「議論の力」で強い民主主義をつくり出す
2013 / 12 / 04
― 「新しい民間外交イニシアティブ」では、言論NPOがこれまで実践してきた中国、韓国との二国間対話の実施体制を一体化し強化することで、今後、東アジア広域にわたる秩序づくりに取り組んでいきます
非営利シンクタンクであり、認定NPO法人の言論NPO(代表:工藤泰志)は、東アジア地域の紛争回避など課題解決に民間で取り組む「新しい民間外交イニシアティブ」を、本日発足しました。これは、言論NPOがこれまで実践してきた中国、韓国との各二国間の民間対話の実施体制を一体化し強化するもので、今後、二国間だけではなく、東アジア広域にわたる平和で安定的な新しい秩序づくりに取り組んでいきます。「新しい民間外交イニシアティブ」では、二国間の対話を継続しさらに強化するとともに、数年後には、東アジアの総合的・戦略的なマルチ民間対話の常設化や、国際社会の課題に関する日本の主張発信など、言論NPOの民間外交活動を発展させていきます。
言論NPOは、これまで、東アジアのガバナンスの安定化をめざし、中国とは9年間、韓国とは今年から、二国間対話を実践し、特に対中国との間では今年10月末に「不戦の誓い」を民間レベルで初めて合意し、両国の民間外交の舞台として高い評価を受けています。これらの対話は、国民間の世論調査と連動して行われ、有識者が「当事者」として課題解決に取り組み、また公開されることで「輿論」と連動することをめざしています。
「新しい民間外交イニシアティブ」では、これらの民間外交の手法を発展させ、日本を含む東アジア地域各国の世論(せろん)調査を行います。その結果をもとに公開議論を実施し、議論内容を国内外のメディアを通じて広く世界に発信することで、当事者としての議論と輿論形成を連動させる形で課題解決に取り組むことをめざします。
当事者としての対話と、課題を解決しようとする意志に基づく輿論を喚起する民間外交の手法を、言論NPO代表の工藤は、「健全な輿論」に支えられた言論の力による民間外交、つまり「言論外交」と名付けています。
東アジア地域のガバナンスの不安定さが、世界の安全保障の不安定要因になり始めている今、民間主体の「言論外交」が求められています。東アジアでは、国民間の感情悪化の増幅に伴い排他的なナショナリズムが高まっていて、これが、政府間の関係改善の動きを難しいものにしています。東アジアのガバナンスの安定化に向けた課題解決は、政府間の対応だけでは限界があります。政府間外交は、主権を争う問題の場合、相手国に対して妥協ができずナショナリズムを刺激してしまうため、身動きが取れなくなってしまうという政府間外交特有のジレンマがあります。その政府間外交が停滞している状況を改善するのは、やはり世論の力です。
「新しい民間外交イニシアティブ」では、世論調査を行い国民感情と向き合いながら、冷静で質の高い議論と連動する「言論外交」を実践することで、当事者意識を持った「健全な輿論」を強めていきます。その結果、浮ついた情緒的な「世論」ではなく、しっかりとした課題解決を意識した「健全な輿論」に支えられた民間外交の活動は、政府間外交の動きを補完また後押しし、政府間外交が機能改善するための環境づくりの基礎固めを行うことにもなります。
「新しい民間外交イニシアティブ」は、言論NPOのアドバイザリーボードメンバーを中心に構成される「新しい民間外交イニシアティブ実行委員会」により行われます。本実行委員会の発足メンバーは次のとおりです。
今後、「新しい民間外交イニシアティブ」では、世界やアジアの課題解決に積極的にかかわり、日本の政策的な主張や考えを他国の世論や世界に幅広く訴え、同時に国際的な合意の形成に取り組んでいきます。また、東アジアのガバナンス安定化に寄与するマルチ対話の基盤を日本に確立し、日本の発信力・存在力を高めていきます。加えて、世界の課題解決に向けたシンクタンクとの議論交流を活性化させ、日本の国際社会での発言や存在感を向上させていくための議論発信を継続的に実施していきます。
健全な輿論に支えられた「言論外交」を実践する「新しい民間外交イニシアティブ」は
「議論の力で民主主義を強くする」言論NPOの設立ミッションそのものです
「新しい民間外交イニシアティブ」は、2013年11月に設立12周年を迎えた言論NPOの周年記念事業として立ち上げられました。ナショナリズムが高まる東アジア地域に、責任ある意見としての「言論」による外交が必要とされています。「輿論」に支えられた「言論外交」は独りよがりなものではなく、多くの人達に支えられなくてはなりません。多くの人達に支えられるということは、分かりやすく、耳触りが良い言葉ではなく、きちんとした問題提起や、しっかりとした論考を示すことで当事者意識を持った人々を課題解決に巻き込んでいくことです。そういった言論のための空間を作ることが、まさに日本の輿論を強化し、それが日本の外交力を強くすることにもつながると考えます。それは、「議論の力で強い民主主義をつくる」という言論NPO設立時からのミッションそのものです。
「新しい民間外交イニシアティブ」は、世界やアジアの課題解決に積極的にかかわり、日本の政策的な主張や考えを他国の世論や世界に幅広く訴え、同時に国際的な合意の形成に取り組んでいきます。言論NPOは、これまで「言論外交」の実践として、「東京-北京フォーラム」や「日韓未来対話」を開催するなど、中国とは過去9年間、韓国とは今年から、民間対話チャネルを構築し、国境を越えて、有識者たちが質の高い議論を行ってきました。今年10月に開催された「第9回東京-北京フォーラム」においては、言論NPOと中国側主催者の中国日報社チャイナ・デイリーが、日中民間で「不戦の誓い(「北京コンセンサス」)」に合意し発表するなど、東アジアの平和解決の道筋を民間から模索する取組を開始しました。
「東京‐北京フォーラム」は中国で反日デモなどが深刻化した2005年に日本の非営利団体である言論NPOと中国のメディアである中国日報社(チャイナ・デイリー)及び北京大学国際関係学院との提携により北京でスタートしました。毎年両国を代表する有識者100名が出席し、安全保障、政治、経済など複数の分科会で議論を行っています。中国では公共外交の重要なチャネルのひとつと位置づけられており、この対話に連動して、日中共同の世論調査を毎年実施しています。日本側の実行委員長は明石康元国連事務次長。学識経験者、企業経営者・政府関係者、主要メディアの編集幹部ら約50名が個人の資格で日本側の実行委員会に参加しています。
「日韓未来対話」は、言論NPOが、中国との対話に続き、日韓にも民間対話の力が必要と考え韓国の対話に取り組むために、2013年5月に、韓国シンクタンクの東アジア研究院(EAI)と共同で創設したものです。日韓には、国民間に強い相互不信があり、基礎的な相互理解も不足しており、それが、日韓関係をさらに悪化させています。この状況を対話の力で乗り越えようと考え、世論調査で国民の認識の動向を絶えず把握しながら可能な限りオープンに議論するという、新しい対話を日韓の間で立ち上げ、両国の未来に向けた議論を始めました。
言論NPOは、2001年に設立された、有権者側に立つ、独立、中立、非営利のシンクタンクです。言論NPOは、議論の力で、「強い民主主義」と「強い市民社会」をつくり出すことをめざしています。それは、有権者が主体となる民主主義であり、多くの有権者が当事者意識を持って社会に参加する強い市民社会です。
そのために、言論NPOは、有権者が政治や政策を判断し、民主政治を機能させるために質の高い議論づくりや政策評価に取り組んでいます。様々なアクターが当事者として課題解決に向かって議論し、その場が公開され健全な世論と連動して政策に働きかけていく動きを、国内のみならず、アジアや世界に広げて、議論や対話の舞台をつくっています。そして、国際的なネットワークで世界につながり、日本の考えを世界に発信するために、500人を超すオピニオンリーダーが参加し、健全な議論づくりに取り組んでいます。詳しくは言論NPOウェブサイトをご参照ください。
言論NPO代表工藤のインタビューなどのご要請がございましたら、積極的に対応させて頂きます。
言論NPOは2001年に設立、2005年6月1日から34番目の認定NPO法人として認定を受けています。(継続中)
また言論NPOの活動が「非政治性・非宗教性」を満たすものであることを示すため、米国IRS(内国歳入庁)作成のガイドラインに基づいて作成した「ネガティブチェックリスト」による客観的評価を行なっています。評価結果の詳細はこちらから。
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