2013年の日本を考えてみよう

2013年1月09日

1月9日放送の「工藤泰志 言論のNPO」は、2013年に入って2回目の放送。新年を迎えて、2013年は日本にとってどんな年になっていくのか?我々国民は何をすべきなのか?そして、工藤は何を目標とするのかなどを議論しました。

(JFN系列「ON THE WAY ジャーナル『言論のNPO』」で2012年12月20日に収録されたものです)
ラジオ番組詳細は、こちらをご覧ください。


2013年の日本を考えてみよう

 おはようございます。言論NPO代表の工藤泰志です。毎朝様々なジャンルで活躍するパーソナリティが自分たちの視点で世の中を語る「ON THE WAYジャーナル」。今日は「言論のNPO」と題して、私、工藤泰志が担当します。

 さて、今日は新年2回目の放送となります。先週は去年の選挙結果を受けて、私たちが日本の政治をどのように考えればよいかということでいろいろとお話させていただきました。今日は2013年、新年をどう考えればよいかを私自身のことも踏まえて皆さんにお話ししようと思います。それでは、「ON THE WAYジャーナル 言論のNPO」今日のテーマは「2013年の日本を考えてみよう」ということでお送りしていきたいと思います。


昨年の世界の動きと日本の課題

 さて、今年は意外にいろんなことがあります。1つは参議院選挙が7月に行われると思います。それから、秋頃に日本の経済がどうなっているかをベースにして、来年以降に消費税を上げるかどうかを決めなければならないという問題があります。安倍政権がその頃に何をしているか、先週もお話ししましたが気になっています。経済問題だけでなく、財政、特に中国の問題をうまく切り抜けているかが気になっています。日中関係はあまりよくないです。去年の末に、中国の海上法執行機関の飛行機が領空侵犯したので、日本の自衛隊がスクランブルで緊急発進しました。それでその飛行機を追い払ったけれども、僕は、これはすごく危ないと思いました。去年、フィリピンが持っているサンゴ礁・スカボロー礁で中国とフィリピンが対峙して、中国の海上法執行機関の漁政という漁船の監視船が来た時に、フィリピンが軍隊を出してしまいました。軍隊を出すと中国も軍を出す可能性があります。それで一気に中国の軍が出ることになり、フィリピンが撤収してしまったためにそのサンゴ礁を取られてしまうという事態がありました。つまり、海洋部に関してはそうした緊張感があるという状況が未だに続いています。こういう問題に日本の政治がどのように対処すべきかを考えなければならない時期だと思います。

 今年2013年は、米国では大統領選が終わり、中国も指導部が変わった年です。特に、中国の台頭で、米国と中国のせめぎあいが色んな所で見えてくる。その中にアジアがあります。一方で、日本で僕が気になっているのは財政ですが、高齢化でお年寄りが増える中で財政とか社会保障の仕組みをどのようにマネジメントするかという状況下で、何かすると、例えば一方的に財政拡張をすると、短期的な景気にはいいけれども借金が急増してしまう。世界のマーケットがそれに対してつけ込んでくるという非常に微妙な状況が続いていくと思います。私はこの1年はそういうふうに、非常に不安定でかなり緊張感のある日本の運営になると思いますが、特に私が一番気にしていますのが政治の動きです。

 言論NPOは去年の9月から「私たちは政治家に白紙委任はしない」というメッセージを多くの人に呼び掛けてほしい、賛同してほしいということで色々なキャンペーンをやってきました。今、1800人ほどの方に賛同していただいており、より多くの人に賛同していただきたいのですが、私が感じている市民とか、有権者主体の政治とちょっと違う流れが目につきます。そういう意味で、政治の状況が単なる政策課題をどうするかを超えて、日本の未来にとっての転機になる気がしてならないのです。言論NPOは今年が正念場だという気持ちで議論作りをしなければいけないと思っています。


政党の選択肢がないという問題

 開票日に実施した有識者アンケート結果を公開しましたが、その中で私が一番注目したアンケートがありました。簡単にご紹介しますと、これからの日本の政治を皆さんはどのように判断していますか、と聞いてみました。その時に2つが38.4%と37.1%で競っており、それに続いて29.7%、28.4%、27.9%と第2グループが団子みたいに並んでいます。第1グループの1つは、「当面は自民党や自民党中心の連立政権が長期化する」という回答が38.4%。それに対抗しているのは、「大衆迎合的なポピュリズム政治が一般化し、政治が日本の課題解決で機能せず、この国が完全に衰退や危機に向かう」との回答が37.1%もあります。ちなみにその解説をする前に第2グループを説明しますと、29.7%が「既存政党の限界が明確になり、政界再編や新しい政党の台頭に明け暮れる」ということです。それから28.4%が「政党政治が国民から完全に信頼を失い、民主政治への不信が高まる」と、ほぼ悪いことばかりという結果でした。最後は、唯一の私の希望で、多分、言論NPOの応援団が選んでくれたと思うのですが、27.9%と燦然と輝いているのが、「政策軸や課題の解決策に基づいた、本格的な政界再編や有権者主体の政治に向けた動きが始まる」というものです。

 この結果を、私は年末にずっと考えていました。これはやはり、私たちが一番、考えなければいけない問題だと思っています。自民党政権が長期化するかどうかという問題は、やはり今の状況ではそう思うのも無理はないと思います。つまり、対立する政党、特に民主党がここまで支持を失ってしまうと、今まで二大政党といわれた構造が壊れてしまった。この状況は間違いないと思います。一方で、第三極と呼ばれるところはまとまっておらず、言っていることが意外に過激だったり、党内が非常に不安定だということがあって、十分な受け皿にはなっていません。つまり、"極"にはなっていません。第3グループに、民主党と同数の人たちとかもっと少ない党が並んでいる。つまり自民党が圧倒的です。そうなってくると、やはり国民の選択肢、どのように未来に向かって競争していくのかという政党の選択肢がない状況です。これは非常に問題だと思います。そういう意味では、別に応援しているわけではないのですが、民主党やその他のいろんな政党が、本気で立て直すというか、先週も言いましたように国民に向かい合う、そして課題にちゃんと挑む、こういう形で党をきちんとまとめ上げていかないと、たぶん自民党政権が長期化してしまって、この長期化の間にいろんなことが進んでしまう。それが有権者の監視の中で動くという状況ならばまだ救われるのですが、そうでない場合は非常に厳しい状況になるということです。


1930年代と類似するポピュリズムの展開

 2つ目の「大衆迎合的な動きが強まる」ということが、私が非常に気になっている点です。去年の年末に、私はいろんな人たちと勉強会をやったり、国連の元事務次長だった明石康さんを中心に20人くらいで議論したのですが、やはり皆さん、メディアの関係者もいたのですが、同じようなことを言っていました。それは何かと言いますと、1930年代に日本が似てきているのではないか、という人が結構いました。1930年代というのは、ぜひ調べてほしいのですが、政治的には毎年のように首相が代わったりするのですが、2・26事件、盧溝橋事件があり、政党が機能しなくなり、大政翼賛会という一つの党に結集し、軍部の台頭を抑えきれなくなり、戦争になっていくという流れです。その時に、メディアも含めていろんな言論が衰退していきます。勇ましい声だけが出て、「あいつをやっつけろ」とか「これはまずいぞ」という、相手を批判するような言説だけが目立っていくような状況があり、その流れを食い止めることができなかったのです。その後、日本は破局的な戦争に入っていきました。その状況と全く同じ、とは私も言えないし、皆さんも言っていないのですが、傾向は似ている。

 その時に、1930年代と今とでは何が違うのかということも議論しました。その時出た違いの一つが経済です。1930年代は農村が疲弊して女性を売るとか、信じられないような貧しい状況でした。その中で、地方から若い真面目な人たちが軍部に入って、「この国を世直ししないといけない」という形で2・26事件とかを起こしました。つまり、経済的に悲惨な状況の中で政治が機能せず、戦争に向かっていったのですが、それから見ると、まだ今の日本は中産階級の蓄積、所得は段々減っていますが、明日からすぐ食に困るという段階ではありません。経済の基盤、インフラ、その裾野はかなり変わっています。

 そのため、そこまでダイナミックに変わるということはないと思います。むしろ、中国の方が、所得格差がかなり拡大して、どうなるのかという心配はあります。ただ、状況がちょっと似ているのは、ポピュリズムの展開です。去年の選挙の時にも気になったのは、勇ましい言葉が強調されます。例えば、原発とか、中国の問題とか、いろんな日本の改革とか、それに対して国民が不安を持っており、絶対に取り組まなければいけませんが、その不安に政治はただ反応しているだけです。反応してその不安を煽るとか、「だからこれをしなきゃいけないんだ」とか、そのようにエスカレートしていき、その雰囲気で政治が動いてしまう、これが一番恐ろしいポピュリズムの展開です。先ほどのアンケート結果では、そうなる危険性があると指摘しています。

 たまたま先ほどの勉強会に、メディアの役員の方がいましたが、そのように日本のメディアが勇ましいことを礼賛して主導的に動かす、ということはないだろうと言っていました。昔、朝日新聞が、戦争の時にメディアがどう動いたかを連載して、私も読みましたが、当時はメディアが引きずられたのではなくて加担、主導していきました。「今こそ鬼畜米英だ」とかすごく勇ましかったのです。今の日本のメディアは、そうではないと思います。ただ、流れに関して「ちょっと待てよ」と言える力があるかというと、私は非常に疑問です。そのメディアの人も同じようなことを言っていました。つまり、非常に社会が不安定化する中で、皆が何となくはけ口として極端な意見に走ったり、全く課題解決とは違う形で政治を選んでしまうことがある気がします。こういう時は、私もよく感じるのですが、世論を作る人間というのは、思いつきではなくてかなり計算して作ります。つまり、「このようなことを言えば過度に盛り上がる」ということがあり、その中であっという間に流れが変わってしまうという雰囲気が結構あります。それは世界的に指摘されており、大衆へのPRがどれくらい大衆を動かすか・・・だからこそ有権者なり市民は、いろんなものを見抜く力を身につけないと非常にまずいのではないか、ということを痛感しています。

 今年2013年というのは、ひょっとしたら、さっきのアンケート結果にあるように、その岐路ではないかという気がしています。勇ましい言葉で言うと「知的武装をしよう」とか「もっとみんなで勉強しなきゃ」と。聞こえのいい話というのは、何か嘘があったり無理があったりしますけど、基本的にどんな改革でも、それぞれ痛みがあるし、多くの人と議論して「なるほどそうなのか」と納得していくようなプロセスがないと、なかなか動かないと思います。ただ、そのようなプロセスが日本の社会で非常に大きな動きになっているのか、というと非常に寂しい状況があります。


課題に向き合い始めた世界の動き

 ただ、私たち言論NPOがいろいろな所で出会った人たちの動きは、この話とは全然、違います。私は世界20ヶ国のシンクタンクの会議に参加して、世界を回ったり、いろんな人たちと議論したり、日本国内でもいろんな人たちと話をしましたが、やはり皆、自分たちでこの国の課題に向かい合おうとか、その中で自分たちが社会の中で何かをしたいとか、特に若い層の動きがすごく多いです。その動きと、先程まで心配性のように語っていることが、何か全然、違うような感じがします。ただ、やはり大きな変化、頑張っている人たちだけが何かをやっているのではなく、その動きが日本の社会そのものを大きく変えていく力にならないと、先ほどのアンケート結果にあったように、非常に政治が混乱して、日本が何も決められないだけではなくて間違った方向に行ってしまうような気がしています。

 ですから私は、2013年、言論NPOというか私自身の決意としても、今年はやはり勝負かな、と思っています。去年から同じことを言っているのですが、私はもっといろいろな所で多くの人と議論したいと思っています。それから、言論NPOは、そういう議論のプラットフォームを作りながら、議論を作るだけではなく、その声を政治や社会に直接ぶつけて、何かの変化を起こしていかないとダメだと考えています。

 今年、参議院選挙があります。日本はいろんな困難もありますが、困難な時はチャンスだと思った方がいいと思います。今、そういう状況にいるということは、ある意味では苦しいけどラッキーだと思って、自分のやらなければいけないことをやろう、と思っています。

 ということで、2回目は、工藤の決意を語らせていただきました。工藤はその他にも、減量するとか、英語をもっと流暢に話したいとか、個人的な目標もありますので、それもちゃんとやって、いろんな目標に負けないで頑張りたいと思いますので、皆さんもぜひ頑張ってください。「2013年、日本を考えてみよう」ということで、今日はお送りさせてもらいました。どうもありがとうございます。


1月9日放送の「工藤泰志 言論のNPO」は、2013年に入って2回目の放送。新年を迎えて、2013年は日本にとってどんな年になっていくのか?我々国民は何をすべきなのか?そして、工藤は何を目標とするのかなどを議論しました。