「課題先進国」日本―キャッチアップからフロントランナーへ
著者:小宮山 宏〔東京大学総長〕 出版社:中央公論新社 (2007/09) 定価:¥ ¥1,680(税込) |
著者による 「この本の読みどころ」 聞き手:言論NPO代表 工藤泰志
現在の日本の姿は未来の地球の姿であり、日本が抱える現在の課題は、未来の世界が抱える課題であると言えるでしょう。日本は先進的に世界の課題を先取りしている、そういう意味で、私は日本を「課題先進国」と呼んでいます。
これからの日本に大事なことは、先進国、フロントランナーとして立つマインドです。日本は既に技術を持っているだけでなく、協力して実行する文化も持っています。特に「環境とエネルギー」という21世紀の鍵となる問題に対しては、日本が先端技術と実績を持ち、そのための文化も持っています。そこがとても重要な点だと思うのです。日本が今遭遇している課題を自ら解決することで、それが新しいモデルとなり、やがて同じ課題に遭遇する世界に導入されるのです。21世紀の日本はようやくその立場に立ったわけです。
そして、知識が爆発的に増大している時代であるからこそ、全体像を把握するため、知識の府としての大学の役割がますます重要となっています。「知の爆発」という現状を乗り越えるべく、全体像を把握する能力を回復することは、失ったリアリティを取り戻すために不可欠の条件であり、そうした議論の場を提供するのが、他ならぬ大学の役割なのです。
総長就任後初の入学式で、「本質を捉える知」・「他者を感じる力」・「先頭に立つ勇気」を学生時代に獲得してほしいとのエールを送りましたが、私は本書を、学生を始め、今後の日本を切り開く若い世代に読んでほしいと考えています。大きな構造が変わるこのチャンスを存分に活かしてほしいと思います。
日本は「課題先進国」です。自分たちの課題を自分たちで解決するというマインドを持ち、「課題解決先進国」日本となって世界の先端に立ちましょう。
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