10月1日(金)5時30分からJFN系列で放送を開始した「ON THE WAYジャーナル」の水曜日担当として、言論NPO代表の工藤泰志がパーソナリティを務めます。
記念すべき第1回目は、「アジアの中のニッポン アジアとの仲を考える!」と題して、10月6日(水)5時30分からJFN系列で放送されました。 その収録風景を公開致します。
ラジオ放送について 詳細はこちらをご覧ください。
「ON THE WAY ジャーナル
|
工藤: おはようございます。「On the way ジャーナル」水曜日、言論NPO代表の工藤泰志です。先週金曜日から始まりましたこの番組。毎朝様々なジャンルで活躍するパーソナリティが、世の中を自分たちの視点でばっさり切っていく番組ですが、毎週水曜日は私、言論NPOの工藤泰志が担当します。
今年は全国的に暑かったのですが、その後急に寒くなりまして私は風邪をひいてしまいました。皆様は風邪を引いてないでしょうか。この番組では、皆様のご意見・ご感想、ご希望のテーマなどを募集しています。番組HPの水曜日工藤泰志のページに行っていただき、そこでtwitterやメールなどでお寄せください。
まず自己紹介です
さて、初回ということで、まず簡単に自己紹介します。名前は工藤泰志といいまして、工藤というのは青森県で多い名前なのですが、私も青森出身です。51歳です。ただ気持ちはまだ40代です。42歳のときに私は出版社の編集長をしていましたが、脱藩しまして、それ以来、歳を気にすることがなくなりました。だから、まだ40代のつもりなのですが、今日、自分の歳を聞いてぞっとしました。やはり歳をとったなあと思いました。しかし私は非常に熱い人間なので、ここでも熱く議論をしていきます。
私が立ち上げた言論NPOは、NPO(特定非営利活動法人)で、非営利活動で日本の議論作りに取り組んでいます。行っていることは、マニフェストの評価、選挙前に政治家がマニフェストを掲げて選挙を行なっていますが、あのマニフェストの評価をしているのが私たちの団体です。そのほかにも、日本の様々な課題についての議論を行っています。
そして、最近では国境を越えてアジアに僕たちの真剣な民間対話の舞台を広げています。この8月に中国と喧嘩になるような真面目な議論を終えたばかりです。こういう活動を通じて、真剣な議論から日本が抱えている様々な課題の解決とか日本の未来に向けて僕たちはどうすべきかの議論を作っていきます。「On the way ジャーナル」水曜日、僕たちは政治・経済・事件などなど様々な問題に対して市民レベルの視点から「これはどうなっているのか」と私工藤の視点で投げかけます。
谷内: おはようございます。突然ですが番組スタッフの谷内でございます。「On the way ジャーナル」水曜日、初回のテーマは「アジアの中の日本、アジアとの仲を考える」です。今回は初回ということで言論NPOの工藤さんのことを聞いていただこうと思いましたが、今話題となっているのが中国です。なので、今日は日本とアジア、とりわけ中国について工藤さんにお話を伺ってまいりたいと思います。少し振り返りますと、先月の7日に、中国の漁船が海上保安庁の巡視船に衝突したというニュースで、中国側から日本への反発が強まっています。中でも「日中青少年交流事業」の一環として日本の青少年が上海万博に訪問する予定でしたが中国が拒否してきたり、人気グループのSMAPの初海外公演が延期されるなど問題が広がっています。
尖閣列島の問題を考える
工藤: 僕から見ると、「これから始まるな」って感じです。つまり尖閣諸島などの領土問題は中国は引けない問題ですので、多分こういったことはこれからも出てきますね。こうした中国とどう付き合うかを僕たちが考える段階にきたな、と思っています。本日はそれについてお話したいと思います。
谷内: それでは「言論NPOの工藤泰志が見た中国」と題してお送りしたいと思います。
中国は何回も訪問されているのですか。
工藤: 僕は、2001年に言論NPOを立ち上げたのですが、05年の中国主要都市での反日デモの際に、この問題をどう考えればいいかと思っていて、単身で中国に行きました。言論NPOは中国のためのNPOではありませんが、中国とも議論をしなくては、と思ったのです。それ以来中国に何回も行くようになって、中国の有識者と本気の議論を行なう民間対話をその時に立ち上げました。
05年の時に見たことと今回では結構共通することはあります。ただ、あの時は小泉総理の靖国神社参拝ということで歴史認識の問題でしたが、今回はそうではありません。今年GDPでも日本を中国が抜きますが、経済力が強まり中国の大国としての意識の高まりの中でこういったことが出てきました。
性格は違うのですが、やはり根の部分は同じで、問題は国民レベルでほとんど相手のことを知らないことなのです。皆さん、中国は近いのですが遠い国だと思っています。だからたまにデモがあると、「なんだこれ」と思いますよね。今回もまた中国で騒ぎがあって、またか、と思いましたが、しかし「近くて遠い国」ではもう済まされない段階だと僕は思っています。
谷内: 「民間対話」とおっしゃいましたが具体的にはどういったことですか。
ちょっとした勇気が大切
工藤: 実は05年に行ったときに、僕は中国政府や民間人やメディア関係者と会いましたが、そのときも今回と同じく物騒な状況でした。ある人が言ったのは、「日中関係はこのままでは戦争になるのではないか」と、かなり刺激的な発言がありました。僕がそのときに言ったのは、お互い隣の国なのに、「戦争になるのではないか」とか平然に評論家のように話してもいいのかと。政府間関係が悪化しているのであれば、それを補うのは民間なのだから、民間の僕たちが議論の対話の舞台を作るべきだといいました。そのときかなりやりあったのですが、その年の8月に、「北京-東京フォーラム」を、騒然としている北京で開きました。
僕は、ちょっとした勇気が大切だと思いました。いろんな人と北京で話しながら、「これじゃ駄目だ、何とかしないといけない」と自分の中でも心が騒ぎましたが、しかし一方で「何でそこまでやるのか」という気持ちもあります。だけど、この民間対話を作るのは、今僕しかできないのではないかと思いました。それで中国でいろんな人を説得しました。で、すごい人が参加する対話の舞台ができたのです。まだ、そのときは政府間関係は悪いままで、国交断絶状態でした。
そして僕はそのときに言ったのが、「世論調査をやらせてほしい」ということでした。つまり、なんで中国の人はあんなに反日デモをしているのかわからなかったので、それで「世論調査をしたい」と言ったのですが、その度に会議が打ち切られるのです。そして日本に戻ってきて、外務省に行ったときに、外務省の人に「あの国で世論調査をするとは、お前は捕まりたいのか」と言われました。だけど、どうしても世論調査をしたかったのです。つまり、国民が考えていることを知らないのに対話をすることは出来ないと思っていたからです。そして何とか世論調査は実現するのですが、この共同世論調査の結果にメディアは非常にびっくりしたのです。それが今と同じなのですが、つまり中国国民はほとんど日本のことを知らないのです。今でも日本の国が軍国主義だと思っている中国人は半分いるし、日本のODAなんて誰も知らない。
それから日本に報道の自由があることさえ知らないのです。これは何でだろうと。つまりデモがあって、政府間関係が悪化するので、非常に大変だ、大変だとなっていましたが、土台の国民間の基本的な理解さえ非常に脆弱なのです。そういう状況に日中はあるということをまず認識しないといけない。このフォーラムはこれまで6回継続して対話をして、かなり本気の議論が出来てきました。つまり信頼関係がその中でできてきて、きちんとした議論が出来てきたのです。中国という国はちゃんと議論を重ねて信頼関係が増していくということはありますが、ただ国民がまだまだお互いを知らないのです。その中で、今回のように領土問題、それから政府の外交における対応のまずさがでてくると、国民の相互理解が悪化しているためにどんどん悪くなっていくのです。なので、これは政治だけではなく民間も含めて本当の対話をしていく必要があると思います。
僕たちは嫌だからといって「ひょっこりひょうたん島」のように移動することは出来ませんから、やはり中国と向かい合わないといけないのです。これはいい機会だと思っています。
谷内: 今後具体的にやっていくとすればどういったことですか。
大事なのは中国という国とどうつきあうか
工藤: まず2つあります。今回の事例で感じたのは、日本の政治は中国とあまりパイプがないということです。パイプがあれば表面的にいろいろなことがあっても根回しができるじゃないですか。しかし多分それをやった人はいなくて、東アジア共同体とか、小沢さんの訪中とかありましたが、意外に今回の逮捕や留置などのプロセスで政治がきちんと対応していないのです。それは逆に言えば、日本の政治にアジアとか未来に向かって、どういう風に交渉していくかというスタンスが決まっていないような気がします。この問題は僕たちの民間対話でもよく話題になります。その問題は政治レベルで解決しなければいけませんが、もう1つ大きいことは国民がこの中国をどう理解するかです。2005年から、中国に何度も行くようになって,多くの中国人と話し合いました。お互い、違いはいろいろありますが、一緒にプロジェクトなどをしていると信頼も生まれます。
そのプロセスでは何度も悩みましたが、これから日本人も中国という違いに直面していくと思います。でも違いがあるから嫌だと思えば口もききたくなくなりますが、しかし一緒にこういうことが出来るな、と思えば中国人もかなり有能なのです。
例えば議論作りにおいても、中国の人は演説が長いのですが、発言時間は短くしようとか、こうしようとか提案してくるのです。やはり1つのミッションとかに向かって何かをしようとなれば中国人も本当にやろうという意思を持つのです。
中国はすごく縦割りの官僚制度の国で、誰かに話しても自分の責任を回避する傾向が強いのですが、しかし嫌なことはあっても、結局アジアのためにとか日中が世界の中で貢献するために何をすべきか、ということになれば、彼らも本当に真剣に議論するのです。こうした経験がとても貴重だと思います。今では秋葉原に中国の人がどんどん買い物に来たり、温泉に行ったりとかしていますが、何かあれば直ぐにデモになってしまうのです。こうした問題をどう理解するのか、ということなのです。国民レベルで隣人として一緒にやっていくと考えることが出来るかどうかです。民間の交流が大切なのはそのためです。お互いを知り,違いを認めないと,何も始まらないのです。
谷内: 最近日本に来る中国人の観光客の方って多いじゃないですか。そういう方って中国に戻って「日本ってこういう国だったよ」とか互いに話したりはしないのですか。
日本のマンガはすばらしい
工藤: 話していますよ。昨年の大連での僕たちのフォーラムでまさにそういう議論になりました。日本と中国のメディアが喧嘩になりました。メディア同士って本当に喧嘩をするのです。つまり日本は「自由」とか譲れないところがあって、一方、中国のメディアは逆に「日本のメディアは自由だとか言うけど、何で新聞の1面はいつも同じなのか」とか言うのですよ。そしたら会場からすごく面白い議論が出て、中国の女性で何回か日本に来て勉強をして、大連でボランティアをしていたそうですが、その人が言ったことは感動的でした。
日本に訪問した際に、電車で中年の人が漫画を見ていて、「なんてアホな国なのか」、と思っていたそうですが、実際自分が家で読んでみると「すばらしい」と。こんなすばらしい大衆文化が日本にはあるのかと思ったそうです。やはり行ってみないと分からない、こんなすばらしい文化を作っている日本はすばらしい、そんなことを会場で言うのですよ。それで拍手が出たりして。また、一昨年あたりに日本のメディアが拉致されて暴行されたときに、逆に会場の中国人から中国のメディアのパネラーに「暴行があったがどういうことなのか」とか質問が飛ぶのです。
だから日本に住んだり、日本で学んだり友達がいたり、日本人も中国に行って友達ができたら全く相手国に対する印象が変わると思います。世論調査を見ると日本に行った経験とか友達がいる人は数パーセントしかいないのですよ。ほとんどは相手のことを直接知らないのです。彼らの相手国の認識は自国のメディアなのですよ。中国に行けば抗日戦争のドラマばかりやっています。日本も時代劇とか一時期そういった感じがあったではないですか。するとあればかり見ていると、今でも日本には軍服を着た人がいるのではないかとか。だからメディアの役割は非常に大事なのです。餃子事件のときに中国の餃子が不安だとか、また日本人がそういうことを悩んでいるということを中国メディアが伝えれば、中国の人も日本人はそういうことについて悩んでいるのかと分かるじゃないですか。相互交流が劣っている分、間接情報に頼っていて、今回のように何かあったときに、過熱してしまうのです。
メディアの役割が大事で、根底にあるのは互いの交流が不足しているということです。だから、これまで6年間やっていて話せば分かることは結構あるのです。現象だけを見ていると、付き合えないと感じますが、やはり国民が違いも直視していくべきで、これは避けられない運命でもあるのです。こういったことを考える段階に日本人はきているのです。つまり、「あの中国とどうつきかうか」を考えないといけない。
谷内: 今回SMAPのコンサートも延期ですが、残念ですね。
工藤: 中国に日本のよい音楽が伝わらないのは残念ですね。しかし中国人はよく日本のテレビを見ています。谷村新司とか、真田広之とか。しかし認識が古いのです。僕が日本の誰を知っているかと聞いたら、「山口百恵の赤いシリーズ」とか。まだそんな認識なんです。やはりSMAPとかが行かないと、ね。まあ山口百恵も僕の青春のバイブルですが、まだまだ交流が足りないのではないかと思います。
(文章は、動画の内容を一部編集したものです。)
10月1日(金)5時30分からJFN系列で放送を開始した「ON THE WAYジャーナル」の水曜日担当として、言論NPO代表の工藤泰志がパーソナリティを務めます。
記念すべき第1回目は、「アジアの中のニッポン アジアとの仲を考える!」と題して、10月6日(水)5時30分からJFN系列で放送されました。 その収録風景を公開致します。
ラジオ放送について 詳細はこちらをご覧ください。