まず、代表工藤から、2004年以降日本人の海外留学生が大幅に減っていることが問題提起され、留学生の増減について研究してきた丸山氏、村上氏からは、2004年からの4-5年で米国への留学生が半減している点、また中国・韓国の留学生数が増えている中で,日本の留学生の減少が顕著である点などが補足されました。
工藤は言論NPOが事前に有識者200人を対象に行ったアンケート結果を報告し、そこでは回答者の約9割が、日本人留学生が減っていることに対して「深刻な影響がある」または「ある程度ある」と答えており、今回のアンケートには様々なコメントが寄せられるなど、この問題に対して深刻にとらえていることが分かりました。
議論は、留学生が減少した原因から 日本の高等教育の課題、社会構造の問題点まで
留学資金の負担、就職活動でのデメリット、若者の内向き姿勢や能力の点が主に挙げられました。資金の面では、資金の面では08年のリーマンショック後経済が悪化した点、就職については就職活動のサイクルが合わない、留学しても企業にプラスの評価をされないなどの原因についてパネリスト間で意見が交わされました。
留学生の減少の原因の中で一番議論になった若者の内向き志向や能力の低さについては参加者間でさまざまな議論がなされ、新興国の若者に比べ海外に出たいという意欲が低い、親も子も安定志向に走りがち、条件を選り好みをしすぎるなどの意見が挙げられました。また、能力の面では、脇若氏から小学校の早い段階から英語教育を徹底する必要性について語られました。
その後、留学生を増やすための対策について議論がなされ、前文部科学副大臣の鈴木氏は、学費負担の面、就職の面をサポートするための政府の取り組みについて説明され、国が負担する資金の拡大や政財界の協力とともに進めている採用スケジュールの改正もありここ数年で大幅に環境が改善されたと強調しました。その一方で、鈴木氏は、今後の課題は、子供を海外に行かせたくない親の姿勢やリーダー、エリート層を尊敬しない社会の風潮であると指摘しました。
アンケートではこの他にも様々な対策案が寄せられており、日本の大学を国際レベルに引き上げるべき、留学経験の活かし方を考えるべき、など様々な意見がありました。
工藤は、日本、世界で、社会が大きく変わり、既存の仕組みに対する嫌悪感や信頼の低下が原因となり、自分の将来像を描けないのがそもそもの原因ではないかとの見方を示しました。しかしその一方で世界では社会の課題解決のために一生懸命取り組む若者の例を挙げ、世界では大きく価値観が変わっていると述べました。
今回は、留学生の減少の原因と対策案の議論から、日本の教育での問題から、現代の若者の傾向、そして社会が求める人間像についてまで議論が及びました。
11月11日に行われた言論スタジオでは、「日本人の留学生はなぜ減ったのか」をテーマに、 鈴木寛氏(参議院議員、前文部科学副大臣)、丸山和昭氏(福島大学総合教育研究センター特任准教授)、村上壽枝氏(東京大学政策ビジョン研究センター特任専門職員)、脇若英治氏(クリントン財団気候変動ヨーロッパ担当)の4氏と工藤が討論を行い、単なる留学生の減少という現象から、日本の高等教育の課題、社会構造の問題点まで議論が及びました。