非公開会議2 / ゲストスピーカー:木原誠二(内閣官房副長官)
「新しい資本主義」の実現で、中産階級を生み出す"心の土台"をつくり、ひいては少子化解消など日本の将来的な持続性にもつながる

 続く非公開会議2では、「壊れ始めた自由と民主主義の修復は可能か」をテーマに議論が行われました。このセッションには、ゲストスピーカーとして木原誠二内閣官房副長官が登壇。日本の首相が戦後初めて戦地に入るという、岸田文雄首相による歴史的なウクライナへの電撃訪問に同行した木原氏は、まさにこの日の朝に帰国。異例の強行軍の中でこの「東京会議2023」に駆けつけ、10カ国のシンクタンクの代表と率直な意見交換を行いました。


 木原氏はその中で、岸田政権が推進する「新しい資本主義」について講演しました。木原氏は、中国やロシアのような権威主義国家の場合、国民の不満を強権的に抑え込めることができるが、自由民主主義国家の場合はそうではないと指摘。だからこそ恒常的に不満を解消するような取り組みを続けていかないと、民主主義陣営は「自滅することになる」との問題意識を示しました。


 それを踏まえて、こうした不満を解消するために日本政府が進めていく取り組みについて説明した木原氏はまず、この30年間で日本は「"高い"国から"安い"国になってしまった」と賃金低迷を問題視。これが格差を広げるとともに、「国民が未来への希望を失った」としつつ、少子化などの課題にもつながっているとの見方を示し、投資の促進とともに賃上げを政策の軸として取り組んでいくと説明しました。


 一方で木原氏は、投資も賃上げも「企業任せではなく、官民が連携してやっていく必要がある」と指摘。投資についてはデジタル・トランスフォーメーションやグリーン・イノベーション、半導体、AI(人工知能)、量子技術といった分野を挙げながら、「政府が先行して投資していく」としながら、様々な政策について具体的に解説しました。


 木原氏は最後に、これまでの規制改革や構造改革がデフレ脱却とは真逆の結果を生じさせるとともに、「国民に安心をもたらすことができなかった」と回顧。「新しい資本主義」による政策のキーワードは「安心・安定」であるとしつつ、それが「中産階級を生み出す"心の土台"をつくり、ひいては少子化解消など日本の将来的な持続性にもつながっていく」とし、講演を締めくくりました。


 その後、各国のパネリストとの質疑応答に入りました。その中で、G7サミットにあたって、グローバル・サウス諸国を民主主義陣営に引き留めるための方策を問われた木原氏は、「民主主義対権威主義」の構図を前面に出しすぎるとかえって逆効果との認識を示しつつ、国際法や法の支配の重要性といった視点からアプローチしていく必要があると回答。こうした観点から日本が仲介的な役割を果たしていくと語りました。


 ポピュリズムへの対処について木原氏は、経済的な安心・安定こそが実効的な対策になると改めて強調しつつ、日本もイギリスのような「第三の道」を考える段階に来ており、それがまさに「新しい資本主義」なのだと述べました。


 賃上げの副作用についての指摘を寄せられた木原氏は、そうしたリスクは確かにあるとしつつ、「現状はそれを気にする段階にはほど遠い」との見方を示し、「やはりマイルドに賃金が上がっていく状況でないと、人々は未来に希望を抱かない。賃上げ促進は経済政策のみならず社会改革だ」と語りました。


 会議ではその他、日本の科学技術から財政政策、核軍縮・核不拡散に至るまで多岐に渡る白熱した議論が展開されました。