今回の「工藤泰志 言論のNPO」は、言論NPOが開始したキャンペーン「私たちは政治家に白紙委任はしない」とは何か、を考えました。言論NPOでは、この呼びかけについて沢山の人に賛同して欲しいと考えております。賛同はこちらから
(JFN系列「ON THE WAY ジャーナル『言論のNPO』」で2012年10月10日に放送されたものです)
ラジオ番組詳細は、こちらをご覧ください。
私たちは政治家に白紙委任はしない
~No More Carte Blanche to Politicians
おはようございます。言論NPO代表の工藤泰志です。毎朝様々なジャンルで活躍するパーソナリティが自分たちの視点で世の中を語るON THE WAY ジャーナル、今日は「言論のNPO」と題して私、工藤泰志が担当します。
さて、早速ですが、今日も先週に引き続いて日本の政治について考えてみたいと思います。今日、私が皆さんにお伝えしたいのは、私たち言論NPOが行なっているキャンペーンのことです。
「私たちは政治家に白紙委任はしない」。
こういうメッセージを今、言論NPOは社会に提案して、多くの有権者、市民の賛同を求めようという活動をしています。
これを英語で言うと、"No More Carte Blanche to Politicians"と言います。
このCarte Blancheというのはフランス語で「白紙委任」という意味です。これが非常に重要で、つまり「私たちは政治家に白紙委任はしない」ということを、選挙前にきちんと考える必要があると思いました。言論NPOのサイトでは、いろいろな有識者がこれに賛同して、写真入りで自分のコメントを公開しているので、ぜひ皆さんに読んでいただきたい。それだけではなく、その賛同の輪を皆さんの力で広げていただけないかということで、今日はこの問題について議論してみたいと思います。
それでは、今日のON THE WAY ジャーナルは 「私たちは政治家に白紙委任はしない」というテーマで進めていきます。
いまの政治を容認しているのは誰か、との問い掛け
さて、以前この番組でも取り上げましたが、私は今年3月に、ワシントンで外交問題評議会という世界的なシンクタンクが集う議論に参加しました。その時に、「民主主義の規律」というか「重さ」ということを痛感しました。
この場には、アメリカの国会議員とかいろいろな人がいたのですが、僕が「日本とアメリカとの政府の間でコミュニケーションのギャップ、空白があるのではないか」と指摘したら、それに対して会場から「では、そういう状況は誰が作ったのか」と質問されました。質問者は沖縄の米軍基地で昔働いていたことがあるという女性で、その言葉に非常に重みがありました。
その人が僕に言ったのは、日本政府に対する批判ではなくて、僕自身に向けた言葉、つまり「そうした政治を容認しているのは誰なのか」という問い掛けだったのです。僕はその問いの意図を真剣に考えました。その時に日本の政府を批判するのは簡単でした。でも、それを言わせない雰囲気がありました。これこそ民主主義の力だと僕は実感したのです。その人の質問の意味は「そうした政治を容認しているのは、あなたたち市民ではないのか」ということなのです。なぜなら、政府というのは、日本の国民が自分たちで選んでいるわけですから。
その時の思いが私たちのメッセージにつながったわけです。「私たちは政治家に白紙委任はしない」というメッセージに込めた想いというのは、有権者が強い覚悟を持とう、ということです。つまり、政治家にただお任せしたりとか、安易に期待したりはしない、ということです。
この国の主役である自分たちが、民主主義を立て直す時だ
先週の番組で、言論NPOが行なった有識者アンケート結果について考えてみました。その結果、今こそ日本の民主主義を立て直す時だということが、アンケート結果から浮かび上がりました。実はそれこそが、今度の選挙の意味だと私は考えています。そのためにこの選挙を通して、僕たち自身が、政治家と有権者とのカウンターバランス、パワーバランスを取り戻さなければならないのです。有権者が強くなれば、政治家も強くなる。一方で、僕らが弱ければ、政治家は有権者を恐れなくなり、選挙はやらなくていいよ、と適当に考えるようになってしまう。従って、このバランスをもう1回きちんと整えなければいけない。
カウンターバランスをきちんと整えていくということは、ただ有権者が政治に陳情したり、甘いサービスを求めたりすることとは違います。つまり、自分たちの意思でしっかりと代表を選び、代表として選ばれた政治家がきちんと仕事をしているのかをきちんとチェックする。そういうサイクルがきちんと回ることが、民主主義が機能するということですから、この形を作るための第1歩が次回の選挙だと思っています。だから、僕たちは次回の選挙を真剣に考えなければならないわけです。また、このサイクルを回すためにも、有権者自身が当事者としての意識を持たなければならないのです。
こうした有権者と政治との関係について、僕たちはこれまで何度も発言し、問いかけてきました。先週も話した通り、マニフェストというのは、元々国民との約束であり、約束を軸にして政治を作り直そうという動きだったわけです。しかし、マニフェストは選挙で使われるようになったけれども、今の政治はそのサイクルが残念ながら切れてしまっています。
過去3年間、選挙がなく、有権者は見ているしかなかった
今は自民党、民主党で新しい党首が決まり、政治は大きな変化を迎えつつあります。しかし、またただ政治家に任せることになると、同じことの繰り返しになってしまう恐れがあります。だから、今度の選挙では簡単に有権者は納得しないという姿勢を示していかなければなりません。
今、尖閣問題あるいは消費税の問題、エネルギー問題など、いろいろな問題があります。そうした問題について国民にも判断を求めるべきでした。しかし、選挙自体がこの3年間ありませんでした。政治の動きを、僕らはただ指をくわえて見ているというだけでした。もうそれは勘弁してもらいたい。絶えず有権者に信を問う、ということをやっていかなければ、民主主義が機能しないと私は思っているわけです。
そのスタートを切るためにも、私たちの覚悟を、政治家だけではなくて、社会に対して提案しなくては、と考えたのです。それがこの「私たちは政治家に白紙委任はしない」というメッセージなのです。
これはよく読んでみると、すごい覚悟です。しかもこれは、政治家に言っているのではなく、自分たちに言っているのです。自分たちがこれから本気で考えて選挙に向かい合う、こうした決意に多くの人が賛同し、その輪が広がれば、それが政治に対するプレッシャーになる。政治と有権者との関係をそういう私たちの覚悟でより緊張感のあるものに変えていきたいのです。
有権者が声を上げて政治家・政党に迫るしかない
実は言論NPOがこのメッセージを出したのは今回が初めてではありません。11年前の2001年に私たちのNPOが立ち上がったわけですが、その時もこのメッセージを使っていました。当時、小泉さんが首相でした。ある時に私が壇上であいさつをしているところに、小泉さんがたまたま入ってきて、小泉さんの前で、私は思わず、「1人の政治家に白紙委任はしない」と言ってしまったわけです。
そうしたら、「なんだ、この男」という目で小泉さんは見ていましたけれども、民主主義はそういうものだというのが僕の主張でした。つまり、強い民主主義というのは、有権者が自分で考える民主主義なのです。そういう政治を目指したいという願望ではなくて、そうしないとこの国には展望がない。そのくらい、この民主主義という問題にそうした危機感を発していたのです。民主主義は空気のようなもので当たり前のものと見られています。それが機能もしないし、かなり危険な状況になっている。その状況に多くの人が今気づいてきている段階だと思います。だから、僕ももう引けないと思っています。
先週のアンケート結果では、多くの人が民主主義が機能していないと答えていました。政党内で意見が対立して全く意見がまとまらない、未来に向けた政党間の競争が全くない、そして、ほとんどの政治の動きが、選挙で自分たちが勝つためだけに動いています。そのような政治状況で、新しい大きな変化が始まるとは思えません。
従って、この政治を変えるためには、永田町の変化に任せるのではなくて、やはり有権者がそれを迫らないといけない。だから、政治ゲームにお任せするのではなく、私たち有権者がそれを迫るためにも、有権者が声を上げなければならない。このメッセージは私たちの覚悟であり、意志表明なのです。これがいろいろな人たちに伝わって、いろいろな人たちがこのメッセージに共鳴する流れができれば、ひとつの大きなエネルギーになる。そう思って、僕たちはこのキャンペーンをやっています。私はこの呼びかけに100万人くらいの人々が賛同していただけないかと思っているのです。ここで聴いている方たちにもぜひ賛同していただけたらありがたい。
6つの争点について、議論した結果を政治家・政党にぶつける
言論NPOはこのアピールに注力しつつ、次の選挙に向けた準備もしています。アンケートの中で、今度の選挙の争点は何か、何を政治家と政党は国民に語らなければならないのか、何を約束しなければならないのか、という質問をしたら、だいたい6つの課題に集約されました。原発を含めたエネルギー政策および社会保障制度の改革、経済の成長戦略、外交安全保障、財政再建、民主主義を含めた国会改革です。この6つを僕たちは選挙の時の争点にしようと考えています。また、それらを政治家一人ひとりにぶつけなければならないと思っています。
「私たちは政治家に白紙委任しない」という覚悟を決めている以上、この6つの争点を自分たちで議論し、皆の意見も反映させながら、まとめた意見を政治家、政党にぶつけていく。政党別討論会をやったり、政治家アンケートをやったりしていく。それを皆さんにフィードバックしていくことで、政治家にプレッシャーをかけたいと思っています。そういう動きが広がれば、つまりこうした議論に参加する声が多くなればなるほど、政治はそれを無視できなくなります。そういう流れを日本全国でも各地域でも作りたいと思っていますし、そのための議論づくりの準備も言論NPOは今進めているわけです。
私はこの選挙の準備もあるのですが、尖閣諸島の問題を含めていろいろな問題を世界で議論するために、10月にシンガポールに行きます。アジア・リージョナル会議という、それも世界有数のシンクタンクが集まり、その中に唯一、日本の言論NPOが入っています。その中である提案をしようと考えています。その1カ月後にはモスクワに、その後ワシントンと中国にも行くことになると思います。とにかく僕は政府だけに期待するという人生は嫌なのです。やはり民間とか市民とか、いろいろな形で国境を超えたり、課題解決に皆が挑んでいくという世界が非常にいいと思っています。
力強い民主主義が日本で機能するように
海外との大きな対立の背景には、日本自身が未来に向けてきちんと動いていない。きちんと政治が競争したり、それを有権者がきちんと選んでいくという力強い民主主義が機能していない、という問題があります。それが、世界の中で日本が孤立してきているという状況を招いている原因だと実は思っています。僕から見れば、海外との間で民間の外交、民間の対話をするということは、民間、市民、有権者がこの国を大きく立て直していく、それをきちっと世界に主張するという大きな一つの流れであり、その中に私たち、言論NPOの活動があると感じています。つまり、有権者が自ら課題に取り組む局面に日本は来ているのではないかと、私は考えています。
そういうことで、僕はこの「私たちは政治家に白紙委任はしない」というメッセージから、日本の未来に向けた大きな変化の第一歩を始めたい。これを皆さんにも協力していただきたい、と思っているのです。
では、どうやって私たちの呼びかけに協力すればいいのかということです。5つの方法で協力をお願いしたいと思います。一番簡単なのは、言論NPOのトップページから、「賛同する」というボタンを押してコメントを寄せてもらう。それからYouTubeやTwitter、Facebookに自分で書いてもらう。YouTubeの場合、動画をアップロード後、「ノーモア白紙委任」というタグを入力してほしい。また、Facebookのアカウントをお持ちの場合は、僕たちが作っているFacebookページ「ノーモア白紙委任 -私たちは政治家に白紙委任はしない-」の「いいね」を押してもらう。さらに、Twitterの場合、ハッシュタグ「#ノーモア白紙委任」をつけてツイートしてください。そうすると、言論NPOが作った新サイトに反映されます。しかし、一番シンプルなのが、写真やメッセージを添えてinfo@genron-npo.netまでメールで送っていただく方法です。
私たちはこのような様々な方法を使って、このメッセージを多くの人たちに伝える。また、日本の政治に対して、有権者にいい加減なことはさせない、安易なお任せをさせない、政治も本気になってくれよ、ということを伝える。さらに、私たちは議論し、政治にいろいろな形で提案していく。そういうプレッシャーを政治が受けることによって、強くなるのだと思っています。
僕は、最終的に政治はいろいろな課題解決型、つまり政策軸をベースに大きく再編して、変化していくことが未来に向けて必要なのだと思っています。ただ、これは僕たちそのものが、こういう動きに参加していかないと、きちっとしたものにならない。だからこそ、「私は政治家に白紙委任はしない」"No More Carte Blanche to Politicians"と呼びかけるので、賛同してもらいたいと思います。
私たちは勝負をかけようと思っています。その中で多くの皆さんと一緒に考え、何かやっていきたいと思っているので、是非ご協力、賛同していただければと思います。今日は言論NPOが開始したキャンペーン「私たちは政治家に白紙委任はしない」とは何なのかについてお話しました。ありがとうございます。
今回の「工藤泰志 言論のNPO」は、言論NPOが開始したキャンペーン「私たちは政治家に白紙委任はしない」とは何か、を考えました。言論NPOでは、この呼びかけについて沢山の人に賛同して欲しいと考えております。賛同はこちらから