1月17日の言論NPOメンバーフォーラムは、衆議院議員で元自民党幹事長の加藤紘一氏をスピーカーにお招きして開催致しました。
そこでは、「現在の日本の政局に問われるものは何か」を切り口として、中国などの外交問題から、日本が直面する社会の崩壊の問題やコミュニティーの再構築といった課題まで、幅広い論点にわたって突っ込んだ議論が行われました。
まず、加藤氏は冒頭のスピーチで、人名を入れた政局の議論はまだ先のことであり、当面は「日本の社会は何をしなければならないか」のテーマ設定をすべきであるとし、次の3つの論点を提示しました。
第一に、アジア外交です。加藤氏は、日本のアジア外交は壊れているが、中国にも日本との良い関係は維持しなければならないという事情があるため、経済からの断絶はないとし、中国当局が良好な対日関係に向けて国内を説得するなどの努力を行っている姿が知られていないのは、日本のメディアが自らの作ったストーリーに合わせた報道を行っていることにも原因があるとしました。
問題は、靖国問題を始めとして悪化する対中国問題が、対米問題に転化していることであり、アメリカ側から、「日本は孤立する」、「孤立すれば、日本がアメリカの外交パートナーとして力弱い存在になってしまうのは残念」といった声が聞こえていることにも見られるような戦略性の欠如であり、日本はまさに両大戦間期のドイツのような状況であるとしました。
第二に、日本の社会の崩壊です。加藤氏は、先般の総選挙は自民党の勝利ではなく小泉氏の勝利であり、郵政民営化の勝利ではなく「刺客劇」の勝利であるとしました。
そして、ライブドアの捜査で来るべきものが来たものであるように、日本の社会がどこかで崩れかけている。政治も、批判勢力であるべきメディアも弱くなり、「社会の崩れ」というテーマが国民の関心を集めるようになっていることを指摘しました。
姉歯の問題は、どれだけマーケットメカニズムが重要でも命に関わることは手を抜いてはいけないという当然のことが踏みにじられる社会になっていることを示すものであり、学習塾での小学生殺害事件など様々な事象が示すのは家庭の教育力の低下として、加藤氏は、現在の問題は地域社会で人間が触れ合うことでしか解決しないにも関わらず、地域社会そのものが力を失っていることに日本の問題があるとしました。
第三に、関心事の一極集中です。加藤氏は、今回自民党が大きく票を伸ばしたのは、都市圏の20代、30代の層が大きく動いたためであり、かつての「加藤の乱」のときに自らに向けられた強烈な視線と同じものを今回の総選挙でも見出したとしました。
これはコミュニティーも含め全てから自由になったものの、判断基準を失ってしまった群集の不安の目であり、判断基準はテレビかネットであり、本の内容も薄く、付き合いは匿名という不健全な社会において、小泉氏の絵を出せば上昇する東京の一部世帯の視聴率の結果に従って全国に流れる電波が提供するものに専ら関心が集中してしまうという、いわば一極現象が生じているというのが加藤氏の指摘です。
まさに複眼的視点が必要な時代に、それを喪失し、強靭な知性を持たない社会となっていることに対する懸念が、ここでは提起されました。
以上の加藤氏のスピーチの詳細は、言論NPOブログにていずれ公開する予定です。
次回のメンバーフォーラムは、日本学術会議議長の黒川清氏をスピーカーに迎え、2月7日に開催の予定です。
1月17日、加藤紘一氏(衆議院議員)をスピーカーに呼んで、メンバーフォーラムを開催。「現在の日本の政局に何が問われているのか」を中心テーマに、言論NPOのメンバーと活発な議論を展開。