言論NPOは、「2015年度予算を検証する」と題して、有識者を対象にアンケート調査を行いました。
調査は言論NPOの活動にこれまで参加していただいた全国の有識者約6000人を対象に、2015年3月2日から3月3日までの期間でメールの送付によって行われ、ご回答いただいた100人分のアンケート結果を集計し、分析しました。
回答者の属性
※各属性で示されている数値以外は無回答の割合。この頁以降、数値は小数点第2位を四捨五入しているため、合計が100%とならない場合があります。
5割を超える有識者が今回の予算を否定的に評価
まず問1では、一般会計の歳出総額が96兆3420億円と過去最大になった一方、新規の国債発行額は4兆円超、前年度から減った2015年度の予算案について、その評価を尋ねました。その結果、「評価していない」が27.0%、「どちらかといえば評価していない」が28.0%となり、今回の予算案を評価していない有識者は5割を越えました。
それに対し、「評価している」(5.0%)、「どちらかといえば評価している」(21.0%)という肯定的な評価は2割台にとどまりました。
「財政再建に十分取り組んでいない」との評価が約8割
安倍首相はこの予算案について「経済再生、財政健全化を同時に達成するのに資する予算になった」と述べています。そこで、今回の予算案を、経済再生と財政再建に取り組んだ予算と判断しているかを尋ねたところ、「経済再生と財政再建のどちらも十分取り組んだとは思えない」との回答が43.0%で最も多く、「経済再生には取り組んだが、財政健全化には真剣に取り組んだとはいえない」が34.0%で続きました。この2つを合計すると、8割近い有識者が今回の予算では、財政再建に取り組んだとは評価できないと判断しています。
一方、首相が言うように「経済再生と財政健全化に同時達成するのに資する予算と言える」との評価は8.0%と1割未満でした。
社会保障関連の歳出に高評価が集まる
次に、今回の予算案の中で、評価しているポイントを尋ねました。その結果、「保育所増設など子育て支援拡充」(37.0%)、「介護職員の賃上げなど待遇改善」(35.0%)と社会保障関連の歳出が上位を占めました。これに「離島防衛強化など防衛費の増額」(32.0%)と「高校・大学生への奨学金拡充」(31.0%)が続き、ここまでが3割を超えました。安倍政権が力を入れている「地方創生」のために経費1兆円を計上したことを挙げた回答は17.0%と2割足らずにとどまりました。
85%もの有識者が、財政再建が難しいと認識している
最後に、今回の予算案を見て、日本の財政再建は可能かを尋ねました。その結果、「このままでは難しい」が60.0%、「すでに困難」が25.0%と、否定的な見方の合計が85.0%にも上り、前述と同様に、有識者が安倍政権の財政再建の姿勢を厳しく見ていることが浮き彫りとなっています。財政再建は「可能だと思う」との回答は5.0%に過ぎませんでした。