「言論NPOと次の日本を語る会」報告

2012年11月30日

 「しっかりとした議論がしっかりとした民主主義をつくりだす」と社会によびかけてきた特定非営利活動法人「言論NPO」(代表・工藤泰志)は設立11周年迎え、「言論NPOと次の日本を語る会」を29日、東京・霞山会館で開催しました。同会は小林陽太郎氏(国際大学理事長)、明石康氏(国際文化会館理事長)らを代表発起人に政財界、マスコミ関係者ら、およそ150人が出席。言論NPOが設立当初から言い続けてきた「有権者や市民ひとりひとりが、この国の未来は私たちが選ぶ、という当事者意識と覚悟を持って、政治に向かい合う」ということこそ今の日本には必要であり、これまでの活動をさらに深化させ進めていく必要があると、今後の活動に多くの期待が寄せられました。

言論NPOと次の日本を語る会 12月16日投票の衆議院選を控え、オープンディスカッション「私たちは政治家に白紙委任はしない」で会は始まり、増田寛也(野村総合研究所顧問)、宮本雄二(宮本アジア研究所代表)、武藤敏郎(大和総研理事長)の3氏が発言。宮本氏が「戦前から日本の政治は変わっていない部分がある。政治の実力者は地元の実力者が集まって多数が決めればいいという考え方である。議院内閣制の下で、どういう代表を選ぶのか、多数を取る政党が大事なのであって、議員よりも政党を選ぶということである」とし、増田氏は「マニフェスト策定過程からすると、選挙前に慌ててつくっているので、前回の選挙とまったく一緒。マニフェストもどきと言えます。その真贋を見抜くのが言論の役割」と強調。武藤氏も「マニフェストの中身を評価するのは非常に難しい。問題は、マニフェストをどのような政党組織のガバナンスのもとに決めたのかということ。決定のプロセスというものを検証することが大事」と語りました。


 続く「言論NPOと次の日本を語る会」では、田中弥生氏(日本NPO学会会長)を司会に進められ、発起人を代表して小林氏が「今回は政策よりも人物本位で選びたい。多くの人が迷っている、今こそ言論NPOが判断材料を提供しなければいけない」と挨拶。明石氏も「今回の選挙では、外交や安全保障といった普段は問題にならないものについて、国民が重要な判断を迫られているが、安全保障というのは選択が非常に情緒的になる危険はないか。相手を悪玉にしてこちら側だけが良い側になる、感情的な判断が増えてくるのではないか」と、今回の選挙への危惧を述べました。代表の工藤は「今、言論NPOは非常に忙しい。というのは今、民主主義が壊れてきているのではないか。民主主義を強いものにするには、有識者や有権者が変わらないといけない。そのために健全な議論のプラットフォームを、質の高い信頼のあるものに発展させたい。しかし、残念ながら全然、力不足。青臭いが、この国にいい民主主義が機能するよう、議論の場から動かしたい」と挨拶しました。

 出席者からの挨拶では、藤沢久美氏(ソフィアバンク副代表)が「設立の頃から言論NPOに大変興味を持ち、白紙委任をしないということに感銘した。自分の未来を不安に思う若者がたくさんいる。若い世代が投票するための軸を提供して欲しい」と話し、また、三井嬉子氏(スペシャルオリンピックス日本会長)は「国民のレベルでしかリーダーは選べない。民主主義は有権者の問題、私たちが賢くならないと、日本はよくならない」と語りました。

 また、「日本のメディアはどう考えるか」をテーマに、大野博人・朝日新聞論説主幹が「意識しているのは民主主義の危機、これは他の民主主義国でも共通している。民意が政策になって返ってこないのは民主主義の赤字」、山田孝男・毎日新聞専門編集委員が「今度の選挙は、本物と偽物を見分ける有権者の直感が問われる。維新が太陽と一緒になって、曖昧だというが、自民党と公明党のコンビも公明は原発ゼロ。これをどう整理するかが大問題」と、選挙戦を前にそれぞれメディアからの視点を話しました。

 最後に宮内義彦氏(オリックス会長)が「選挙を迎え、日本の政治を変えるために何ができるかという思いと、発信しなければという思いが交錯している。日中関係を見ても、政治の強い力が動くと、言論NPOはじめ多くの人が関与している草の根運動は何だったのか、と虚しい思いもする。今は非常に大事な時期、日本の政治を民主的な方法でよくしていく、何年に一度かのチャンス」と述べ、本会を締めくくりました。

 言論NPOでは12月16日の投票日に向けて、有権者の判断材料となるような様々な議論を、言論NPOのホームページで随時公開していきます。