経済官僚 A/B/C/D
概要
税制改正の議論については、2つの混乱が続いている。何のための税制改革を行うのか、その目標があいまいなこと、誰がこの税制改革で意思決定を行うのかはっきりしていないことだ。議論は同床異夢の形で進み、経済活性化のため、6月にも考えがまとめられることになる。抜本的な改革で、小泉政権は税制改革を戦略化できるのか、議論の舞台裏を見てきた経済官庁の担当幹部4氏が本音で語り合った。
要約
霞が関の税制改革の実務を実際に担っている関係者4氏が、覆面を条件に議論に言論NPOの論議に参加した。議論は現在の経済環境下で税制の抜本改革は可能か、の論点から始まった。3氏は税制の改革は必要だという点では一致しているが、財務省関係者は、税制の最大の目標は支出のための財源を生み出すこととの原則的な判断から、あくまでもその際には、財政のバランス論を目標として議論すべきだと主張した。これに対しては「政策の対応力を取り戻すためには税をテコに歳出カットするしかない」「日本経済の競争力が低下する中では税活用で新しい市場創出を誘導すべき」という他官庁はそれぞれの立場から主張し、議論は分かれた。財務省側が慎重なのは財政赤字削減のめどがつかない中で今の税制が甘い政策を政治的に打ち、税収を生まなくなってきたからだが、内閣府の関係者は「歳出が今のままで増税を国民が納得できるはずがない、税は経済のサブシステムだから、財政全体で考えることが重要」と応じ、意見は平行線をたどった。経済財政諮問会議は当面は税の質の問題を中心に財政中立で改革を進め、中長期的に財政バランスを回復する税改革の工程表をつくる予定だが、「アメだけを先に見せるのはこれまでの手法を同じ」との批判もあった。もう1つの焦点の税改革の進め方では、経済財政諮問会議、政府税調、党税調の間で不協和音も報じられているが、対立の原因を役割分担がはっきりしていないからという議論と、今は役割分担よりも複数で議論することに意味がある、という見解に分かれた。小泉内閣になって政策形成の主体が内閣主導になり始め、その仕上げは税制ともみられているが、政策形成プロセスの混迷の原因は、「官邸に税制改革に対する理念や方向性の具体的な指示がないこと」という発言もあり、税制が短期の経済活性化だけではなく、中長期的な日本の改革に実際に戦略化できるかは参加者それぞれに不安を残すものとなった。
税制改正の議論については、2つの混乱が続いている。何のための税制改革を行うのか、その目標があいまいなこと、誰がこの税制改革で意思決定を行うのかはっきりしていないことだ。議論は同床異夢の形で進み、経済活性化のため、6月にも考えがまとめられることになる。