【座談会】評価会議:産業再生 「なぜ産業再生は本格的に進まないのか」

2003年10月08日

saiyou_a031008.jpg斉藤惇 (株式会社産業再生機構代表取締役社長)
さいとう・あつし

1939年生まれ。63年慶應義塾大学商学部卒業後、野村證券株式会社入社。同社副社長、スミセイ投資顧問顧問を経て、99年住友ライフ・インターナショナル・インベストメント・マネジメント代表取締役兼CEOに就任。2003年より現職。主な著書に『兜町からウォール街─汗と涙のグローバリゼーション』『夢を託す』等。

seto_y031008.jpg瀬戸雄三 (アサヒビール株式会社相談役)
せと・ゆうぞう

1930年神戸生まれ。53年慶應義塾大学卒業後、アサヒビールに入社。76年に神戸支店長、82年に大阪支店長、86年営業本部長を歴任。92年、代表取締役社長に就任。97年に日本経営品質賞を受賞。99年会長就任後も精力的に経営改革を推進。現在は相談役。著書に『逆境はこわくない』等。社団法人日韓経済協会会長。

yasujima_a021209.jpg安嶋明 (日本みらいキャピタル株式会社代表取締役社長)
やすじま・あきら

1955年生まれ。79年東京大学経済学部卒業。同年日本興業銀行入行。主に投資金融業務を担当。MBO案件、M&Aのアドバイザー業務に従事。 2000年同行プライベート・エクイティ部を創設、01年同部長に就任。01年12月同行退職。02年2月、日本みらいキャピタル株式会社を設立。

masuda_y021204.jpg益田安良 (東洋大学経済学部教授)
ますだ・やすよし

1958年東京都生まれ。京都大学経済学部卒業後、富士銀行に入行。調査部など経て、88年より富士総合研究所に転出。ロンドン事務所長、主席研究員などを歴任。2001年4月より主任研究員に。02年4月より東洋大学経済学部教授に就任。主な著書は「金融開国」、「グローバルマネー」等。

概要

産業再生をどう進め、そこから日本の争点をどう形成するのか。産業再生機構の斎藤社長が同機構の実情や課題を語り、再生ファンドの立場からは安嶋氏が、企業経営の立場からは瀬戸氏が議論に加わった。不良債権処理と産業の立直しをマーケットの総力戦で進める中で重要なのは、民間当事者たちの自助努力の気概である。それを促す政策を整合化し、必要な痛みやその先の夢をグランドデザインとして描けるかどうかが、今後の小泉改革に問われている。

要約

産業再生の進め方について小泉内閣の方向や手段は正しいのか。産業再生機構(以下「機構」と記載)の斎藤社長と、産業再生ファンドを実際に運営する安嶋氏、企業経営の立場から瀬戸氏が加わり、この問題を話し合った。

まず斎藤氏は、同じく法的整理と私的整理が近づいていく過程を歩んだアメリカの柔軟性や戦略性との対比で日本の現状を捉えた上で、機構の使命は企業の救済ではなく産業として蘇生させることであると強調すると同時に、国民の税金を使って失業を招き日本の貴重なリソースを無駄にする政策はとれないとの現場の悩みを指摘する。安嶋氏は、不良債権処理に向けた銀行へのインセンティブの重要性を指摘するとともに、案件が次々と出て人材やマーケットが育ち、その総力戦で立直しを進める上での仲介役、潤滑油として機構が機能することを強く要望する。瀬戸氏は、産業全体に影響を与える企業を俎上に載せることが機構の課題とした上で、失敗者に立ち直りの機会を与える風土への企業社会の変革を唱える。機構をワークさせる上で、斎藤氏は、日本独特の感情論やジャーナリズムの問題を指摘し、銀行の強化の必要性を経営責任の問題から峻別して、りそなも含め銀行自らが断固たる決意で処理を進めるべきであるとした。また、瀬戸氏は、リスクを取る気概を失った民間企業の「なさざることの罪」を強く批判する。

3氏の意見が一致したのは、過剰な保護を排して自助努力をより徹底すべきだという点である。政府の関与の是非や今後の争点について、安嶋氏は、産業構造転換に必要な新産業の創出に向けたミクロベースでの知恵や工夫こそが重要であり、政府はそのきっかけを与える立場だとし、また、銀行への公的資金について、その大義とコストを明確に問うべきだとした。斎藤氏は、弱者救済が日本の国際競争力を弱めるとした上で、改革を進める過程で今後生じる本当の現象にひるまないよう小泉政権に注文する。瀬戸氏は、再選された同政権の課題は国民がベクトル合わせをできるようグランドデザインとロードマップを描き、そこに痛みと成果を示して日本に夢を与えることであると強調した。


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 産業再生をどう進め、そこから日本の争点をどう形成するのか。産業再生機構の斎藤社長が同機構の実情や課題を語り、再生ファンドの立場からは安嶋氏が、企業経営の立場からは瀬戸氏が議論に加わった。不良債権処理と産業の立直しをマーケットの総力戦で進める中で重要なのは、