「第19回言論NPOメンバーフォーラム/ ゲストスピーカー: 与謝野馨氏」報告

2010年5月09日

第19回言論NPOメンバーフォーラム

 5月7日、都内ホテルにて、第19回言論NPOメンバーフォーラムが開催されました。ゲストスピーカーとして、衆議院議員で「たちあがれ日本」の共同代表の与謝野馨氏をお招きし、「日本の未来をどう描き、実現するのかー日本のリーダーに問うー」と題して議論が行われました。

 まず工藤が、「フォーラムへの参加をお願いした1ヶ月前は、与謝野氏はまだ自民党員で、日本が壊れていくことに非常に危機感を抱いていらっしゃった。今は日本の政党政治が厳しい時代だと思う。先日自民党を離党され、新党を立ち上げられたご自身のご決意、国民の政党政治不信の状況も含めて、この国の立て直しをどうはかっていくか、与謝野氏のお考を伺いたい。」と今回のメンバーフォーラムの趣旨を説明しました。


 これに続き、与謝野氏が自身の専門分野とする経済政策・財政の面から見た日本の現状の問題点、また鳩山政権への批判も含めて日本の政治の問題状況を語りました。
 まず与謝野氏は、最近お読みになった論文を素材として二点の指摘を行いました。第一点は、「多くの歴史家、経済学者が言うように大国が徐々に滅ぶというのは錯覚であって、ローマ帝国からソ連まで、大国や帝国は一世代で突然崩壊する。これは数学でいうと複雑系の概念にあたる。国家はいろんな要素が入り交じった一つの複雑な構築物で、あるときに平衡が崩れると一気に全体がつぶれるという危うい構造だ」ということ。
 第二点は、「ローマから現代までの大国の崩壊には、共通の特徴があり、それは財政難だ」ということです。「日本が直面しているにもかかわらず、国民の自覚がない危機は、財政だ」と強調しました。
 

 与謝野氏は続く発言の中で、鳩山政権の予算、ギリシャの財政危機の日本への波及の可能性を問題点として指摘し、さらに鳩山政権の現状についても語りました。
 まず歳出拡大と歳入不足が続けば、日本の財政破綻は遠い将来のことではなく、今年度の鳩山政権の予算は日本の財政破綻への第一歩になりうると指摘しました。そして、鳩山政権提出の財政再建法は、「プライマリーバランス健全化の時期は明示されていても、それに到達するため、どのように歳出削減や税制改正を行い、経済成長を実現するかが明示されていない」と批判しました。

 次に、ギリシャの財政危機が株式市場や格付けを通じて日本にも影響がおよび、「二番底につながる可能性があると思う」と懸念を示しました。IMFとEUがギリシャに突きつけた条件は猛烈な歳出削減と増税で、年金、医療、公務員の雇用などを直撃するということ。国民生活抜きにソブリンリスクは論じられないことを日本も考えるべきだ。日本の短期国債・地方債の金利は安定しているが、長期については金利上昇気運に入った。今は長期金利が低水準にとどまっているために、日本の財政が見た目よりも深刻に生活に影響していないが、各国が日本の信用状態の格付けを下げたとたんにどんなパニックが起きるかわからない。日本政府に対する信任がいつまで保てるかという問題がある。また、国際的にリーマンショック以降の財政出動からの出口戦略を考える時期に来ており、日本も無関係とは言えないと思う」と述べました。

 さらに、今後の日本経済の展望として、「国内需要をどの分野で喚起するか、その政策が国の財政とどうつながりをもつべきか真剣に考える時期だ」と述べ、具体策としては、医療、介護、保育、科学技術振興を挙げました。しかし「民主党にはこうしたマクロ経済成長戦略がない」と鳩山政権を批判し、また事業仕分けについても、必ずしも専門家でない人が事業仕分けをして、科学技術等への優遇措置を無駄と判断するのは適当か、と疑問を呈しました。
 
 最後に、鳩山政権の現状について、「鳩山政権の最大の間違いは政治主導ということばの理解が間違っていること。日本の官僚は、政策シンクタンクとしては世界最高の一つであって、政治が使いこなすべきだ。官僚の排除が政治主導と考えるのは間違いであって、肝心なときに判断を下し、その判断については責任をとるというのが政治主導の本当の考え方だ。政治の劣化は言葉の劣化にも現れている。言った約束を守らないのが最もいけないことだ」と批判しました。


第19回言論NPOメンバーフォーラム

 その後参加者間で活発な議論が行われました。これらの議論を踏まえ、最後に工藤は、「今日は正論を話していただいた。正論が通じる社会にならなければならないと考えている。言論NPOもこういう社会の実現に貢献していきたい」と述べ、フォーラムを締めくくりました。


文責:インターン 石田由莉香(東京大学)


 5月7日、都内ホテルにて、第19回言論NPOメンバーフォーラムが開催されました。ゲストスピーカーとして、衆議院議員で「たちあがれ日本」の共同代表の与謝野馨氏をお招きし、「日本の未来をどう描き、実現するのかー日本のリーダーに問うー」と題して議論が行われました。