国連創設80周年を迎えた今年2025年、トランプ政権復活でさらに後退を続ける国際協調。世界10カ国のシンクタンクの代表者や世界的オピニオンリーダーと共に、多極化、分断化する世界で国際協調や平和をどう修復するのか、議論を行いました。

2017年の設立から9回目となる「東京会議」は、都内の東京プリンスホテルを会場に2025年3月3日から5日の日程で開催されました。
昨年の「東京会議2024」は、ウクライナ戦争に加えてさらにガザ紛争が勃発し、世界がこの二つの戦争を止められないだけでなく、気候変動や食料不足、エネルギーの高騰など連鎖した複合危機によって不確実性が高まる状況の中で開催されました。
本来、多国間協力が必要な局面であるにもかかわらず、世界は地政学的な対立からむしろ分断傾向を強め、保護主義やブロック化の動きまであり、国際協力の動きが大きく後退しているこの危機にどう立ち向かうか、世界の識者とともに議論を交わしましたが、こうした状況は一年経っても改善されていません。
それどころか米国ではドナルド・トランプ氏が再び大統領に就任し、その自国第一の挑戦的な行動が、世界がこれまで積み上げてきた合意やグローバル・ガバナンス、そして国際協調を動揺させています。このトランプ氏の行動はウクライナ停戦とガザの復興にも大きな影響を及ぼし始めています。
世界の危機がさらに深まる中での開催となった「東京会議2025」では、国連やその他多くの国際機関が今年創設80周年の節目を迎えることを踏まえつつ、誰がどのようにして国際協調と多国間協力に基づくグローバル・ガバナンス、そして平和を守り、修復するのか、という難題に挑みました。
今回の「東京会議2025」には、民主主義国10カ国のシンクタンクの代表者が集まるとともに、国家首脳級のスピーカーが参加。基調講演には、国際連合事務総長のアントニオ・グテーレス氏がビデオメッセージを寄せました。現職の国連事務総長がこの「東京会議」で発言するのは今回が初めてです。グテ―レス氏はその中で、昨年9月に国連が「未来サミット」の中で「未来のための協定」を採択したことに触れつつ、「『東京会議』は協定の目的を前進させ、多国間主義を未来に向けて推進する重要な基盤を提供している」と強い期待を寄せました。
続いて基調講演に臨んだ元インドネシア大統領のスシロ・バンバン・ユドヨノ氏ら首脳級要人たちも、トランプ米政権の力とディールによる政治に対抗する姿勢を明確に示し、あくまでも多国間協力によって国際課題の解決に取り組むことを相次いで強調。

また、前首相の岸田文雄氏は、今回から「東京会議」の最高顧問に就任し、開会挨拶に登壇。その中で「国際社会が長きにわたる懸命な努力と多くの犠牲の上に築き上げた、法の支配と多国間主義はどんなことがあっても守り抜かなくてはならない。今が覚悟を問われる時だ」「自国利益のための取引が支配する世界は、これまで米国が主導してきた自由で開かれた国際秩序や、これからの国際社会のあり方を変えてしまう可能性がある」などと踏み込んだ発言をし、SNS上では120万人が反応するなど大きな反響を呼びました。

さらに、歓迎夕食会にメッセージを寄せた石破茂首相も、「現在、先人たちが国連創設に託した未来、国際協調により平和と安全が維持される社会を生きているとは到底言えない」との認識を示した上で、「国際社会は、新たな時代にふさわしい改革が必要だ」と主張。「今日の国際社会の現実を反映した国連安全保障理事会へと改革することを含め、機能する国連の実現に向け、ふさわしい役割を果たしていきたい」と日本政府としての方針も強調しました。
他にも、「世界の安全保障と日本の役割」をテーマとするワーキングディナーには中谷元防衛大臣が出席するなど、政府要人自ら日本の立場を説明することにより、世界の識者が日本に対する理解を深めるきわめて貴重な機会を提供しました。
公開・非公開のセッションでは、「米国の外交政策は根本的に変わりつつあり、すぐには戻らない」との認識の下、米国不在の多国間協力にどのように取り組むべきか、あるいは米国を復帰させるために同盟国・友好国は何をすべきか、といった視点での活発な議論が展開されました。
米国ではトランプ大統領が施政方針演説を行い、中国では全人代が開幕する前日というタイミングで「多国間協力」を全面に掲げる世界会議がこの東京で開催されたことの意味は大きく、しかも「多国間主義を守り抜く」との議長声明も採択したこの日本発の取り組みは世界20カ国から集まった約40名の要人や識者を大いに驚かせるとともに、議論の内容面でも高い評価を受けました。
本当に素晴らしい会議であった。これほどまでに卓越した有識者の方々を国内外から招待することは、並大抵のことではなかったと拝察するが、皆様はまさに歴史の転換点に立ち会うという得難い機会に恵まれたことを、ぜひ心に留めていただきたい。
(ジェームス・リンゼイ・米国外交問題評議会前副会長)
報道では、一面を割いて特集した読売新聞、パネリストインタビューを掲載した朝日新聞など国内メディアのみならず、CNNなどの海外メディアでも議論の模様は詳しく報じられました。その多くは、東京会議が主張する「多国間協力」を強調した報道内容であり、「東京会議」は、多国間主義や国際協調、法の支配、平和と言った日本に問われる外交姿勢を明確に打ち出す日本発の「世界会議」という特色がより鮮明になりました。