宮内義彦
(オリックス株式会社 シニア・チェアマン)
日本の課題とグローバル化への対応
かねてより言論NPOが、日本が直面する最も大きな課題をとりあげ活発な議論を展開させてきた努力はとても重要なことだと考えています。特にアジアの地政学的な重要性が増す昨今、日中の相互不信の打開に動いていることは敬意に値すると思います。
さて2015年のはじめにあたり、日本を取り巻く課題は引き続き数多く存在します。経済方面のみをとっても膨大な課題がありますが、その中には日本経済が伸びることにより解決されるものも多くあります。これに対応して、経済をデフレ基調からインフレ基調へと移行することが必須条件でありこれに取組んでいこうとしているのが現状です。さらに大きな課題として対GDP比200%、1,000兆円に上る財政赤字が一向に減少しないばかりか依然として増え続けている実態があります。
そして日本にとってもう一つの大きな課題は高齢化による労働力の減少、少子化による今後の労働力供給力の減少にどう対応するかということです。
世界がこれほど小さくなりグローバル化が進むなかで、海外の人々に対する日本の対応は極めて特殊な形になっています。先進工業国の中で他国の労働者、他国からの移住者をこれほどまでに受け入れていない社会は他に存在しないのではないでしょうか。日本が最も真剣に取組むべきはグローバル化に対応するため、より多くの人々に海外から来ていただけるようにすることです。海外からの労働者によって人口減少問題に対応するという経済問題と共にもう一つ考えなければならないのは異なった国々の人々を受け入れる度量を持ち、人々に対して心地よい生活環境を与える日本の文化というものを育むことです。
グローバル時代は日本人だけでは生きていけないことを国内においても実感する必要があります。この世界の中で生きていく為には、移民問題に前向きに取組み、日本経済と日本のグローバル化の為に上手く海外の人々を誘致する方法を考えるべきでしょう。これらはなかなか言い出しにくいテーマだと思います。然しながら言論NPOのように常に正論を尊ぶグループにとって次に取組むべき大事な仕事の一つではないかと思います。
- 「健全な輿論」の形成を目指していくための節目の年に
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槍田松瑩(三井物産株式会社 取締役会長) - 混沌とする世界における政治と世論
藤崎一郎(上智大学特別招聘教授、元駐米国大使) - 日本の課題とグローバル化への対応
宮内義彦(オリックス株式会社シニア・チェアマン) - 国民的議論による課題設定を
宮本雄二(宮本アジア研究所代表、元駐中国大使) - 2015年、日本経済の課題と言論NPOの役割
武藤敏郎(大和総研理事長、元日本銀行副総裁)