加藤寛 (千葉商科大学学長、慶應義塾大学名誉教授)
かとう・ひろし
1926年生まれ。50年慶應義塾大学経済学部卒業。66年同大学経済学部教授。90年同大学総合政策学部教授・学部長、94年名誉教授。95年より千葉商科大学・千葉短期大学学長。比較経済、公共経済分析専門、経済学博士。主著「亡国の法則」「官の発想が国を滅ぼす」等。
概要
経済財政諮問会議、政府税調、自民党税調、与党税調――年頭会見で小泉首相が意気込みを示した税制改革の議論は今や4つの場に広がり、その考え方に対する「ずれ」が目立っている。長らく政府税調会長を務めた加藤寛氏は「デフレ下でも税の抜本改革は逆効果」と主張し、今は経済活性化にしぼって税制の活用を考えるべきと語る。いわば「裏税調」となる議論の場を専門家らとつくっており、「政策案をまとめ、6月末に提出する」と明かした。
要約
1990年から10年間、政府税制調査会会長を務めた加藤寛・千葉商科大学学長にインタビューした。第2臨調(土光臨調)では第4部会長として国鉄、電電公社の民営化を推進。また小泉首相は慶應大学経済学部で教鞭をとっていた当時の教え子である。
今年1月にスタートして44ヵ月、税制改革の論議が混乱しているのは、「経済財政諮問会議にも政府税調に対しても、小泉首相が『抜本的税制改革』の指示を出したからだ」と加藤氏は言う。中・長期的な基本方針のまとめを担当すべき諮問会議が、短期的な細かい制度設計にまでかかわることになった。そこで従来そのような役割を果たしてきた政府税調と衝突した、というわけだ。
しかも税制改革の論議には、経済財政諮問会議、政府税調だけでなく、自民党税調、与党税調さらには財務省、官邸までかかわってくる。調整は一筋縄ではいきそうにない。しかし今こそ、小泉首相が指導力を発揮しなければならない。だが加藤氏の目には「小泉さんには全然そのような言動がみられない。税制については自信がないから、『経済活性化』の件など竹中平蔵氏の考えに乗っただけで、そもそも改革の方向性・理念さえもち合わせていないのではないか」と映る。
大平政権の一般消費税、中曽根政権の売上税、細川政権の国民福祉税――税制改革の挫折が政権を揺さぶった例は過去に数多い。道路公団改革、郵政改革が思うように進まない今、税制改革も混迷が深まれば小泉政権の運営はさらに危うくなるだろう。加藤氏は「デフレ経済の下の税制改革は逆効果だ」と語り、まずは経済の活性化の観点から、当面は「『水面下にある状態から顔を出す』ための体力を経済につける」ことが先決で、そのために税制を活用すべきと主張する。そのような政策を加藤氏はいわば「裏税調」となる会をつくって議論しており、「6月末、竹中氏へ提出する」としている。
経済財政諮問会議、政府税調、自民党税調、与党税調――年頭会見で小泉首相が意気込みを示した税制改革の議論は今や4つの場に広がり、その考え方に対する「ずれ」が目立っている。長らく政府税調会長を務めた加藤寛氏は「デフレ下でも税の抜本改革は逆効果」と主張し、