2004/1/11 (日)
昨年秋のマニフェスト選挙の評価や問題点、今夏の参院選に向けた課題など討議
――政策分析ネットワーク第5回年次大会でのシンポジウムに特別参加
言論NPOは1月11日、東京都内の中央大学後楽園キャンパスで開かれた政策分析ネットワーク主催、中央大学総合政策学部共催の第5回年次研究大会「政策メッセ」のメインシンポジウムに特別参加し、昨年11月の総選挙での各政党が打ち出したマニフェスト(政権公約)の政策評価や問題点、今後の課題について、活発に討論しました。
シンポジウムは、言論NPOの政策評価委員会メンバーを中心に約2時間、パネルディスカッション形式で行われ、「政策メッセ」の参加者である行政官庁の政策官僚、大学やシンクタンクなどの政策研究者ら約150人が熱心に耳を傾けました。
言論NPOの工藤泰志代表をコーディネーターにして、パネリストは、北川正恭早稲田大学大学院教授(前三重県知事)、曽根泰教慶應義塾大学大学院教授、湯元健治 日本総合研究所調査部経済・社会政策研究センター所長、それに言論NPO理事で社会システムデザイナーの横山禎徳氏の4氏。
まず、湯元氏が、議論のたたき台として、言論NPOが昨年4月から精力的に取り組んだ小泉政権の道路公団や郵政3事業の民営化などの改革を検証し政策評価を行った「小泉改革の評価書」について説明し、そこでの政策面での問題点を明らかにしました。
代表工藤は「小泉改革の方向性は正しかったが、実行過程での取り組みのスピードや、その方法に問題があった。いまはむしろ改革自体が後退しているといってもいい」と問題提起しました。
北川氏は、衆院総選挙で政権交代を問う1つのきっかけになったマニフェストについて「マニフェスト自体に問題があったのではなく、その公約を実行すべき内閣や政権政党に問題があった」と指摘、また横山氏は「社会システムが変化を迫っているのに、そのシステムを変えるメインデザイナーがいないのが現状だ。いま、必要なのは、改革のデザインを何回も書き直して、制度を変えていくことがことが重要だ」と、問題提起しました。
その点について、曽根氏は、マニフェスト自体、政策で政党を判断していく材料になったという意味で必要だった、これを国政選挙のたびに積み重ねていけば形が出来てくる、としたものの、「自民党は、総選挙でのマニフェストで、道路公団改革などいくつかの政策に関して、有権者国民に対して、選択肢を明確にしなかったため、選挙後になって詰めざるを得なくなっている。そこが問題だった」との判断でした。
工藤氏は、政党の側に突っ込み不足が目立ったマニフェストに関して、逆にメディアが年金改革などについて争点化して問題を浮き彫りにしたことは前進だったと、メディアの取り組みを評価しました。
シンポジウムは、自民党や民主党のマニフェストの中身に踏み込んで、何が問題で課題だったか、また、政策をつくり実行に移す政府サイドの経済財政諮問会議などの問題についても討議しました。
このあと、今年7月に予定されている参院選挙で、自民党や民主党などの政党に対して、マニフェストをどのように求めていくか、その課題は何かという点を討議しました。
参院選挙は、政権選択を問う衆院総選挙とは異なる国政選挙ながら、マニフェストが政党を選択する判断基準になる点では、重要なものであることには変わりないこと、総選挙ではっきりした政策提示になっていなかったものについて、自民党など政権政党がどう対応するのか、またその具体化をチェックすることで公約実行したかどうかの判断が可能になる、といった指摘がありました。
それらの点を前提に、北川氏は「マニフェストは、民主主義を支える1つの手段。衆愚政治にしないようにするためにも、政治に緊張感を作り出すような状況をつくっていくことが必要」と指摘、そして参院選挙では政党の党議拘束をどうするのか、また公選法で政策を訴える個別訪問をどう位置づけるのか、マニフェストを政党のインターネットホームページで見ることができるようにするのかどうかといった「次の対応」が必要になってくる、とも述べた。
また湯元氏や横山氏、曽根氏らは、自民党や民主党が、これまで公約倒れに終わっていた政策について、常に、政策の中身を時代のニーズにあったものにしていくブラッシュアップ作業をやっていくことを余儀なくされてきており、マニフェスト型政治を定着させるきっかけにしていくことが必要、という点では、ほぼ意見が一致しました。
言論NPOは1月11日、東京都内の中央大学後楽園キャンパスで開かれた政策分析ネットワーク主催、中央大学総合政策学部共催の第5回年次研究大会「政策メッセ」のメインシンポジウムに特別参加し、昨年11月の総選挙での各政党が打ち出したマニフェスト(政権公約)の政策評価...