イェスパー・コール (メリルリンチ日本証券チーフエコノミスト)
Jesper Koll
ジョンズ・ホプキンス大卒。OECD、JPモルガン、タイガー・マネージメント・マネージング・ディレクターなど経て現職。著書に『日本経済これから黄金期』へ。
ポール・シェアード (リーマンブラザーズ証券東京支店マネージングディレクター・チーフエコノミスト)
Sheard, Paul
1954年生まれ。オーストラリア国立大学にて博士号取得。スタンフォード大、日銀金研、阪大等在籍、経済審議会部会委員を歴任。著書に『メインバンク資本主義の危機』(サントリー学芸賞受賞)、『企業メガ再編』。
ロバート・フェルドマン (モルガンスタンレー証券調査部長・チーフエコノミスト)
Robert Alan Feldman
1953年生まれ。イェール大卒、MITでPh.D.取得(経済学)。NY連銀、IMF勤務など経て現職。著書に「日本の衰弱」「日本の再起」。 Institutional Investor誌「The All-Asia Research Team Poll」で第1位 を獲得。
概要
経済が落ち込みを見せるなか、小泉政権はどのような政策運営を迫られているのか。2回目となる今回の「エコノミスト会議」では、3人のエコノミストがハイレベルな対談を通じ、小泉政権の今後の課題を浮き彫りにした。改革の方向、改革のスピード、新規国債発行30兆円枠の問題、デフレ阻止、日銀のあり方、不良債権処理、ポリシーミックスのあり方、改革工程表の評価など、さまざまな切り口からの白熱した議論の模様をぜひ体験してほしい。
要約
2回目となる今回の「エコノミスト会議」では、改革の方向、改革のスピード、新規国債発行30兆円枠の問題、デフレ阻止、日銀のあり方、不良債権処理、ポリシーミックスのあり方、改革工程表の評価など、さまざまな切り口から白熱した議論が交わされた。
代表的な論点を挙げると、30兆円の枠は経済的には意味がないが、政治的には意味があるという意見が出された(コール氏)。これに対しシェアード氏は30兆円の枠が重要性を帯びるのは本末転倒な話であり、不良債権処理を最優先すべきとの持論を展開した。同時にシェアード氏は、不良債権処理に関する政策のウエートづけが時とともに後退していることの危険性を、ペイオフ解禁とからめて(猶予は16カ月しかない!)指摘した。
デフレの見方については、マネーサプライと総需要曲線の関係のみを考えてデフレを阻止しようとするのはあまりに幼稚であり、サプライサイドの問題がいかにデフレに貢献しているかを見落としてはならないという主張がなされた(フェルドマン氏)。また、エコノミストの間で激しい論争が行われている「不良債権処理はデフレには逆効果。か」という点に対しては、3氏とも否定的な見解を示し、逆に不良債権処理の進展こそがデフレを止めるとの主張で一致した。
改革そのものに関しては、フェルドマン氏はかなり高い評価を下したのに対し、シェアード氏は不良債権処理策のちぐはぐさに着目し、厳しい評価を示した。
政策の優先順位づけがうまくいかないことに対し、司会の工藤(言論NPO代表)が、小泉政権が本質的にもっている「ねじれ」を指摘し、総選挙の可能性に触れたところ、フェルドマン氏は総選挙も必要と主張した。
会議の締めくくりには、小泉政権がこの困難な状況を打開するために何が必要かという問題提起が行われ、コール氏は霞が関の活性化、シェアード氏は望ましいポリシーミックスのあり方、フェルドマン氏は小泉首相のリーダシップの発揮の仕方について、持論を展開した。3氏のエコノミストの説得力ある議論から、日本の改革を考える際の一つの軸が見えてくる会議となった。
経済が落ち込みを見せるなか、小泉政権はどのような政策運営を迫られているのか。2回目となる今回の「エコノミスト会議」では、3人のエコノミストがハイレベルな対談を通じ、小泉政権の今後の課題を浮き彫りにした。