湯元健治(日本総研理事)
内田和人(三菱東京UFJ銀行円貨資金証券部長)
鈴木 準(大和総研主任研究員)
司会:工藤泰志(言論NPO代表)
まず、日本経済の現状について、湯元氏は、各地で工場再開の動きがあるので最悪期は過ぎ去ったとしつつも、「本日各種経済指標が発表されたが、リーマンショック時を上回る減少となっており、個別のデータを見る限り非常に大きな影響が出ている」と指摘、内田氏は、「供給サイドも需要サイドもマインドが落ちているので、復興対策で前向きの動きが出るかどうかをマーケットは非常に注視している」と現状を説明しました。鈴木氏は、「今回サプライチェーンの問題が表面化し、東北地方の企業が日本や世界の重要な部品を作っていることが明らかになった。中長期的に考えると、企業が今回の震災で海外に出てしまうことが危惧される」と述べ、復興に向けた具体的な動きを早期にスタートする必要性を訴えました。同時に鈴木氏は、「電力を使わない産業はないのであり、今回いかにそれが重要かがよく分かった。短期的には夏場の電力消費をどう賄うかという問題はあるが、長期的にはこの国がどのようなエネルギー政策を採るのか、大元の議論を始めないといけない」と述べました。
次に、政府の取り組みについて議論がなされ、その中で湯元氏は、政府としての統治が機能していないという問題意識を示した上で、「民主党は政治主導を意識しすぎて、例えば復興構想会議にも官僚を入れないまま議論を進めている。そのこと自体が復興のスピードを遅らせている」として、その原因を説明しました。また鈴木氏は、「中央省庁には横の調整機能もある。それをフル活用しなければならない段階だが、被災地の声を集約した上での国家戦略がないことが問題」と指摘。内田氏は市場、海外の見方に触れ、「政治的には6,7月が時間軸として注目されている」と述べた上で、「税制と社会保障の一体改革も非常に重要ではあるが、優先順位をつけて早く復興に向けてリーダーシップを発揮しないとマーケット的にも、海外の見方も厳しくなる」との見方を示しました。
最後に、東北をはじめ日本が未来に向けて発展するために何が必要なのかということについて、各氏より意見がなされました。鈴木氏は、「例えば漁業については、全体を効率化させる視点が欠けていたと言われている。縦割りの規制を見直し、全体を俯瞰して特区のような形で変えていくことが必要だろう」と述べました。湯元氏は、「原発問題でいたずらに東電の経営体制を批判することは避けるべき。国の政策として原子力発電をどうして行くのかを明確にした上で、次のステップとして規制緩和、規制改革の議論を行っていくべきだ」と指摘、続く内田氏は「スマートグリッド」に触れ、蓄電能力の引き上げ、送電のシステムの整理ということに今こそ手がけていけば、日本の場合はかなり競争力が高まる可能性があると指摘しました。
次回の言論スタジオは、いま政府が進めている復興の動きをテーマに、5月13日(金)18:00から行う予定です。ぜひ、ご覧ください。
マニフェスト評価委員でもあるエコノミスト3氏により、震災で分かった日本経済の構造、これからの東北の復興をどのように進め、その財源の捻出をどうするかなど、経済的な視点で突っ込んだ議論が行われました。