「議論の力」で強い民主主義をつくり出す
県財政については過剰な心配はしていません。長野県の借金は、約1兆5000億円ありますが、どんどん減ります。今から10年前に長野冬季オリンピックをやったので、新幹線を含めて大きな先行投資をやり、それが積み上がったわけです。そのようなものはいずれ返済されて借金の残高は減少します。
もちろん公債費は大きいですが、一番のポイントは、当年度の公債を返済する程度の借金ができるかどうかです。例えば、今年1500億円返すことがはっきりしていれば、1300億円をまた借りる。つまり、200億円確実に債務を減らし、1300億円を借り替えるわけです。カネというものは回っているのですから、借金を減らすことばかりに熱中する必要はありません。大切なのは福利厚生を向上させることです。
そこで大変大事なことは、金を貸すのは誰かというと、結局マーケットだということです。マーケットが長野県債をどう評価するかです。長野県という地域に元気があれば、その行政を担う長野県の債券は当然売れます。ですから、私は全然心配していません。
田中県政の前の吉村知事の終わり頃の平成12年に借金はピークアウトした。しかし、田中さんは公債費比率が大きいものですから大変だと言い出した。当時、公債費比率では岡山県が1番で長野県が2番だった。そのとき、岡山県知事は「長野県より公債費比率が高いですが、20%を超えないように注意深く運用すればいいのですから、どんどん仕事をしますよ」と平然としていた。公債費比率というものはあくまで1つの指標ですから、血圧と一緒で、それが高いからどうだとすぐには言えない。
ところが、田中さんは基金にまで手をつけて借金を返した。それから県営のガス事業を売り払って借金返済に充てた。要するに、貯金をおろして借金を返し、自分の財産を売り払って借金を返し、それで借金が減ったと言って自慢した。今、貯金(基金)がなくなっているから参っています。こういう大きな財政運営をやるときには、突っ込んだり上がったりしますから、そのフラストレーションをどこで吸収するかというのが常に大事な課題なのです。基金がなくなって本当に参っています。
田中さんは長野県の借金を非常にオーバーにおっしゃいました。いつ夕張になってもおかしくないというような言い方をされていた。私は全然発想が違う。長野県も会社と一緒です。帳面だけ見ても仕方がない。要は、マーケットが長野県に金を貸してくれるかくれないかの問題です。長野県の体力を評価して金を貸してくれるのなら、借りたらいいという発想です。
実際の融資はシンジケートです。メインは八十二銀行というローカルな銀行ですが、地銀協の副会長職をやるような銀行ですから融資条件はシビアです。そこがちゃんと最上等のスプレッド(国債との金利差)を提供してくれているのですから。
われわれの財政状態を測る指標はどういう数字かというと、今、血圧がどのくらいですか、体温はどのくらいですかという話なのです。長野県は10年前にオリンピックで走って息が切れて、まだゼイゼイ言っている。10年では息が整っていないのです。そういうところで、血圧が高いからと言われている。しかし、この血圧は、少し静かにしていることによってだんだんおさまってくる。それを一時的な血圧がどのくらい高いといったことだけで見てもらっては困る。なぜそうなったのかということもよく吟味していただかなければ困ると私は言っています。
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