槍田松瑩
(三井物産株式会社 取締役会長)
冷静な視点と粘り強い民間の努力が必要
2014年は「現実が見えた」年だったように思います。
国内ではアベノミクスの第3の矢である成長戦略に関する具体的な成果に乏しく、4月からの増税インパクトを吸収しきれず経済成長率は低迷しました。又、次期増税は延期となり、内閣改造直後の閣僚不祥事等が重なりました。それでも総選挙の結果与党が勝ったのは、「とって代わるものが無い」という、国民の選択だったのだと思います。
海外に目を移すと、様々なリスクが顕在化しました。イスラム国の台頭や、イラク・シリア情勢、ロシアを巡る情勢の不安定化等地政学的リスクが高まり、片や原油や鉄鉱石などの商品市況が低迷、新興国経済も停滞しました。
一方、ポジティブな動きとしては、アメリカの経済が予想以上に堅調でしたし、日中関係にも漸く薄日が差してきました。
2015年は、引き続き経済・国際情勢とも不透明な状況が続くものと思いますが、我々は冷静に現実を見つめていく必要があります。安倍首相は第3次内閣組閣にあたり、経済最優先を掲げました。グローバル化の現代、日本の安定した経済成長には諸外国、特に近隣諸国との安定した関係が必須です。地域が安定し、近隣諸国と共存共栄し、平和の素晴らしさを改めて世界に見せる。その為には、政治任せにせず、引き続き経済や文化を含めたあらゆる形の交流を幅広く、更に強力に行っていく必要が有ります。
言論NPOは過去数年の難局の中にあっても、粘り強く日中関係改善に向けた取組を継続してきました。2014年9月の第10回東京-北京フォーラムでは、過去10年の集大成として、両国関係改善に向けた本気・本音の議論を行う事が出来、次の10年を見据えた礎を築く事が出来ました。今や世界がこのフォーラムの重要性を認めています。
言論NPOが標榜する「民間対話・民間外交」に「これで十分」というゴールは無いように思います。引き続きしっかりと地に足を着け、これまでの活動を更に深く極めて頂きたいと思います。
- 「健全な輿論」の形成を目指していくための節目の年に
明石康(国際文化会館理事長、元国連事務次長) - 冷静な視点と粘り強い民間の努力が必要
槍田松瑩(三井物産株式会社 取締役会長) - 混沌とする世界における政治と世論
藤崎一郎(上智大学特別招聘教授、元駐米国大使) - 日本の課題とグローバル化への対応
宮内義彦(オリックス株式会社シニア・チェアマン) - 国民的議論による課題設定を
宮本雄二(宮本アジア研究所代表、元駐中国大使) - 2015年、日本経済の課題と言論NPOの役割
武藤敏郎(大和総研理事長、元日本銀行副総裁)