2007年 日本の言論に問われていること
― 言論NPOのアドバイザーはこう主張する vol.3 ―
安斎隆(株式会社セブン銀行 代表取締役社長)
あんざい・たかし
1941年生まれ。63年東北大学法学部卒業。同年日本銀行入行。94年同行理事、98年日本長期信用銀行(現・新生銀行)頭取、2000年イトーヨーカ堂顧問などを歴任。01年株式会社アイワイバンク銀行(現・株式会社セブン銀行)代表取締役に就任。
『2007年 日本の言論には何が問われているのか』
小泉政権の時代は論点が明快なんですね。明快なゆえに対立点もあって、それで議論もまともな方向に動くということできたと思います。ところが、小泉さんの手法は、ある種ヒトラー的というか、女性的というか、ターゲットを決めたらとことんたたく。そして排除する議論が行き過ぎるために、僕はいじめの議論とかそういうものも子供たちの世界でより誘発しちゃったと思うんです。
そういうことが起こっている背景には、そういう対立点を見出しながら大いに議論する風土が日本にできていないということもあります。今度、安倍政権になって、美しい国かどうか知らないけれども、非常に曖昧もことして、いろいろなものをまさに入れちゃって方向が見えない。これは民主党も同じです。同時にそういう曖昧な状態になっているんですね。今年の選挙を意識して、全てが曖昧になっている。
そういう議論では、まさに言論NPOが目指した、しっかりとした議論に基づく国なんかできっこないんです。そういう意味で、議論を明確にさせる機能を、言論NPOはその役割を担わないといかんと思っております。
格差の議論もそうですが、曖昧な議論、曖昧なものに逃げちゃっていて、論点を整理しないまま政治が行われるのは非常に危ないことです。あるいは、政治に全く空白の状態がしばらく続くということになると思うんです。だけれども、小林さんが言われた年金問題その他も含めて、そんなに先送りできないわけです。あるいはこれは税金の話もそうです。先送りできない話なので、そこは議論を我々から吹っかけていかないといかん。
そうでないと、マニフェストをつくってもだめです。曖昧なまま、みんな仲間に入れようとして、仲よくやろうやと全体がそういうふうに動いている中で、「本当にそれで良いのですか」という議論を、言論NPOはやるべきだと思います。
言論NPOアドバイザーの方々に「2007年 日本の言論には何が問われているのか?」をテーマに発言していただきました。今日は安斎隆氏の発言をご紹介します。