2013年参議院選挙 マニフェスト評価(市民社会)

評価の視点

今後、日本社会を維持するためには、政府の役割に加え、市民社会の役割が重要になると考える。

これまで、歴代政権は、少子高齢化が進む中、政府のサービス機能の強化に加え、市民による助け合いやNPOが重要であると掲げてきた。この点について異論はないが、これだけでは不十分であると考える。すなわち、人々が政府に依存的になったり、受け身にならず、より積極的に社会課題に関心を持ち、その解決に参加することは、単に社会サービスの不足を補うというのではなく、人々が有権者、納税者、消費者として自立した主体になり、政治や経済活動の基礎となる市民社会を強化する上で肝要であると考える。

今、先進諸国では、ボランティアやインターンあるいはフルタイムの仕事として、社会的課題の解決に挑もうとする人々が、知識層を中心に増加傾向を示している。最近では日本でも若い層を中心に広がりつつある。こうした潮流を捉え、我が国の市民による社会貢献活動をどのように育んでいくのかということは、社会の基礎を強化する意味で重要な論点である。

ここでは、日本の政党が、我が国の市民社会とその課題をどのように認識し、それを政策理念や施策にどのように反映しているのかを探る。

具体的には以下を評価の視点とした。

・市民(国民、住民等)が、社会サービスの受益者としてだけではなく、国づくりの担い手の一員として位置づけられているか。

・市民の参加の受け皿となる種々の非営利組織の役割を明らかにしているか。

・非営利組織の基盤強化や信頼性の向上を課題として認識しているか。

・行政依存体質や質の低下を招く支援策を講じていないか。

自民党

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公明党

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民主党

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日本維新の会

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みんなの党

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共産党

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社民党

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生活の党

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みどりの風

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【 評価点数一覧 / 自民党 】

 

項 目

自民党

形式要件

(40点)

理念(10点)

1

目標設定(10点)

0

達成時期(8点)

0

財源(7点)

0

工程・政策手段(5点)

0

合計(40点)

1

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

0

課題解決の妥当性(20点)

0

政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)

0

合計(60点)

1

 合 計

1


【評価結果】自民党 マニフェスト評価   合計 点 (形式要件 点、実質要件 点)

【形式要件についての評価 点/40点】

自民党の選挙公約では、市民社会の理念や発想を伺う記述が希薄である。女性の社会参画の手段として地域コミュニティやNPO活動の応援が、地域力の強化として自治会、町会の助け合いネットワークが記されているものの、それ以外の政策で市民による自発的な社会活動の促進を謳ったものはない。なお、子どもの公共心、社会性、高い規範意識を育むことが記されているものの、愛国教育の一貫として記されているのであり、近代市民社会のコンセプトとは異なる。

また、上述のように地域コミュニティやNPO活動等は女性の社会参画の手段として位置付けられており、市民社会を強化していくという発想の目標であるとは言い難い。


【実質要件についての評価 点/60点】

市民社会については、前政権で大量に投入された公的資金と不正受給問題、NPO法人の信頼性の問題などが起こっている。甘利大臣のもとで内閣府に懇談会もできているようだが、マニフェストとの政策課題として扱うには至っていない。

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【 評価点数一覧 / 公明党 】

 

項 目

公明党

形式要件

(40点)

理念(10点)

1

目標設定(10点)

0

達成時期(8点)

0

財源(7点)

0

工程・政策手段(5点)

0

合計(40点)

1

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

0

課題解決の妥当性(20点)

0

政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)

0

合計(60点)

0

 合 計

1


【評価結果】公明党 マニフェスト評価   合計 点 (形式要件 点、実質要件 点)

【形式要件についての評価 点/40点】

公明党のマニフェストでは、女性の社会参画の手段としてNPOの活動を、また、地方の活性化のため、地域社会での様々な生活関連サービスの事業と雇用の創出手段としてNPOと社会起業家の起業を応援する、とある。自民党と同様、雇用創出の手段としてNPOや社会起業家を捉えている。確かに、これらの組織には雇用創出の側面はある。しかし、生活を支えるための賃金を得る雇用としてNPOや社会起業家を捉えようとすると、収益性のない活動やボランティアなどの市民参加の部分を軽視しがちになってしまう。この点は過去の自民、民主党政権の経験から明らかであるが、同じようなことを繰り返している。

また、上述のように、NPOや社会企業家を地方の活性化における雇用の手段、女性の社会参画などの手段として位置付けており、市民社会における目標とは言い難い内容になっている。


【実質要件についての評価 点/60点】

個人の社会参加やソーシャルキャピタルの醸成という明確な発想や記述を見出すことができない。

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【 評価点数一覧 / 民主党 】

 

項 目

民主党

形式要件

(40点)

理念(10点)

8

目標設定(10点)

4

達成時期(8点)

0

財源(7点)

0

工程・政策手段(5点)

3

合計(40点)

15

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

5

課題解決の妥当性(20点)

5

政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)

5

合計(60点)

15

 合 計

30


【評価結果】民主党 マニフェスト評価   合計 30 点 (形式要件 15 点、実質要件 15 点)

【形式要件についての評価 15 点/40点】

民主党はマニフェストにおいて、「改革」という政策カテゴリーの中で、多様な主体が政策決定過程に参加するオープンガバメントへの転換として「新しい公共」を進めるとしている。

民主党政策集で示されたその具体的な内容は、NPOの運営基盤の強化、社会事業法人・認定制度や情報公開制度の見直し、ICTの活用を目的とし、その実現のために中間支援組織や休眠口座や信託寄付の促進などを掲げている。また、参加型の政策決定として、自治体とNPO、社会的起業の交流、討論型世論調査、公益認定基準の見直しが掲げられている。しかし、期限や財源などの記載はない。さらに、具体的な目的が掲げられているが、目的と手段の関係が整理されておらず、複数示されている具体的な施策も、それが目的の達成手段であるかは疑問が抱かれるものが少なくない。


【実質要件についての評価 15 点/60点】

NPOなどの組織の運営基盤強化は定番の課題ではあるので、それを指摘することは妥当である。ただし、与党時代に「新しい公共」として施行した政策の教訓(便益と課題)がいかされておらず、それまでの延長線の議論である。特に大量の公的資金を投入したものの効果なしとして、自らの事業仕分けで廃止されていたこと、緊急雇用対策としてNPOなどに補助したものが不正受給問題を起こしていることなどに関する課題抽出がない。

課題解決の妥当性としても問題がある。まず、前述のように与党時代に実施したものの検証がなされず教訓がいかされていないまま施策が示されている。例えば、国民の間で十分議論されぬまま、小沢問題で議会が揺れている際に閣議決定した休眠口座についても、集めた金「9000億円」を誰に、どのように配分するのかも不透明である。ちなみに、休眠口座の資金の配分対象はNPOに加え、私的利益を追求するベンチャーも対象とされている点は明らかにおかしい。また、民間公益活動の促進として公益認定基準を見直すとあるが、公益法人制度の見直しは、市民による公益的な活動促進の手段として適当とはいえない。さらに、中間支援組織の強化を謳っているが、現場で活動する大小さまざまな団体の強化や活性化こそ、民主党が述べている新しい公共の活性化の実現になるのではないか。中間支援組織の意味がないとはいえないが、それ自体が行政の下請け化している団体が多い現状に鑑みれば、課題解決策として妥当とはいえない。

なお、評価できる点としては、自治体とNPOの人的交流については、数は少ないが効を奏した例もあり、この点については期待できる提案である。

政策実行の体制については、党内の意見統一がなされておらず、また、与党時代に「社会実験」と称していたわりには、その検証が不充分であり、実行体制が整っているとは言い難い。

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【 評価点数一覧 / 日本維新の会

 

項 目

日本維新の会

形式要件

(40点)

理念(10点)

1

目標設定(10点)

0

達成時期(8点)

0

財源(7点)

0

工程・政策手段(5点)

0

合計(40点)

1

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

0

課題解決の妥当性(20点)

0

政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)

0

合計(60点)

0

 合 計

1


【評価結果】日本維新の会 マニフェスト評価   合計 点 (形式要件 点、実質要件 0 点)

【形式要件についての評価 点/40点】

日本維新の会の選挙公約においては、基本的に市民社会や市民参加という発想がみられない。外交・安全保障政策において、NGOや民間企業とのネットワークを活用した情報収集能力の強化が記されているが、あくまでも安全保障上の機能強化の手段として捉えているにすぎない。

【実質要件についての評価 点/60点】

日本維新の会のマニフェストからは、強い為政者が国家を形成し、担うのであって、国民は受動態として位置づけられているようにみえる。したがって、そこから市民社会を強化していこうという発想は読み取れず、評価もできない。

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【 評価点数一覧 / みんなの党 】

 

項 目

みんなの党

形式要件

(40点)

理念(10点)

3

目標設定(10点)

0

達成時期(8点)

0

財源(7点)

0

工程・政策手段(5点)

0

合計(40点)

3

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

0

課題解決の妥当性(20点)

0

政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)

0

合計(60点)

0

 合 計

3


【評価結果】みんなの党 マニフェスト評価   合計 点 (形式要件 点、実質要件 点)

【形式要件についての評価 点/40点】

みんなの党のアジェンダ「みんなの政策」では、市民社会に関しては、「地域主権型道州制」で格差を是正!」の項目の中で、道州制導入後の基礎自治体において、「民間のNPO等が仕事の一部を担います」と、「子育て・介護で未来に希望を!」において、「災害時に障がい者を孤立させないよう、災害時要援護者リストを整備し、地域NPOや教育・医療機関とも連携。緊急時に共助が行える体制づくりをする」としているところくらいしか関連する記述がなく、そこで位置付けられたNPOなどを支援するための具体的な政策が提起されたわけではない。

ただ、公約作成下でのアイデア集であるアジェンダ2013のインデックス版には「全額税額控除の導入等、寄付税制を改革して研究活動やNPO等の公益活動を活性化する」、「NPO等が貧困層対象のマイクロファイナンス(マイクロクレジット)を実施できるよう法改正・規制緩和を進める」、「NPOやボランティア活動を積極的に支援する」などの記述があるため、党として市民社会を強化していくという発想はあるが、公約として結実していないため、この内容で評価することは見送った。

【実質要件についての評価 点/60点】

地域住民が主体となる地域主権型道州制を打ち出しているにもかかわらず、市民が自発的に社会参加したり、地域づくりに参加したりすることを促進するという視点は見られず、市民社会を課題として政策体系をまとめる段階に至っていない。

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【 評価点数一覧 / 共産党 】

 

項 目

共産党

形式要件

(40点)

理念(10点)

1

目標設定(10点)

0

達成時期(8点)

0

財源(7点)

0

工程・政策手段(5点)

0

合計(40点)

1

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

0

課題解決の妥当性(20点)

0

政策実行の体制、ガバナンス、指導性と責任(20点)

0

合計(60点)

0

 合 計

1


【評価結果】共産党 マニフェスト評価   合計 点 (形式要件 点、実質要件 点)

【形式要件についての評価 点/40点】

共産党はその選挙政策の最終項で、「国民が主人公」の新しい日本へを掲げ、「すべての政党、団体、個人と一致点での協働を広げ、たたかいを発展させるために力をつくす」と記している。国民の立場から発言することを謳っている。しかしながら、その視点は、労働者であり、農業生産者の立場を守ることであり、市民が自発的に社会参加したり、地域づくりに参加したりすることを促す施策は記されていない。

【実質要件についての評価 点/60点】

上記の理由により実質要件の評価は不可能である。

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【 評価点数一覧 / 社民党 】

 

項 目

社民党

形式要件

(40点)

理念(10点)

5

目標設定(10点)

5

達成時期(8点)

0

財源(7点)

0

工程・政策手段(5点)

2

合計(40点)

12

実質要件

(60点)

体系性・課題抽出の妥当性(20点)

5

課題解決の妥当性(20点)