2004/10/13 (水)
「第8回 言論NPOフォーラム」報告
場所:日本記者クラブ 10階 Aホール
「マニフェスト効果」で先見的な地方自治体に自立の動き、国との関係見直しも ―――言論NPO会員フォーラムで議論、一般にも開放し大いに盛り上がる
言論NPOは10月13日午後6時半から東京日比谷のプレスセンターで、「ローカル・マニフェストと地方の自立」と題するフォーラムを開催しました。今回は、会員向けフォーラムながら、会員外の一般の方々にも声をかけましたところ100人近い人たちが集まり、パネリストの議論を中心に意見交換も交えて、約2時間近く、大いに盛り上がりました。
パネリストは、北川正恭早稲田大学院教授(元三重県知事)、増田寛也岩手県知事、穂坂邦夫埼玉県志木市長、それに工藤泰志言論NPO代表、議事進行役のイェスパー・コール日本メリルリンチ証券マネージング・ディレクター兼エコノミストの5氏でした。
このうち、北川氏は、これまで衆議院議員、知事などの政治体験を踏まえて国および地方で政治、行政が有権者や国民、住民と契約を行うマニフェスト (政権公約、政策公約)の推進者です。また増田岩手県知事、穂坂志木市長も、地方レベルでの「ローカル・マニフェスト」によって有権者・住民本位の行政を行うことで地方の自立をめざすことを実践されている方々です。
まず、北川氏が、国の機関委任業務を行うような主体性のない地方行政を続けていては地方に本当の意味での「自治」は生まれない、自治体の首長は理念追求型のマネージメントを行うような積極性が必要で、「破るべき約束よりも守るべき約束」といった形で住民とのマニフェスト契約によって国からの自立をめざすことが重要だ、と問題提起されました。
続いて、増田氏は、自らの3期目に入る際の知事選で「ローカル・マニフェスト」という形で有権者の住民に対して、公共事業費の200億円カット、それに代わる新たな政策提案を行ったこと、財政力を小さくしながらも国に依存せず自立する岩手県をめざすということを理念として掲げたら、住民のみならず県庁職員の意識改革につながってきたこと、今後はマニフェストを検証評価を受け、それを住民に見せて参加を求めていく行政が重要だと思っている、と述べました。
また、埼玉県志木市で市民参加の行政、とくに予算づくりにまで市民を関与させ新しい行政の実験を進めている穂坂氏は「知事などと違って、政治感覚も行政ケ意見も不要。私の場合、市長というのは中小企業の社長、企業経営者という位置づけで、さしずめ志木マネージャーのようなもの」と会場を笑わせたあと、こう述べました。
「私自身が市長選で無投票当選だったので、マニフェストのつくりようがなかった。しかし、それだけに、選挙公約ではなく、市民との契約という形でのマニフェストをつくる必要があると考えた。そうすることによって、市民からは市長、あるいは行政が何をやっているかが見えてくるし、私自身も経営者市長として、行政体を分解し再生していくことにした」と。
北川氏は、これら増田氏や穂坂氏の地方自治体の自立に向けた動きが芽生えてきていることに関連して「ローカル・マニフェストをつくった効果がさまざまな形で出てきている。文字どおりマニフェスト効果と言っていい」と述べると同時に、「マニフェストを実践している岩手県、神奈川県、埼玉県などの知事の政策について、今年9月に第3者評価、それに知事自身の自己評価を交えて検証した。今後は、それを全国の先進的な市長レベルに広げマニフェスト評価・検証が必要になってくるので、ぜひ、やっていきたい」と述べました。
北川氏によると、11月27日に早稲田大学で「全国市長版ローカルマニフェスト検証大会」を行う予定、とのことです。
地方住民や有権者との政策をめぐる契約であるマニフェストを掲げるだけではなく、今後はむしろ評価や検証を受けることで、地に足が着いたものにしていくことになる、といった点は増田氏も穂坂氏もまったく同意見でした。
北川氏や増田氏は、その点に関して、言論NPOが独自に開発した「ローカル・マニフェスト」評価基準を高く評価すると同時に、民間シンクタンクを含め評価・検証機関が必要だ、と述べました。
このあと、会場から、いくつかの質問や意見も出ましたが、工藤代表がそれらを交通整理する形でパネリストの人たちにぶつけ、答えを引き出すといった形で、会場との交流も大いに盛り上がりました。
言論NPOとしては、今後、会員向けのフォーラムに限定せず、広範に多くの人たちに言論NPOの問題提起や活動を理解していただくだけでなく、新会員となって活動に加わってもらうべく、2ヶ月に1回程度のペースでフォーラムを開催する予定です。
言論NPOは10月13日午後6時半から東京日比谷のプレスセンターで、「ローカル・マニフェストと地方の自立」と題するフォーラムを開催しました。