世界とつながる言論

言論スタジオ「北京-東京フォーラムで何が語られたのか」報告

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問1.今年8月末に「第7回 北京-東京フォーラム」を行いましたが、その中のメディア対話で、中国のメディアが政府系メディアを批判するなど、中国社会の変化が垣間見える一幕が見られました。あたなは、中国社会に変化が始まっていると思いますか。

変化が始まっていると回答した人の「どのように変化が始まっているか」に関する意見

・国際社会の中で活動していくためにも、情報公開の機運が次第に高まってきている。(60代、自営業)
・さすがの北京政府もインターネット社会への言論統制は、後手に回らざるをえなくなっている感がする。(60代、企業経営者・幹部)
・若い世代の価値観は、日本の同世代とますます似てきている。(60代、企業経営者・幹部)
・経済成長の鈍化により全体の仕組みに変化が生じている。(60代、各団体関係者)
・以前とは比べられない位に自由な意見交換が可能となった。(50代、企業経営者・幹部)
・ネットの浸透などにより、個人の言動すべてを監視・統制することが困難になっている。その結果、言論が多様化し、さらなる多様化の連鎖を生み始めている。(40代、メディア)
・情報の広域流通・僅かではあるが批判的意見の開陳・公開(60代、企業経営者・幹部)
・国際協調をせざるを得ない世界的潮流が始まっている(60代、企業経営者・幹部)
・国民の中国政府に対しての要求、主張が以前より強まっていく。(30代、国家公務員)
・最大の変化は中国的資本主義の問題や矛盾が顕在化し、ITツール・民間情報ネットワークの発達と相まって国民の現在の経済の仕組み(背景にある官僚統治機構、但し共産党政治までは至らずと見ている)に対する問題意識の変化がかなり進んできていると思われること(60代、企業経営者・幹部)
・国民が民主的な進展を政府に堂々と求め始めている。(50代、地方公務員)
・まだまだ言論の自由という視点では初期の段階。但し、インターネットの発達等もあり、従来とは違ったステージに入っていると思う。(60代、企業経営者・幹部)
・民衆はあらゆる手段で声を上げている。抑圧されているにもかかわらず。ただ体制や政府そのものの変化は見られていない。(50代、メディア)
・中国版ツイッターで、間接的ないしは直接的に政府批判を行うようになった点。(20代、学生)
・新メディア(インターネット)の普及。人々の不満の鬱積など(60代、その他→顧問)
・政府のみが意見を言うことから、多くの方法を駆使して個人の意見が表明されることになってきた。(60代、企業経営者・幹部)
・共産党政府に対する不満・批判が、少しずつではあるが国民の間に浸透し、表面化しつつあるように見受けられる。(70代、その他→元会社員)
・情報統制をしようとする政府機関とその「間隙」を縫って政府への「批判・監督」報道をしようとするメディアのせめぎ合いがここ激烈となってきているので。「ここまでどうだ?」「ここまでやっていいか?」と報道の自由化を進めようとするメディアに対し、ある一定の「ガス抜き」をさせつつ、ぎりぎりのところで報道を押さえ込もうとする政府との攻防が以前に比べて強烈になっていると考える。(30代、メディア)
・インターネットによる情報インフラの拡大によりワールドワイドな情報が手に入るようになって、人民の意識変化の多様化が始まっていると思う。(50代、自営業)
・中国国民が官僚の不正に気付き、国民の側の多様性(大都市と地方そして農村、民族)を中央だけでは統制できないことに気付いたと思われる抗議行動が各地で発生している。(60代、NPO・NGO関係者)
・言論の自由(に普遍的な価値があること)への認識の広がり(40代、メディア)
・ネットという媒体が、浸透してくるにつれて人々が、真実を知れるようになり、又真実を述べるようになってきたと思う。(40代、その他→会社員になれない主夫)
・言論が抑えきれなくなってきている。(50代、国家公務員)
・インターネット人口5億人以上でミニブログも拡大一途(60代、メディア幹部)
・独裁体制への疑問(70代、企業経営者・幹部)
・インターネット、携帯、ツイッター、フェースブックなどを通した動き(60代、企業経営者・幹部)
・インターネットなど情報伝達手段の普及(70代、その他→金融関係リタイア者)
・政府を批判的にみる層が増えてきたのではないかと思われます。日本への中国人留学生にも政府に批判的なものもいます(60代、学者・研究者)
・市民の中の問題意識が高まっている(30代、メディア)
・当局をどこまで批判できるのか、メディア自身が模索している様子がうかがえる。(40代、メディア)


問2.私たちが今年8月に発表した日中共同世論調査によると、中国人は自国の2050年の中国経済に、昨年ほどではないものの、依然強気の見方をしています。あなたは、中国経済がこのまま成長すると思いますか。

「その他」と回答した人の自由記述

・第12次の5カ年計画では成長率を若干さげて計画されており、インフレ抑制策が景気にブレーキをかけるものの、成長率は下がるものの、実需に基づく順調な成長は続くと考える。(50代、企業経営者・幹部)
・既に人口ボーナスは消失し、これまでの強みが弱みに転化していることから成長ではなく衰退に入っていると考えられる。(50代 会社員)
・国内外の情勢によりアップダウンはあるが、平均すれば今後も相当期間、高成長(8%以上)、安定成長(4~5%前後)が続く。(30代、国家公務員)
・急速なる高齢化、都市と農村の格差など様々な課題が山積している。中国が世界経済の牽引力になるのは間違いないが、現状以上の経済発展が出来るかといえば、それは難しいと思う。特に農村の処遇で中国の未来が決まるのではないだろうか。(20代、学生)
・当面は今までに近い成長を続けるが後5年程度で内部崩壊の危機と動態的問題で成長の継続は難しくなる。(70代 、企業経営者・幹部)
・成長の意味が単なるGNPであれば、それは増えると思われます。しかしそれに伴う国内矛盾は激化するでしょう。真の意味での発展とは思われません。(70代、その他→年金生活者)


問3.来年は、日中国交正常化40周年と歴史的な年を迎えます。今年の私たちの世論調査では、日本人の5割強、中国人の3割強が現在の日中関係が悪化している、と答えています。あなたは、今後の日中関係についてどう思いますか。

「良くなっていく」と回答した人の理由

・政治的には多少のアップダウンがあるが、長い文化的交流の歴史が基軸になり交流がすすめられる。(60代、自営業)

「どちらかといえば良くなっていく」と回答した人の理由

・世代交代が進み、経済のグローバル化の進展と共に、中国の政治体制に同化の変化が確実に進む(60代、企業経営者・幹部)
・アジアの時代には、日中の良好な関係は不可欠である。次世代の若者にとっても。(60代、その他→顧問)
・アジアの巨大マーケットとしての中国市場は無視出来ないし、過去に戦争と言う不幸な歴史は存在するが、同時にお互いの文化を尊重した多くの人たちがいた。(60代、企業経営者・幹部)
・世界経済における中国のプレゼンスは更に高まるが大国としての相応の責任、パフォーマンスが必要になり、その中で比較的リスクが少ないと思われる日本へのアプローチ、歩み寄りが増えると思われる。(50代、会社員)
・今後、経済リスクを更に下げていくことは必然であり、国レベルの地域を維持するためには対立関係では成り立たなくなっていくと考えるから。(50代、自営業)
・良好な関係こそ、双方の利益になることが理解されるはずだから(逆説的に言えば「けんか」するメリットはない)(40代、メディア)
・日本批判のみのガス抜きでは、世論を押さえられなくなると思うので。(40代、その他→会社員になれない主夫)
・経済の結びつきがさらに強まるからです。(60代、メディア幹部)
・インドや新興国が力をつけて民主化が進んでいく中で中国の唯我独尊は困難になり、日本との関係も再考慮していく。(60代、企業経営者・幹部)
・中国サイドの富裕層の増大は先進国日本への関心を高める。一方、日本サイドは消費地としての中国を重視する。(70代、その他→金融関係リタイア者)
・背景の一つには、互いに好印象を持っていないことがあるが、これは相手国への理解が進んでいることの表れと感じられるから。これまでの日中友好は、ことばだけで、実際の相互理解は不足していたと思われる。(40代、メディア)

「変わらない」と回答した人の理由

・中国が反日教育を続けていることの変化は無い(50代、会社員)
・政治・経済レベルでの人的交流・パイプが細い(十分なものが無い)(60代、企業経営者・幹部)
・今後も日中双方の摩擦は増えるが、相互依存関係も深まるため、全体としては現在の状況がしばらく続く。(30代、国家公務員)
・問題は主として政治的側面と考えるが、当面中国に積極的な改善のニーズがないこと、日本側に改善を進めるパワーがないこと(60代、企業経営者・幹部)
・中国は大国としての自覚、ビヘービアが一段と要求され、一方、日本は、米国との関係を再強化せざるを得ない。こうしたバランスから現状とあまり変わらないと見る。(60代、企業経営者・幹部)
・中国にも日本にも相手国に敵対意識を強く持っている勢力がある。また敵対意識には意図的なものや誤解などが混在し、日中関係を複雑にしている側面もある。(50代、メディア)
・プラスマイナスになるのではないか。持ちつ持たれつの関係が望ましいのでは。(20代、学生)
・自己中心的な中国国民の価値観や人間性は 容易には変わらない(50代、その他→無職)
・中国の自己主張の強さは、変わらないだろう。そういったことに起因する外交的衝突は、今後ともいろいろな場面で表面化するだろう。(70代、その他→元会社員)
・二国間の領土問題、エネルギー問題は解決が非常に困難。隣り合う大国の関係が悪化するのは当然であり、「仲がいい振り」でごまかしてきた過去数十年のほうが不正常だと思う。ただ国家間の関係悪化を市民の間に持ち込む必要はない。国家間の矛盾を「無視」した草の根の交流の必要性が大きい。(30代、メディア)
・双方の国の政治が変わらないと思うから(30代、会社員)
・基本的政治体制が異なるのにそれほど友好関係は樹立出来ないがそれほど悪化することもない。(70代、企業経営者・幹部)
・在日中国人に対する歪んだ見方、在中日本人に対する歪んだ見方がまだまだあると思います。(20代、会社員)
・高齢化などにより日本の国力が相対的に低下することで、中国の日本軽視が進むことになるのではないかと予測されるため(60代、学者・研究者)

「どちらかといえば悪くなっていく」と回答した人の理由

・中国軍事力の増強、領有権問題(50代、企業経営者・幹部)
・中国政府の自信回復がさらに他者を見下す方向へ動いている。よほど双方で努力しない限り、「戦略的互恵関係」は、お経に終わりかねない。(60代、企業経営者・幹部)
・両国ともに政治不安、経済の低迷が続いており、信頼関係改善を考える余裕がない。(60代、各団体関係者)
・大国覇権主義的考え方から変更する気配がなく、軍事費の増大など膨張は止まらないから。(40代、会社員)
・中国の覇権志向(70代、企業経営者・幹部)
・中国の文化的洗練度が低すぎるから(30代、学者・研究者)
・日本人の「対中観」は明治維新後の日本の勃興期以降の(中国及び中国人に対する)相対的優位感に基づいて形成されています。一方、現代の中国人の対日観は、「日本による大陸侵略」をベースに形成されています。中国人の東アジアにおける国家観・民族観は依然として中華思想に基づいたものであり、属国までとは言わないまでも日本や韓国、北朝鮮は依然として中華文明の端に位置するものとみなされております。清朝末期以降、文化大革命終結まで中国は列国に蚕食されるがまま同一民族同士の闘争を余儀なくされ、或いは米・露の強力な干渉に耐えてきたが、改革開放政策の成功によりアメリカを脅かすまでの経済力をもった今、日本に対する遠慮は不要となり、中国人本来の思想と行動様式をもって日本はおろか世界各国に臨んで来ております。こうした相対的な政治・経済力学が大きく変化していることを認識することなく、従来と同じ見方・考え方で中国に対応する限りは、メディアの愚かな絶叫型嫌中感に影響されやすい日本国民の対中感が好転することは、残念ながら非常に難しいと言わざるを得ません。世界における日本のプレゼンスが落ち込めば落ち込むほど隣国との対立を煽る民族主義的政治家が受け入れやすくなる傾向にあることも、好転が期待できない理由です。(50代、企業経営者・幹部)
・日本のTTP参加と思います。(70代、企業経営者・幹部)
・中国政府の拡張主義的傾向(特に海域における)(70代、その他→無職)
・中国政府が世論誘導というか批判の矛先を日本に向けていく姿勢が変わらないと思うから。(30代、その他→派遣社員)
・日中両国民の間に歴史問題や人権問題をはじめとしてわだかまりが消えていない。これが関係改善への最大の障害である。(40代、自営業)
・中国内の経済成長鈍化、政治的な統制の限界などの問題を再び日本との諍いに転嫁する動きが出始めると思うから。この流れはあと5~6年続くと思っている。(60代、NPO・NGO関係者)
・中国の経済力がピークを迎えるまでは軍事増強と強気の外交が続くため日本との軋轢も増加すると思われる(40代、メディア)
・中国国内の矛盾の矛先として日本との対立を煽る可能性があるため(30代、メディア)

「悪くなっていく」と回答した人の理由

・日中両国とも深刻な経済問題を抱えるため、外に対して攻撃的になるから(40代、国家公務員)
・中国政府の覇権主義が強まっていくと考えられる。(50代、地方公務員)
・ここ10年余りの中国の教育が、日本人だけを悪い人種だと教え込んだために、日中関係が、社会問題が生じた際のシワ寄せになるため。(50代、国家公務員)

「わからない」と回答した人の理由

・日中の抱える問題は多く、国民が理性的に対応できるようになるかどうか、今のところはわからない。(60代、企業経営者・幹部)
・日本外交の方向性が見えないのでわからない(20代、会社員)

「その他」と回答した人の自由記述

・政治家のリーダーシップに依るところが大きいものの、日中関係はすでに互恵関係にあり、冷静さを失わないようにすれば、必ず改善に向かうと考える。理由はすでにお互いの善さを認識しているから。(50代、企業経営者・幹部)
・日中関係全体として「良好」「悪化」と一口に言いづらい、より複雑な関係になっていくと思う。理由は米国の相対的地位の低下、日本経済の停滞、中国経済の減速、東南アジア諸国やインドなどの台頭によって、国際情勢が多極化するから。(40代、メディア)
・表面上は良くなったように見えると思うが、根底では今と余り変わらない。理由は国民感情が良くなる事実が出てくるとは思えないから。(60代、企業経営者・幹部)
・政府間の対日関係は、良くしようとのエネルギーが働いて欲しいと思いますが、新体制でどうなるか心配しています。国民感情は政府の政策次第でしょう。(70代、その他→年金生活者)


問4.その他、ご意見・ご質問がございましたらご記入下さい

・日米同盟はしっかり維持しておくことが全ての前提と考えます。(50代、企業経営者・幹部)
・他国に自身の希望を期待することはそろそろ辞めよう(50代、会社員)
・今年の御社の世論調査では、日本人の5割強、中国人の3割強が現在の日中関係が悪化している結果からわかるように、中国人よりは日本人のほうが中国を意識しているようだ。日本世論も中国の動向に神経質、気にしすぎではないか。あるいは中国脅威論を煽っておるのでは、と見る向きもある。この結果をどのようにみるべきか、専門家の意見を是非お聞きしたい。(50代、メディア)
・中国研究を専攻している身として、言論NPOの活動に関心があります。引き続き、定期的な日中対話を行っていただきたいと思います。(20代、学生)
・冒頭の設問に対し「中国社会に変化が始まっているとは思わない」と回答しましたが、これは「変化がない」ことを意味するものではありません。中国では相当前から(静かにゆっくりと)変化は始まっており今まではそれが表面化してなかっただけのことと考えるがゆえにこのように回答した次第です。最近になって表面化しているのはインターネットの普及によるものと考えます。(50代 、企業経営者・幹部)
・日中関係の悪化は、日本サイドにも反省すべき問題点が多い。(60代、その他→顧問)
・TPPに対しては日本政府の中国に対する気ずかいが必要です。(70代、企業経営者・幹部)
・中国要人の中の親日派がどう変化してきたか興味があるので、時間が許せば議論の中で取り上げて欲しい。(20代、会社員)
・医療の面からこの国を見続けている。灼熱のアジアを感じるが、この気持ちは昭和30年から40年代に感じたもの。中国国民の変化を強く感じるとともに親しみを感じる。(60代、企業経営者・幹部)
・民間レベルでのこの様な対話を続けて行くことが重要で、重ねて行く事で双方の国の政治も変わって行けると思っています。大変だと思いますが、可能な限り続けて行って欲しいです。(30代、会社員)
・中国国内には、未だ様々な問題が鬱積しており、その解決の為には、より民主化を進めなくてはならないように思われる。(40代、その他→会社員になれない主夫)


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