言論NPOは、「農協改革で日本の農業は強くなるのか」と題して、有識者を対象にアンケート調査を行いました。
調査は言論NPOの活動にこれまで参加していただいた全国の有識者約6000人を対象に、2015年2月25日から2月26日までの期間でメールの送付によって行われ、ご回答いただいた155人分のアンケート結果を集計し、分析しました。
回答者の属性
今回の農協改革への賛成が約8割
安倍政権が進めている農協改革の是非について尋ねたところ、44.5%が「賛成」、31.6%が「どちらかといえば賛成」と回答し、合わせておよそ8割の有識者が今回の農協改革を支持していることがわかりました。一方、「反対」(5.8%)、「どちらかといえば反対」(5.8%)との回答は1割強にとどまりました。
農協改革の効果については懐疑派が多数
今回の農協改革によって「競争力は大いに高まる」と期待する有識者が16.1%いる一方で、「競争力は高まると思うが、そう大きな効果はない」(45.8%)、「競争力強化には役に立たない」(25.8%)と、今回の農協改革が、日本の農業の競争力強化に十分に繋がらないのではないかという回答が7割を超えました。
一連の農業改革について、悲観的かあるいは判断を迷っている人が多数
今回の農協改革に加え、減反の廃止、農地集積など、農業を成長産業へ転換させる改革に対する評価を尋ねたところ、「成長産業に向けて着実に動いている」とする回答は11.6%にとどまり、「成果は出始めているが、今後も成功できるか現時点では判断できない」(33.6%)、「日本の農業の将来をどう描いているのかがわからず、かけ声だけに終わる」(25.2%)といった農業改革の不十分性を指摘する回答が目立ちました。
一方、「この段階で評価を下すのは適切ではない」とする回答は28.4%に上り、一連の改革の結果を見守ると回答する有識者が多いことがわかりました。
一連の農業改革で経済自由化に備えるための道筋が描かれたとの回答はわずか1.9%
今回の農業改革によって、経済自由化に備えるための道筋が「十分に描かれた」とする人はわずか1.9%にとどまり、「十分とは言えないが、一定の道筋は描かれた」との回答が42.6%と最多となりました。一方で、「道筋が描かれたとは言えない」と考える有識者も38.7%に上り、有識者の間でも意見がわかれました。
さらに「経済の自由化により、日本の農業は立ち行かなくなる」と考える悲観的な有識者も10.3%いることがわかりました。
新しい人材や発想を、硬直する農業体制に吹き込むことが必要
稲作農業を持続可能なものにするために必要な施策を複数回答形式で尋ねたところ、「青年農業者、企業など、新規参入の拡大による新たな担い手の確保」が重要だと考える有識者が65.2%で最も多く、「農業経営の大規模化」、「農業生産法人の出資・事業の要件緩和」が51.0%と続きます。また、今回の農協改革を契機に、「地域農協の意識改革」(47.1%)との回答も上位になるなど、新しい人材や発想を硬直する農業体制に吹き込むことが必要だと考える有識者が多いことがうかがえます。
加えて、50.3%の有識者が「国内外の需要拡大、実効的な農産物輸出戦略の推進」を挙げ、日本の農産物を海外にアピールする戦略の必要性を指摘しています。