6月11日、外交・安全保障分野に関する言論NPOのマニフェスト評価の一環として、マニフェスト評価委員による評価会議が都内で行われました。出席者は栗山尚一氏(元駐米大使)、国分良成氏(慶應義塾大学法学部長、教授)、添谷芳秀氏(慶應義塾大学アジア研究所所長、法学部教授)の3氏で、司会は工藤泰志(言論NPO代表)が務めました。
はじめに工藤は、「麻生政権の外交をどう評価するか」と3氏に問いかけました。これに対して、安倍政権から麻生政権まで争点はずっと国内問題であったことや、日本外交には日米同盟や憲法といった制約があるので麻生政権だけの実績を評価することは難しい、といった指摘がなされました。また添谷氏からは、「現在行われているような、日米同盟と国連のどちらを取るか、といった議論は方向性が間違っている。日米同盟や国連などの手段を用いて、日本がなにを実現したいのか、ということを議論しなければいけないが、日本の政治はそこからかけ離れている」との指摘がありました。
これを受けて工藤は、「移り変わる国際情勢の中で、日本外交に真に問われていることは何か」と問いかけました。これに対して添谷氏は「朝鮮半島情勢の変化に対するシナリオ、米中関係の変化への対応、グローバルイシューへの国際貢献」という3点を挙げました。また、その後の議論において栗山氏は、北朝鮮問題に関して「落とし所が全く見えない」と認めたうえで、「「対話と圧力」ではなくいかに交渉するかが問題だが、北朝鮮には交渉する気すらない」と現状の難しさを指摘しました。そして「核、ミサイル、拉致の包括的解決がなされなければ国交正常化はしない」という日本政府の方針は基本的に正しいとしながらも、3つの問題には優先順位が必要であることを強調しました。また、拉致問題については、本当に解決するためには何が必要なのか、今の方法が妥当なのかということを、政治が責任を持って考えなければならない、という意見も出されました。
一方、中国については、金融・安全保障などの面で米中が戦略的に関係強化を図ることが予想される中、日本はナショナリスティックに反中を唱えるのではなく、米中の戦略的関係をも考えながら外交をしていくことが必要である、との意見が国分氏から出されました。その上で、中国を国際的な舞台のステークホルダーとして巻き込んでいくことの重要性も指摘されました。
また、「次の選挙で日本の政党は外交分野で有権者に何を説明するべきなのか」という工藤の問いかけに対して、国分氏は、日本は国際社会で孤立しては生きていけない国であるということを自覚し、その上で柔軟性をもって地球規模の課題の解決に積極的に携わることが重要、と指摘しました。また栗山氏も、「政治がはっきりとしたビジョンと行程表を示せば国民の意識も変わると思う」と述べました。さらに、オバマ米大統領が提唱している環境問題対策や核廃絶・不拡散への取り組みなどは、実は日本が本来強みとしてきた外交政策であり、こういった長所をこの機会に生かすことができれば日本外交も変わるかもしれない、という意見も出されました。
そして工藤が最後に、「様々な日本の外交の課題に関して、選挙で政党が解決策を競い合うことが必要なのではないか」と締めくくりました。
文責: インターン 長瀧菜摘 (中央大学)
6月11日、外交・安全保障分野に関する言論NPOのマニフェスト評価の一環として、マニフェスト評価委員による評価会議が都内で行われました。