12月8日の言論NPOメンバーフォーラム朝食会は、産業再生機構の斉藤惇社長をスピーカーに招いて開催いたしました。
まず、斉藤社長からのスピーチでは、
① 対日投資拡大を阻害するもの
② 地方の問題
③ 政府系金融機関の問題
④ ファンドキャピタリズム
⑤ 再生へのルール作り
⑥ 銀行問題
のそれぞれについて触れられ、この中で斉藤社長は、外資の導入を阻む日本の制度やその背景にある国民性の問題、国への依存体質の中で自ら再生のイニシアチブをとれない地方の問題や産業再生機構の役割、担保ベースのローンに戻り、事業収益ベースのビジネスモデルを構築できず人材に対して適切な目標設定ができない日本の金融機関の問題など、幅広い論点について論じました。
また、小泉改革については、様々な批判はあるにせよ、日本にとって必要なインパクトを与えたものであり、選択肢がなく、あいまいさの日本の政治構造の中で、合理的な方向を明確に出したものとして評価しました。
その後、参加メンバーとの間で活発な意見交換が行われましたが、そこでは、マスコミやコーポレートガバナンス、黄金株などに見られる問題点も含め、合理的な資本のアロケーションを妨げる日本の様々な問題が幅広く議論されました。
その中で斉藤社長が特に強調していたのは、実態を直視したバランスシートの合理的な組み替えを早期に行うことこそが、結果として社会的コストの最小化を実現するという論理でした。例えば、政府系金融機関の統廃合の中で地方の中小企業などへの地方金融機関の融資の確保が懸念されている状況についても、存立できない企業の退出が急がれている中でどのようなバランスがとれるのかが課題である。
これまで、バランスシートの左側(資産)を意図的に膨らませていた状況を正常なものに是正するだけで多くの企業が再生してきたのが産業再生機構の経験であったことなどを指摘しました。それを最も理解していなかったのが経営者層であり、企業に優れた人材を抱えた日本では、ウソをやめれば事業は再生することを斉藤社長は強調しました。
また、キャッシュフローが潤沢になってきている日本の企業が、それを相変わらず固定資産に回すのではなく、生産性の高いところにいかに投資していくか、特に、資金はアジアなど世界的に出していくべきで、こうしたことによって日本の企業価値が高まればその資金は日本に還流するのであり、このような良循環をどう構築していくかなども、今後の日本の課題であるとされました。
今回のフォーラムで示されたのは、日本の改革はまだこれからだということです。言論NPOは、今回の論点も踏まえながら、12月19日に予定している地方再生戦略会議の発足を皮切りに、地方の再生の議論を本格化させていくなど、今後とも多様な議論を展開したいと考えています。
12月8日の言論NPOメンバーフォーラム朝食会は、産業再生機構の斉藤惇社長をスピーカーに招いて開催いたしました。