次の日本をつくる言論

被災から復興に向けた日本のビジョンをどう描くのか

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直下型地震が来たら、東京も大変なことになる

高橋: まさに、今おっしゃられたことに続けて申し上げれば、例えば、東京も一極集中の問題を抱えているわけですよね。直下型の地震がきたりしたら、大変なことになります。そういうことを考えると、地方分権をして復興プランを地域でつくるということと同時に、つくりかたとして、自立分散型の国家をつくっていく。電力供給なども分散型にしていくし、意思決定についても分散していくとか、そういう自立分散型の社会をつくっていくという発想が1つ要るかなと思います。それから、もう1つは原発の問題です。結局、国が原発を推進してきて、原発をどうするかというガバナンスが実体的に働いていなかったということがわかったわけです。これは原発の問題だけではなくて、色々なガバナンスが働くような社会になっているのかどうか、ということを私はこれから色々なところで問い直していかなければならないのではないかと思います。 それから、もう1つは、増田さんがおっしゃったことですけど、仮設住宅は2年じゃなくて3年とか、今回は息の長い取り組みが必要になるという覚悟をして、そのための体制をつくっていかなければいけないかな、という3点ぐらいを感じました。

工藤: 増田さん、どうでしょうか。

汚染水海洋投棄で、世界に要人を派遣して説明を

増田: 視点が原発に戻ってしまうのですが、これをぜひ政府でやってほしいと思うことは、低レベルと言いながら汚染水を海に流しましたよね。海洋というのは全人類の共有財産だから、海上投棄についてはかなり厳しく規制をされています。汚染水を海に流したという行為を、各国の人達がどう見ているのかということを考える必要があります。もちろん、国内の議論は大事なのですが、あれをやったときに、全世界の人達は、何で日本は自分たちの共有財産である海を汚すのか、なぜ、後ろに山が沢山あって、低レベルだと言っているのだから、日本国内にそれを捨てないのか、という思いになったと思います。ですから、日本はこれから国内で色々なことを立て直していかなければいけないのですが、日本がこれから一緒に生活をしていかなければいけない、少なくとも一番近いアジアの人達は、それだけ恐怖心を抱きながら日本を見ている。ですから、私は、鳩山さんを始め、自民党の人達にも何人かかつての総理大臣経験の人達がいらっしゃいますから、その人達のところに、菅さんはすぐに行って、総理大臣経験者の人達に各国を回ってもらうとかして、日本が低レベル汚染水を捨てたということは、どういうことだったのか。あれを捨てることで、危険なことにならないようにするためだったとか、そういうことを全世界の人達にきちんと言うことが必要です。そうでないと、この東北の復興にもつながらないと思います。

工藤: それは、さっきの高橋さんの話の中にあった、ガバナンスのもう1つの側面なのですが、広報体制というか、説明しなければいけないですよね。

増田: 常日頃、日本はそういう関係で世界とつながってきているわけですよ。

工藤: だから、さっきのつながりは国内だけではなくて、世界につながっていると。世界から救助の人が来ると、こっちは対応できないとか、色々なことがポツポツとあるじゃないですか。だから、そういうつながりが機能していませんよね。

高橋: 国内も国外も両方問題だと思います。例えば、原発のことで専門家の方が、色々とデータのことについておっしゃいます。しかし、こちらとしては、全部合わせて私が安全なのかどうか、そういうことを聞きたい。だけど、プロと政治家との間に、本当に物事が分かっていて、ちゃんと解説できる人がいない。あるいは、そういう広報体制になっていない。同じ事が、国外に対しても言えるわけで、個々の事象はわかるけど、トータルで見た場合にどうなのか、という評価ができていません。そういう時には、外国から第三者を入れてきて、独立的な評価機関をつくって、その人が言ってくれるのが一番ありがたいわけです。そういうことを含めた、対外的な広報が日本はまだ甘いのだと思います。

早瀬: 今度、関西で「安心して、しっかり福島を応援するプロジェクト」をしようと思っています。「安心して」が重要なのですが、みんなしっかり応援したいのですよね。だけど、安心していいのかどうかの情報がよくわからない。その辺りは、我々が信頼できるような方々に来てもらうのですが、そういう形でないと、みんな不安だから前に進まないということがあると思います。

増田: 外国人は、1人もいなくなってしまった、という所が多いですよね。
早瀬: 京都の三条通りは大変なことになっていますね。
増田: 関西は桜のいい時期なのに。
高橋: これは二次被害、三次被害だと思います。
工藤: やはり、人災という面がありますよね。

増田: だから、東北はこれからどうするのかというのだけど、やはり色々な人達に来ていただく必要があります。内陸の観光地の方は、仲居さんから何から、日々の生活に困っているわけです。

工藤: 何となく、政府の人達がつぶやいている状況じゃだめですよね。ちゃんと考えて発言しないと。

日本ブランド立て直しの大対外キャンペーンを

高橋: まさに、安心・安全という日本ブランドが今、揺らいでいるわけだから、この揺らぎを元に戻すためには、おしゃったように、原発についてはこうします、あるいは日本というのは、これだけ打たれたけど、それ以上に立ち上がる力があります、というキャンペーンを外に向かって発信する必要があると思います。

増田: 外に向かってやらなければいけないと思います。そうしないと、東北もよくならないと思います。

工藤: 今の話を聞いていると、過去に経験のしたことのない災害の中で、色々と発見することがありました。やはり、僕は2つあったと思います。1つは、政府の統治が危機の状況の中で、ここまでもろいのか、ということです。ただ、これは、僕たちは他人事みたいに言っていてはダメで、僕たちが選んだ政治なわけです。だから、僕たちがいかに政治というものを大事に考えないといけなのか、ということが1つ大きな発見だったと思います。それからもう1つは、市民とか国民の連帯感がここまで大きいのかと。凄いエネルギーですよね。

増田: プラスの意味でね。

工藤: つまり、これを具体化して現実化していくというプロセスが、日本の復興の原動力になりますよね。

復興を契機に新しい自立型の社会を

早瀬: 今の話につながっていますが、今まではどちらかというと、行政にお任せしていればよくて、我々は文句さえ言えばいいのだという感じでした。しかし、そうではなくて、我々自身ががんばらないといけないという形の意識がより強く芽生えることによって、かえって新しい自立型の社会をつくっていけるのではないかと思います。

高橋: 産業について申し上げると、例えば、第一次、第二次石油危機の時に、日本の経済界が一つになって省エネが進みました。今回も電力不足ということに対して、一丸となってやれば、意外と新しい産業が生まれて、新しい競争力になっていくわけですよ。ですから、危機をバネにして、連帯してどう乗り切っていくか、というこのプロセスをいかにつくっていくか、ということだと思います。

工藤: この前、別件で中国に行ったのですが、こういう日本の連帯感に驚いていましたね。やはり、世界はそれに注目しているということがあると思います。最後に、増田さんどうですか。

増田: ですから、今は、世界に対して色々な行動をしていかなければいけない時期だと思います。それが、東北だけでなくて、日本を救う道だと思います。

工藤: そうですね。多分、今回の復興問題は、僕たちの問題だと考えれば、僕たちもこういう形で議論を始めなければいけないと思っていますので、みなさんと一緒に議論を始めていきたいと思っています。今日はみなさん、どうもありがとうございました。

一同:ありがとうございました。
(文章は収録内容を一部編集したものです。)

    

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