【インタビュー】銀行のガバナンスをどう回復するか

2002年6月12日

tamura_t020607.jpg田村達也 (A.T.カーニー会長)
たむら・たつや

1938年広島生まれ。東京大学法学部卒業、ペンシルヴァニア大学院修士。61年に日本銀行に入行。ロンドン駐在参事、営業局長、理事などを経て、96 年~02年6月までA.T.カーニー・ジャパン会長。経済同友会幹事、郵貯改革委員長。主な著書に「コーポレート・ガバナンス──日本企業再生への道」(中公新書)。

概要

みずほグループのシステムトラブルに象徴される日本の巨大合併銀行のコーポレート・ガバナンスの問題について、日銀出身でこの問題に詳しい外資系コンサルタント会社代表の田村達也氏に聞いた。田村氏は新しいガバナンス、あるいは経営チェック機構を構築しないままに、金融自由化時代に突入したことが、銀行の問題対応力欠如の根本的な原因だと指摘する。そして、ガバナンス回復のために取締役会の機能を転換することを提言する。

要約

日本の企業の中には、自らの統治能力を失って、パイロットのいない飛行機のようになっているところが多い。護送船団方式という言葉で言い表わされるように、長い間政府による規制と保護の中で経営を続けてきた。とりわけ銀行業界では、護送船団の時代には、大蔵省と日銀が銀行の経営をチェックしていたが、金融自由化によって政府や中央銀行のチェックシステムがなくなった。

自由化によって経営の独自性が強まった段階では、本来は株主がチェック機構として働くべきであるが、日本の場合はそれが機能していない。そのために、経営者が外部から客観的に評価される、誤った経営判断が修正されるという仕組みがないままに、現在に至っている。それが、銀行の経営改革を遅れさせている根本的な要因となっている。

合併によって規模を拡大し、競争力を高めようという経営判断は一般論として正しい面もあるが、それは「選択と集中」を前提としている。つまり、残すべき事業、店舗、人材を見極め、そうでないものは切り離すという経営判断だ。そうした経営判断を行うには司令塔が1つでなければできない。司令塔が2人も 3人もいては「捨てる」という判断ははできないからだ。

1人の司令塔が事業価値を判断し、切り捨てるべきものはどんどん切り捨てていくという仕組み、それがガバナンスの機構だ。そして、その司令塔を決め、重要な経営判断に対して承認を与えるのが、株主の代表としての取締役会である。

ただ、日本の場合、物言わぬ株主が多いために、社外役員が中心的に機能する取締役会とはならない。だから、失敗した経営者が交代を迫られることもない。そうした状況の中では、問題銀行の人事刷新を金融庁の判断で行うのもやむを得ないかもしれない。あるいは、厳格な検査の上で資本不足が明らかになった銀行には公的資金とともに外資ファンドなどの民間資金を入れ、ファンド主導で新しい経営者をスカウトするという方法も考えられる。


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 みずほグループのシステムトラブルに象徴される日本の巨大合併銀行のコーポレート・ガバナンスの問題について、日銀出身でこの問題に詳しい外資系コンサルタント会社代表の田村達也氏に聞いた。田村氏は新しいガバナンス、あるいは経営チェック機構を構築しないままに、