺激的な内容となっています。
例えば、「平成のバブルの評価」という項。現在、Amazonで「バブル」というキーワードで検索すると、バブルに関して否定的に捉えた本が山のように…
しかし、バブルにも肯定的な側面があり、日本人もそろそろそこに気付くべきである、と指摘します。
また、マンガやゲームといった「大衆文化」が、世界に唯一影響を与える日本文化としてここまで発展したのは、この産業が官庁からの保護・育成を受けなかったためである、という議論も。そういう見方もあるのか!!という感じです。
今後の日本の方向性を考えるに当たり、極めて示唆に富んだ書と言えるでしょう!!
最後の「社会システム・デザイン」の紹介では、具体的に突っ込んだ議論があまりなかったので、続編にぜひ期待したいです。
投稿者 けぞう : 2008年7月 2日 11:20
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