世界とつながる言論

日中の相互不信とメディアの役割


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第6回:「相手国のイメージは現状より先行きの不安を反映する」

張一凡 正直に申し上げますと、日本はもう戦後61年を経過しておりますが、日本が軍国主義化しているかというと、日本は1つの国として今後、軍国主義の道を進むことはないと考えています。歴史上で起こったことを申し上げたいと思いますが、1970年ごろ、中国は文化大革命の時期でした。中国国内で日本の映画が放映されました。例えば、山本五十六の映画、また、中国の新聞では日本の軍国主義を批判する文章が発表されました。そのとき私は若く、20代でした。私の父は日本とかなり縁がある人物で、私は日本との外交の仕事をしておりました。父は非常に厳しい中で日本から中国へ渡った友好代表団の受け入れを行いました。そして、中国に訪問する日本の人たちの口から、日本は軍国主義ではない、戦争しないということを信じてもらえるかというような話がありました。国交正常化する前に日本に行くことができた団体というのは、もちろん国交の正常化を望んで、非常に情熱を持った人たちだったわけです。ですから、私の父は周恩来総理にお会いしたときに、周恩来総理に、日本の軍国主義は復活したかどうか日本の人に話を聞いたと告げました。そして、そのとき、日本は日本の軍国主義を復活させるかどうかについて検討するというような言い方をしたのです。そういう報道がされてしまいました。

70年代にそういう問題が一度出てきました。そして、72年に国交が正常化されてから、もうその問題は言われなくなってしまいました。そして、80年代ももうそういう話は出なくなりました。90年代になってまたその話が蒸し返されてきたわけですが、日本は戦後、平和憲法がつくられています。そして、国際的ないろいろな局面の変化なども起こっております。また、冷戦も終わりました。50年前の戦争のような道を歩むということは、もうあり得ないと思っています。これは私自身の見解で、もしかしたら同意されない方もいらっしゃるかもしれませんが、工藤さんが質問されたこの問題については、私ははっきりとした私の見解として申し上げます。

範士明 工藤さんから質問をいただきました。私に問いかけられた問題だと思います。むしろ多くの中国人がこのように軍国主義が形成、それが復活されるというような意識を持ったのはなぜでしょうかという問いかけだと思います。私の答えは非常に簡単です。要は、感情的に気持ち的に申し上げまして、もう1人に対する見方、観察をするとき、または一つの国がもう一つの国を見るときに、それをただ単に一つのサブジェクトとして見ているわけではありません。やはりその心を見きわめようとしているわけであります。すなわち、相手側の国を見ると同時に自分の心、そのものを見きわめようとしているプロセスです。他人に対する認識は、そもそも自分の心理状態、気持ちの現われでもあります。

なぜ多くの人が日本は依然として軍国主義であると思い込むのか。原因について申し上げますと、そういう心配、懸念を抱いていることが、世論調査に反映されているのだと思います。日本の世論調査も同様な結果を見せていると思います。中国に対しては覇権主義と答えた人が一番多かったと思いますが、覇権主義に関しては、中国人にしてみれば覇権主義ではないと答えるでしょう。覇権主義と言われますと、アメリカを連想いたします。なぜ日本の多くの方は中国は覇権主義であるというふうに答えるか。やはり心配が効いていると思います。すなわち、中国はそのうち覇権主義になってしまうのではないかという懸念を抱いているがゆえに、そういう回答を選んだと思います。軍国主義の復活に関しても同様に、中国は調査を受ける側として自分の心配事を表しているだけだと思います。ですから、その結論から、日本は軍国主義だと思われているような受けとめ方ではだめだと思います(この調査結果を見たい方はこちら/pdf)。

張一凡 ちょっと補足説明をいたします。なぜ中国人は日本が軍国主義を復活させることを心配するかということですが、歴史認識に関して、日本の国民が第2次世界大戦をどう見ているかについて、例えば中国との戦争、そして北朝鮮を含めた朝鮮半島に対する植民地支配に関しては、日本の方は自分の見方、認識を持っているでしょう。歴史問題の認識はどちらかというと成熟していないと思います。日本をドイツに例えたいと思います。ドイツは第2次世界大戦を起こしました。今も反省をしておりまして、しかも、日本と比べましてかなり深く反省していると思います。例えば、西ドイツの旧総理がポーランドに行き、その被害者に土下座したというようなことがあったのですが、日本の指導者には求めようとは思っておりません。日本の戦争に対する認識については、もちろん村山元首相の談話がありますし、そして、昨年の小泉首相の発言もありますので、日本は反省していないと言い切ることはできません。ただし、ドイツと比べまして、そこまで掘り下げて反省されていないと思います。

もう一つ、今、EUを見ていますと、EUができていまして、しかもユーロで結ばれているわけです。ただし、それができたのはドイツとフランスの和解が成立したからです。それがなければ今日のEUはないでしょう。現在、日本は中国のみならず、韓国との間にも同様に摩擦が起こっているわけです。それはそもそも歴史問題に起因するものだと思います。午前中、王毅大使が述べましたように、この問題を解決するのは、むしろ日本の国民、日本の皆さんのご判断に任せます。

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「第6回/相手国のイメージは現状より先行きの不安を反映する」の発言者

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張一凡(チャイナデイリー香港版執行編集長、チャイナデイリー評論員)
ジァン・イファン

1950年12月5日北京生まれ。『香港の窓』の英語週刊、国務院報道事務室、国務院華僑事務の事務室、中国社会科学院のニュース研究所と中国科学院に勤務した。また、武漢大学と中国社会科学院の大学院で(文学の修士を得た)学び、アメリカのGeorge Washington Universityで国際関係を研修した。1997年中国日報の香港版に入社し、編集長の補佐(1997年)、広告部総監督(1998年)、編集長室主任(2000年)、編集長(2004年)と中国日報の古参評論員(2006年)を担当。2001年から香港の新聞界同業組合(The Newspaper Society of Hong Kong)の委員を担当。

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範士明(北京大学国際関係学院助教授、博士)
ファン・シミン

1967年中国吉林長春に生まれ、主に国際関係の中のニュースの伝播、中米関係、公衆世論の問題などを研究することに従事していた。《中米の関係史》、《メディアと国際関係》などの課程を講義し、国内外の雑誌の上で著述した論文を発表した。範士明は北京大学で法律学の学士(1990)、法律学の修士(1993)、法律学博士(1999)の学位を取った。米国のハーバード大学の費正清東アジア研究センター(1998)を訪問、研究したことがある。そして日本新潟大学(2001-2002)、東アジア大学(2004)などでは、客員教授を担当したことがある。

更新日:2006年10月14日

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