「2008年 日本の未来に何が問われるのか」 / 発言者:小林陽太郎氏

2008年1月01日

対外関係の構造改革と、本物の民主政治とを

 2008年の日本を考えると、私は2つのことが大切だと思います。そして、その2つに言論NPOが大いに貢献できると思うのです。

 1つには、対外関係の構造改革が急速に重要問題になってきていると思います。対外関係というと、たくさんあるわけです。その中でも対米関係、それから対中関係、ほかにロシアとの関係などは非常に心配になるところですが、対米、対中2つに重点を置いて、しかも日米中という視点からこの関係をどう考えるのかが大きな問題です。言論NPOは中国については東京-北京、北京‐東京フォーラムをやってきましたし、この問題も取り上げてきました。けれども2008年はこの問題を正面切って取り上げて本当に日本としてこの問題をどう考えていくのか。
 
 特に、日本の国内では、日米関係がかつてないくらいにいいなどという話が通用していて、一種の思考停止の状況に陥っているのではないかと思います。ここは思い切って言論NPOに少し刺激のある、本当にこれでいいのかという問題提起をしていってもらいたい。日米関係が大切であること、これは変わりませんが、米中、日中の関係をベースにして考えたら、日米関係はどうあるべきなのか、日米関係は今までとは違った意味で大切なのであって、それが何かということを日本人としてきちんと官民ともに一つの考え方を持つようになるべきでしょう。その中で、言論NPOが大きな役割を果たせると思います。

 もう1つは、やはりそのベースにある日本の民主主義の問題です。政局の問題にももちろん関心はありますが、1993年の政治改革以来、いったい日本の民主主義は行くべき方向に進んでいるのかどうか。方向は間違ってはいないと思いますが、今ここで間違えると、また旧態依然としたところへ戻ってしまう。

 外から日本の国内の状況を見ると、半分、揶揄したような見方ですが、「ワイドショーが日本の政治を決めている」と言われています。でも、それは少なくとも半分は真実ですね。全部本当だとは言いたくないのですが。さっき思考停止の話をしたけれど、もう黒か白か、こっちの指とまれっていう競争をしていて、それで政治が決まっていく。こんな民主主義じゃあ本当に日本としてはなさけない。やっぱりきちんと考えることが大事です。もちろん、民主主義には、ものごとを分かりやすく考えられるようにしてどっちかに決めなきゃいけないところもありますが、このところの日本の民主主義はあまりにもワイドショー的なものに流されすぎています。マニフェストなんかどこ吹く風っていう話ですから、本当にもうマニフェストが泣いていると思いますね。是非ここはもういっぺんなぜマニフェストなのかを考える民主主義を言論NPOが呼び掛けて、日本の民主主義が変な方向に行かないように一つ大きな役割を果たすという大切な年だと思っています。

発言者

小林陽太郎氏小林陽太郎 (富士ゼロックス株式会社相談役最高顧問)
こばやし・ようたろう
profile
1933年ロンドン生まれ。56年慶應義塾大学経済学部卒業、58年ペンシルベニア大学ウォートンスクール修了、同年富士写真フィルムに入社。63年富士ゼロックスに転じ78年代表取締役社長、92年代表取締役会長、2006年4月相談役最高顧問に就任。社団法人経済同友会前代表幹事。三極委員会アジア太平洋委員会委員長、新日中友好21 世紀委員会日本側座長なども兼任。