言論NPOは、「被害総額20兆円強、被災地の復興をどう進めるのか」をテーマに東日本大震災の復興の議論を開始しました。
第1回目は、岩手県知事や総務大臣を務めた増田寛也氏(野村総研顧問)、武藤敏郎氏(大和総研理事長、前日銀副総裁)、宮本雄二氏(前中国大使)の3氏が出席、今回の震災復興の意味や復興の進め方、誰がその担い手になるのか、財源や期間、さらには東北地域が復興を通じて自立するために何が必要かなどについて、かなり突っ込んだ議論が行われました。
3氏は議論の中で、現状は緊急対応として国が主導で被災地救済に集中すべき、との認識で一致しており、対応が遅れている状況に深い懸念が示されました。
増田氏は、その際に急務なのは「被災者の生活支援」と「行政基盤の再建」だとし、現状は被災者の生活支援を今後どう進めていけるかの段階で、復興の話を現場で進める段階ではない、とした上で、「しかし、救済は最優先でも同時に、復旧は最低限のものにとどめ、復興に向けてしっかりとした議論を始める必要がある」と語りました。
また、3氏ともに被害の広がりや深さから、今回の復興は阪神淡路大震災時の復興とはかなり異なり、「救済」から「復興」はかなり長期化するという見方でも一致しています。武藤氏は「過去に例のない取り組み」、宮本氏も「従来のものを超えた発想での対応が大切」と、今回の復興では、政府は国内の英知を集めて臨む取り組みが必要との認識も示しました。
現在、政府では関東大震災時の経験から復興院を創設して、国主導で復興に取り組むとの報道も一部にあります。こうした政府主導の取り組みには、「アイデアとしては分かる」と3氏ともに理解は示しましたが、3氏に共通した認識は、被災者の生活支援などの緊急対応は政府主導で責任を持って取り組むべきだが、復興のビジョンづくりは、「地域の人たちが主体的になって最終的に決める」というものです。そのため、権限を持った枠組みは地域の意志を集めるものでなくてはならず、「国主導からどういう移行期を経て地域発に移れるのか」(増田氏)の道筋こそ大事との意見が相次ぎました。
また、政府側の動きに対して、「そうした枠組みは中途半端で屋上屋を重ねるものではいけない」(増田氏)、「基本的に政治主導は必要だが、各省の組織力や地域の現場力との連携プレーが進むものでなくてはならず、それができなければどんな組織を作ってもうまくいかない」(武藤氏)などの厳しい注文も出ました。
これに関連して、復興の担い手に関して「東北復興院の創設」(増田氏)や、「東北地域は先行して道州制の試行に入れないか」(宮本氏)といった提案も出されました。
復興は最終的に、東北地域が未来に向かって自立ができるものでなくてはならないという、復興の目標についての3氏の意見は一致しました。復興の財源に関して、武藤氏は復興事業として財政赤字を拡大させない仕組みが必要との立場から、政府保証をつけた復興基金債を発行して10兆円規模の『復興基金』を創設し、復興を支援すべき、と提案しました。これに関連して、武藤氏は、東北地域こそ「農業・畜産の国際競争力を持った再興とエコ・エネルギーを活用したモデル地域としての発展すべき」と語りました。
最後に、今後の復興に関する議論づくりに関して、宮本氏は、「復興はかなり長期化するが、志のある人が様々な提案をしていく。そうした議論の舞台を言論NPOが担っていただきたい」と提案。言論NPO代表の工藤は、「震災の復興は、日本の未来に向けた復興につながる。英知を集め、多くの人の参加で復興に向けた議論をつくり上げることで、僕らの役割を果たしたい」と、提案力を持った議論の舞台の創設に向けて決意を語りました。
増田氏、武藤氏、宮本氏の3氏は言論NPOのアドバイザリーボードのメンバーも務めており、今回の議論は、これから検討が始まる震災後の復興に関する問題提起として行ったものです。言論NPOでは、これを第一歩に、多くの方の意見を集めて、被災地の復興や日本の復興に関する議論を行っていきます。
皆さんの意見を広く求めたいと思っていますので、メールやtwitter(@GenronNPO)、コメント機能を利用してお寄せください。
また、今回の3氏の議論の全容は、下記からご覧いただけます。是非ご覧いただき、ご意見などお寄せ下さい。
第1話:被災地のため、僕らは何をするべきか
第2話:国主導の緊急対応から、地域発の復興にどう移るか
言論NPOは、「被害総額20兆円強、被災地の復興をどう進めるのか」をテーマに東日本大震災の復興の議論を開始しました。