川本裕子 (マッキンゼー・ジャパン シニアエクスパート)
かわもと・ゆうこ
東京大学文学部社会心理学科卒業。オックスフォード大学大学院経済学修士課程修了。旧東京銀行を経て、88年にマッキンゼー東京支社入社、現在に至る。主な著書に「戦略の選択・銀行編」等。現在、金融庁「日本型金融システムと行政の将来ビジョン大臣懇話会」委員、金融庁金融審議会「自己資本比率規制見直しワーキンググループ」委員などを兼任。
概要
金融ビッグバンは一体、何を目指して行われたのか。実際に市場を使う人々にとって日本の金融・資本市場の利便性は高まったのか。ベンチャービジネスを起業した30代から40代の若手実業家が、起業資金の出し手や投資家をめぐる環境の経験を踏まえ、市場の問題点やビッグバンの評価を行った。経済の活性化にはビジネスを切り開く挑戦と成功例。それを評価する議論が必要であり、その裾野は広がっていると三者は口を揃えた。
要約
現在、民間でも政府部内でも銀行に対する公的資金再投入が盛んに議論されているが、何のために公的資金を入れるのか、その本来の目的はあまり語られることがない。公的資金注入の目的が不良債権問題の解決にあるならば、まず優先されるべきは銀行経営の健全化である。99年の公的資金投入後の経緯からも明らかなように、銀行を自立させる経営改革がなければいくら資本を投入しても無駄となる。
日本の銀行セクター全体としては、すでに資本過剰の状況にある。例えば、同額の利益を稼ぎ出すために日本の銀行が投じている資本は、フランスの3 倍、イギリスの10倍にも達する。それほど資本過剰の状態にあるところに、さらに公的資本を注入すれば、銀行セクター全体の効率性は一段と下がる。
国際業務から撤退するだけでも、自己資本基準は8%から4%に下がり、大手都市銀行の自己資本には数兆円の余裕が生まれる。こうした国内銀行化を含め、資産の圧縮、オーバーバンキング解消のために検討すべき経営オプションはいくつもある。
99年の資本注入ですでに銀行の主要株主となっている政府は、一律的な公的資本再注入を行う前に、上記の経営オプションの実行を銀行経営者に強く迫るべきである。
これまで、銀行の経営サイドから不良債権処理の迅速化について明確な目標が示されたことはなかった。今、日本の銀行に大切なのは、目標への明確なコミットメントである。資本利益率(ROE)や資産利益(ROA)などの指標を業績目標として具体的に示し、経営者はみずからの出処進退をかけて目標達成にコミットするべきだ。
銀行が実行すべきは、信用コストに見合った貸出金利適正化による収益力の強化であり、費用対効果の観点からのサービス見直しによるコスト削減である。これを実行できなければ、銀行の経営改革は中途半端なままに終わり、恒常的に公的資金に依存することになってしまう。
金融ビッグバンは一体、何を目指して行われたのか。実際に市場を使う人々にとって日本の金融・資本市場の利便性は高まったのか。ベンチャービジネスを起業した30代から40代の若手実業家が、起業資金の出し手や投資家をめぐる環境の経験を踏まえ、市場の問題点やビッグバン