当事者意識が日本の政治や外交を動かす潮流に ― 言論NPO設立12周年パーティー報告

2013年12月04日

 設立12周年を迎えた言論NPO(代表工藤泰志)は4日、東京・千代田区の霞山会館で明石康・国際文化会館理事長、宮本雄二・宮本アジア研究所代表、武藤敏郎・大和総研理事長ら代表発起人・発起人による12周年記念パーティーを開きました。

 会場にはこれまで言論NPOの趣旨に賛同し、その活動を応援してきた支援者約180人が集まり、言論NPOのさらなる発展に期待が寄せられました。


131204_07.jpg 第一部では、工藤を司会に明石、宮本、武藤の3氏により、「言論外交とは何か」をテーマにパネルディスカッションが開催されました。


工藤泰志 まず、議論に先立ち工藤は、政府間外交が機能しない中、民間として積極的に東アジアの課題解決にあたる体制「民間外交イニシアティブ」が本日発足し、「言論外交」を強力に推進するための体制が整ったことを報告しました。

 議論は、今年10月、北京で開かれた言論NPOと中国紙「チャイナ・デイリー」が共催する「第9回東京-北京フォーラム」を振り返る形で進行が進みました。

宮本雄二氏 「不戦の誓い」を謳った北京コンセンサス作りにあたった宮本氏は「政府間外交では、一致したものを文書にする場合、全部、同意しないと同意にならない。しかし、民間外交は大きなところで一致すれば、大体、(同意が)許される。今回のフォーラムで『不戦』という言葉は中核的なものでしたが、これをどのようにコンセンサスに取り込んでいくか、それぞれ事情があるので、それをじっくり説明しあう。政府が動けない時に、民間が動く余地があるということが今回、具体的にわかった」と説明しました。

明石康氏 明石氏は「外交は本質的に政府間でやるものですが、その雰囲気づくりを民間がやる必要があるということを、この2,3年、感じています。特にこの1,2年は尖閣、竹島、慰安婦など頭の痛い問題が持ち上がり、ともすると国民の感情が煽られるので、冷静な対応が国民レベルでも難しくなっている。いわゆる世論に任せるだけでは危ないところが多いので、世論を輿論に高める必要がある。東アジアは世界の中でも元気のいい地域だが、今までのナショナリズムのあり方に一石を投じようと、民間の立場からいろいろやってきた。日中間が緊張している中で、今回の北京コンセンサスがほとんど奇跡的な形でできあがったのは、これまでの積み重ねの成果だ」と、言論NPOの12年の歩みを称えました。

武藤敏郎氏 また、武藤氏は「日中は漢字という共通の文字があるので相手に対する先入観があっても、突き詰めて話し合っていくと、気持ちが通じ合う部分がある、と思った。これこそ民間外交の原点であり、また、これまで中国には『民間」という概念は存在していなかったのに、『東京-北京フォーラム』の開催と時を同じくして習近平指導部も『民間外交』という言葉を使い始めた。ここに民間外交の生きる道がある、と手応えを感じた」と述べました。

 3氏の発言を受けて工藤は「『不戦の誓い』に中国側はなかなか応じなかった。それが言葉の使い方に武藤さんが気を遣って、急転直下、戦争をしないということで合意ができた。中国側が削ってきたところを残し、『不戦の誓い』を、これからは東アジアの秩序作りに生かす、という文章に戻った」と、北京コンセンサスの"ウラ話"を披露。「今後、日中、日韓で戦争をしないということを、新しいレジームの中心的な理念にできないか」と語りました。

 明石氏は「東南アジアにはASEANが一応、出来ているが、北東アジアで地域機構は出来ていない。北東アジアと東南アジアは違うし、東アジアがどうなるか、まだ五里霧中である。だからこそ国家外交とは区別して、民間の人たちの多面的な意見を出し合うスペースが必要になる。日本だけでなく、共産主義体制にある中国にも民間外交が機能する新しいスペースが出来てきている」と話し、東アジア全体で不戦の誓いを共有することは可能との見方を示しました。


岸田文雄外相 ディスカッション後のパーティーの来賓挨拶では、駆け付けた岸田文雄外相が「言論NPOは2001年から活動を続けられており、国内のみならず、アジアや世界に舞台を広げている。特に、2005年からは『東京-北京フォーラム』を開催し、日中間におけるもっとも代表的な民間対話のプラットフォームとして影響力を発揮している。今年5月には日韓未来対話を開催され、この対話も、韓国との関係を築いていくうえで、非常に重要だと思っている。

 韓国、中国との関係は、非常に緊張感ある状態が続いているが、言論NPOのような民間シンクタンク、民間外交の力を借りながら、政府も両国関係の改善に努めていきたいと思っている」と述べ、外務大臣として東アジア外交を立て直していくことへの意気込みを語りました。


明石康氏 言論NPOのアドバイザリー・ボードでもある明石氏は代表発起人挨拶で、「国連時代は、国と国がいざこざを起こした時に、どう調整するべきか40年間考察をしてきた。そういう経験を活かしながら、少しでも言論NPOの活動の役に立ちたいと思っている」と抱負を述べました。さらに、「懸案に対するコミットメントについては、誰もが及ばないような人たちがかかわっているので、将来必ず、日本、アジア、世界に役に立つ活動という期待感を持っている」と挨拶しました。


石破茂自民党幹事長 続いて、挨拶に登壇した石破茂自民党幹事長は、まず、言論NPOがこれまで取り組んできた政策評価に言及し、「政治家として、マニフェストとは何か、どのように実行していくのか、ということを学ばせていただいた」と高く評価。

 また、懸案である日中関係についても、「関係改善の糸口になるのは健全な言論に基づく対話以外にない」と述べ、1回や2回の対話ではできなくても何度もやっていくことで、少しずつ相互理解を進めることの意義を語りました。そして、「決して絶望することなく、希望を持ち、言論が世の中を必ず変えるという形で、地道な努力をしている言論NPOとそれを支える人々がいる限り、私は日本の将来に絶望していない」と最大級の賛辞を述べました。


 工藤は来賓挨拶を受け、「私はこの1年、『当事者という意識』、つまり自分自身が社会の課題に向かい合い、その解決に向けて動かなければいけない、ということが大事だ、と痛感した。そして、そのように動けば、必ず誰かが協力して何かを実現できり。これからは、この『当事者性』が日本や政治を動かす一つの潮流になっていく」とこの1年間の所感を述べました。

131204_04.jpg さらに工藤は、田中、蓑田、副島、川島の各理事及び冨家監事とともに、このパーティーに集った、まさに当事者性の意識を備えた支援者に今後も変わらぬ支援を呼びかけ、本会を締めくくりました。


 言論NPOでは本日発足した「民間外交イニシアティブ」をはじめとして、13年目も課題解決に向けた様々な取り組みをしていきます。皆様に当事者性を持って参加していただけるよう、活動内容について言論NPOのホームページで随時公開していきますので、ご期待ください。

設立12周年を迎えた言論NPO(代表工藤泰志)は4日、東京・千代田区の霞山会館で明石康・国際文化会館理事長、宮本雄二・宮本アジア研究所代表、武藤敏郎・大和総研理事長ら代表発起人・発起人による12周年記念パーティーを開きました。