安倍政権2年実績評価【教育】評価結果
昨年:3.0点
評価の視点
【初等中等教育】
・教育費負担をどう低減してきたか
・学力を維持・向上するために実効的な取り組みをしているか
・社会や子どもの変化を踏まえた教育システムの見直しを進めたか
・具体的な財源の展望はあるか
【高等教育】
・国際競争力向上のために的確な方針を打ち出しているか
・実効的なガバナンス改革をしたか
・大学の役割分担をどう考えるか
【初等中等教育】
これまで1947年に制定された教育基本法と学校教育法によって形作られた日本の教育システムは、戦後日本の国民の教育水準を高め、社会・経済発展の原動力になってきた。 しかし、近年の社会の変化や子どもをとりまく環境の変化に現在の教育体制は十分に対応できていないと指摘されている。また、所得格差が広がり、その格差が教育を受ける機会(教育格差)につながり、世代間で格差が継続・固定することへの懸念も広がっている。
そのような状況の中、自民党は初等・中等教育に関して、2012年衆院選公約で、平成の学制大改革、子育て支援の充実・幼児教育無償化、教育委員会改革、全国一斉学力テスト・土曜授業・道徳教育、高校授業料の無償化を所得制限付きに転換することなどを掲げた。また、2013年JファイルではOECD諸国並みの公財政支出を目標とした。実績評価は、これらに掲げられた政策項目に関して、下記の視点に基づき行うこととする。
まず、第一に、子育て支援と関連した教育費負担の課題にどう取り組んできたか。第二に、少子化が進む中で世界トップレベルの学力を維持・向上するための教育の質の改革にどう取り組んできたか。第三に、戦後長らく続いてきた現行の教育システムを、子どもを取り巻く環境の変化に対応するために、どのように改革してきたか、である。
さらに、教育においては、歴代政権が財源確保の展望がないまま政策を打ち出していたケースが多いため、具体的な財源論にまで踏み込めているかについても見ていくことにする。
【高等教育】
グローバル化による「知」を巡る国際競争の激化や知識基盤社会の進展等により、高度な知識・技能を備えた人材の育成や、社会が直面している諸課題の解決に向けた研究開発のために大学が果たす役割は、以前にも増して重要なものになっている。イノベーションを推進し、経済成長を牽引するエンジンとしても、大学に対する社会の期待は大きい。しかし現在、高い進学率に伴う大学の大衆化や少子化傾向、国家財政の悪化による教育予算の圧縮傾向など、大学を取り囲む環境は大きく変化し、大学自身に変質をもたらすような大きな課題に直面している。
そのような状況の中、自民党は2012年衆院選公約において、世界トップレベルの大学強化や、9月入学やインターン制度の拡充を掲げている。2013年参院選公約では、世界大学ランキングでの地位向上や大学ガバナンス改革、国際化推進を謳っている。さらに、2013年のJファイルにおいては、運営費交付金の配分のあり方など、国立大学改革についてより詳細に記している。実績評価は、これらに掲げられた政策項目に関して、下記の視点に基づき行うこととする。
まず、グローバル化が進む中、大学の国際競争力を向上させるために、どのような対応策を打ち出してきたのかを見ていく。次に、大学が急速な環境変化に対応していくためには、迅速かつ適切な意思決定を可能とするガバナンスが不可欠であるため、これをどう改革してきたのかを評価する。さらに、全ての大学をグローバル化や高度研究に対応させることは、実質的には困難であるため、「研究型」、「地域拠点型」など大学の特徴に応じた役割分担(いわゆる機能別分化)について、どのように対応しようとしているのかを検証していく。最後に、現在の大学が経済社会が望む人材を輩出できていないなどの問題への対応策を見ていくことにする。
【教育】個別項目の評価結果
【出典】2013年Jファイル
1点(5点満点)
昨年:0点
経済協力開発機構(OECD)は9月9日、加盟国の教育施策に関する調査結果を公表した。2011年の国内総生産(GDP)に占める日本の教育への公的支出割合は3.8%(加盟国平均は5.6%)で、比較可能な32カ国の中で最下位だった。
下村文科相はこの結果を受けて、「公財政支出を教育において十分賄うような環境作りをする(平成26年9月16日 定例記者会見)」と述べ、公的支出割合を増加させることへの意欲を示した。教育再生実行会議でも10月15日から教育財源の確保策に関する分科会が始まり、来年6月をめどに提言をまとめる方針である。
ただ、日本は諸外国に比べて子供の数が少なく、日本の小中学校向け公財政支出を在学者一人当たりで見るとOECD平均よりも高くなる。むしろ、日本の国民負担率が国際的にみて低水準であることをふまえれば、日本の小中学校には十分に手厚い予算措置が行われているといえる。また、日本の小中学校予算は教員給与に配分が偏っている結果、在学者一人当たり教員給与支出は国際的にも高い水準になっているが、教育よりも雑務に投じる時間が他国と比べて圧倒的に長く、肝心の学力向上やいじめ対策において目立った成果を挙げていないなど非効率も目立つ。また、依然として算出の根拠や具体的な使途が明確ではない点も問題である。
財務省も教員定数、給与水準両面からの合理化を求めるなど文科省の予算増には否定的であるし、そもそもOECD並みの水準にするためには、教育に対する公財政支出を約10兆円引き上げる必要があるなど非常にハードルが高いため、目標達成は極めて困難である。
【出典】2012年衆院選マニフェスト
4点(5点満点)
昨年:4点
【学力テスト】
平成 26 年度の全国学力・学習状況調査(学力テスト)は4月22日に全員参加方式により実施し、8月25日に結果が発表された。そのためマニフェストで掲げた公約は実行した。
経済協力開発機構(OECD)の「国際学習到達度調査(PISA)」における日本の成績が2012年に急激に回復した背景には、学力テストに活用力をみるための「B問題」を導入した効果があると考えられ、学力向上には一定の効果があるといえる。
他方で、「全ての子供の課題把握、学校・教師の指導改善(Jファイル2013)」も目的としている本調査だが、今回は過去6回の調査で正答率が70%未満だった「苦手分野」からの出題が約3割あったものの、大きな改善は見られなかった。すなわち、過去のテストで既に課題を把握していたにもかかわらず、指導改善につながっていない部分もあるなど、フィードバックのあり方にはまだ課題も残っている。
【土曜授業】
7月25日発表の文部科学省の調査によると、2014年度に土曜授業を実施する予定の公立小中高校の割合は16.3%となり、12年度の前回調査(8.6%)と比べほぼ倍増した。依然として教員の負担の大きさなどから消極的な自治体も多く、持続的な制度とするためには課題も多いが、実現の方向に向っていると評価できる。また、東京都教育委員会が10月23日に発表した学力テストの分析結果では、土曜授業を東京都の成績向上の一因に挙げるなど、学力向上という目的を果たす上で一定の効果があるといえる。
【道徳教育】
中央教育審議会は10月21日、現在教科ではない小中学校の道徳を教科に格上げするよう下村文科相に答申した。同省は今年度中に道徳に関する学習指導要領の改定案と教科書の検定基準を示し、教科書を使った授業は2018年度にも実施される予定である。
ただ、記述式となった評価方法や教科書作りには大きな課題が残されている。特に検定教科書の導入を決定したが、学術的な通説がない分野を多く含む道徳で何を根拠に検定意見を示すのかは大きな課題となる
また、そもそも「いじめ対策」として道徳教育の充実が欠かせない、ということからこの道徳の教科化が加速されたわけだが、中教審では道徳教育がいじめ対策にどう有効なのか実証する場がないまま審議が進められるなど、本来の目的を達成できるかどうかは現時点では判断できない。
【出典】2012年衆院選マニフェスト
3点(5点満点)
昨年:3点
7月3日公表の教育再生実行会議の第5次提言では、全国一律に6・3・3・4制を見直すことは見送られた。
ただ、同時に小中一貫教育の制度化が提言された。下村文科相から制度化についての諮問を受けて、中央教育審議会(中教審)は、学年の区切りを自由に設定できる「小中一貫教育学校(仮称)」と、別々の小学校と中学校が統一したカリキュラムで学ぶ「小中一貫型小・中学校(仮称)」の制度化を年内にも答申する見通しである。文科省はこれを受け、学校教育法などの改正案を来年の通常国会に提出する方針である。
いずれも各市区町村教育委員会の判断で設置するものであり、全国一律の制度ではない。しかし、第5次提言ではこれらの一貫校の成果と課題を把握、検証した上で、6・3・3・4制について引き続き今後の検討課題とする、としている。
この点、文科省の実態調査によると、すでに特例で実施している1130校の9割が「中一ギャップ」の解消について、「成果がある」と答え、学力向上に効果があるとした学校も4割を超えるなど、成果が期待できる。一方、小中連携に伴う打ち合わせ時間の増加など教職員の負担増(85%)を指摘する声が多く、さらに、一貫校を新設する場、市区町村が負担する1校あたり30億~50億円の費用も課題となる。そのため、全国一律の制度となるかは現段階では判断できない。
なお、第5次提言では、中長期の検討課題として、幼稚園や保育所に通う5歳児まで義務教育の範囲を拡大することをあげている。この背景の一つには小学1年が学校生活になじめず、教室で騒ぎ回るなど授業が成り立たない「小1プロブレム」がある。しかし現在、子どもたちが通う施設は幼稚園、保育園、認定こども園と分かれている上に、そのどこにも通わない子どももいる。提言では5歳児から小学校に通うという構想ではないため、すべての子どもが上記いずれかに通えるようにする必要があるが、保育所の待機児童解消は進んでいない。また、民間が運営するケースが多いこうした施設で一定の教育水準をどう確保するのかという課題がある。さらに、財源についても、提言では「資源配分の重点を高齢者から子どもに移す」としているのみであり、明確な展望はなく、実現に向けた課題は山積みである。
【出典】2012年衆院選マニフェスト
2点(5点満点)
昨年:2点
教育再生実行会議の第5次提言では、幼稚園、保育所、認定保育園などにおいて、「教育の質の向上の観点から見直しを図る」としているのみであり、昨年の第2期教育振興基本計画から踏み込んだ内容にはなっていない。また、「子ども・子育て支援新制度」の下、「質の高い教職員を確保していくための養成、研修、処遇、配置や施設運営の支援に関する制度面・財政面の環境整備を行う」としているが、子ども・子育て支援新制度は消費税10%への増税を前提とし、毎年約7000億円の財源を見込んでいるものである。政府はその増税が先送りされたことにより、不足する財源確保について来年度予算案編成までに検討する方針であるが、一部の事業の実施が困難になる可能性があるため、子育て支援の充実という目標の達成も困難なものになる。
幼児教育の無償化については、平成26年度予算において、無償化に向けた段階的取り組みとして①生活保護世帯の保護者負担を無償、②第2子の保護者負担を一定の場合において半額にすること等に必要な経費が計上された。さらに、2015年度に5歳児を持つ年収360万円未満の世帯の無償化を目指す方針であったが、このために必要な240億円の財源確保の見通しは立っていない。財務省は現在の35人学級から40人学級に戻すことによって、教員数を減らして財源を捻出することを提言しているが文科省は猛反発しており、また、消費税10%への増税が見送られたため、2015年度に実現することは極めて困難である。
【出典】2012年衆院選マニフェスト
5点(5点満点)
昨年:5点
所得制限の導入は4月1日から施行され、実現した。
【出典】2012年衆院選マニフェスト
3点(5点満点)
昨年:3点
地方公共団体の長が、議会の同意を得て任命する教育長が教育委員会を代表し、その会務を総理することや、総合的な施策の大綱を策定し、その協議等を行うため、総合教育会議を設置することなどを定める「地方教育行政の組織及び運営に関する法律の一部を改正する法律案」が6月に成立した。
今回、法改正が行われることになった直接のきっかけは大津市のいじめ自殺事件で、市教委の対応が不十分だったことから、教育委員長と教育長という2人の責任者が併存する現行の体制では、教育行政の責任の所在が不明確である、という批判が巻き起こったことであった。新設された教育長は、これまでの教育委員長と教育長が一本化された役割を持つ。教育長が事務執行の責任者であり、執行機関の代表者となるので、これによって責任の所在は明確になった。
しかし、同時に権限も集中することになる。これまでも教育長は実質的に地方教育行政に大きな影響力を持っていたが、法制度上は教育委員会の補助機関であり、教育委員会が教育長に対する指揮監督権を持っていた。今回の改革では、その法的権限がなくなったため、教育委員会がどのように教育長をチェックするのか、という課題がある。
大綱については、改正法では具体的な規定がほとんどない。大綱は自治体の教育行政の基本的方針であるが、その策定は首長の専権事項となり、教育委員会や議会の承認を必要としなくなったため、どの程度のことまで大綱に盛り込むのかは首長に委ねられると見られる。総合教育会議も同様に具体的な規定がほとんどないため、施行後にどのような運営が行われるかは自治体ごとに異なることが予想される。
以上のように、首長や教育長の権限が強まったことにより、各地の教育行政が個人によって大きく左右される、さらには、その交代によって教育行政の継続性、安定性に支障が出てくる可能性もある。
しばらくは試行錯誤が続くことも予想され、改革が真に実効的なものになるかは現段階では判断できない。
なお、安倍政権はその第1次政権時においては、教育長に対する教育委員会権限の強化を目指していたが、第2次政権下で行われた今回の改革では、全く逆に教育長の権限強化をしているなど、政策に確固たる方針が見られない点も問題である。
【出典】2013年参院選マニフェスト
2点(5点満点)
昨年:3点
安倍総理は、2013年5月「今後10年間で世界大学ランキング上位100校に日本の大学を10校以上入れる」と明言し、翌年2月に下村文科大臣は、日本の大学ランキングが低い理由として国際化が進んでいないことを挙げ、これに対応するために、「スーパーグローバル大学創生支援」事業を創設すると述べた。これを受けて文科省は2014年9月に大学の国際競争力の強化のため、世界と競う大学への重点支援を行う「スーパーグローバル大学創成支援」事業を創設し、37校(世界の大学ランキングで100位以内を目指す「トップ型」は13校)を選定した。だが、日本政府がめざすべきランキングとして掲げている英国Times Higher Education 誌の"World University Ranking"2013-2014では、100位以内に入った日本の大学は2校に過ぎず、2014年現在、ランキングは下降傾向を示している。
また、そもそも「スーパーグローバル大学創生支援」が日本の先のTimes Higher Education誌の世界大学ランキング地位向上のための達成手段にならないことも指摘したい。下村大臣は、先のスーパーグローバル補助金によって、外国人教員や留学生数を増やし、国際化を進めることで、大学ランキングを上げると述べている。しかし、Times Higher Educationの大学ランキングにおける外国人教員数や留学生数のウエイトは高くなく、統計手法を用いて感度分析を行ってみたが、外国人教員数などが増えてもランキングは上がらないという結果が出ている。また、Times Higher Education誌のランキング評価では、英文論文の少ない文系の業績は全くカウントされないこと、ウエイトの高い「評判指標」は、欧米の教員を主たる対象に行っているアンケートで「知っている大学を挙げてもらう」というかたちでなされているなどを踏まえ、これを政策目標に用いること自体の是非についても再検討する必要があるだろう。
「学長のリーダーシップの強化」については、「学校教育法及び国立大学法人法の一部を改正する法律案」が6月に成立した。だが、その実効性については疑問がもたれる。なぜならば、久しく、この問題が掲げられているにもかかわらず成果が見えないからだ。「学長リーダーシップ」については、小泉政権下で国立大学法人化を検討する際、民間的手法導入の一環として掲げられ、以来、度ごとに言われているトピックである。これは、民間的手法という名称にあるように、民間企業のトップ・ダウン方式による改革や経営効率化を範にしたものである。しかしながら、多様な学部、学科を包含し、学問の自主・自律性を基調とする大学組織に、民間企業のようにトップ・ダウン型のリーダーシップで、教育研究現場の末端を動かすことができるのか疑問がもたれる。「学長のリーダーシップ」の実効性について、根本から検証する必要があるのではないか。
「運営費交付金の傾斜配分」については、2013年5月に文科省より「国立大学改革プラン」が出された。本改革案では、国立大学を3つの類型(世界最高水準の教育研究を展開する拠点、全国的な教育研究拠点、地域活性化の中核的拠点)に区分した上で、1.1兆円の運営費交付金の3割~4割を、その区分を反映した配分方法にするとされている。しかしながら、同省が示す改革加速期(平成25-27年)半ばを過ぎても、その進捗はほとんどみられない。
このような状況に鑑み、財務省は、現行の取り組みや大学評価制度では、当初の改革目的は容易に達成できないとし、新たな評価制度と運営費配分方法を提示した。すなわち、改革期に投じた特別経費結果を翌年度の運営費交付金基礎的経費に反映し、ここに傾斜をつける(現在は、教職員と学生数に応じた算定式で平準化されている)。それ以降は、大学を3つの類型ごとにグループ化し、類型ごとに異なる指標で評価し、取り組みが優れた大学に一般運営費交付金を重点配分するというものである。
下村文科相は運営費交付金と評価指標について検討すべく、11月5日に有識者会議を設置し、来夏までに結論を出し、2016年度予算から新たな配分方法を採用する方針すると述べている。しかしながら、大学のみならず、文科省内にも抵抗があり、表面的な対応策にとどまる可能性がある。
なお、一般運営費交付金は相当部分が教職員の人件費であるため、財務省の述べるように、先の3分類に応じて、単純に傾斜配分することは適当ではないだろう。たとえば、先の3分類のうち、教育に重点をおく「全国世界研究拠点」型の大学の場合、比較的外部資金を調達しにくいため、安定的に教育サービスを供給するためには運営費交付金に頼る必要があるのに対し、「世界最高水準の教育研究を展開する拠点」大学の場合には、比較的外部資金を獲得しやすく、研究者の人件費も競争資金で賄える可能性が高いことから、必ずしも基礎的経費に依存しなくてもよいかもしれない。
さらに、運営費交付金を先のような分類に応じて配分するのであれば、教育、研究に区分する必要があり、そのためには人件費の大半を占める教員のエフォート(教育、研究に投じている時間コスト)を明確にする必要があるだろう。このように考えると、大学改革はトップ・ダウンもさることながら、大学教員の教育・研究への取り組みや時間配分などボトムの改革を進めなければならない要素が大きいことがわかる。
以上、大学改革と運営費交付金の傾斜配分をめざし、いくつかの補助金投入や法改正が行われてきた。だが、それらの施策や補助金制度が目的達成手段として適当であるのかは疑問が抱かれる。何よりも、大学側のみならず、文部科学省内の抵抗が大きく、表面的な化粧替えはあっても、現状維持になる可能性が大きい。
なお、「特区化」については、「日本再興戦略 改訂2014」において継続的な検討課題とされており、特段の進捗はない。
【出典】2012年衆院選マニフェスト
3点(5点満点)
昨年:3点
5月29日、文科省の「学事暦の多様化とギャップタームに関する検討会議」が、学事暦の多様化とギャップイヤーを活用した学外学修プログラムの推進に向けての意見のとりまとめを発表した。ただ、一律に決まった形での導入はせず、「必要と考える大学が自主的に導入を検討し、実績を積み重ね、多様なロールモデルを確立していくという地道な努力が期待される」としているように、導入はあくまでも各大学の判断に委ねられる。また、国による支援策も、留学支援の充実や大学に対する体制整備支援など財政的な支援について言及しているが、財源には言及していない。東大も含め、現在一般的な2学期制(前後期制)を4学期制にして、秋季入学生を採る海外の大学とも行き来しやすくしようとする大学が増えつつあるが、この動きがどこまで広がるかは未知数である。
なお、大学入試改革については、中央教育審議会は11月、現行の大学入試センター試験を廃止し、教科・科目別の試験ではなく、枠を超えた「合教科・科目型」「総合型」試験によって、思考力・判断力・表現力を中心に評価する新テスト「大学入学希望者学力評価テスト」を2020年度より実施する答申案をまとめた。
ただ、そうした新しい学力を測る新試験の設計や、評価方法などについて具体策はまだ示されていない。
また、大学側に課せられた課題も多い。答申案では、大学ごとに行う個別試験では、様々な物差しで学生を丁寧に、多面的に評価することを求めているが、現在の日本の大学にはこのような入試に対応する専門スタッフは整っていない。また、大規模大学ほど対応が難しくなってくるという問題もある。
文科省は12月の答申を受けて、有識者会議で具体策を検討する予定であるが、1点刻みの順位を当たり前としてきた「試験文化」をどう改めるか、さらには肝心の大学教育をどう変えていくか、などより根本的な問題も含めて課題は山積みである。そもそも、この一連の改革がどう「世界で勝てる人材の育成」という目標につながっていくのかも現段階では判断できない。
インターンシップの単位化については、文部科学・厚生労働・経済産業の3省は、大学生などのインターンシップのガイドラインを17年ぶりに改定し、単位化を積極的に進めようとしている。近年の社会状況の変化を踏まえながらインターンシップのあり方を見直している点は評価できるものの、体制整備やルールづくりはまだ具体化されておらず、実効的な制度になるかは現時点では判断できない。
各分野の点数一覧
評価基準について
実績評価は以下の基準で行いました。
・未着手、断念
・着手して動いたが、目標達成は困難な状況になっている
※理由を国民へ説明していなければ1点減点としました。
【旧管理ID: 8084】