「2008年 日本の未来に何が問われるのか」 / 発言者:茂木友三郎氏

2008年1月01日

政治はリーダーシップを発揮して国の方向性を示せ

 2008年、一番大切なことは、政治のリーダーシップが発揮されることだと思います。国の方向付けをするのが政治の役割であり、その方向のもと、民間が頑張るのです。今、日本は一大転換期にあります。政治のリーダーシップの重要性がいまほど問われる時代はないと思います。

 しかし、それにもかかわらず、昨年七月の参議院選挙の結果、衆参ねじれ現象が起こって、政治が全然動かないという状況になっている。この中で政治が良くなるのか、悪くなるのか、読みにくい状況にある。私は、これをきっかけに政治が良い方向にすすむことを願っています。

 ねじれ現象のなか、政治が良い方向にいく可能性はあるのか。私は、じっくり議論をするという習慣を政治の世界につくりあげることができれば、その可能性はあると思います。日本人は議論のキャッチボールが苦手であると言われています。確かに、言いたいことは言いますが、相手の言っていることを聞いていない。言いっぱなしになってしまう。たまたま、反論でもしようものなら、反論された方が感情的になってしまい、議論が発展しないことも多い。そういうことが、日本の問題だと思います。子供の頃から議論をする習慣がついていないのが、その原因だと思います。議論のキャッチボールが苦手な日本人ですが、この衆参のねじれの状況のときに、与野党が、しっかり議論をして、議論のキャッチボールができるようになれば、政治は良い方向に進むのではないか、政治の質も上がるのではないかと考えています。そうすれば、日本の方向付けも行なわれることになるのではないでしょうか。
 
 政治の質を上げるのは重要です。私は今、新しい日本をつくる国民会議(21世紀臨調)の共同代表をつとめております。21世紀臨調では、マニフェストを中心とした政治のサイクルをつくりあげていくための運動を展開しています。マニフェストが日本の選挙の中で使われ、マニフェストを中心とした政治のサイクルができあがりつつありますが、そのサイクルが確立されることにより、政策本位の政治が実現できると思っています。それによって、政治の質が上がります。

 21世紀臨調が主催し、与野党の政策責任者と民間団体が参加する「マニフェスト検証大会」でも、言論NPOは参加され、与野党のマニフェストについて、やや辛口の評価をしています。言論NPOの参加は、マニフェスト検証大会において、非常に大きな役割を担ってくださっていると思います。マニフェストを中心とした政治のサイクルが形成されていくプロセスで、工藤さんの主催する言論NPOに期待される役割は、大きいと思います。
 

 また、言論NPOは毎年中国との対話をされております。2006年の対話においては、当時総理大臣になる前の安倍晋三さんが参加されてよいスピーチをされた。そしてそれがきっかけとなって、安倍さんが総理になった直後に安倍さんの訪中が実現し、それにより日中関係が改善された。そういう面でも、さらに言論NPOの活躍は広まるのではないかと期待しております。

発言者

080101_mogi.jpg茂木友三郎(キッコーマン株式会社 代表取締役会長 CEO)
もぎ・ゆうざぶろう
profile
1935年千葉県生まれ。58年慶応義塾大学法学部卒業、61年米国コロンビア大学でMBA(経営学修士)取得。58年キッコーマン入社後、海外事業部長などを経て95年代表取締役社長、2004年代表取締役会長に就任。中央教育審議会副会長、米国ウィスコンシン州名誉大使ほか公職も多数。

 2008年、一番大切なことは、政治のリーダーシップが発揮されることだと思います。国の方向付けをするのが政治の役割であり、その方向のもと、民間が頑張るのです。今、日本は一大転換期にあります。政治のリーダーシップの重要性がいまほど問われる時代はないと思います。