「議論の力」で強い民主主義をつくり出す
国のほうの企業立地法なども、中国地方で一番初めに指定を受けましたし、中小企業地域資源活用促進法も今、使い始めているところです。頑張っているのですが、正直、限界はあります。
これは問題提起として申し上げると、平成14年頃がこの国の転機になっています。鳥取県の人口は平成19年10月1日の試算で、とうとう59万9830人になりました。減少傾向の原因を分析してみますと、自然減と社会減、これが複合して起きているのです。
社会減が始まったのが、平成14年です。隣の島根や東北など、多くの県で平成14年ごろから社会減が始まっている。この頃は国全体として規制緩和が進んだ。工場立地の規制がはずれて、大都市圏でも大きな工場が建てられるようになりました。ちょうどその時期に、東京、神奈川、愛知など以外で社会減が始まっています。高度成長時代に過疎化がありましたが、私は、あの時期と同じような第2の過疎化が始まっていると分析しています。しかも、今回の過疎化は、社会減だけではなく、自然減もプラスされています。かつての高度成長期は自然増の中での社会減でしたが、今回は、自然減と社会減の両方になってきています。鳥取県に限らず、どこの県も毎年減少人口が増えているのです。
こういう状況を国全体でもう一度考えるべきときだろうと思います。かつて高度成長のとき、全国的にみんなが心配して、過疎化だ、過密だ、と議論しました。そのときに、今は非常に評価が下がっているかもしれませんが、新産業都市、工業整備特別地域といって、産業を地方にも再配置し、国全体、バランスのある発展を図っていきましょうということをやりました。
今、第2の過疎化が始まっているこの時代に、私は国全体として、ほうっておくと、もっと東京や愛知の集中が高まっていきます。今回は法人二税で付け焼き刃的にやっていますが、そういう悠長なことをやっていられなくなる。ですから、もう一度ベクトルをもとに戻す必要があると思うのです。新しい政策として、国策として、地方に産業を再配置する、これを推し進めるべきときが来たと思います。これはぜひ言論界としても認識してもらうべき社会現象だと思います。
やはり産業の立地が必要です。子供は高校まで地元で育ちます。その後、大学で東京や大阪に行きます。その後、ふるさとに帰ってきて、ふるさとの企業に就職したい。しかし、会社がない。今、そうなっています。平成13年以前まだもっていました。今は行った者は帰ってこないほうが本当に多くなってしまった。これが今の社会減の最大の原因だと思います。これは全国の多くの地域で同時多発的に起こっていて、過疎の時代に全国的に世論が沸き上がったのと同じ状況が今生まれ始めているのです。これはデータをとっていただくとご理解いただけると思います。
私は、東京に一極集中することが是か非かという議論はまだ終わっていないと思います。今、東京に一極集中していいのだという空気に振れているような気がします。かつて首都を壊して移転しましょうという議論がありましたが、あのエネルギーが消えているわけです。私は首都移転論ではなく、経済的には、要するに東京になくてもいい会社というのは地方にあってもいいのではないかと思うのです。アメリカや他国を見ていただければそうです。全部、政治の中心に集まっているというのはナンセンスです。中国もそうです。今、一番経済成長が著しいのは上海です。あるいは、そのほかのところにたくさん工場ができている。東京にすべてビジネスのセンターもあり、何でもありというのはおかしいのです。教育も、いい学校は東京にあるから、みんな一遍は東京に行かなければいけないということになってしまう。これが本当に健全なのかどうか、もう一度問い直す必要があります。
今、本気で議論しなければいけないと思うのは、労働構造がいびつになっていることです。有効求人倍率をとってみても、東京や愛知が異常に高い。ここはいくらでも人が欲しい。ですから、そこの人たちは鳥取県などに求人に来て、高校卒業生などをみんな持っていこうとするわけです。地元には就職しない。しかし、人手不足のところで、無理して、しかも高い家賃を払って産業を置いているということの不合理さになぜ気がつかないかと思います。もっと地方に分散してやってみようという会社が本当はいろいろと出てきてもいいと思います。特にインターネット系の会社などは何の不都合もないわけです。
経済界のトップの方々には、東京にいなければならないというようなドグマがあるのではないかと思います。
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