【対談】首相主導の改革をいかに貫くか

2001年12月27日

shiozaki_y030416.jpg塩崎恭久 (衆議院議員)
しおざき・やすひさ

1950年生まれ。東京大学教養学部卒業、ハーバード大学行政学大学院修了(行政学修士)。75年日本銀行入行。93年衆議院初当選。大蔵政務次官、自民党法務部会長、外交部会長等を歴任。現在、自民党財務金融部会長。主な提言・寄稿に「日本版SECを創設せよ」「金融動乱第二幕は資産市場の再構築がカギ」等。

hayashi_y030416.jpg林芳正 (参議院議員)
はやし・よしまさ

1961年生まれ。84年東京大学法学部卒。三井物産を経て、94年ハーバード大学大学院終了。95年参議院議員に初当選。91年に米国留学中、マンスフィールド法案を手がけた。現在、自由民主党行政改革推進本部事務局長。

概要

首相主導の改革に対しては、与党に根強い反対勢力がこれを妨げているといわれるが、果たしてその実態はどうなのか。与党審査制度のあり方が問われる今、それを廃止すれば改革が進展するのか。日本の政策形成のあり方についてさまざまな議論が行われているなかで、与党で政策形成に携わってきた当事者はこの問題をどう見ているのか。党の論客である自民党の塩崎恭久、林芳正の2人の中堅代議士が対談した。

要約

塩崎恭久

改革は中途半端なものもあるが、特殊法人改革など状況を動かしたという点では評価できる。ただ、戦略の優先順位、経済戦略では異論がある。

今は、経済財政諮問会議があって、首相のイニシアチブでかなり物事が決まりつつある。ただ、われわれに大事なことはどんな首相が来ようとも、長期的なビジョンをもち、しかも適時、俊敏に物事に対応できる党の仕組みを制度としてもつことだ。与党審査の問題は長期的にはその方向にもっていくべきだが、その大前提は国会議員がレベルの高い議論をしながら物事を決めて、首相の考える方向と整合性をもって、内閣の方針として示されることだ。

小泉政権の場合は、改革を進めるため、首相に、党議拘束をやめて政治的に勝負をかけるというフリーハンドは残しておくべきだ。日本の場合、選挙区の事情で政策が違うのに同じ党にいるということがありうる。そうした国会内での個人の決断が、政党の枠組みを変えることもある。一般論でいえば政策論争を繰り返すことによってだんだん勝負していく場面も出てくることはありうる。

林芳正

座標軸を移すことに成功したが、その結果、期待値も高まった。軟着陸はなかなか難しいのではと思っていたが、そのマネジメントさえできれば、これは長続きする。今のところ非常にうまくいっている。国民の支持に支えられているうちに一気呵成にやってしまうことが必要だし、私は可能ではないかと思う。

与党審査の全部がなくなるとは思っていないが、これはバランスの問題だ。日本ほど個人の力で選挙で勝ち上がりながら、これほど党の党議拘束で議会で投票している国はない。ある法案については与党審査や党議拘束をはずすとか、いろいろなケースが出てもいい。党で議論が百出しているのは、選挙でのわが党の公約が今の改革を織り込むように具体的ではなかったからだ。

目前には税や予算という大事な決断が迫っている。それがもし、党内の議論が残ったまま国会で重要な修正や決断が出たりすると、塩崎氏が指摘しているような状況が現実味をもつことはありうる。ただ、今の経済状況で、解散や政界再編をしている暇はない。


全文を閲覧する(会員限定)

首相主導の改革に対しては、与党に根強い反対勢力がこれを妨げているといわれるが、果たしてその実態はどうなのか。