川口 順子
(明治大学国際総合研究所特任教授、元外務大臣)
日本のビジョンを描き、着実に歩んでいく1年に
2014年を、日本があらためて中長期的な国のありかたについてのビジョンを描き、基本原則について国民のコンセンサスづくりをはかり、達成にむけての努力を一歩一歩積み重ねる年にしたい。
2013年にその姿はかなり明確になった。日本は平和を守る国であり、戦後70年にわたる平和への努力を今後も続けること、領土と国民を守る国であること、人権、法を守る国であること、経済成長や技術革新をはかり、その果実をもって世界の国々に貢献する意思があること、日米同盟を基礎として、日本のみならず世界の平和と発展のために国際社会と協調して貢献する意思があること、などである。
大事なことは、そのビジョンを、近隣の国をはじめとして国際社会に明確に発信することだ。
2014年、経済の明るさとは裏腹に、東アジアの国際情勢は、不透明さを増すと思われる。その一つの要因が、自己主張を強める中国が中長期的にどのような国になろうとしているのか、それが見えないということだ。たとえば、大国として国際社会のガバナンスを守り、維持するための貢献をする用意があるのかないのかである。北朝鮮が国際社会とどのようにかかわろうとしているのかは、もっと見えない。
翻って、我が国も近隣の国々に自らの考え方を明確に発信できているかどうか、不断に反省し努力しなければならない。 国際社会は「見ればわかる」では通じないし、「思い」だけでは足りない。理解につながる道の第一歩は相手に正しく伝わることである。
どうしたら、相手に伝わり、かつ共感を呼ぶことができるのだろうか。
ICTの進歩に伴い、情報は時間差なしに国の内外でシェアされるようになった。また、特定の相手のみを意識して発信することもできなくなった。国際社会という第3者の理解が、問題の帰趨に大きな影響を与えるからである。情報量が多いことは大事だが、それだけでは十分ではない。カギは、発信している考え方や情報が、普遍的価値を持つものと国際社会に受け止められるかどうかである。そうでなければ共感を生まない。
2014年、言論NPOは、引き続き、コミュニケーションを図る努力を重ねると同時に、この観点からも、政府をはじめ日本の各方面で行われている努力をより良いものにするために貢献することが望まれる。