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「第3回日韓未来対話」を振り返って 日韓パネリストインタビュー

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市民が自分の問題として考えられる共通課題を取り上げて議論していくことが必要

聞き手:工藤泰志(「第3回日韓未来対話」日本側主催者)

[日本側パネリスト]  深川 由起子
(早稲田大学政治経済学部国際政治経済学科 教授 )


工藤:私たちが国境を越えた課題に関していろんな議論をするときに、参加者が知らないうちに政府の代弁者のように国を背負ってしまうのですね。私たちはその壁にぶつかっていて、国を語るのではなく、市民として課題を語りたいと考えているのですが、いかがでしょうか。

深川:安保問題、特に、北朝鮮問題とか、中国の潜在的な脅威とかは、市民が決断できることでも行動できることでもない。日韓は民主社会同士なのだから、国の問題を論じるものではなく、環境とか高齢化とかいろんな話を市民レベルでやっていればよかったのに、安保とか歴史認識とかいったことまで言論NPOがやらなくてはいけなくなったのは、政治当局とかメディアの影響で、日韓関係がここまで悪くなってしまったことが大きいと思います。

 ただ、なぜこんなに認識のギャップが出てきているのかということについては、もちろん対話する必要があります。

工藤:そうですね。ただ、言論NPOは日中と日韓の対話をそれぞれやっていますが、日中対話に参加する中国の人はいつも国を語っています。韓国も初めはそうだったのですが、国を語らなくなりました。

深川:韓国は選挙をやっている民主国家なので、それぞれ個人の意見もあります。韓国に存在するほとんど唯一の統制は、日本を否定的に評価することです。右も左も必ず一致できるのは、日本を追及することです。国内が分裂すればするほど、反日によって求心力を保とうとするモーメントが続いてきて、それに日本の政治家がわざわざいろんなことを言うからますますそうなってしまうという、非常に不幸な構造になっています。

工藤:深川さんはまさに韓国を実感として理解している専門家なのですが、今回の対話はどうでしたか。意外に議論ができると思いましたか。

深川:今回のメンバーは、韓国の中でも最も日本を理解している、あまりにも立派な人たちなので、もっとレベルの低い人たちの誤解とか感情論がどこから来ているかをどの程度理解しているかは不明なのです。あまりにもインテリだし、あまりにも成功しているし、あまりにもグローバルな方たちなので、あの人たちの水準が韓国の一般の水準ではない、ということには注意が必要です。

工藤:あの人たちと対話をして、「これは成功した」というだけではダメなのですね。

深川:彼らが国内で、すごく不合理な人たちに対してどれだけ説得できるかというのと...

工藤:分かりました。ただ、この対話で未来に向かう議論が少しでもできてよかったです。今までは「未来対話と銘打っているけれど実態は過去対話ではないか」と言われていたのですが。

深川:日韓には「歴史観の差」というもがあるのです。韓国は儒教社会なので、過去の経緯の正当性が重要なのです。日本の場合、過去に何かあっても全部ちゃらにすることが可能なメンタリティーなのです。昨日まで「鬼畜米英」と言っていて、次の日から「ギブ・ミー・チョコレート」と平気で言える国なので、その感覚の違いです。あと、すべてのものを道徳的な「上か下か」で見ようとする発想が日本人にはないですよね。だから、日米はすごくプラクティカルな同盟なのです。

工藤:韓国とは対話を始めて3年経ったのですが、アジアの平和的な秩序づくりとか、外交論ではなく、市民が考えられるような議論の展開をどうするかということが、課題として残っているのですね。

深川:もう少しお互いの市民が考えられる課題を取り上げてはどうでしょうか。例えば高齢化とか、若者の引きこもりといった課題は共通しています。

工藤:この議論は未来志向ですが、もっと現実でリアルな生活実感に基づいてみんなが考えられるような場をつくらないといけないということですね。頑張ってみますので、今後ともよろしくお願いします。


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