グレン・S・フクシマ氏 第1話:「なぜ、日本では近隣国との問題を乗り越えるための議論が少ないのか」

2006年2月01日

「なぜ、日本では近隣国との問題を乗り越えるための議論が少ないのか」

 日本を外国人の目から見ると、日本人は外交問題をもう少し真剣に議論する必要があると思います。
現在の状況を見ると、日本は、韓国、北朝鮮、中国関係、ロシアといった国々との関係を見てもあまり良いとは言えません。今後、日本が、経済面でも政治面でも本当の意味でリーダーシップを発揮するためには、やはり近隣諸国との関係を改善しなければ、いつまでたっても本当の意味での日本の良さは発揮できないと思います。そういう意味では、もう少し真剣に、特に中国、韓国との関係を、どうすれば正常化出来るかということを議論したほうが良いと思います。

 今の日米関係は、指導者レベルでは良好な関係のようですが、国民レベルでは必ずしもそうとは言えません。たまたま大統領と総理大臣の気が合うということだけではなく、もう少し国民のレベルでもお互いに良好な関係だと認識できるような日米関係をこれから構築していかなければならないと思います。
国内において外交問題の議論が、最近あんまり行なわれていないようですが、基本的には、周りの国との関係が良くないのは普通ではないと思います。中国とここ5年から10年の間に経済面でこれだけ密接な関係になり投資も貿易もかなり拡大してる中で、政治面における緊張感が高まっています。また、韓国との関係でも、一方では冬ソナとか、国民レベルでは交流が進んでいて、良い方向に行ってるとかいいながら、やはり靖国問題とか教科書問題で日韓の関係も危ないのでは、正常な関係とはいえません。この問題はこのままで放置しておいても解決しないものなので、日本は自らそれを解決しなくてはならないと思います。

 戦後の問題を巡っては、ドイツと日本の比較がいろいろとなされます。私も2005年の2月からはヨーロッパの会社に入ったので、ドイツやフランスの人と毎日のように一緒に仕事していますが、彼らと日中関係や日韓国関係の話をすると、ドイツが戦後いかに努力をして政策的・意図的に他の国との関係を改善しようとしてきたか、そして、その60年来の努力の結果でドイツはヨーロッパの中で信頼される国になったということを何度も聞かされます。

しかしながら、日本はそういう努力がなく、今回の靖国参拝問題でも「なぜ相手がそんなに気にするのか」という感じで、首相も国会で答弁をしています。これは外国人という第三者から見ると不思議に見えます。

 日本は経済面や政治面や文化面でこれからも世界で主導的な役割を果たす余地はおおいにあると思いますが、30年代40年代の問題を真剣に解決しようという姿勢がなければ、日本は孤立し、また不利な立場に立たされてしまう危険性があると思います。
近隣国との間に問題がおきているのに、それを真面目に「問題がある」ということを認識して、それをどう乗り越えるかという国民的な議論がないというのは不思議です。


※第2話は2/3(金)に掲載します。

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発言者

グレン・S・フクシマグレン・S・フクシマ(エアバス・ジャパン㈱代表取締役社長)
profile
1949年米国カリフォルニア州生まれ。72年にスタンフォード大学より経済学学士を取得後、ハーバード・ビジネス・スクールおよびハーバード・ロー・スクールを卒業。82年から大手法律事務所で弁護士として活動し、85年に米国通商代表部に入省、90年にかけて対日・対中通商政策の立案、調整、実施を行った。90年以降、民間企業に奉職し、要職を歴任。米国外交評議会委員など多数の委員も務める。

 日本を外国人の目から見ると、日本人は外交問題をもう少し真剣に議論する必要があると思います。現在の状況を見ると、日本は、韓国、北朝鮮、中国関係、ロシアといった国々との関係を見てもあまり良いとは言えません。