ロバート・フェルドマン (モルガンスタンレー証券調査部長・チーフエコノミスト)
Robert Alan Feldman
1953年生まれ。イェール大卒、MITでPh.D.取得(経済学)。NY連銀、IMF勤務など経て現職。著書に「日本の衰弱」「日本の再起」。 Institutional Investor誌「The All-Asia Research Team Poll」で第1位 を獲得。
イェスパー・コール (メリルリンチ日本証券チーフエコノミスト)
Jesper Koll
ジョンズ・ホプキンス大卒。OECD、JPモルガン、タイガー・マネージメント・マネージング・ディレクターなど経て現職。著書に『日本経済これから黄金期』へ。
益田安良 (東洋大学経済学部教授)
ますだ・やすよし
1958年東京都生まれ。京都大学経済学部卒業後、富士銀行に入行。調査部など経て、88年より富士総合研究所に転出。ロンドン事務所長、主席研究員などを歴任。2001年4月より主任研究員に。02年4月より東洋大学経済学部教授に就任。主な著書は「金融開国」、「グローバルマネー」等。
概要
メディアの注目が集まるなか、不良債権の処理や金融システムの安定などを柱とする総合デフレ対策が発表されたが、「具体性に欠ける」、「インパクトに乏しい」など、早くも批判の声があがっている。トップエコノミストであるロバート・フェルドマン、イェスパー・コール、益田安良の3氏が、金融庁による特別検査の厳格化、株価対策、税制改革など、デフレ対策のポイントに焦点を当て、激しい議論を戦わせた。
要約
政府発表の「総合デフレ対策」に関する評価から議論は始まる。フェルドマン氏は金融庁による特別検査が本当に「厳格化」されるかどうかが、大きなポイントになるという。つまり、今あえて小泉首相が「厳格化」を支持した裏には、これまでの銀行検査が必ずしも厳格に行われていなかったという事実が浮かび上がってくからだ。その理由は、銀行検査にはルール化されていない裁量部分が多いことにある。このため、債務者区分があいまいで不良債権処理が進まない。これを解決するためには、株主資本の資産総額比率など数値化された客観ルールを確立すべきだとフェルドマン氏は指摘する。 この時期にデフレ対策を声高に主張し始めたこと自体を懸念するのは益田氏だ。産業調整の過程では一時的に倒産が増えたり、失業が増えたりしてデフレ的な圧力がかかる。それを一定期間容認しなければ本格的な経済再生はないという政府の基本スタンスに大きなぶれが生じているかに見えるからだ。日本の産業界がオーバーローン(過剰債務)を抱えている限りは、銀行の不良債権を含めて根本的な問題解決はないという政策の一貫性を保つべきだと主張する。これに対して、コール氏は財政出動やペイオフ解禁再延期など、政策の逆戻りがなかっただけでも、グッドニュースだと語る。そして、本当のデフレ対策を進めるには、税制改革も大きなテーマになると続ける。政府は今年6月に税制改革の方針を発表する予定だが、どういうフィロソフィー(哲学)でやるのかが非常に重要だと指摘する。現在の税制はさまざまな免税措置や控除があるために、日本企業の7割は税金を払っていない。一方で、まじめな企業ほど税負担は重い。そこをどう変えるのか、だれにどういうインセンティブを与えるのか、そこが税制改革の哲学を問われるポイントだとする。 そして、内閣支持率低下で改革の実行力が弱まりつつあるが、ここは国民の側から再度、改革実行へのプレッシャーをかける必要があるという点で3者の意見は一致する。
メディアの注目が集まるなか、不良債権の処理や金融システムの安定などを柱とする総合デフレ対策が発表されたが、「具体性に欠ける」、「インパクトに乏しい」など、早くも批判の声があがっている。